第三王子のお守り騎士団

しろっくま

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第2章

40話

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「ニコラス~、ねぇ、お願いします。せめて道場とか街への散歩くらいはしたいんですけど」
「ダメです、姉上は家で謹慎です。私がいいというまでは、道場も街もダメです」

 ひえーん、そんなのないしぃ……
 ちょっとくらいお出かけさせてよ~。もう三日も我慢したの。私なりに謹慎したもん。

「少しは世の女性を見習ってください。刺繍とか読書とかあるでしょう」

 呆れ顔で諭してくるのだが、刺繍なんてものは出来なくたって死なないじゃない。少しは体を動かして体力づくりした方が、健康のためにもいいんだから。

 粘っておねだりしても、ダメの一点張り。
 不満たらたらで部屋に戻った。こうなったらどうにかして抜け出してやるわっ!

 とりあえず一階まで降りて……うっ、ニコラス居るしぃ。

「姉上、どのようなご用でしょうか?     急ぎでなければお部屋へお戻りください」

 むっかぁ、何よこれ。アンタが怒ってるのはわかるけどさぁ、これじゃ軟禁でしょう、軟禁。

 決めた。窓からでるわよっ!
 ちっちゃい頃は、これでよく抜け出してたんだもん、少しブランクあるけど、木に飛び移るのなんて簡単簡単。
 庭に生えてる木が、ちょうど私の部屋の目隠しになってるんだよねぇ。日差しの強い日なんかは、木陰を作ってくれるありがたい木なのよ。普段ならね。

 今回は子供の頃何回かやった、脱走の手助けをしてもらうわよ。よろしくね、木さん。
 窓から飛び移って枝に渡り、そこから幹を伝って降りれば、一階から見えないうちに家から抜け出せるようになっている。

 昔はこの手で、道場まで遊びに行ってたもんね、ちょちょいのちょいで脱出完了よ。
 ドレスの裾調整オッケー、使用人を買収してゲットしたロープもオッケー、ベッドの中の偽装工作オッケー、よし、ミッションスタート!

 いい?    心のかけ声で飛ぶわよ。
 せーのっ。ふんむっ、どおだっ。


 ああマズい。非常にマズい……
 一瞬の迷いがアダになった。木に手を掛けたが足が窓枠から離れない。飛び移る瞬間に落ちるかも、という恐怖が頭に浮かび、踏み込みが甘くなりジャンプしきれなかったのだ。
 つまり木と窓枠の間に橋のように私が引っかかってるワケで……

 この時間は昼過ぎ、夕食の下準備にも早い中途半端な時間なので、使用人もほぼ昼寝やら休憩だ。ここら辺を通る人なんて、夕刻の洗濯物を取り込むまでほとんどいないはず。

 ここから落ちたら、たぶんニコラスの怪我どころの騒ぎじゃ収まらないだろうな。この間とは違った意味で命の危険が迫っている。
 くっ……そろそろ二の腕プルプルが始まってきてるし。

 はあぁ、ごめんね、私を知っているみなさん、それでは天国でまたお逢いしましょう。
 手のひらがズルんと滑り、枝をバキバキいわせながら、急降下。

「ふぎぇーーーーーーっ!」

 い、た……くない?       何やら下がモゾモゾと。ちょっと動いたら変な声が?

「ぐっあ」「でぁえー」「ぶっふぅ」

 三者三様の声が同時に足元で聞こえてくる。
 あ、ららら、ジェイクとスレイ君、それにお父様まで潰れてる?

「えっと、みなさんこんにちは。本日はどのようなご用件で……」

 最初に反応したのはスレイ君だ。むくっと起き上がり、ジェイクの顔を怯えた表情でみながら、私をどかす。順番にジェイク、お父様と手を差し伸べて起こしきったところで。
 はい、いつもの儀式ですよね。

「こらぁーーーーっ、ニコルーーーーっ!」
「この馬鹿者があーーーーーーーーっ!」

 お父様とジェイクの怒鳴り声が重なって、いつも以上の迫力だ。

「ぎゃーーーーん、マジごめんなさーーーーいっ!」
「あーあ、やっぱりやらかしたぁ」

 私の謝る声に被るようにスレイ君の声。
 しばらくお父様とジェイクから代わる代わるお小言をくらい、それはお尻が冷えてクシャミをするまで続いた。
 最後はスレイ君が、なんとかとりなしてくれて、お説教タイムは終了した。
 私もこれ以上の説教は勘弁して欲しかったので、おトイレに駆け込んで追求をかわした。
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