26 / 42
25
しおりを挟む
「しかぁし、ニラウンド目は自力も自力、他力なんか考えてはいけませんよ! さあ、次の種目は大食いだあ! その名も『どれくらい真っ青になれば気が済むの?!』。食べていただくのは、チョコミントアイス! 制限時間は四十分!」
小豆と菜箸が、学ランを着た生徒によって片付けられ、代わりに、土鍋一杯のアイスが置かれていく。
覚えていやがったか、あいつら。
「では、スプーンを持って、始め!」
ピーと、また笛が鳴る。
横に視線を向けると、向井は顔を染めてアイスを見つめていた。
こいつ、さっきも人形焼を女みたいな菓子だとか抜かしながら、全部食べていたしな。
男は甘いものを食べてはいけない、と思っているのか?
屈折した甘党か?
向井がスプーン山盛りに、緑色のアイスを掬い、口へと運ぶ。
ハートとお花が見えるよ、向井君。
そんなに、チョコミントがお好きかね。
「くっそお」
ミントとチョコってどうよ。
自然界にないだろ、こんな味。
カカオってのは本来、苦いんだぜ。
「食べないのか?」
向井が二口目を口にする。
「食べますよ~」
食べますとも。
この緑色の地獄を、制覇してやりますとも。
でも、一口目は、ちょっとだけ。
慣らすために、ベロで舐るだけ。
スプーンの先でアイスを掻き、舌を伸ばしてみる。
つんと触れた瞬間、冷たさとともに、ミントとチョコの、甘ったるいのに、スキッとする味が、鼻を通り抜けた。
「ぐおっ」
この世の食い物とは思えない。
開発者は誰だ?
「はい~。林君、どうしたのかなあ? 具合でも悪くなっちゃいましたかあ?」
脇田が感情を逆撫でしてくる。
「いやあ、思い出しますねえ。俺と西山、そして林と一緒に、アイス屋へ出かけたあの日を」
ちょっと待て。
お前、まさか、俺の恥をこんな大勢の前で、言うんじゃねえだろうな。
「三人揃って頼んだのが、その店で人気ナンバーワンだったチョコミントなのですが、そこにいる阿呆は一口食べた途端に漏らしちゃってねえ」
脇田あああああああああああああ。
「大変だったんですよ。店員さんに謝らなきゃいけないわ。泣き出した林を介抱しなくちゃいけないわ」
笑い声と「うっそお」っていう声が、心臓と鼓膜にジャブを食らわしてくる。
「チョコミント、駄目なんだな。美味いのに」
向井がジュースでも飲むように、土鍋からチョコミントを飲んでいく。
「化け物か、お前は!」
「林~、今日は安心して食え。オムツも替えのブリーフも、用意してやったかんな!」
脇田がオムツとブリーフをひらつかせる。
俺はトランクス派だ!
「幼馴染を敵に回すと怖いってこと、よくよく覚えておけよ、こんちくしょう」
笑顔で言う台詞じゃねえよ。
ああ、向井がどんどん平らげてくよ。
六分経過で、三杯目って超人だろ。
でも、俺だってな、こんなところで立ち止まっていられねえんだ。
土鍋を持ち上げ、喉に流し込む。
「おお~」
と感嘆の声が上がるが、直後。
「えれえええええええええええええええええ」
俺は床に四つん這いになって吐いた。
あかん。
股間をノックアウトされる前に、胃が受け入れるのを拒否した。
小豆と菜箸が、学ランを着た生徒によって片付けられ、代わりに、土鍋一杯のアイスが置かれていく。
覚えていやがったか、あいつら。
「では、スプーンを持って、始め!」
ピーと、また笛が鳴る。
横に視線を向けると、向井は顔を染めてアイスを見つめていた。
こいつ、さっきも人形焼を女みたいな菓子だとか抜かしながら、全部食べていたしな。
男は甘いものを食べてはいけない、と思っているのか?
屈折した甘党か?
向井がスプーン山盛りに、緑色のアイスを掬い、口へと運ぶ。
ハートとお花が見えるよ、向井君。
そんなに、チョコミントがお好きかね。
「くっそお」
ミントとチョコってどうよ。
自然界にないだろ、こんな味。
カカオってのは本来、苦いんだぜ。
「食べないのか?」
向井が二口目を口にする。
「食べますよ~」
食べますとも。
この緑色の地獄を、制覇してやりますとも。
でも、一口目は、ちょっとだけ。
慣らすために、ベロで舐るだけ。
スプーンの先でアイスを掻き、舌を伸ばしてみる。
つんと触れた瞬間、冷たさとともに、ミントとチョコの、甘ったるいのに、スキッとする味が、鼻を通り抜けた。
「ぐおっ」
この世の食い物とは思えない。
開発者は誰だ?
「はい~。林君、どうしたのかなあ? 具合でも悪くなっちゃいましたかあ?」
脇田が感情を逆撫でしてくる。
「いやあ、思い出しますねえ。俺と西山、そして林と一緒に、アイス屋へ出かけたあの日を」
ちょっと待て。
お前、まさか、俺の恥をこんな大勢の前で、言うんじゃねえだろうな。
「三人揃って頼んだのが、その店で人気ナンバーワンだったチョコミントなのですが、そこにいる阿呆は一口食べた途端に漏らしちゃってねえ」
脇田あああああああああああああ。
「大変だったんですよ。店員さんに謝らなきゃいけないわ。泣き出した林を介抱しなくちゃいけないわ」
笑い声と「うっそお」っていう声が、心臓と鼓膜にジャブを食らわしてくる。
「チョコミント、駄目なんだな。美味いのに」
向井がジュースでも飲むように、土鍋からチョコミントを飲んでいく。
「化け物か、お前は!」
「林~、今日は安心して食え。オムツも替えのブリーフも、用意してやったかんな!」
脇田がオムツとブリーフをひらつかせる。
俺はトランクス派だ!
「幼馴染を敵に回すと怖いってこと、よくよく覚えておけよ、こんちくしょう」
笑顔で言う台詞じゃねえよ。
ああ、向井がどんどん平らげてくよ。
六分経過で、三杯目って超人だろ。
でも、俺だってな、こんなところで立ち止まっていられねえんだ。
土鍋を持ち上げ、喉に流し込む。
「おお~」
と感嘆の声が上がるが、直後。
「えれえええええええええええええええええ」
俺は床に四つん這いになって吐いた。
あかん。
股間をノックアウトされる前に、胃が受け入れるのを拒否した。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
27
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる