295 / 463
第六章 秘伝と知己の集い
295 心配……ではあります
しおりを挟む
統二の高校での一回目の打ち合わせ、顔合わせから二週間が経ち、二度目の訪問の日がやってきた。
「今日は、仮縫いした服を試着するんだろ?」
「みたいだな」
今回も、俊哉が護衛してくれるらしい。朝から張り切っていた。
「担当の子達、めちゃくちゃ気合い入ってたし、楽しみだな~」
「……」
モデルはクジで決まったのだが、決まった瞬間の歓喜の声は凄かった。
「決まった時、マジ泣きしてたし、今日は大丈夫かね?」
「……」
服を作るのは、代表となる子と、作業を手伝う三、四人のグループ。手伝うと言っても、代表の子に指示された作業をするだけ。
選ばれたデザインから、パターンの製作をするのは代表の子だ。
合う布を探したり、仮縫いをしたり、その服に合う靴や帽子などを選んだり、見つけてきたりするのが三、四人のサポートメンバーというわけだった。
そのサポートメンバーと代表の子が、高耶を引き当てた時の歓喜の声といったら、もう優勝が決まったかのような声だった。
「けど、高耶が圧倒的な存在感を出し過ぎてて、ちゃんと審査できるかは心配だわ」
「……」
本当に、神気は抑えられているよなと指輪を確認するのは、もう日常的になっていた。
「で? 高耶は何が気になってんだ?」
「……何のことだ?」
突然何かと高校に向かって最寄りの駅から歩きながら眉を寄せた。
「いや。だって、この前行った時から、なんか気にしてるだろ。校内歩いてる時に、二回くらい、お前なんかどっか違うとこ見てたじゃん」
「……っ」
俊哉が気付いていたことに驚いた。その驚きの顔を振り返り、俊哉がニヤリと笑う。
「俺、すげえだろ? 姫様にも勘が良いって褒められたんだぜ?」
「……」
得意げに言われ、高耶は何とも言えない顔をする。それが、俊哉には不満だったようだ。
「え? なんでそんな顔するん? 良いことだろ?」
「……いや……良いこととは言い切れないんだが……」
勘も良過ぎるのは良くないと高耶は思っている。見え過ぎるのも、感じ過ぎるのも、何事も過ぎる力というのは良くないだろう。
それを扱い切れるならば、上手く付き合っていけるだろうが、難しい場合が多いものだ。
高耶は俊哉のことが少し心配になった。
「……お前……あまり俺の側から離れるなよ」
「っ……高耶……」
心から、自然に出た言葉だった。
いつも明るく振る舞う俊哉だ。本当は悩みがあっても、話さないだけかもしれない。
高耶は、同年代の友人との付き合い方というのが分からない。だから、見落としているのではないかと心配になったのだ。
しかし、俊哉はいつもの俊哉だった。
「っ、高耶、今の……っ、俺、女子がキュンとするのが分かった!」
「……心配した俺がバカだった……」
一気に現実に戻される感覚だった。
「ちょっ、え? いやいや、真面目に! 大真面目に、キュンってしたんだよ!」
「大声で訳の分からんこと言うなっ。もう知らん!」
「ちょっと、高耶~ぁ」
多分、俊哉は悩みを悩みのままにしない。思ったこと、考えたことを必ず口にする。
こういう人は大丈夫だと高耶は内心、ほっとした。
「さっさと行くぞっ。それと、いいかっ、変なものが視えたら報告しろ。つついたり、ガン見したりするんじゃねえぞっ」
「つつくって……俺、小学生のガキと同じ? 大丈夫。分かってるって、視えても見えない振りだろ? 俺、視線外すの得意」
俊哉は、わざと視線をずらして見てない振りは、大学でも良くやっている。周りの興味ある会話に興味なさそうに耳を傾けることも多いようだ。情報通なのは、そういった行動を得意としているからだろう。
そこまで考えて、高耶もまさかと思った。
「けど俺、聴こえる方が強いらしいんだけど」
「っ、そういうことを報告しろって言ったんだよ!」
視えるよりも、聴く力を強く持っているというのは厄介だ。
「だから、大丈夫だって。聴こえない振りも得意だからさっ」
「……何か気になることがあったら、きちんと声かけろよ……」
「りょ~かい!」
「……」
本当に大丈夫だろうかと、少々の不安を抱えながら、高耶は学校へと足を早めた。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
「今日は、仮縫いした服を試着するんだろ?」
「みたいだな」
今回も、俊哉が護衛してくれるらしい。朝から張り切っていた。
「担当の子達、めちゃくちゃ気合い入ってたし、楽しみだな~」
「……」
モデルはクジで決まったのだが、決まった瞬間の歓喜の声は凄かった。
「決まった時、マジ泣きしてたし、今日は大丈夫かね?」
「……」
服を作るのは、代表となる子と、作業を手伝う三、四人のグループ。手伝うと言っても、代表の子に指示された作業をするだけ。
選ばれたデザインから、パターンの製作をするのは代表の子だ。
合う布を探したり、仮縫いをしたり、その服に合う靴や帽子などを選んだり、見つけてきたりするのが三、四人のサポートメンバーというわけだった。
そのサポートメンバーと代表の子が、高耶を引き当てた時の歓喜の声といったら、もう優勝が決まったかのような声だった。
「けど、高耶が圧倒的な存在感を出し過ぎてて、ちゃんと審査できるかは心配だわ」
「……」
本当に、神気は抑えられているよなと指輪を確認するのは、もう日常的になっていた。
「で? 高耶は何が気になってんだ?」
「……何のことだ?」
突然何かと高校に向かって最寄りの駅から歩きながら眉を寄せた。
「いや。だって、この前行った時から、なんか気にしてるだろ。校内歩いてる時に、二回くらい、お前なんかどっか違うとこ見てたじゃん」
「……っ」
俊哉が気付いていたことに驚いた。その驚きの顔を振り返り、俊哉がニヤリと笑う。
「俺、すげえだろ? 姫様にも勘が良いって褒められたんだぜ?」
「……」
得意げに言われ、高耶は何とも言えない顔をする。それが、俊哉には不満だったようだ。
「え? なんでそんな顔するん? 良いことだろ?」
「……いや……良いこととは言い切れないんだが……」
勘も良過ぎるのは良くないと高耶は思っている。見え過ぎるのも、感じ過ぎるのも、何事も過ぎる力というのは良くないだろう。
それを扱い切れるならば、上手く付き合っていけるだろうが、難しい場合が多いものだ。
高耶は俊哉のことが少し心配になった。
「……お前……あまり俺の側から離れるなよ」
「っ……高耶……」
心から、自然に出た言葉だった。
いつも明るく振る舞う俊哉だ。本当は悩みがあっても、話さないだけかもしれない。
高耶は、同年代の友人との付き合い方というのが分からない。だから、見落としているのではないかと心配になったのだ。
しかし、俊哉はいつもの俊哉だった。
「っ、高耶、今の……っ、俺、女子がキュンとするのが分かった!」
「……心配した俺がバカだった……」
一気に現実に戻される感覚だった。
「ちょっ、え? いやいや、真面目に! 大真面目に、キュンってしたんだよ!」
「大声で訳の分からんこと言うなっ。もう知らん!」
「ちょっと、高耶~ぁ」
多分、俊哉は悩みを悩みのままにしない。思ったこと、考えたことを必ず口にする。
こういう人は大丈夫だと高耶は内心、ほっとした。
「さっさと行くぞっ。それと、いいかっ、変なものが視えたら報告しろ。つついたり、ガン見したりするんじゃねえぞっ」
「つつくって……俺、小学生のガキと同じ? 大丈夫。分かってるって、視えても見えない振りだろ? 俺、視線外すの得意」
俊哉は、わざと視線をずらして見てない振りは、大学でも良くやっている。周りの興味ある会話に興味なさそうに耳を傾けることも多いようだ。情報通なのは、そういった行動を得意としているからだろう。
そこまで考えて、高耶もまさかと思った。
「けど俺、聴こえる方が強いらしいんだけど」
「っ、そういうことを報告しろって言ったんだよ!」
視えるよりも、聴く力を強く持っているというのは厄介だ。
「だから、大丈夫だって。聴こえない振りも得意だからさっ」
「……何か気になることがあったら、きちんと声かけろよ……」
「りょ~かい!」
「……」
本当に大丈夫だろうかと、少々の不安を抱えながら、高耶は学校へと足を早めた。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
234
あなたにおすすめの小説
母は何処? 父はだぁれ?
穂村満月
ファンタジー
うちは、父3人母2人妹1人の7人家族だ。
産みの母は誰だかわかるが、実父は誰だかわからない。
妹も、実妹なのか不明だ。
そんなよくわからない家族の中で暮らしていたが、ある日突然、実母がいなくなってしまった。
父たちに聞いても、母のことを教えてはくれない。
母は、どこへ行ってしまったんだろう!
というところからスタートする、
さて、実父は誰でしょう? というクイズ小説です。
変な家族に揉まれて、主人公が成長する物語でもなく、
家族とのふれあいを描くヒューマンドラマでもありません。
意味のわからない展開から、誰の子なのか想像してもらえたらいいなぁ、と思っております。
前作「死んでないのに異世界転生? 三重苦だけど頑張ります」の完結記念ssの「誰の子産むの?」のアンサーストーリーになります。
もう伏線は回収しきっているので、変なことは起きても謎は何もありません。
単体でも楽しめるように書けたらいいな、と思っておりますが、前作の設定とキャラクターが意味不明すぎて、説明するのが難しすぎました。嫁の夫をお父さんお母さん呼びするのを諦めたり、いろんな変更を行っております。設定全ては持ってこれないことを先にお詫びします。
また、先にこちらを読むと、1話目から前作のネタバレが大量に飛び出すことも、お詫び致します。
「小説家になろう」で連載していたものです。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
【完結】不協和音を奏で続ける二人の関係
つくも茄子
ファンタジー
留学から戻られた王太子からの突然の婚約破棄宣言をされた公爵令嬢。王太子は婚約者の悪事を告発する始末。賄賂?不正?一体何のことなのか周囲も理解できずに途方にくれる。冤罪だと静かに諭す公爵令嬢と激昂する王太子。相反する二人の仲は実は出会った当初からのものだった。王弟を父に帝国皇女を母に持つ血統書付きの公爵令嬢と成り上がりの側妃を母に持つ王太子。貴族然とした計算高く浪費家の婚約者と嫌悪する王太子は公爵令嬢の価値を理解できなかった。それは八年前も今も同じ。二人は互いに理解できない。何故そうなってしまったのか。婚約が白紙となった時、どのような結末がまっているのかは誰にも分からない。
救世の結界師マールちゃん~無能だと廃棄されましたが、敵国で傭兵のおっさん達に餌付けされてるので、今さら必要と言われても戻りません~
ぽんぽこ@3/28新作発売!!
ファンタジー
「ウチの子、可愛いうえに最強すぎるんだが――!?」
魔の森の隣、辺境伯家。 そこで八歳のメイド・マールは、食事も与えられず“要らない人間”として扱われていた。
――そしてある日ついに、毒と魔獣の禁忌領域《魔の森》へ捨てられてしまう。
「ここ……どこ?」
現れた魔獣に襲われかけたその瞬間。
救いに現れたのは――敵国の”イケオジ”傭兵隊だった。
「ほら、食え」
「……いいの?」
焚き火のそばで差し出された“温かいお粥”は、マールに初めての「安心」と「ごはん」を教えてくれた。
行き場を失った幼女は、強面のおじさん傭兵たちに餌付けされ、守られ、少しずつ笑えるようになる―― そんなシナリオだったはずなのに。
旅の途中、マールは無意識に結界を張り、猛毒の果実を「安全な食べ物」に変えてしまう。
「これもおいしいよ、おじさん!食べて食べて!」
「ウチの子は天才か!?」
ただ食べたいだけ。 だけどその力は、国境も常識もくつがえす。
これは、捨てられた欠食幼女が、敵国でお腹いっぱい幸せになりながら、秘められた力で世界を巻き込んでいく物語。
※若干の百合風味を含みます。
巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?
サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。
*この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。
**週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**
【完結】男爵令嬢は冒険者生活を満喫する
影清
ファンタジー
英雄の両親を持つ男爵令嬢のサラは、十歳の頃から冒険者として活動している。優秀な両親、優秀な兄に恥じない娘であろうと努力するサラの前に、たくさんのメイドや護衛に囲まれた侯爵令嬢が現れた。「卒業イベントまでに、立派な冒険者になっておきたいの」。一人でも生きていけるようにだとか、追放なんてごめんだわなど、意味の分からぬことを言う令嬢と関わりたくないサラだが、同じ学園に入学することになって――。
※残酷な描写は予告なく出てきます。
※小説家になろう、アルファポリス、カクヨムに掲載中です。
※106話完結。
我が家に子犬がやって来た!
もも野はち助
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。
アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。
だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。
この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。
※全102話で完結済。
★『小説家になろう』でも読めます★
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる