趣味を極めて自由に生きろ! ただし、神々は愛し子に異世界改革をお望みです

紫南

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ミッション12 舞台と遠征

478 何が欲しいのだ?

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その家は、大体中心辺りにあった。中央には、大きな集会所があり、フィルズが来るとそこで報告会もするのだが、その集会所からほど近い場所にある家に向かう。それはレヴィリアの使っている家で、落ち着いた色合いのシンプルな一般的な家だった。

中にある家具類も、見習い達が作ったもので、格安で手に入れている。王族が使うには質素過ぎるものではあるが、品よく部屋に配置してあるため、それほど気になるものではない。

「エイン。私よ……エイン?」

奥の客室。ドアをノックしても返事がないのを不審に思い、レヴィリアが開けると椅子ごと床に倒れていた。書類を書いている途中だったようだ。

「っ、エイン!」

レヴィリアが悲鳴をあげて駆け寄る。かなり痩せたその人を抱き起こすと、その顔は蒼白だった。けれど、熱があるように汗が噴き出している。息も荒い。

「すげえ、ギリじゃね?」
「ですねえ。私も危ないぞと聞いただけですので、どれほどというのは流石に……」
「エイン! エインっ! しっかりしてっ」

かなり必死な様子のレヴィリアを見ても、フィルズと神殿長はさほど慌てていない。それを知って、レヴィリアが振り向く。

「フィルさんっ。お願いっ。助けて!」
「おう。ちょっと診るぞ……」

久し振りに使う神聖力だ。マグナを助けた時のことを思い出す。感覚は覚えていた。

「……混じってるが……分かるやつだ。すぐに解毒薬を作ってやるよ。今はこのまま寝かせておけ。大丈夫だ」
「っ……ありがとう……っ」
「おう。待ってろ。できれば、着替えさせてやれ。クロットかシロットを呼んで……」
「私がやるから大丈夫よ」

レヴィリアは強い。それなりに鍛えてもいる。とはいえ、意識のない者を着替えさせるというのは大変なことだ。自信がある受け答えから、恐らく今までもやった事はあるようだが、無理をするものでもない。レヴィリアはまだ自分の力を過信する所があるとフィルズは知っていた。

「……そうか? なら、神殿長」

無理だろうと言えばレヴィリアを傷付ける。神殿長ならば、教会で孤児の世話や運ばれてくる怪我人、病人の世話もしたことがあるはずと、声を掛けておく。神殿長ならば上手く調整してくれるだろう。

「ええ。手伝いますね。痩せているとはいえ、女性一人の力では大変でしょう?」
「っ、ありがとうございます!」

この様子ならば大丈夫だと判断し、フィルズは薬草を探しに出た。

それに気付いたのは、畑で遊んでいた三匹のドラゴン達だ。

《どこ行くの?》
「薬草採取。辺境の方に続く森で手に入るはずだ」
《それはどの辺? 薬草が沢山ありそうな森となると、少し距離がありそうよ?》
《今日はビズ嬢ちゃんもいないだろ》

今日は定時便のバスで来た。よって、ビズはいない。まあ、歩くかと思っていたフィルズに、キラがキョロキョロと辺りを見回してから指を差した。

《ほれ、そこ。そこの土地は使ってもいいか?》
「ん? ああ。薬草畑でも作ろうかと思ってる所だが?」

そこは、土を整えている最中の畑だった。

《丁度良いではないか。どれ、何が欲しいのだ?》
「薬草か? ホドルカとシダリズ……それと、ハグサがあれば完璧だ」
《うむ。任せるがいい!》
「あっ、おい!?」

そう言って、キラがその畑の土に、勢いよくダイブした。

しばらくしてぷはっと土から出て来たキラは、体に付いた土を払い落としながら、畑の上をクルクルと飛ぶ。すると、淡い光が畑から立ち昇るように見えたと思った時には、ニョキっと緑が生えてきた。

「はあ!?」

驚いていれば、ふさぁっと葉が茂った。

「なに!?」

あり得ないという光景に、フィルズは珍しく動転した。






**********
読んでくださりありがとうございます◎




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