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ミッション12 舞台と遠征
520 おじいちゃんっ!
家令と侍従のランテ親子はリザフトの存在に驚き、最後まで興奮か畏怖か分からないが、カタカタと震えていた。だが、きっちり契約もリュブランと交わし、早速仕事に掛かろうと多くの証拠書類を取り出した。
ちなみに、既にリザフトはいないので、ようやく落ち着いてきた所だ。
「これは? 隣国に売りつけている? どこからこんな色々と……」
鉱石であったり、絵や壺など美術品であったりと、様々な物を売りつけているようだった。
「そちらは……子飼いの盗賊のような私兵達からの戦利品や、商業ギルドで巻き上げたものが多いでしょうか」
「「子飼いの盗賊!?」」
親子で驚き、呆れる。
「闇ギルドと関係してないから、上手くすり抜けられたんだ?」
「その通りでございます……既に常習化しておりまして……当たり前になっていたので、王都での尋問にも引っ掛からなかったのです……」
「エルダンすごいわね……クロコさん達から隠し通すなんて」
「はあ……あの黒服の監査の方ですか……王都とは恐ろしい所なのですね……あんな方々を使えるのですから……」
エルダンは本当に恐ろしいと、静かに顔を青ざめさせていた。しかし、息子の方は今度は恐怖でカタカタと震え出す。ちょっと焦点も合っていないようだ。
「あ、あの方々っ、こ、これを移動させるごとにっ、すぐに戻ってくるんですっ。なんで、なんで分かるのかっ……ううっ……」
「……それは……」
「あ~……うん。まあ、あの人達はねえ……」
リュブランとフラメラは目を合わせながら、気まずげに苦笑いを浮かべる。黒子達だけの察知能力ではなく、陰に隠れている隠密ウサギの力もあるのだと言ったら震えは止まるだろうか。否、新たな恐怖を感じる可能性の方が高いかもしれない。
そして、何より、黒子達は怖がらせて大人しくさせるためにも、わざと見つけそうで見つからないを実践したのだ。
ここで、マグナがコソッと囁く。
「そういえば、フィルさんが……ここのを『失脚させるなら、その他大勢の中に埋もれる今じゃないんだ』って言っていたような……」
「じゃあ、やっぱりクロコさん達……」
「遊んで……」
「だと思います。ここの担当したクロコさんが、逆に決定的なものを見つけないように探るとか、ムズイっ! って楽しそうに言っていました」
「やっぱり楽しんだのね……」
「そうじゃないかと思ったよ……」
黒子達も、仕事を遠慮なく楽しむようになったようだ。
「ううっ。あんな人たち、どんな人が使っているんでしょう……っ」
「顔を見てみたいですね……」
そんな事を言う親子に、リュブラン達は目を瞬かせる。
「え? 会いたいの?」
「呼びましょうか?」
「「え?」」
リュブランとフラメラの言葉に、ランテ親子は混乱する。しかし、それを頭で処理する前にマグナがおもむろに扉を開けた。
「今来られました」
「「え……」」
「お? マグナはマジで気配読むの上手くなったよな~」
「すごいねっ。勝手に扉が開いたからびっくりしたよ」
《自動ドア~》
ジュエルを頭に取り付かせたフィルズとセルジュが部屋に入ってくる。
「どうしたの? フィル君達は現当主夫妻の部屋を見てたんじゃ」
リュブランが不思議そうに言えば、フィルズが少し目を逸らして視線を遠くにやる。
「ああ。もう色々出て来たよ。兄さんがほぼ全部見つけた……隠し部屋も、隠し金庫も、ベッドの下まで……」
「……すごいのね」
「予習はしていたからね! あ、それで、隠し金庫はリュブランかカリュに任せたくて。なんか、面倒な金庫付きのダイヤル式だったんだよ……」
「あっ、賢者モデル! やるよっ」
ダイヤルが取り付けられた金庫は、俗に『賢者モデル』と呼ばれている。賢者が伝え、設計した金庫だ。この世界で一般的なものは二種類。鍵が幾つか必要になるもの。これは、その鍵を開ける順番が重要だったりする。そして、もう一つはダイヤル式の南京錠タイプだ。これらに対して、賢者モデルの金庫にダイヤルが付いたものは、複雑で盗んで開けるのは困難だと言われている。
「賢者モデルは、高位貴族の屋敷にしか基本ないから、実際にやれるなんて思ってなかったんだっ。兄上に知られる前にやらなきゃ!」
鍵開けにハマったのがリュブランとカリュエルだ。スピークが面白がって仕込んだため、ほぼ問題なくなんでも開けられるようになっていた。
「どこにあるのっ?」
「案内するねっ!」
二人が駆け出そうとするのを見て、フィルズがマグナに声をかける。
「マグナ。ちょい俺はこの人らと話がしたい。兄さんとリュブランの護衛を頼む」
「分かりました」
三人が部屋から出て行くのを見送り、フィルズはふっと笑った。
「番号知ってる人に聞くって発想が出なかったか」
「っ、教えてあげればいいのに」
「あんな楽しそうなのを止められるわけねえじゃん。メルさんも楽しみは取り上げられたくないだろ?」
「……そうね。嫌だわ」
「仕事っぽいが、兄さん達には良い遊びだ。学園でも商会でも頑張ってるから、たまには、はしゃがないとな」
腕を組み、うんうんと頷いて、自分の考えに納得するフィルズ。これをフラメラがじっと見つめていた。
「……フィルさん……たまに、孫を見てるおじいちゃんみたいになるわよね……あの子達の方が年上のはずだけど……」
「保護者みたいな気ではいるから、間違ってもなくね?」
《あははっ。おじいちゃんっ!》
「ジュエル。ウケてんのはわかった。尻尾痛いぞ」
笑えるものだったらしい。ジュエルの尻尾がフィルズの背中を叩いていた。
「で? そっちが守護の一族の奴らで合ってるか?」
「っ!? ど、どうしてその言葉を……」
「リザフトに聞いた」
「……え……」
正直に話しすぎるのも問題だ。そこに更にフラメラが追い打ちをかけた。
「あ、エルダン。クロコさん達の雇い主のフィルさんよ」
「「………………え!?」」
「ん? クロコ?」
フィルズがフラメラに尋ね、説明を聞く。その間にも、ランテ親子の混乱は続いていた。
しばらく二人を放置して、フラメラに勧められてフィルズが書類を確認していれば、他の班から調べが終わったという報告と、王都から騎士達が到着したとの連絡が入った。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
ちなみに、既にリザフトはいないので、ようやく落ち着いてきた所だ。
「これは? 隣国に売りつけている? どこからこんな色々と……」
鉱石であったり、絵や壺など美術品であったりと、様々な物を売りつけているようだった。
「そちらは……子飼いの盗賊のような私兵達からの戦利品や、商業ギルドで巻き上げたものが多いでしょうか」
「「子飼いの盗賊!?」」
親子で驚き、呆れる。
「闇ギルドと関係してないから、上手くすり抜けられたんだ?」
「その通りでございます……既に常習化しておりまして……当たり前になっていたので、王都での尋問にも引っ掛からなかったのです……」
「エルダンすごいわね……クロコさん達から隠し通すなんて」
「はあ……あの黒服の監査の方ですか……王都とは恐ろしい所なのですね……あんな方々を使えるのですから……」
エルダンは本当に恐ろしいと、静かに顔を青ざめさせていた。しかし、息子の方は今度は恐怖でカタカタと震え出す。ちょっと焦点も合っていないようだ。
「あ、あの方々っ、こ、これを移動させるごとにっ、すぐに戻ってくるんですっ。なんで、なんで分かるのかっ……ううっ……」
「……それは……」
「あ~……うん。まあ、あの人達はねえ……」
リュブランとフラメラは目を合わせながら、気まずげに苦笑いを浮かべる。黒子達だけの察知能力ではなく、陰に隠れている隠密ウサギの力もあるのだと言ったら震えは止まるだろうか。否、新たな恐怖を感じる可能性の方が高いかもしれない。
そして、何より、黒子達は怖がらせて大人しくさせるためにも、わざと見つけそうで見つからないを実践したのだ。
ここで、マグナがコソッと囁く。
「そういえば、フィルさんが……ここのを『失脚させるなら、その他大勢の中に埋もれる今じゃないんだ』って言っていたような……」
「じゃあ、やっぱりクロコさん達……」
「遊んで……」
「だと思います。ここの担当したクロコさんが、逆に決定的なものを見つけないように探るとか、ムズイっ! って楽しそうに言っていました」
「やっぱり楽しんだのね……」
「そうじゃないかと思ったよ……」
黒子達も、仕事を遠慮なく楽しむようになったようだ。
「ううっ。あんな人たち、どんな人が使っているんでしょう……っ」
「顔を見てみたいですね……」
そんな事を言う親子に、リュブラン達は目を瞬かせる。
「え? 会いたいの?」
「呼びましょうか?」
「「え?」」
リュブランとフラメラの言葉に、ランテ親子は混乱する。しかし、それを頭で処理する前にマグナがおもむろに扉を開けた。
「今来られました」
「「え……」」
「お? マグナはマジで気配読むの上手くなったよな~」
「すごいねっ。勝手に扉が開いたからびっくりしたよ」
《自動ドア~》
ジュエルを頭に取り付かせたフィルズとセルジュが部屋に入ってくる。
「どうしたの? フィル君達は現当主夫妻の部屋を見てたんじゃ」
リュブランが不思議そうに言えば、フィルズが少し目を逸らして視線を遠くにやる。
「ああ。もう色々出て来たよ。兄さんがほぼ全部見つけた……隠し部屋も、隠し金庫も、ベッドの下まで……」
「……すごいのね」
「予習はしていたからね! あ、それで、隠し金庫はリュブランかカリュに任せたくて。なんか、面倒な金庫付きのダイヤル式だったんだよ……」
「あっ、賢者モデル! やるよっ」
ダイヤルが取り付けられた金庫は、俗に『賢者モデル』と呼ばれている。賢者が伝え、設計した金庫だ。この世界で一般的なものは二種類。鍵が幾つか必要になるもの。これは、その鍵を開ける順番が重要だったりする。そして、もう一つはダイヤル式の南京錠タイプだ。これらに対して、賢者モデルの金庫にダイヤルが付いたものは、複雑で盗んで開けるのは困難だと言われている。
「賢者モデルは、高位貴族の屋敷にしか基本ないから、実際にやれるなんて思ってなかったんだっ。兄上に知られる前にやらなきゃ!」
鍵開けにハマったのがリュブランとカリュエルだ。スピークが面白がって仕込んだため、ほぼ問題なくなんでも開けられるようになっていた。
「どこにあるのっ?」
「案内するねっ!」
二人が駆け出そうとするのを見て、フィルズがマグナに声をかける。
「マグナ。ちょい俺はこの人らと話がしたい。兄さんとリュブランの護衛を頼む」
「分かりました」
三人が部屋から出て行くのを見送り、フィルズはふっと笑った。
「番号知ってる人に聞くって発想が出なかったか」
「っ、教えてあげればいいのに」
「あんな楽しそうなのを止められるわけねえじゃん。メルさんも楽しみは取り上げられたくないだろ?」
「……そうね。嫌だわ」
「仕事っぽいが、兄さん達には良い遊びだ。学園でも商会でも頑張ってるから、たまには、はしゃがないとな」
腕を組み、うんうんと頷いて、自分の考えに納得するフィルズ。これをフラメラがじっと見つめていた。
「……フィルさん……たまに、孫を見てるおじいちゃんみたいになるわよね……あの子達の方が年上のはずだけど……」
「保護者みたいな気ではいるから、間違ってもなくね?」
《あははっ。おじいちゃんっ!》
「ジュエル。ウケてんのはわかった。尻尾痛いぞ」
笑えるものだったらしい。ジュエルの尻尾がフィルズの背中を叩いていた。
「で? そっちが守護の一族の奴らで合ってるか?」
「っ!? ど、どうしてその言葉を……」
「リザフトに聞いた」
「……え……」
正直に話しすぎるのも問題だ。そこに更にフラメラが追い打ちをかけた。
「あ、エルダン。クロコさん達の雇い主のフィルさんよ」
「「………………え!?」」
「ん? クロコ?」
フィルズがフラメラに尋ね、説明を聞く。その間にも、ランテ親子の混乱は続いていた。
しばらく二人を放置して、フラメラに勧められてフィルズが書類を確認していれば、他の班から調べが終わったという報告と、王都から騎士達が到着したとの連絡が入った。
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