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スレイ君の就活事件簿
前編
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今日は団の仕事も早めに終わったから、ずいぶんと早い時間に家に帰れたなぁ。
あのお嬢ちゃん、ニコル・テイラード嬢が第六騎士団にきてからというもの、ホントにサクサクと仕事が進むんだよ。団長の機嫌もいいし、これ以上ないくらい快適な職場環境になってるよな。
ああ、やっぱ俺、この仕事について正解だったわぁ。
ソファーでゆったりと酒のグラスを傾けながら、俺は団長と第六騎士団に出会った頃のことを思い出していた。
********
全く、親父は何であんなアルベリア国の奴らにヘラヘラできるんだ?
あんだけの嫌味言われたら、こっちからも言い返すくらいの一言があってもいいだろうに。俺、今にも殴りそうになる自分の手を止めるのに、必死だったもんなぁ。
やっぱ親父の仕事手伝うのは無理。今日だけお試しで外交補佐の仕事に付いて行ったけど、あんな腹芸毎日やってたら、親父より先に俺がハゲるわ。
いい歳だから早く何かの仕事しろって言われてるけど、近衛にしても外交補佐にしても、いまいちしっくりこないんだよなあ。まして宰相補佐なんざ、ハッキリ言って気が狂うかと思ったよ。俺に書類仕事させるなって……
働くことに関してまだまだ甘いって思うんだけど、仕事するからには、妥協したくないんだよな。
いっそ地方行って、何年か羽伸ばしてくるのもいいかぁ……
最近のお気に入りの酒場で、給仕のお姉ちゃんに愛想を振りまきながら、ワインの追加をお願いする。
オーダーしたワインを受け取り、ニコニコしながらお姉ちゃんのケツに魅入る。ふとそのお姉ちゃんの後ろを見ると、そのケツの延長線上にさっきのアルベリアのいけ好かない野郎がどっかの貴族と一緒に飲んでいるのが見えた。
うっへえ、酒が不味くなる……なんだよ、せっかくお姉ちゃんのケツ拝んで楽しい酒の席だったのに……早く帰ってくれないかなぁ。
と思っていたら、意識がそっちに向いているからか、二人の会話が漏れ聞こえてきた。
「……では明後日の夕方、場所はアルベリア近くの村で。荷馬車ニ台分は剣と鎧を集められるだけと、その他の武器と火薬、残り一台分は金塊を載せたものをご用意致します」
「うむ、くれぐれも他の貴族に悟られんようにな」
「はい、これでエリン公国は形勢逆転、ひと溜まりもありませんなぁ」
二人が仄暗く、忍び笑いしてる様子が見てとれる。
これって……賄賂だよな?
ヤベえじゃん、この取引が成立しちまったら、世の中ひっくり返るかもしれねえってことだろ?
あんなに大量の武器を横流しするつもりか、あの貴族!
とんだ犯罪現場に居合わせちまった動揺が走ったが、こうしちゃいられない。アイツ取り押さえて止めさせなきゃ。
慌てて立ち上がろうとすると、左肩を強く押され、椅子に無理やり座り直させられた。
「いやぁ、待たせたなぁ、コイツの便所が長くてなあ、なかなかこっちこれなかったぜ」
顔を見ると全く知らない奴らが三人、俺の前に座りニコニコしながら酒を注文し始める。
なんだよ、コイツら、俺はあの貴族を止めなきゃいけないんだから。
押さえられてる手を払い、立ち上がろうとすると、肩を押さえてるヤツが椅子を動かす素ぶりで俺に耳打ちしてきた。
「そのままっ。アイツらをもう見るな。このまま行かせても大丈夫だ、だから目線をこのテーブルにおけ」
耳打ちした男はテーブルの真ん中をトントンと指差しながら、尚も続ける。
「お前、ラングダウン公爵の息子だよな? 丁度いい、あとで親父さんに使いを頼む」
何言ってんだか、と思いながらマジマジっと見ると、どっかで見たことがあるような顔だ。誰だっけ? んー……と思い出してるうちに、アルベリアの野郎と賄賂貴族が酒場を出て行ってしまった。
「あっ、逃がしちまった……くそっ、お前ら誰だよっ。賄賂の話の現場だったんだぞ。なんで放っとくんだよ!」
「今はダメだ。確実に身動き取れないところで捕まえる。だから騒ぐな」
怒りを抑えられないまま、酒を一気に煽ると、注文を入れていた男が、肩を押さえた男に向かって話しかけた。
「団長、公爵家の人間なら内情話したら協力してくれるんじゃないっすか? 今回は結構大掛かりだから、取り逃がし防止のための人手が増えるなら、それもありがたい」
「ふうむ、それもそうだな。正義感もあるし……ただ部外者入れるのもなぁ。お前、腕っぷし強いのか? 今の部署どこだ?」
『団長』さんは少し考えてから俺に質問してきた。
「強えぇのかどうかは知らんよ、ただ近衛に入れるくらいの技量はある。今は仕事はしてない、まぁ、自分探しってとこかな?」
言った瞬間、俺以外の三人は同時に吹き出して大笑いしている。なんだよ、悪いかよっ。
あのお嬢ちゃん、ニコル・テイラード嬢が第六騎士団にきてからというもの、ホントにサクサクと仕事が進むんだよ。団長の機嫌もいいし、これ以上ないくらい快適な職場環境になってるよな。
ああ、やっぱ俺、この仕事について正解だったわぁ。
ソファーでゆったりと酒のグラスを傾けながら、俺は団長と第六騎士団に出会った頃のことを思い出していた。
********
全く、親父は何であんなアルベリア国の奴らにヘラヘラできるんだ?
あんだけの嫌味言われたら、こっちからも言い返すくらいの一言があってもいいだろうに。俺、今にも殴りそうになる自分の手を止めるのに、必死だったもんなぁ。
やっぱ親父の仕事手伝うのは無理。今日だけお試しで外交補佐の仕事に付いて行ったけど、あんな腹芸毎日やってたら、親父より先に俺がハゲるわ。
いい歳だから早く何かの仕事しろって言われてるけど、近衛にしても外交補佐にしても、いまいちしっくりこないんだよなあ。まして宰相補佐なんざ、ハッキリ言って気が狂うかと思ったよ。俺に書類仕事させるなって……
働くことに関してまだまだ甘いって思うんだけど、仕事するからには、妥協したくないんだよな。
いっそ地方行って、何年か羽伸ばしてくるのもいいかぁ……
最近のお気に入りの酒場で、給仕のお姉ちゃんに愛想を振りまきながら、ワインの追加をお願いする。
オーダーしたワインを受け取り、ニコニコしながらお姉ちゃんのケツに魅入る。ふとそのお姉ちゃんの後ろを見ると、そのケツの延長線上にさっきのアルベリアのいけ好かない野郎がどっかの貴族と一緒に飲んでいるのが見えた。
うっへえ、酒が不味くなる……なんだよ、せっかくお姉ちゃんのケツ拝んで楽しい酒の席だったのに……早く帰ってくれないかなぁ。
と思っていたら、意識がそっちに向いているからか、二人の会話が漏れ聞こえてきた。
「……では明後日の夕方、場所はアルベリア近くの村で。荷馬車ニ台分は剣と鎧を集められるだけと、その他の武器と火薬、残り一台分は金塊を載せたものをご用意致します」
「うむ、くれぐれも他の貴族に悟られんようにな」
「はい、これでエリン公国は形勢逆転、ひと溜まりもありませんなぁ」
二人が仄暗く、忍び笑いしてる様子が見てとれる。
これって……賄賂だよな?
ヤベえじゃん、この取引が成立しちまったら、世の中ひっくり返るかもしれねえってことだろ?
あんなに大量の武器を横流しするつもりか、あの貴族!
とんだ犯罪現場に居合わせちまった動揺が走ったが、こうしちゃいられない。アイツ取り押さえて止めさせなきゃ。
慌てて立ち上がろうとすると、左肩を強く押され、椅子に無理やり座り直させられた。
「いやぁ、待たせたなぁ、コイツの便所が長くてなあ、なかなかこっちこれなかったぜ」
顔を見ると全く知らない奴らが三人、俺の前に座りニコニコしながら酒を注文し始める。
なんだよ、コイツら、俺はあの貴族を止めなきゃいけないんだから。
押さえられてる手を払い、立ち上がろうとすると、肩を押さえてるヤツが椅子を動かす素ぶりで俺に耳打ちしてきた。
「そのままっ。アイツらをもう見るな。このまま行かせても大丈夫だ、だから目線をこのテーブルにおけ」
耳打ちした男はテーブルの真ん中をトントンと指差しながら、尚も続ける。
「お前、ラングダウン公爵の息子だよな? 丁度いい、あとで親父さんに使いを頼む」
何言ってんだか、と思いながらマジマジっと見ると、どっかで見たことがあるような顔だ。誰だっけ? んー……と思い出してるうちに、アルベリアの野郎と賄賂貴族が酒場を出て行ってしまった。
「あっ、逃がしちまった……くそっ、お前ら誰だよっ。賄賂の話の現場だったんだぞ。なんで放っとくんだよ!」
「今はダメだ。確実に身動き取れないところで捕まえる。だから騒ぐな」
怒りを抑えられないまま、酒を一気に煽ると、注文を入れていた男が、肩を押さえた男に向かって話しかけた。
「団長、公爵家の人間なら内情話したら協力してくれるんじゃないっすか? 今回は結構大掛かりだから、取り逃がし防止のための人手が増えるなら、それもありがたい」
「ふうむ、それもそうだな。正義感もあるし……ただ部外者入れるのもなぁ。お前、腕っぷし強いのか? 今の部署どこだ?」
『団長』さんは少し考えてから俺に質問してきた。
「強えぇのかどうかは知らんよ、ただ近衛に入れるくらいの技量はある。今は仕事はしてない、まぁ、自分探しってとこかな?」
言った瞬間、俺以外の三人は同時に吹き出して大笑いしている。なんだよ、悪いかよっ。
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