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465 労っていますか?
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2016. 7. 29
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ティアが盗賊達のアジトである廃墟に辿り着いた時、どういうわけか、その廃墟の外に何人もの盗賊達が綺麗に並べられ、寝かされていた。
「……救護所?」
その光景が、いつか見た戦場での救護所に見えたのだ。
ティアはそのまま近づき、彼らの顔を覗き見る。顔色が悪く、苦しそうに顔を顰めていた。
「あ~……魔力循環ズタボロじゃん……」
そう呟いたところで、ルクスが廃墟の中から新たな盗賊を肩に担いで出てきた。
「ティアっ」
「おかしなことになってるねぇ。シル……もダメっぽい?」
「あぁ……」
シルはどうしたのかと尋ねようとしたのだが、中で動けずにいるらしい気配があった。
ルクスがあえて、苦笑するに留めたところを見ると、相当無理をさせたらしい。
彼の事だ。きっと、ティアの為にと体に異常を感じてからも任務を続行しようとしたはずだ。
そこでとりあえず、これの原因についてルクスに確認する。
「魔導具は壊せたんだ?」
「あぁ、それは大丈夫だ。この地下にあった。砕いたままにしてあるんだが、見てくるか?」
「うん。そうしたいけど……とりあえず、こいつらをどうにかしなくちゃね……向かってくる奴らの事もあるし……う~ん……あいつなら何とかできるか」
さすがのティアも、十数人もの人の魔力循環を整える事は難しい。ならば、得意そうな者を呼ぶべきだろう。
「フラムはまだ無理かな。水王」
《はい。承知しておりますわ。あの愚かな天使ならば、先ほど呼びに行かせました》
「本当? 凄いよ水王。良くわかったね」
《ありがとうございます。ティア様が望むのであれば、どこの王や神であろうとも即刻手配してみせますわっ》
「う、うん……頼もしいよ……」
水王にとって、ティアは神以上の存在。本当にやりかねないから恐ろしい。
しばらくして、カランタが舞い降りてきた。
「なぁに? 僕を呼ぶなんて珍しいよねっ」
心底嬉しそうに、そう言うカランタへ、無言で寝かされて苦しそうに唸る盗賊達を指差してやった。
「え? え~っと……何これ。びっくりするくらい魔力循環がボロクソ……っえ? まさかこれをどうにかするために呼んだ?」
「うん。どうにかしてね、天使様。色々とこいつらには聞きたい事もあるからさ」
「ちょっ、この人数を僕一人で⁉︎
手伝ってくれるよね⁉︎」
おかしなことを言うなと、ティアは顔を顰める。
「大丈夫でしょう。天使様ならこの程度の人数。癒すのは容易いって」
「容易くないよ⁉︎ 万能じゃないからねっ⁉︎ だいたい、僕は天使職についてまだ五百年だよ⁉︎」
「天使って職なんだ? そんで、五百年ってまだって言える年数なんだ?」
色々と驚きの情報が出てきた。
「そうだよっ。五百年なんてまだまだ新参のペーペーなんだよ!」
「それでも出来るでしょ?」
「……き、厳しいです……」
「でも出来なくはないんだよね?」
「…………はい」
ならば問題ないではないかとティアは結論を出した。
「じゃぁ、よろしく。私もやる事あるから。ここは任せた」
「ま、任せっ……て……」
ティアに任されたという事がとてつもなく嬉しかったらしい。ただ、無理をする事になるので、最後は泣きながらの承諾であった。
赤くなったり青くなったりと忙しいやつだと思いながら、ティアはルクスが壊した魔導具を確認する為に廃墟へと入っていく。
地下への通路へ行く途中。ルクスに肩を貸してもらい、青いというより白い顔のシルに出会った。
「シル。大丈夫?」
「は……申し訳なく……」
それが本当に辛そうで、更にこうしてティアに情けない姿を見られたと、気まずげに顔を伏せる様子に、ティアは苦笑して近付く。
「シル。顔上げて」
「あ……」
ティアの言に反射的に従うシル。そうして顔を上げたシルの胸元へと両手を当てる。
そのまま慎重に魔力を探り、循環を整えていく。時間にすれば、深呼吸を三度する程度。それで顔色も元に戻った。
「どう? おかしな感じはしない?」
呆然とした後、胸に手を当てて目を瞠る。そして、はっと顔を上げ、驚いた表情でティアを見た。
「はい……っありがとうございます」
「無理させてごめんね」
「いいえ! まだまだ努力が足りず申し訳ありません」
相変わらず固いなと、ティアは苦笑するしかない。そこでルクスがポツリと呟いた。
「前から気になっていたが……シルは労うんだよな……」
「……」
「……あの……」
ティアは静かに目をそらしたのだった。
************************************************
舞台裏のお話。
水の精霊A 《からから》
水の精霊B 《からから~》
水の精霊C 《おうがよんでる》
カランタ「え? もしかして、カラカラって僕のこと?」
水の精霊達 《そう!》
カランタ「それで、君達の王……水王が?」
水の精霊A 《やくにたてって》
水の精霊B 《はやくこいって》
水の精霊C 《はたらけって》
カランタ「へ? な、何しろって?」
水の精霊A 《はやく!》
水の精霊B 《いそいで!》
水の精霊C 《てんにかえる?》
カランタ「ちょっと待って! てん……天⁉︎ や、いや、急ぎます!!」
水の精霊A 《またせちゃだめ》
水の精霊B 《おこらせちゃだめ》
水の精霊C 《しにいそいじゃだめ》
カランタ「う、うんっ。急がないように急ぐねっ。でも、水王が呼ぶって事は、ティアの為かな?」
水の精霊A 《せいか~い》
水の精霊B 《だからいそぐ》
水の精霊C 《やくにたつ》
カランタ「急ぐよ。役に立つ! なんだってするんだから!」
水の精霊A 《……なんでもするって》
水の精霊B 《おぼえた》
水の精霊C 《げんち☆》
カランタ「ん?」
つづく?
なんて事が起こってましたとさ☆
読んでくださりありがとうございます◎
言質取りました。
使えるものは使います。
そして、態度も対応もそれぞれ違います。
カランタ君には、まだ少し当たりが厳しい?
まぁ、年頃の女の子が父親と接するんですから、こんなもんです。
シルには弱いですね。
ルクスは複雑……と。
では次回、31日です。
よろしくお願いします◎
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ティアが盗賊達のアジトである廃墟に辿り着いた時、どういうわけか、その廃墟の外に何人もの盗賊達が綺麗に並べられ、寝かされていた。
「……救護所?」
その光景が、いつか見た戦場での救護所に見えたのだ。
ティアはそのまま近づき、彼らの顔を覗き見る。顔色が悪く、苦しそうに顔を顰めていた。
「あ~……魔力循環ズタボロじゃん……」
そう呟いたところで、ルクスが廃墟の中から新たな盗賊を肩に担いで出てきた。
「ティアっ」
「おかしなことになってるねぇ。シル……もダメっぽい?」
「あぁ……」
シルはどうしたのかと尋ねようとしたのだが、中で動けずにいるらしい気配があった。
ルクスがあえて、苦笑するに留めたところを見ると、相当無理をさせたらしい。
彼の事だ。きっと、ティアの為にと体に異常を感じてからも任務を続行しようとしたはずだ。
そこでとりあえず、これの原因についてルクスに確認する。
「魔導具は壊せたんだ?」
「あぁ、それは大丈夫だ。この地下にあった。砕いたままにしてあるんだが、見てくるか?」
「うん。そうしたいけど……とりあえず、こいつらをどうにかしなくちゃね……向かってくる奴らの事もあるし……う~ん……あいつなら何とかできるか」
さすがのティアも、十数人もの人の魔力循環を整える事は難しい。ならば、得意そうな者を呼ぶべきだろう。
「フラムはまだ無理かな。水王」
《はい。承知しておりますわ。あの愚かな天使ならば、先ほど呼びに行かせました》
「本当? 凄いよ水王。良くわかったね」
《ありがとうございます。ティア様が望むのであれば、どこの王や神であろうとも即刻手配してみせますわっ》
「う、うん……頼もしいよ……」
水王にとって、ティアは神以上の存在。本当にやりかねないから恐ろしい。
しばらくして、カランタが舞い降りてきた。
「なぁに? 僕を呼ぶなんて珍しいよねっ」
心底嬉しそうに、そう言うカランタへ、無言で寝かされて苦しそうに唸る盗賊達を指差してやった。
「え? え~っと……何これ。びっくりするくらい魔力循環がボロクソ……っえ? まさかこれをどうにかするために呼んだ?」
「うん。どうにかしてね、天使様。色々とこいつらには聞きたい事もあるからさ」
「ちょっ、この人数を僕一人で⁉︎
手伝ってくれるよね⁉︎」
おかしなことを言うなと、ティアは顔を顰める。
「大丈夫でしょう。天使様ならこの程度の人数。癒すのは容易いって」
「容易くないよ⁉︎ 万能じゃないからねっ⁉︎ だいたい、僕は天使職についてまだ五百年だよ⁉︎」
「天使って職なんだ? そんで、五百年ってまだって言える年数なんだ?」
色々と驚きの情報が出てきた。
「そうだよっ。五百年なんてまだまだ新参のペーペーなんだよ!」
「それでも出来るでしょ?」
「……き、厳しいです……」
「でも出来なくはないんだよね?」
「…………はい」
ならば問題ないではないかとティアは結論を出した。
「じゃぁ、よろしく。私もやる事あるから。ここは任せた」
「ま、任せっ……て……」
ティアに任されたという事がとてつもなく嬉しかったらしい。ただ、無理をする事になるので、最後は泣きながらの承諾であった。
赤くなったり青くなったりと忙しいやつだと思いながら、ティアはルクスが壊した魔導具を確認する為に廃墟へと入っていく。
地下への通路へ行く途中。ルクスに肩を貸してもらい、青いというより白い顔のシルに出会った。
「シル。大丈夫?」
「は……申し訳なく……」
それが本当に辛そうで、更にこうしてティアに情けない姿を見られたと、気まずげに顔を伏せる様子に、ティアは苦笑して近付く。
「シル。顔上げて」
「あ……」
ティアの言に反射的に従うシル。そうして顔を上げたシルの胸元へと両手を当てる。
そのまま慎重に魔力を探り、循環を整えていく。時間にすれば、深呼吸を三度する程度。それで顔色も元に戻った。
「どう? おかしな感じはしない?」
呆然とした後、胸に手を当てて目を瞠る。そして、はっと顔を上げ、驚いた表情でティアを見た。
「はい……っありがとうございます」
「無理させてごめんね」
「いいえ! まだまだ努力が足りず申し訳ありません」
相変わらず固いなと、ティアは苦笑するしかない。そこでルクスがポツリと呟いた。
「前から気になっていたが……シルは労うんだよな……」
「……」
「……あの……」
ティアは静かに目をそらしたのだった。
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舞台裏のお話。
水の精霊A 《からから》
水の精霊B 《からから~》
水の精霊C 《おうがよんでる》
カランタ「え? もしかして、カラカラって僕のこと?」
水の精霊達 《そう!》
カランタ「それで、君達の王……水王が?」
水の精霊A 《やくにたてって》
水の精霊B 《はやくこいって》
水の精霊C 《はたらけって》
カランタ「へ? な、何しろって?」
水の精霊A 《はやく!》
水の精霊B 《いそいで!》
水の精霊C 《てんにかえる?》
カランタ「ちょっと待って! てん……天⁉︎ や、いや、急ぎます!!」
水の精霊A 《またせちゃだめ》
水の精霊B 《おこらせちゃだめ》
水の精霊C 《しにいそいじゃだめ》
カランタ「う、うんっ。急がないように急ぐねっ。でも、水王が呼ぶって事は、ティアの為かな?」
水の精霊A 《せいか~い》
水の精霊B 《だからいそぐ》
水の精霊C 《やくにたつ》
カランタ「急ぐよ。役に立つ! なんだってするんだから!」
水の精霊A 《……なんでもするって》
水の精霊B 《おぼえた》
水の精霊C 《げんち☆》
カランタ「ん?」
つづく?
なんて事が起こってましたとさ☆
読んでくださりありがとうございます◎
言質取りました。
使えるものは使います。
そして、態度も対応もそれぞれ違います。
カランタ君には、まだ少し当たりが厳しい?
まぁ、年頃の女の子が父親と接するんですから、こんなもんです。
シルには弱いですね。
ルクスは複雑……と。
では次回、31日です。
よろしくお願いします◎
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