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009 絶対目立つわ!
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フレアリールが掲げた『バカ死滅作戦』は、結果としてもっと早く本腰を入れるべきだったと後悔している。
特にあのハリボテ王子だ。
教育から調教にシフトチェンジするタイミングを計っていたのだが、見事にミスった。
もし、戻ったならば容赦はしない。これで自由だとでも思っているだろうあのバカを吊るし上げ、毎時間毎に『死んだ方がマシだ』と思えるくらいに使い倒すつもりだ。
フレアリールの父か兄、または王か宰相辺りがしっかりとフレアリールが戻るまでレストールをどこかに縛り付けておいてくれたらと願う。
「なぁんか……すっごく凶悪な顔になってるわよぉ?」
「笑顔だけど?」
「……」
ものすっごく笑顔のはずだ。それはもう、明日の遠足が待ちきれない幼女のようなワクワクが止まらないほどのやつだ。
しかし、なぜかキャロウル神はお気に召さなかったらしい。頬が痙攣している。
「……わ、私としてはぁ、フレアちゃんが宰相か王妃になってくれたら嬉しいなあって思ってるんだけど……今のあの国の王都がある場所ってぇ、とっても重要だからぁ」
「何があるのよ」
目を細め、どさくさ紛れに理由を誤魔化そうとするキャロウル神を見つめる。
フレアリールは、自身を利用しようとする気配に昔から敏感だ。人一倍、そういうものに警戒しながら生きてきたのだから当然だった。
「うっ、そんな目で見ないでぇ……ちゃんと話すわよぉ」
本気で怯えてた表情をしたキャロウル神は、やっぱりあの人の血だと呟いていたが、そこは聞かなかったことにしておく。
「えっとぉ……あのね? 異世界召喚ってぇ、あの場所でしかほとんど成功しないのぉ。邪神の力の大半があの土地に眠ってるからなんだ~。だからぁ、半神になったフレアちゃんがぁ、あの場所に居ればぁ、神気で邪神の力でできてる次元の歪みもなくなるの~」
「……元から浄化っていうか消滅なり封印なりすれば、王都に居なくてもいいんじゃないの?」
「う~ん。いいけど、歪みそのものはそのままだから、その後に放置で百年くらい必要よ? その間にまた召還されちゃうとぉ、歪みが大きくなってぇ、あの世界の半分くらいはなくなるかな~」
「無くなる? そんな大事になるの?」
キャロウル神の話によると、異世界召還は、元々が次元を歪める力が働いてしまうらしい。その上、術式の関係から異世界で死んだ者を魂だけ召喚し、その記憶から肉体をこちらの物質によって再構築しているのだとか。これによって、高い能力を直接肉体に宿すことができるのだ。
「なら、異世界召喚は今後しない方がいいのね。因みに、あと何回したらそうなるの?」
「そうね~……一度ね~。もぉギリギリよ~」
「……神なら止めなさいよ……」
「だってぇ、忘れた頃にやられるんだものぉ。ずっと見張ってられないわよぉ。たまに歪みに引っ張られた転移者とかもいるし……」
頬を膨らませて憤慨するキャロウル神に、そこはそうかと納得しておく。
「仕方ないわね。なんとかしてみるわ」
「好きに生きて良いって言ったのにゴメンねぇ……」
一応は面倒事を押しつけたという認識があるらしい。
「それで、いつ戻れるの?」
「今からよ~。あ、その前にその子の名前決めちゃって」
《なまえ?》
指を差されたライオン――神獣は頭を上げて目を瞠る。
「名前ね……う~ん……レ……リオ、リオでいい?」
ライオンといえばなぜかレオという名が浮かんでくるのだが、レから始まることでレストールを思い出し、リオに変更する。センスはないなと自覚していた。
《リオ……うん。ぼく、リオ》
「ええ。リオ。これから……よろしくしていいの?」
後半でキャロウル神へと顔を向ける。今後、もしかして連れて歩くことになるのかと確認する。リオの見た目は明らかに神に連なるものと分かるものだ。
フレアリールもそれが面倒でわざわざ髪と瞳を染めていた。
「もちろんよぉ。だって、フレアちゃんとリオちゃんは、魂を共有しているものぉ。地上で言う従魔と同じ扱いね~。今ので完璧な契約が成されたわ~」
「神獣を従魔とか、絶対目立つわ!」
「いいじゃなぁい。神様の使いって分かりやすいわぁ」
「やり終わったら好きにしていいんでしょ? そんな肩書き邪魔なだけよ」
目の前の主神と同じ金の瞳に淡く光を纏ったオレンジの毛色。これは神の特徴として伝えられている高貴な色なのだ。子どもであっても理解している世界の常識。目立つに決まっている。
「う~ん……それじゃ、これをあげるわぁ」
「ローブ?」
濃い灰色の丈の長いローブ。細かく蔦のような模様が銀糸で刺繍されており、色の割に野暮ったい感じも受けない。皮素材のようなしっかりとしているのもその要因かもしれない。そして何より、何らかの術が施されているのが分かった。
「これ、どういう術がかかっているの?」
「着ていれば髪と瞳の色が変えられるわぁ。といっても灰色だけどぉ。それと、神気を抑えられるわね~」
「神気……」
そういえば、神気で歪みをどうのと言っていたなと思い出す。
なるほど、何か出ているらしい。
「そうよ~。だって、フレアちゃんは半神だものぉ。あ、抑えられるように練習してね~。地上の人にはキツいからぁ」
言われても気付かない。魔力と同じようなものだろうか。少し不安ではある。
魔術を扱うためには、自身の中にある魔力を感じられなくてはならない。外に放出され過ぎないように調整する術も持たなくてはならないのだ。これに多くの者は躓く。しかし、フレアリールは生まれながらにしてこれを感覚的に理解しており、苦労しなかった。
簡単には意識できないものを意識できるようにするという、誰もが通る段階をすっ飛ばしてしまったのだ。
神気がこれと同じならば出来るだろうかと不安になった。
「因みにぃ、私は出来ないわぁ。けど、フレアちゃんならできるかなって~。だって、今まで持ってなかった力だからね~。それを理解できれば出来ると思うわ~。まあ、頑張ってね~」
「……軽い……」
「ふふん。なるようになるぅ。大丈夫! 良い出会いもあるわよ~☆ それじゃ、まったね~♪」
笑顔で手を振るキャロウル神を目にした時、突然足下に穴が空いた。
「え!? ちょっ!?」
すぐに浮遊感が襲う。隣には同じように落ちているリオ。
そして、頭上から声が降る。
「あ、あの王子とか異世界の子のその後はぁ、自分で確認してね~♪」
「もうちょっと送り様があるでしょうが!!」
咄嗟にリオに抱きつきながら、貰ったローブを片手でしっかりと抱えて叫んだのだった。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
ご帰還です。
2019. 3. 9
特にあのハリボテ王子だ。
教育から調教にシフトチェンジするタイミングを計っていたのだが、見事にミスった。
もし、戻ったならば容赦はしない。これで自由だとでも思っているだろうあのバカを吊るし上げ、毎時間毎に『死んだ方がマシだ』と思えるくらいに使い倒すつもりだ。
フレアリールの父か兄、または王か宰相辺りがしっかりとフレアリールが戻るまでレストールをどこかに縛り付けておいてくれたらと願う。
「なぁんか……すっごく凶悪な顔になってるわよぉ?」
「笑顔だけど?」
「……」
ものすっごく笑顔のはずだ。それはもう、明日の遠足が待ちきれない幼女のようなワクワクが止まらないほどのやつだ。
しかし、なぜかキャロウル神はお気に召さなかったらしい。頬が痙攣している。
「……わ、私としてはぁ、フレアちゃんが宰相か王妃になってくれたら嬉しいなあって思ってるんだけど……今のあの国の王都がある場所ってぇ、とっても重要だからぁ」
「何があるのよ」
目を細め、どさくさ紛れに理由を誤魔化そうとするキャロウル神を見つめる。
フレアリールは、自身を利用しようとする気配に昔から敏感だ。人一倍、そういうものに警戒しながら生きてきたのだから当然だった。
「うっ、そんな目で見ないでぇ……ちゃんと話すわよぉ」
本気で怯えてた表情をしたキャロウル神は、やっぱりあの人の血だと呟いていたが、そこは聞かなかったことにしておく。
「えっとぉ……あのね? 異世界召喚ってぇ、あの場所でしかほとんど成功しないのぉ。邪神の力の大半があの土地に眠ってるからなんだ~。だからぁ、半神になったフレアちゃんがぁ、あの場所に居ればぁ、神気で邪神の力でできてる次元の歪みもなくなるの~」
「……元から浄化っていうか消滅なり封印なりすれば、王都に居なくてもいいんじゃないの?」
「う~ん。いいけど、歪みそのものはそのままだから、その後に放置で百年くらい必要よ? その間にまた召還されちゃうとぉ、歪みが大きくなってぇ、あの世界の半分くらいはなくなるかな~」
「無くなる? そんな大事になるの?」
キャロウル神の話によると、異世界召還は、元々が次元を歪める力が働いてしまうらしい。その上、術式の関係から異世界で死んだ者を魂だけ召喚し、その記憶から肉体をこちらの物質によって再構築しているのだとか。これによって、高い能力を直接肉体に宿すことができるのだ。
「なら、異世界召喚は今後しない方がいいのね。因みに、あと何回したらそうなるの?」
「そうね~……一度ね~。もぉギリギリよ~」
「……神なら止めなさいよ……」
「だってぇ、忘れた頃にやられるんだものぉ。ずっと見張ってられないわよぉ。たまに歪みに引っ張られた転移者とかもいるし……」
頬を膨らませて憤慨するキャロウル神に、そこはそうかと納得しておく。
「仕方ないわね。なんとかしてみるわ」
「好きに生きて良いって言ったのにゴメンねぇ……」
一応は面倒事を押しつけたという認識があるらしい。
「それで、いつ戻れるの?」
「今からよ~。あ、その前にその子の名前決めちゃって」
《なまえ?》
指を差されたライオン――神獣は頭を上げて目を瞠る。
「名前ね……う~ん……レ……リオ、リオでいい?」
ライオンといえばなぜかレオという名が浮かんでくるのだが、レから始まることでレストールを思い出し、リオに変更する。センスはないなと自覚していた。
《リオ……うん。ぼく、リオ》
「ええ。リオ。これから……よろしくしていいの?」
後半でキャロウル神へと顔を向ける。今後、もしかして連れて歩くことになるのかと確認する。リオの見た目は明らかに神に連なるものと分かるものだ。
フレアリールもそれが面倒でわざわざ髪と瞳を染めていた。
「もちろんよぉ。だって、フレアちゃんとリオちゃんは、魂を共有しているものぉ。地上で言う従魔と同じ扱いね~。今ので完璧な契約が成されたわ~」
「神獣を従魔とか、絶対目立つわ!」
「いいじゃなぁい。神様の使いって分かりやすいわぁ」
「やり終わったら好きにしていいんでしょ? そんな肩書き邪魔なだけよ」
目の前の主神と同じ金の瞳に淡く光を纏ったオレンジの毛色。これは神の特徴として伝えられている高貴な色なのだ。子どもであっても理解している世界の常識。目立つに決まっている。
「う~ん……それじゃ、これをあげるわぁ」
「ローブ?」
濃い灰色の丈の長いローブ。細かく蔦のような模様が銀糸で刺繍されており、色の割に野暮ったい感じも受けない。皮素材のようなしっかりとしているのもその要因かもしれない。そして何より、何らかの術が施されているのが分かった。
「これ、どういう術がかかっているの?」
「着ていれば髪と瞳の色が変えられるわぁ。といっても灰色だけどぉ。それと、神気を抑えられるわね~」
「神気……」
そういえば、神気で歪みをどうのと言っていたなと思い出す。
なるほど、何か出ているらしい。
「そうよ~。だって、フレアちゃんは半神だものぉ。あ、抑えられるように練習してね~。地上の人にはキツいからぁ」
言われても気付かない。魔力と同じようなものだろうか。少し不安ではある。
魔術を扱うためには、自身の中にある魔力を感じられなくてはならない。外に放出され過ぎないように調整する術も持たなくてはならないのだ。これに多くの者は躓く。しかし、フレアリールは生まれながらにしてこれを感覚的に理解しており、苦労しなかった。
簡単には意識できないものを意識できるようにするという、誰もが通る段階をすっ飛ばしてしまったのだ。
神気がこれと同じならば出来るだろうかと不安になった。
「因みにぃ、私は出来ないわぁ。けど、フレアちゃんならできるかなって~。だって、今まで持ってなかった力だからね~。それを理解できれば出来ると思うわ~。まあ、頑張ってね~」
「……軽い……」
「ふふん。なるようになるぅ。大丈夫! 良い出会いもあるわよ~☆ それじゃ、まったね~♪」
笑顔で手を振るキャロウル神を目にした時、突然足下に穴が空いた。
「え!? ちょっ!?」
すぐに浮遊感が襲う。隣には同じように落ちているリオ。
そして、頭上から声が降る。
「あ、あの王子とか異世界の子のその後はぁ、自分で確認してね~♪」
「もうちょっと送り様があるでしょうが!!」
咄嗟にリオに抱きつきながら、貰ったローブを片手でしっかりと抱えて叫んだのだった。
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2019. 3. 9
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