逃げ遅れた令嬢は最強の使徒でした

紫南

文字の大きさ
23 / 54

023 あの騎士はどこだ!

しおりを挟む
泡を吹いて気絶する者も一部居る中、そんな崩れ落ちた魔法師達など、フラン達の目に入っていないらしい。騎士達は必死で耐えているようだが、足は見るからに震えていた。そして、王子達は壁や鉄格子にもたれかかって、なんとか立っている状態だった。フラン達も、さすがに王子達へは配慮しているらしい。

「フラン、ビスラ。殺気を抑えろ。殺す気か?」

このままでは正気を保てなくなる。それだけ、シルフィスカの鍛えた弟子達は強者なのだから。

「私もたまに加減を間違えるが、気をつけろ」
「……すみません。つい」
「悪い。ついな」

謝ってはいるし、殺気を弱めたが不満そうだ。しかし、それよりも確認をとフランが一歩踏み出す。

「それで。質問の答えをいただけますか?」
「っ……き、騎士だ……っ、魔封じの牢にっ……」

なんとか答えたのは第一王子。カタカタと歯が鳴っていた。それで思い出したというように、ビスラが見下ろしてきた。

「そういや、師匠のつけてる枷って……」
「っ、弱いですが、魔封じです。早く外しましょう。気が利かず申し訳ありません、師匠」
「いや……自分で外せないこともないんだが……」

そう言う間に、フランが外すための術を展開していた。カチャリと腹の辺りに外れて落ちる。

「私達がいるのです。頼ってください」

フランは優しく目を和らげて告げるが、手にした枷を床に放り投げた所を見ると、やはり、先程の怒りはまだ消えていないようだ。

「そう……だな。なら、ここは任せてもいいか?」

このタイミングで頼れと言われるのは有り難い。

「はい。もちろんですが……師匠? 何か他にやることがあるのですか?」

フランは目を細める。シルフィスカと自分たちの中で『頼る』ということについて、少々差異があると気付いたのだ。

頼るとは、他事もせずにただ守られるということでフランは言っている。だが、シルフィスカは違う。

「ん? ああ。すぐにヘスライルに向かわねばならん。不在時の対策はしてきたが、やはり現場に行かんとな」
「……まさか、師匠。またヘスライル王家からの依頼ですか?」
「ヘスライルっていやあ、集団暴走の兆候があるとか噂が……まさかそれか!? この状態で行こうってぇのか!?」

状態と言ってシルフィスカの足へ視線を投げるビスラ。当のシルフィスカ本人は、既にそれを気にしていなかった。

「止血は出来ているんだろう? なら、問題ない」
「っ、んなわけあるか!」
「そんなわけないでしょう!」
「……」

かなりの至近距離で二人に怒鳴られた。だが、すぐにフランは考え込む。

「っ、ですが、王家からの依頼ですしね……師匠が行かないのは問題でしょう……そうですね……決めました。すぐに辞表を出してきますので、それまで待っていてください」
「あ、俺も。いい加減頭にきた。こんな国はもうどうでもいいや。あのクソ親父の鼻も明かせたからな」
「お前たち?」

とてもスッキリとした表情に見えた。

そして、王子達に背を向けて歩き出す。入り口で固まっていたレイルを見てビスラが歩み寄った。

「おい、レイル。ちょい師匠を預かっとけ。どっか行かせんなよ? 俺らが戻って来るまで控え室にでも居ろ」
「は? いや、分かった……」

ひょいとシルフィスカを受け渡され、レイルは動揺しながらもしっかりと抱きとめた。

「ビスラ、フラン、私は急いで行っ……」
「すぐなんで。この勲章と剣を叩きつけるだけなんで」
「私も勲章とローブを捨ててくるだけなので、すぐですよ」

そう言って、一気にトップスピードで駆け出していった。魔法師であるフランも、全く負けていない。勲章の扱いが雑だ。それでいいのだろうかと二人の消えた方を見ていれば、レイルが顔をしかめた。

「シルフィ……っ、怪我をっ……すぐに何処か部屋に入りますね」
「あ、いや、私は……」

そこに、侯爵とジルナリス駆けてきた。

「シルフィ! ちょっ、その顔何!? あ、足もっ! おのれっ、どいつがやりやがった!!」
「ジ、ジーナっ? ん? はっ、ほ、本当にその怪我はどうしたのだ!? あの騎士はどこだ! 即刻斬り捨ててやるわ!!」
「……」

ジルナリスの豹変具合に驚きながらも、シルフィスカの状態を見た侯爵も激昂した。初めて見る。

それに目を丸くしていれば、騎士が横をすり抜けて牢の方へ入って行く。

「報告いたします。王女様が目覚められました。つきましては、拘束した犯人を連れて来るようにと」
「父上か……あ、いや、だが、犯人は……」
「冤罪ならば、謝罪もすべきだと仰っておられます。王女様に確認もさせたいと」
「し、承知した。その……すまないが、彼女を……」

第一王子がまだ逸る鼓動を感じながらも、レイルへ目を向ける。だが、シルフィスカを隠すようにジルナリスと侯爵が立ちはだかった。

「謝罪ね。謝罪してもらいましょうか。私の大事な義娘に怪我をさせたことへの謝罪を」
「私も同行させてもらう。例え誰であろうと、義娘に手を出した事、許せることではないからな」
「っ……」

二人の剣幕に、第一王子は少し震えているようだ。そして、レイルが口を開く。

「当然ですが、夫である私もご一緒します。構いませんね?」
「……あ、ああ……」

そうして、一同は王の待つ部屋へ向かった。

************
読んでくださりありがとうございます◎
次回、13日の予定です。
よろしくお願いします◎
しおりを挟む
感想 154

あなたにおすすめの小説

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

婚約破棄されたので、前世の知識で無双しますね?

ほーみ
恋愛
「……よって、君との婚約は破棄させてもらう!」  華やかな舞踏会の最中、婚約者である王太子アルベルト様が高らかに宣言した。  目の前には、涙ぐみながら私を見つめる金髪碧眼の美しい令嬢。確か侯爵家の三女、リリア・フォン・クラウゼルだったかしら。  ──あら、デジャヴ? 「……なるほど」

覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―

Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。

「お前との婚約はなかったことに」と言われたので、全財産持って逃げました

ほーみ
恋愛
 その日、私は生まれて初めて「人間ってここまで自己中心的になれるんだ」と知った。 「レイナ・エルンスト。お前との婚約は、なかったことにしたい」  そう言ったのは、私の婚約者であり王太子であるエドワルド殿下だった。 「……は?」  まぬけな声が出た。無理もない。私は何の前触れもなく、突然、婚約を破棄されたのだから。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

聖女解任ですか?畏まりました(はい、喜んでっ!)

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私はマリア、職業は大聖女。ダグラス王国の聖女のトップだ。そんな私にある日災難(婚約者)が災難(難癖を付け)を呼び、聖女を解任された。やった〜っ!悩み事が全て無くなったから、2度と聖女の職には戻らないわよっ!? 元聖女がやっと手に入れた自由を満喫するお話しです。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

処理中です...