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「ただし、条件がある」
エニシは手を引き、孤の首筋に顔を近づけた。
「お前の血を分けて欲しい」
「俺のでいいなら、いくらでも」
エニシは悲しそうに目を伏せた。
「恵んでやる相手に対して言うことじゃない」
服をずらされ、首元に歯が当てられる。
冷たい針を突き立てられたような痛みが、瞬時に、快楽へと変わった。
飢えを癒すようなエニシの息遣いに、ぞくぞくする。
孤は吐息が漏れないよう、口を手で覆った。
この行為が、エニシにとっては血の補給であったとしても、きつくしがみつかれると腹の底から熱い感情がわき上がった。
エニシが慎重に牙を抜く。舌が孤の肌をなぞり、そして、離れた。彼の動作すべてが体を甘く痺れさせる。孤は口を覆ったまま、涙を浮かべた。エニシはそんな孤を見て、生唾を飲み込み、何か言おうと口を開いた。辱められるような気がして、孤は太ももの横をつねり、細胞のざわめきを止めた。
「これで、俺も縁のところへ行けるな?」
エニシは目を見開け、それから苦笑した。
「俺から離れるなよ」
頷くと、エニシは操縦席の足下からリュック型の機械を取り出した。
「俺だけなら、ここから飛び降りたが、お前がいるからな。体力は温存しておきたい」
彼は機械を背負い、キャノピーを上げ、孤を横に抱いた。風の影響をもろともしない力だった。
孤はエニシの首に腕を回し、強風に耐えた。
眼下に、人の塊が見て取れる。
「目を傷つけるとまずい。今は閉じとけ」
返事をする代わりに、孤は素直に従った。
なぜか、エニシがほっと胸を撫で落とした。
その理由は、エニシが地面に足を下ろしたとき、すぐにわかった。
大勢の武装した人々の真ん中に、手足をもがれ、首が胴体から切り離された縁がいた。
オイルが滴り、地面に染みこんでいる。
「縁!」
孤はエニシの腕から抜け出そうと暴れた。
エニシは孤を抱きしめる力を強めた。
「エニシ、下ろして。縁が。縁が!」
嗚咽混じりに叫びながら見上げた青年の顔は、とても冷たいものだった。
彼は縁が受けた仕打ちと、それを行った人々を心から憎んでいた。
兵達の中央にいる軍服の男が青ざめた。
男は短髪で、腰に剣を装備している。
エニシは男に軽蔑の眼差しを送った。
「国の第一軍隊長が任務を何度もしくじるってのは、国防の観点から言って最悪としか表現できないと思うのだが、お前はどう思う、ジル」
ジルと呼ばれた男の、精悍な顔が歪む。
エニシはあからさまに溜息をついた。
孤は一瞬の風を感じた。
気づいたときには、人々の輪を飛び越え、縁の至近距離にいた。
周囲がざわめく。
「迎えに来てやったぞ。お前の愛しい人も一緒だ」
「…………」
縁は無言だ。
エニシは孤を抱いたまま、縁の頭部を手にした。
「持てるか? 無理なら」
「大丈夫。ありがとう」
孤は縁を受けとり、両腕で包み込んだ。オイルの匂いと切断されたケーブルがピリピリとスパークしている。
「遅くなってごめん」
縁の瞳からオイル色の涙が流れた。
エニシは手を引き、孤の首筋に顔を近づけた。
「お前の血を分けて欲しい」
「俺のでいいなら、いくらでも」
エニシは悲しそうに目を伏せた。
「恵んでやる相手に対して言うことじゃない」
服をずらされ、首元に歯が当てられる。
冷たい針を突き立てられたような痛みが、瞬時に、快楽へと変わった。
飢えを癒すようなエニシの息遣いに、ぞくぞくする。
孤は吐息が漏れないよう、口を手で覆った。
この行為が、エニシにとっては血の補給であったとしても、きつくしがみつかれると腹の底から熱い感情がわき上がった。
エニシが慎重に牙を抜く。舌が孤の肌をなぞり、そして、離れた。彼の動作すべてが体を甘く痺れさせる。孤は口を覆ったまま、涙を浮かべた。エニシはそんな孤を見て、生唾を飲み込み、何か言おうと口を開いた。辱められるような気がして、孤は太ももの横をつねり、細胞のざわめきを止めた。
「これで、俺も縁のところへ行けるな?」
エニシは目を見開け、それから苦笑した。
「俺から離れるなよ」
頷くと、エニシは操縦席の足下からリュック型の機械を取り出した。
「俺だけなら、ここから飛び降りたが、お前がいるからな。体力は温存しておきたい」
彼は機械を背負い、キャノピーを上げ、孤を横に抱いた。風の影響をもろともしない力だった。
孤はエニシの首に腕を回し、強風に耐えた。
眼下に、人の塊が見て取れる。
「目を傷つけるとまずい。今は閉じとけ」
返事をする代わりに、孤は素直に従った。
なぜか、エニシがほっと胸を撫で落とした。
その理由は、エニシが地面に足を下ろしたとき、すぐにわかった。
大勢の武装した人々の真ん中に、手足をもがれ、首が胴体から切り離された縁がいた。
オイルが滴り、地面に染みこんでいる。
「縁!」
孤はエニシの腕から抜け出そうと暴れた。
エニシは孤を抱きしめる力を強めた。
「エニシ、下ろして。縁が。縁が!」
嗚咽混じりに叫びながら見上げた青年の顔は、とても冷たいものだった。
彼は縁が受けた仕打ちと、それを行った人々を心から憎んでいた。
兵達の中央にいる軍服の男が青ざめた。
男は短髪で、腰に剣を装備している。
エニシは男に軽蔑の眼差しを送った。
「国の第一軍隊長が任務を何度もしくじるってのは、国防の観点から言って最悪としか表現できないと思うのだが、お前はどう思う、ジル」
ジルと呼ばれた男の、精悍な顔が歪む。
エニシはあからさまに溜息をついた。
孤は一瞬の風を感じた。
気づいたときには、人々の輪を飛び越え、縁の至近距離にいた。
周囲がざわめく。
「迎えに来てやったぞ。お前の愛しい人も一緒だ」
「…………」
縁は無言だ。
エニシは孤を抱いたまま、縁の頭部を手にした。
「持てるか? 無理なら」
「大丈夫。ありがとう」
孤は縁を受けとり、両腕で包み込んだ。オイルの匂いと切断されたケーブルがピリピリとスパークしている。
「遅くなってごめん」
縁の瞳からオイル色の涙が流れた。
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