趣味を極めて自由に生きろ! ただし、神々は愛し子に異世界改革をお望みです

紫南

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ミッション12 舞台と遠征

468 人材の無駄だ

王宮にある騎士団の宿舎の隣。そこには、セイスフィア商会で作り上げた立派な獄舎があった。隣にある騎士団の宿舎と見比べて言えることは一つ。

「……なんて言うか……悪いな……」

フィルズがそれを見上げて思ったことを口にする。答えたのは、隣で見上げていたラスタリュートだ。

「ウチの宿舎より立派に作ったって自覚はあったのね」
「まあ、ちょい気合い入れ過ぎたとは思ってた」

出迎えてくれたのは、王国騎士団長のラスタリュートだ。そして、そのまま獄舎の所まで先導してくれた。搬入口の一つが近いため、何台も続く馬車も問題なくここまで入ってこられた。

「本当に、立派ですよね~。その上、どんな牢獄よりも堅牢で、脱走など不可能と言うのですから、安心ですねえ」

神殿長も感心しきりだ。そこに、レナが思い出したというようにハッとしてフィルズに詰め寄る。

「そうだったわ! フィル。ここの設計図を見せてもらえないかって言われているのよ! いいかしら!」
「ん? 誰から?」
「聖者の一人なんだけど。カザン様からお聞きになったらしくて」
「へえ~、いいぜ? 用意しとく」
「っ、助かるわ! これであいつへの借りも返せる!」
「なんか知らんが良かったな」

飛び上がる程喜び、すぐに不敵に笑うレナに、ロクな付き合いじゃなさそうだと察し、フィルズは相手のことを聞くのはやめようと判断した。

「じゃあ、中入るわよ」
「ああ。頼む」

ラスタリュートに案内され、一行は中に入る。因みに、ジュエルと綺羅、茜は姿を隠してついてきている。そのままの状態で今回の面会相手達を見極めるつもりのようだ。

建物は、コンクリートのようなもので固められている。しかし、コーティングした白く薄い木の板を壁の全面に貼っているため、中もとても明るく見える。

「あまりにも綺麗で、獄舎であるというのを忘れそうですね」
「本当よね……ジメジメした感じで薄暗いのが普通なのに……これでは、どこに来たのかわからないわ」
「そうですよね。中も立派なんで、宿舎と交換して欲しいと言いそうになります」

少し責めるように三人がフィルズの方を向く。中までついて来た数人の聖騎士達もキョロキョロと遠慮なく物珍しそうに見回していた。

「だってさあ。囚人はジメジメで暗くてもいいが、看守とか見張りの兵や出入りする人らにはいい迷惑だろ? ここに入るのも嫌だって思うとさあ、仕事にも身が入らないし」

ずっと日中も薄暗い所で、それも空気も悪い所での見張り。気分がいいはずもない。

「確かにそうね……看守や見張りはそう言う仕事と思っていたけど……別に看守は悪いことしてないし……」
「だろ? 職場の環境は気を遣ってやるべきだ。それも、犯罪者を見張る役目だぞ? しっかりしてもらわないといけないのに、やる気を削いでどうするよ」

国を、人を守るために犯罪者を見張っているんだと思えば、誇らしくもあるかもしれないが、それで自分が体を壊したりしても良いというわけではない。自己犠牲を正当化する場になってはいけないだろう。

「聞いたけど、看守やここの見張りって給料があんま良くないらしいじゃん? なんか左遷されて来たのが多いらしいし」
「あ~……戦闘能力が低くて、騎士としては向いていないけど、騎士としての立場は持っていたいって子や、上官に逆らって、飛ばされた子がなるわね……」
「それさあ、万が一脱走とかしそうな凶暴な奴が居たら対応出来ねえじゃん。あと、恨み持ってるような奴を犯罪者の傍に置くとか、何かの拍子に共感したら事だぞ」
「……考えてもみなかったわ……」

暴れるのを取り押さえることだってあるかもしれない。そこに、戦いに不向きな者が役に立つはずがない。逆恨みでなく、正当な恨みであっても、納得出来ないことを抱えた者が、その怒りを抑えきれなかった者の傍にあればどうなるか。同情してしまうかもしれない。同意してくれる人ができてしまったら、実力行使に出るかもしれない。

「役割をちゃんと理解して勤められる人なら良いんだが、それも周りはちょい下に見てるだろ。ただ見張るだけの仕事なんて認識は良くないぜ」
「……そう言う仕事って認識だけど……」
「それ、仕事としてどうよ? やる気も何もあったもんじゃないだろ」
「私たちの印象も、見張るだけって感じで、看守は根暗で年を取った人が一日中ここにいるだけって感じなんだけど……」

レナの言葉に、神殿長や聖騎士達も頷いていた。

「誰でもできる仕事だって?」
「ええ。足を怪我していても、片目が見えなくても、一言も話さなくても良い仕事」
「仕事としてそれはどうよ。だから下に見られるんだ。そんなんで良いなら、街中に、畜舎のようなもので外から誰からも見えるように置いて置けば事足りるだろ。人材の無駄だ」
「極端ね……けど、誰かが見ていれば良いならそれで良さそうだわ」

誰にも中からも外からも壊せない鉄柵に囲まれた場所で、大勢の目に触れれば、見張っている必要はない。ただ見ているだけの仕事ならば、これで十分だ。

「食事だって、パン一つ投げ入れてやればいいなら、通りがけに餌やるみたいに投げ入れてやればいい。それじゃあ、ダメだから牢に入れるんだろ。いやいやでも世話してやるんだ」

食事の世話。掃除。それは看守が仕事としている所が一般的だ。だが、相手は人を殺したかもしれない犯罪者。身の危険はある。それなのに、周りからは立場を下に見られ、給料も底辺。理不尽だとフィルズは感じた。

「そんな看守や見張りの奴らが、少しでも気持ちよく仕事出来るように、セイスフィア商会で監修したのかこの獄舎だ!」

フィルズは誇らしげに胸を張った。向かったのは、集中管理室というプレートが貼り付けてある大きな扉の前だった。








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