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ガイダンスの資料に目を通し、段取りを考え、講義についてのチェックをし、朝のミーティングを終えて、フラフラになりながら廊下へ出る。
脳みそ、燃えそう……。
「大丈夫か?」
保が体を支えてくれて、ほっとした。
「俺、顔、ひどい?」
「疲れてる感はあるな」
「そっか。じゃあ、気合い入れて、顔つくらないとな」
保が背中を撫でてくる。
「無理するな。身なりを整えていれば、結構、ごまかせるもんだ」
俺は保の前に立った。
「変じゃねぇ?」
「ああ」
「大丈夫。庸輔さんは弱ってても、それがいい味だしてるから」
背後から発せられた声に、背筋が伸びる。
小塚はリュックを背負い、歯を見せて笑った。
「小塚君、学校は?」
「自宅謹慎中」
「そ、そう……」
小塚の包帯が巻かれた手に、俺は奥歯を噛みしめた。
俺の視線に気づいた小塚は、手を上にあげた。
「これは俺の戒めだ。自分も含め、人は傷つけない。俺はそんなヒーローになる。庸輔さんの言葉、忘れない」
小塚の中に受け入れる容量がなければ、ただの戯れ言だったよ。
「俺、庸輔さんの講義、受けるためにここへ来た。これから一年、きっちり学ばせてもらうから」
俺を見ていた小塚の目が横へと動く。瞬間、青年の顔がパッと輝いた。
「竜!」
「え?」
小塚の恋人?
振り返ったそこにいたのは……。
「浜ちゃん!」
「先生、声、大きいです」
浜ちゃんは俺達のところまで来ると、自分の腕に絡みついてきた小塚に引きつった。
「従兄弟なんです。すみません。うるさくして」
「それだけじゃないだろ。竜は俺の彼」
浜ちゃんが小塚の口を覆った。
「なんでも。なんでもありません」
「隠さなくても大丈夫だよ。小塚君から聴いているから。竜が浜ちゃんだとは思わなかったけど」
浜ちゃんは小塚の口から手を離し、俯いた。
「おかしいですよね。βとαじゃ、子どももできないのに」
αにはαの、ΩにはΩの、そして、βにはβの悩みがある……。
「俺はおかしいと思わないよ」
なぁ、とさっきから黙り込んでいる保に話をふった。
「ああ」
保さん、なんか、怒っていらっしゃる?
「ありがとうございます。ほら、カズ、お前はもう邪魔しない。行くぞ」
浜ちゃんが小塚を引き連れ、廊下を進んでいく。
俺は浜ちゃんを呼び止めた。
「ずっと、ありがとう。今度、部屋でご馳走するよ。うちの料理長、口うるさいけど、料理は美味しいから」
保の胸に手の甲をつけてやる。
「なんで、俺?!」
「昨日、俺の料理、豪快だって笑ったろ。繊細なの、頼んだぜ」
浜ちゃん達は保の返事を待つように、立ち止まっている。
肘で、保の腹を突っついた。
「昨日は迷惑をかけた。小塚君には話したいことがあるから、ぜひ二人で来てくれ」
なぜ、そう絡む……。
「ありがとうございます。楽しみしていますね」
浜ちゃんがにこやかに言ってくれたおかげで、場が凍らずにすんだ。
彼らが階段をのぼっていったところで、俺は溜息をついた。
「保さぁ、感謝って字、書ける?」
「書ける」
「うん。うん。俺の言い方が悪かった。小塚君に突っかかんな。助けてくれたんだ。素直にありがとうって言え」
「悪いが、自分を英雄視するαは好きになれない」
お前、そんなんじゃ、人からやさしくしてもらったら、ありがとうって言おうって、子どもに教えられねぇぞ。
脳みそ、燃えそう……。
「大丈夫か?」
保が体を支えてくれて、ほっとした。
「俺、顔、ひどい?」
「疲れてる感はあるな」
「そっか。じゃあ、気合い入れて、顔つくらないとな」
保が背中を撫でてくる。
「無理するな。身なりを整えていれば、結構、ごまかせるもんだ」
俺は保の前に立った。
「変じゃねぇ?」
「ああ」
「大丈夫。庸輔さんは弱ってても、それがいい味だしてるから」
背後から発せられた声に、背筋が伸びる。
小塚はリュックを背負い、歯を見せて笑った。
「小塚君、学校は?」
「自宅謹慎中」
「そ、そう……」
小塚の包帯が巻かれた手に、俺は奥歯を噛みしめた。
俺の視線に気づいた小塚は、手を上にあげた。
「これは俺の戒めだ。自分も含め、人は傷つけない。俺はそんなヒーローになる。庸輔さんの言葉、忘れない」
小塚の中に受け入れる容量がなければ、ただの戯れ言だったよ。
「俺、庸輔さんの講義、受けるためにここへ来た。これから一年、きっちり学ばせてもらうから」
俺を見ていた小塚の目が横へと動く。瞬間、青年の顔がパッと輝いた。
「竜!」
「え?」
小塚の恋人?
振り返ったそこにいたのは……。
「浜ちゃん!」
「先生、声、大きいです」
浜ちゃんは俺達のところまで来ると、自分の腕に絡みついてきた小塚に引きつった。
「従兄弟なんです。すみません。うるさくして」
「それだけじゃないだろ。竜は俺の彼」
浜ちゃんが小塚の口を覆った。
「なんでも。なんでもありません」
「隠さなくても大丈夫だよ。小塚君から聴いているから。竜が浜ちゃんだとは思わなかったけど」
浜ちゃんは小塚の口から手を離し、俯いた。
「おかしいですよね。βとαじゃ、子どももできないのに」
αにはαの、ΩにはΩの、そして、βにはβの悩みがある……。
「俺はおかしいと思わないよ」
なぁ、とさっきから黙り込んでいる保に話をふった。
「ああ」
保さん、なんか、怒っていらっしゃる?
「ありがとうございます。ほら、カズ、お前はもう邪魔しない。行くぞ」
浜ちゃんが小塚を引き連れ、廊下を進んでいく。
俺は浜ちゃんを呼び止めた。
「ずっと、ありがとう。今度、部屋でご馳走するよ。うちの料理長、口うるさいけど、料理は美味しいから」
保の胸に手の甲をつけてやる。
「なんで、俺?!」
「昨日、俺の料理、豪快だって笑ったろ。繊細なの、頼んだぜ」
浜ちゃん達は保の返事を待つように、立ち止まっている。
肘で、保の腹を突っついた。
「昨日は迷惑をかけた。小塚君には話したいことがあるから、ぜひ二人で来てくれ」
なぜ、そう絡む……。
「ありがとうございます。楽しみしていますね」
浜ちゃんがにこやかに言ってくれたおかげで、場が凍らずにすんだ。
彼らが階段をのぼっていったところで、俺は溜息をついた。
「保さぁ、感謝って字、書ける?」
「書ける」
「うん。うん。俺の言い方が悪かった。小塚君に突っかかんな。助けてくれたんだ。素直にありがとうって言え」
「悪いが、自分を英雄視するαは好きになれない」
お前、そんなんじゃ、人からやさしくしてもらったら、ありがとうって言おうって、子どもに教えられねぇぞ。
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