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ミッション12 舞台と遠征
469 ウサギさんはダメ
扉の横には、インターホンがある。それを押すと、少し間があってから扉が自動で開いた。
中は、いくつもの画面が壁面にあり、それは獄舎の中の廊下や部屋の中の映像が映し出されている。
「うわあっ。もしかして、これで監視しているの?」
レナが目を輝かせて画面の方に歩み寄って行く。
「いや。一応の記録室みたいなものだ。ここでずっと監視ってのは、人には辛いものがあるからな」
「そうなの? これで見張りは良いと思うのだけど?」
「何かあった時に取り押さえるのは人だからさ」
「見張りは要るってことね」
これにより、現場に立つ見張りを無くすというわけにはいかない。
「各領地でも使えるか、ここで試験中ということでしたが……実際、どうなのですか? セイルブロードの管理と同じで?」
神殿長もモニターを興味深げに見てフィルズに確認する。管理の仕方としては、既にフィルズの屋敷で見て知っているため、どこが違うかと確認したいようだ。
「いや。ウチは隠密ウサギやクマ達にこの映像データも繋げてあるし、ウサギ達の見ている映像も管理室で確認してる。だから、何かあれば現場に迅速に駆けつけられるようになっているんだ」
「待って? もしかして、フィルの所の警備体制を一般に適応させようってこと?」
レナには話していなかったかもしれない。神殿長としては、今回は罪人の引き渡しの立ち合いがついでで、ここの視察がメインだ。
「そうだけど? だから試験中。さすがに隠密ウサギを貸し出す気はないからなあ」
「うっ、惜しい気はするけど、アレは普及させちゃダメなやつよ……ウサギさんはダメ……」
「クマは良いんだ?」
現在、レナに三体のクマを派遣している。既に、レナの店の主要拠点に二体。一体は補佐としてレナについて回っている。お陰で、護衛要らずだ。
「もちろんよ! あの子達のお陰で仕事の効率が五倍ぐらい上がっているわっ。今更返せないわよっ」
「おっ、しばらく契約は継続だな。まいど」
「くっ……まんまとやられたわ。試験運用の期間が終わっても、年間の継続契約を解除する気が起きないっ」
レナは完敗だと涙を呑んだ。そんな様子をチラリと見ただけで神殿長はモニターに視線を戻す。
「ふむ……これだと、基本見ているだけですか……こんな大掛かりなものは必要ないのでは?」
「このカメラ自体に、学習機能をつけてるんだ。クマやウサギみたいには意思表示をしないけど、ほれ、あそこ。今、カメラが人の動きを自動で感知してるのが分かるか?」
フィルズが指差した一つの映像では、男性が一人倒れる所だった。ズームされて男の顔色なんかを確認。その後、映像が引いてきてそこに見張りの兵士が駆けつけていた。
「映像が近づきましたね……もしかして、こちらで操作しているわけではないのですか?」
モニター前にいる人は、マイクを持って話している。
「カメラの方が自動で異常を感知するんだ。おかしな行動をしていたり、体調が悪いのも検知する」
「体調も?」
「そう。これはまだ試作だけど、まあ、これでほぼ完成するかも。スキャンして心音から体温、筋肉量、水分量、病巣の位置まで分かるカメラ。やっぱ、健康診断って大事だからさあ」
「……健康……診断……それは、アレに写した人の病気とかが分かる……とか?」
「その通り! バリウムも胃カメラも、血液検査もしなくても分かるとか、マジ反則だよなっ」
「これも……賢者の?」
「ああ。昇級試験の時に、ほぼ国内全部回ることになって、ついでに国内の遺跡は全部確認出来たんだよ」
意図せずに回り終えることができたのは幸運だった。このカメラと本来は治療台がセットになっており、名を【人間ドックん】と言うらしい。その魔導具の見た目は、ダックスフントの様だったので分からなくもない。賢者のネーミングセンスはある意味極まっている。
「因みに、今倒れたのは空腹らしい」
「「「は?」」」
神殿長とレナ、ラスタリュートは、思ってもみなかった原因にポカンと口を開けた。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
中は、いくつもの画面が壁面にあり、それは獄舎の中の廊下や部屋の中の映像が映し出されている。
「うわあっ。もしかして、これで監視しているの?」
レナが目を輝かせて画面の方に歩み寄って行く。
「いや。一応の記録室みたいなものだ。ここでずっと監視ってのは、人には辛いものがあるからな」
「そうなの? これで見張りは良いと思うのだけど?」
「何かあった時に取り押さえるのは人だからさ」
「見張りは要るってことね」
これにより、現場に立つ見張りを無くすというわけにはいかない。
「各領地でも使えるか、ここで試験中ということでしたが……実際、どうなのですか? セイルブロードの管理と同じで?」
神殿長もモニターを興味深げに見てフィルズに確認する。管理の仕方としては、既にフィルズの屋敷で見て知っているため、どこが違うかと確認したいようだ。
「いや。ウチは隠密ウサギやクマ達にこの映像データも繋げてあるし、ウサギ達の見ている映像も管理室で確認してる。だから、何かあれば現場に迅速に駆けつけられるようになっているんだ」
「待って? もしかして、フィルの所の警備体制を一般に適応させようってこと?」
レナには話していなかったかもしれない。神殿長としては、今回は罪人の引き渡しの立ち合いがついでで、ここの視察がメインだ。
「そうだけど? だから試験中。さすがに隠密ウサギを貸し出す気はないからなあ」
「うっ、惜しい気はするけど、アレは普及させちゃダメなやつよ……ウサギさんはダメ……」
「クマは良いんだ?」
現在、レナに三体のクマを派遣している。既に、レナの店の主要拠点に二体。一体は補佐としてレナについて回っている。お陰で、護衛要らずだ。
「もちろんよ! あの子達のお陰で仕事の効率が五倍ぐらい上がっているわっ。今更返せないわよっ」
「おっ、しばらく契約は継続だな。まいど」
「くっ……まんまとやられたわ。試験運用の期間が終わっても、年間の継続契約を解除する気が起きないっ」
レナは完敗だと涙を呑んだ。そんな様子をチラリと見ただけで神殿長はモニターに視線を戻す。
「ふむ……これだと、基本見ているだけですか……こんな大掛かりなものは必要ないのでは?」
「このカメラ自体に、学習機能をつけてるんだ。クマやウサギみたいには意思表示をしないけど、ほれ、あそこ。今、カメラが人の動きを自動で感知してるのが分かるか?」
フィルズが指差した一つの映像では、男性が一人倒れる所だった。ズームされて男の顔色なんかを確認。その後、映像が引いてきてそこに見張りの兵士が駆けつけていた。
「映像が近づきましたね……もしかして、こちらで操作しているわけではないのですか?」
モニター前にいる人は、マイクを持って話している。
「カメラの方が自動で異常を感知するんだ。おかしな行動をしていたり、体調が悪いのも検知する」
「体調も?」
「そう。これはまだ試作だけど、まあ、これでほぼ完成するかも。スキャンして心音から体温、筋肉量、水分量、病巣の位置まで分かるカメラ。やっぱ、健康診断って大事だからさあ」
「……健康……診断……それは、アレに写した人の病気とかが分かる……とか?」
「その通り! バリウムも胃カメラも、血液検査もしなくても分かるとか、マジ反則だよなっ」
「これも……賢者の?」
「ああ。昇級試験の時に、ほぼ国内全部回ることになって、ついでに国内の遺跡は全部確認出来たんだよ」
意図せずに回り終えることができたのは幸運だった。このカメラと本来は治療台がセットになっており、名を【人間ドックん】と言うらしい。その魔導具の見た目は、ダックスフントの様だったので分からなくもない。賢者のネーミングセンスはある意味極まっている。
「因みに、今倒れたのは空腹らしい」
「「「は?」」」
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