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ミッション12 舞台と遠征
470 ちょっと怖かったやつ
画面には異常に該当する番号が二つ出ていた。【空腹】と【低血糖】だとわかる。
「アレだ。あの嫌がらせな食事に耐えられなかったんだろ。そんで、食べずにどうにかなったら出られるとでも思ったんじゃないか?」
「それはどうするんです? 餓死なんてさせられませんよね?」
神殿長の確認に、フィルズはふっと笑った。
「そこまで我慢する根性はねえって。それに、倒れるくらい調子悪い奴は、苦くて渋い栄養満点な薬草粥を無理やり食わせることになってるから」
これにラスタリュートとレナが顔を引き攣らせる。
「……どっちが良いかとなれば……我慢して普段の方を食べそうよね……」
「苦くて渋い方が我慢し辛いんじゃないかしら……」
ここで、神殿長は記憶を探っていた。
「いつもは、苦いスープに酸っぱいサラダ、ジャリジャリする甘いパンでしたか? それと辛味のあるジンジャードリンク……そちらの方を少しずつでも食べていた方が薬草粥よりは、食べられる物の量で選べる方がいいでしょうに」
「だろ? まあ、味はともかく、ちゃんと栄養とか考えたメシなんだぜ? もちろん、薬草粥もちゃんとしたやつだ」
不味いけど健康に良い。不味いけど病気も治る。問題などない。
「そう考えると、良薬が苦いのは普通ですしね」
「そうそう。けど、味覚が麻痺する前に猛省してほしいよな~」
「麻痺してしまった場合はどうなるの……」
ラスタリュートは不安そうだ。
「だから一応忠告してもらってるんだけどな。きちんと自白して、反省しないと美味い物の味も分からなくなるぜ? って」
「……早くしないとここから解放されても苦しむのね……」
ラスタリュートは顔色を悪くする。想像したようだ。ただでさえ、彼はセイスフィア商会で良い食事をしている。アレが美味しく感じられなくなったらと怖くなったらしい。
これに対して、レナは呑気だ。他人事感がある。
「いやだわ~。食事の楽しみがなくなったら、人生に色がなくなるようなものよね~。その辺使って脅してみようかしら」
「ちょっとは素直になるかもな。大聖女様に諭されたら余計にさ」
「ふふふっ。任せて♪」
レナは早速と、ラスタリュートに案内を頼んで、聖騎士を連れて部屋を出て行った。
「では、フィル君。私たちも行きましょうか。地下でしたよね」
「ああ。あの組織の奴らの話を聞かないとな」
そこで、キラ達が姿を少し見せた。因みに彼らはフィルズにくっ付いている。キラはフィルズの右肩、アカネは左肩でジュエルが頭にぶら下がっていた。どうやっているのか知らないが、触れられているのは分かっても、重さはさほど感じていない。
《我も気になっている。どんな言い訳を並べるのか聞いてやろうではないか》
《そうよね~。まさか、賢者の子孫だなんて。私たちの前で良く言ったものよ》
ふんっと二人の鼻息は荒い。そんな中、ジュエルだけが呑気に尻尾を振り、何気なく告げた。
《二人だけ、本当に賢者の血を引いてるのが居るみたいだけどね~》
《は?》
《え?》
「んん?」
「なんですって……?」
思わぬ言葉に、一同はピタリと動きを止める。そして、揃ってジュエルに注目した。
《ん? どうしたの?》
「……ジュエル……なんでそれが分かった?」
キラもアカネの二匹の反応を見ても、気付いていなかったことのはずだ。
《血の繋がりは分かるよ? ん~っ、托卵種判定機を作った賢者と一緒に居たことあるから分かるよ?》
「……血縁判定機な? なるほど……」
《……そういえば、何人かの賢者と共に過ごしておったな……》
《っ、アレね!? おかしくなって飛び出して行った二人目の子! 見ていて早く離れなさいって言った子だわ!》
《先にあの子の方が出て行っちゃったけどね。何回かは帰って来てたけど、ケタケタ笑うようになってたから、ちょっと怖かったやつ》
「……やべえじゃん……よく一緒に居たな……」
《何か放っておけなくて》
仕方のない子だったのだとため息混じりに告げるジュエル。その賢者は、かなり精神状態が危うかったようだ。それを見捨てることはできなかったと言う。
「なるほど……けど、良く分かるようになったな」
《うん。あの子には言わなかったけどね。なんか危なそうだった》
「言わなくて正解だ……」
《末っ子よ。危ない者には同情しても近付いてはならんぞ》
《そうよ? 気を付けて?》
《は~い》
そんな注意をされながらも、ジュエルはご機嫌のようだ。兄姉に心配されて嬉しいのかもしれない。それも、こんなに近くで直接注意されることが、未だに新鮮なようだ。
「では、そろそろまた姿を消してくださいね。あなた方を見ておかしくなる危ない人が居るといけませんから」
《うむ》
《そうね》
《はい!》
再び姿を消した三匹を確認して、フィルズと神殿長は廊下を出てすぐにある地下へと続く階段に足を進めた。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
「アレだ。あの嫌がらせな食事に耐えられなかったんだろ。そんで、食べずにどうにかなったら出られるとでも思ったんじゃないか?」
「それはどうするんです? 餓死なんてさせられませんよね?」
神殿長の確認に、フィルズはふっと笑った。
「そこまで我慢する根性はねえって。それに、倒れるくらい調子悪い奴は、苦くて渋い栄養満点な薬草粥を無理やり食わせることになってるから」
これにラスタリュートとレナが顔を引き攣らせる。
「……どっちが良いかとなれば……我慢して普段の方を食べそうよね……」
「苦くて渋い方が我慢し辛いんじゃないかしら……」
ここで、神殿長は記憶を探っていた。
「いつもは、苦いスープに酸っぱいサラダ、ジャリジャリする甘いパンでしたか? それと辛味のあるジンジャードリンク……そちらの方を少しずつでも食べていた方が薬草粥よりは、食べられる物の量で選べる方がいいでしょうに」
「だろ? まあ、味はともかく、ちゃんと栄養とか考えたメシなんだぜ? もちろん、薬草粥もちゃんとしたやつだ」
不味いけど健康に良い。不味いけど病気も治る。問題などない。
「そう考えると、良薬が苦いのは普通ですしね」
「そうそう。けど、味覚が麻痺する前に猛省してほしいよな~」
「麻痺してしまった場合はどうなるの……」
ラスタリュートは不安そうだ。
「だから一応忠告してもらってるんだけどな。きちんと自白して、反省しないと美味い物の味も分からなくなるぜ? って」
「……早くしないとここから解放されても苦しむのね……」
ラスタリュートは顔色を悪くする。想像したようだ。ただでさえ、彼はセイスフィア商会で良い食事をしている。アレが美味しく感じられなくなったらと怖くなったらしい。
これに対して、レナは呑気だ。他人事感がある。
「いやだわ~。食事の楽しみがなくなったら、人生に色がなくなるようなものよね~。その辺使って脅してみようかしら」
「ちょっとは素直になるかもな。大聖女様に諭されたら余計にさ」
「ふふふっ。任せて♪」
レナは早速と、ラスタリュートに案内を頼んで、聖騎士を連れて部屋を出て行った。
「では、フィル君。私たちも行きましょうか。地下でしたよね」
「ああ。あの組織の奴らの話を聞かないとな」
そこで、キラ達が姿を少し見せた。因みに彼らはフィルズにくっ付いている。キラはフィルズの右肩、アカネは左肩でジュエルが頭にぶら下がっていた。どうやっているのか知らないが、触れられているのは分かっても、重さはさほど感じていない。
《我も気になっている。どんな言い訳を並べるのか聞いてやろうではないか》
《そうよね~。まさか、賢者の子孫だなんて。私たちの前で良く言ったものよ》
ふんっと二人の鼻息は荒い。そんな中、ジュエルだけが呑気に尻尾を振り、何気なく告げた。
《二人だけ、本当に賢者の血を引いてるのが居るみたいだけどね~》
《は?》
《え?》
「んん?」
「なんですって……?」
思わぬ言葉に、一同はピタリと動きを止める。そして、揃ってジュエルに注目した。
《ん? どうしたの?》
「……ジュエル……なんでそれが分かった?」
キラもアカネの二匹の反応を見ても、気付いていなかったことのはずだ。
《血の繋がりは分かるよ? ん~っ、托卵種判定機を作った賢者と一緒に居たことあるから分かるよ?》
「……血縁判定機な? なるほど……」
《……そういえば、何人かの賢者と共に過ごしておったな……》
《っ、アレね!? おかしくなって飛び出して行った二人目の子! 見ていて早く離れなさいって言った子だわ!》
《先にあの子の方が出て行っちゃったけどね。何回かは帰って来てたけど、ケタケタ笑うようになってたから、ちょっと怖かったやつ》
「……やべえじゃん……よく一緒に居たな……」
《何か放っておけなくて》
仕方のない子だったのだとため息混じりに告げるジュエル。その賢者は、かなり精神状態が危うかったようだ。それを見捨てることはできなかったと言う。
「なるほど……けど、良く分かるようになったな」
《うん。あの子には言わなかったけどね。なんか危なそうだった》
「言わなくて正解だ……」
《末っ子よ。危ない者には同情しても近付いてはならんぞ》
《そうよ? 気を付けて?》
《は~い》
そんな注意をされながらも、ジュエルはご機嫌のようだ。兄姉に心配されて嬉しいのかもしれない。それも、こんなに近くで直接注意されることが、未だに新鮮なようだ。
「では、そろそろまた姿を消してくださいね。あなた方を見ておかしくなる危ない人が居るといけませんから」
《うむ》
《そうね》
《はい!》
再び姿を消した三匹を確認して、フィルズと神殿長は廊下を出てすぐにある地下へと続く階段に足を進めた。
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