41 / 100
第ニ章 王都見学と初めての師匠
041 気になるじゃん?
しおりを挟む
2018. 11. 23
**********
マティアスは地下の部屋など、隠し部屋というものを知って楽しくて仕方がなかった。
「いいなぁ、この仕掛けっ。面白過ぎる!」
小さな手の中で転がす仕掛け箱ではない。屋敷自体がマティアスには仕掛け箱のように思えていた。完全に新しいオモチャの認識だ。
そして見つけたのが机の下の仕掛け。
「おおっ」
危険な匂いはしない。ならば入ってみようと思うのはマティアスにとっては自然なことだった。
現れた狭い階段を降りると、そこはそこそこの広さの小部屋だった。仕掛けが開いたと同時にでも点いたのだろう。魔導具による淡い光が部屋の四隅から照らしていた。
部屋の両端には沢山のひと抱えほどの大きさの袋が置かれており、それらが部屋を狭くしている。軽い物が入っているようには見えなかった。
だが、それより気になったのが正面の壁。その右寄りに細かな突起がある。触れてみると、横や縦に滑った。動かしてみると微かな手応えのある場所があり、これも何かの仕掛けであることがわかる。
「ん~、並び替えるのか……おっ」
マティアスに慎重にとか、ゆっくりという感覚はなく、むしろ直感で物事を全て解決する。今回もそれだ。素早く、まるで答えを知っているように動かし、あっさりとその仕掛けを解いた。
カチリという手応えと、それに続けて響いたゴゴっという音。そして、壁の中央がぽっかりと口を開けた。
「おおっ! すっげぇゴッツイ金ピカの箱が出てきた!」
金貨の色だと感心しながら覗き込む。そして、手を入れようとしたところで動きを止めた。
「これは……」
相談した方がいいだろうかと、階段の入り口に来たらしいシェリスへ尋ねるように声を張り上げた。
「なぁ、シェリー、箱を取ろうとすると毒針とか出てきそうなんだが、取ってみてもいいか?」
勘ではあるのだが、あながち外れてはいないだろう。すると強めの声が降ってきた。
「ダメに決まっているでしょうっ! 今から行きますから、絶対に触るんじゃありませんよ!」
「お~、分かってる、分かってる」
そう口にしながらも、どんな仕掛けが気になる。死に直結するような嫌な感じはしない。ならば、試してみたい。
マティアスは腰にさしていた短剣を取り出し、そこに差し出してみた。すると、予想通りカツンという音をさせて短剣に横から飛び出してきた長い針が当たる。
「すげぇな。けど、これを出さないようにする仕掛けもあるんだよな? どこだ?」
この罠を解除するための仕掛けもどこかにあるはずなのだ。それをマティアスは探し始める。
そして、気になったのは足下だった。
「これか?」
一箇所だけ不自然な形の窪んだ場所があった。
「これは無理か……鍵があるな……」
仕掛けは解けるだろうが、この場合は無理だろう。代用できる物も手元にない。
ならば、仕掛けの解除は諦めよう。
マティアスは潔かった。
「そんじゃ、刺さらんようにやってみるか」
ただし、そこは諦めない。
いつの間にか引っ込んでいた毒針。それをもう一度出現させるために短剣を差し込む。
再び出てきた針が、キンっ、という音を立てて短剣に当たる。そして、それをそのまま強引に押し戻した。
その時、シェリスが降りてきた。
「マティ……触らないようにと言ったはずですよ?」
「大丈夫だ。ちょっと皮膚が火傷するみたいになるだけみたいだからな」
押し戻しきったところで、素早く手を入れて金の箱を引きずり出した。
「よく見ただけでそんなことが分かりますね」
「いや、飛んできたっぽい毒が、腕に付いたから」
「だから触るなと言ったでしょう!」
ちょっとはねたのだ。マティアスにも触るつもりはなかった。
「毒なんてそんなに効かないし。あ、でもなんか痺れる?」
「効いているじゃないですかっ。見せなさいっ。箱は置く!」
「は~い」
この後めちゃくちゃ怒られた。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
手のかかる人です。
次回、一週休ませていただき
金曜7日です。
よろしくお願いします◎
**********
マティアスは地下の部屋など、隠し部屋というものを知って楽しくて仕方がなかった。
「いいなぁ、この仕掛けっ。面白過ぎる!」
小さな手の中で転がす仕掛け箱ではない。屋敷自体がマティアスには仕掛け箱のように思えていた。完全に新しいオモチャの認識だ。
そして見つけたのが机の下の仕掛け。
「おおっ」
危険な匂いはしない。ならば入ってみようと思うのはマティアスにとっては自然なことだった。
現れた狭い階段を降りると、そこはそこそこの広さの小部屋だった。仕掛けが開いたと同時にでも点いたのだろう。魔導具による淡い光が部屋の四隅から照らしていた。
部屋の両端には沢山のひと抱えほどの大きさの袋が置かれており、それらが部屋を狭くしている。軽い物が入っているようには見えなかった。
だが、それより気になったのが正面の壁。その右寄りに細かな突起がある。触れてみると、横や縦に滑った。動かしてみると微かな手応えのある場所があり、これも何かの仕掛けであることがわかる。
「ん~、並び替えるのか……おっ」
マティアスに慎重にとか、ゆっくりという感覚はなく、むしろ直感で物事を全て解決する。今回もそれだ。素早く、まるで答えを知っているように動かし、あっさりとその仕掛けを解いた。
カチリという手応えと、それに続けて響いたゴゴっという音。そして、壁の中央がぽっかりと口を開けた。
「おおっ! すっげぇゴッツイ金ピカの箱が出てきた!」
金貨の色だと感心しながら覗き込む。そして、手を入れようとしたところで動きを止めた。
「これは……」
相談した方がいいだろうかと、階段の入り口に来たらしいシェリスへ尋ねるように声を張り上げた。
「なぁ、シェリー、箱を取ろうとすると毒針とか出てきそうなんだが、取ってみてもいいか?」
勘ではあるのだが、あながち外れてはいないだろう。すると強めの声が降ってきた。
「ダメに決まっているでしょうっ! 今から行きますから、絶対に触るんじゃありませんよ!」
「お~、分かってる、分かってる」
そう口にしながらも、どんな仕掛けが気になる。死に直結するような嫌な感じはしない。ならば、試してみたい。
マティアスは腰にさしていた短剣を取り出し、そこに差し出してみた。すると、予想通りカツンという音をさせて短剣に横から飛び出してきた長い針が当たる。
「すげぇな。けど、これを出さないようにする仕掛けもあるんだよな? どこだ?」
この罠を解除するための仕掛けもどこかにあるはずなのだ。それをマティアスは探し始める。
そして、気になったのは足下だった。
「これか?」
一箇所だけ不自然な形の窪んだ場所があった。
「これは無理か……鍵があるな……」
仕掛けは解けるだろうが、この場合は無理だろう。代用できる物も手元にない。
ならば、仕掛けの解除は諦めよう。
マティアスは潔かった。
「そんじゃ、刺さらんようにやってみるか」
ただし、そこは諦めない。
いつの間にか引っ込んでいた毒針。それをもう一度出現させるために短剣を差し込む。
再び出てきた針が、キンっ、という音を立てて短剣に当たる。そして、それをそのまま強引に押し戻した。
その時、シェリスが降りてきた。
「マティ……触らないようにと言ったはずですよ?」
「大丈夫だ。ちょっと皮膚が火傷するみたいになるだけみたいだからな」
押し戻しきったところで、素早く手を入れて金の箱を引きずり出した。
「よく見ただけでそんなことが分かりますね」
「いや、飛んできたっぽい毒が、腕に付いたから」
「だから触るなと言ったでしょう!」
ちょっとはねたのだ。マティアスにも触るつもりはなかった。
「毒なんてそんなに効かないし。あ、でもなんか痺れる?」
「効いているじゃないですかっ。見せなさいっ。箱は置く!」
「は~い」
この後めちゃくちゃ怒られた。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
手のかかる人です。
次回、一週休ませていただき
金曜7日です。
よろしくお願いします◎
応援ありがとうございます!
3
お気に入りに追加
588
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる