女神なんてお断りですっ。

紫南

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472 情報を求む

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2016. 8. 8
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天使は時に、神に見初められた誰かを見守る為であったり、人には知られていない、神にとって重要な場所や物を守る為に、地上に派遣される事があるそうだ。

その時、天使の護衛として遣わされるのが、神使獣なのだという。

「天使も不死身じゃないからね……特に、地上に遣わされる天使は、任期の終わりに近い者が選ばれるんだ。地上で死ぬ事で、その魂が次に地上で生を受けられるようになる。そうやって、死んでいく天使を看取る役割もあって……でも、看取った後は、彼ら神使獣も命を終えるはずなんだけど……一体誰の……」

こうして今、この神使獣が生きているという事は、守護すべき天使もまだ生きているという事。

「カランタのじゃないの?」
「違うよ。僕が地上にいるのは、女神であるティアの補佐だから、天上での役目と同じ……って、その目、止めてっ。失言でしたっ」

それが事実であるとしても、ティアは未だに女神である事を認めていないのだ。少々視線に力が入ってしまった。

「別にいいんだよ? アレだよね。大いに使いっ走りにして、容赦なく馬車馬
ように働かせて良いって事だもんね」
「……い、いや……多少、限度といいますか……その辺はわきまえてもらって……」

確かに天使は神の使いっ走りだ。しかし、ティアに言うべきではなかったと、カランタは顔を青ざめさせて後悔していた。

「そうねぇ。とりあえず、この子の事、もうちょっと調べてみて。何なら、上に戻って情報を問い合わせてきてよ」
「そんなギルドみたいな情報管理してないから、分かんないよっ」
「調べてから言って。努力する前に諦める奴はキライ」
「き、嫌いっ⁉︎」

どうやら、嫌いと言われた事が衝撃だったらしく、カランタは焦ったように再びフットウルフへ手を翳す。それから、すぐにちょっと行ってくると言って、翼を出し、どこかへ飛んでいってしまった。

《パパさん、凄いショック受けてたよ?》
「そお? まぁ、動いてたから大丈夫でしょう」
《なんか、目がイっちゃってる手前みたいな感じだったけどね。手前だから良いか》
「そうだね」

父娘の関係とは難しいものだ。

「ティア、それで奴らは一体? まさか……」

ルクスは、ティアが引き摺ってきた二人を注意深く見つめて尋ねた。ルクス自身、同じ格好をした者達とやり合っているのだ。予想は出来たらしい。

「あの組織の奴らだと思うんだけどね。でも、こうなると、もしかしてあのおじさん達を国から脱出させた人と、ウィスト王家、それとあの組織。関係は持っていても、意思統一が出来てないのかも」

脱出してきた者達が持っていた魔導具がジェルバ作である可能性が極めて高い。という事は、その二つは関係を持っているという事になる。

そして、現在『神の王国』と名乗る組織の理念は、原始の神が望む世界を実現させる事。それは、ウィストが持つ、信仰に添うものだ。

ウィストは、組織の存在を容認する充分な理由がある。

「ティア様。少し思い出した事があるのですが……」
「何? シル」

シルが難しい顔をしながら歩み寄ってきた。どうやら、ここに来ていた暗殺部隊の三人をしっかりと縛り上げられたようだ。

ティア仕込みの縄掛け技術はシルにも受け継がれている。

「半年ほど前でしょうか……旅の者が『素性も明らかではない娘を愛妾とする王がいたり、教会が分裂したりと、理解ができない事が多い』とボヤいていたのです」
「それがウィストの話だって言うの?」
「先ほど、彼らが『やっぱり国教会の奴らが』と」
「へぇ……」

そう。彼らは神官から魔導具を貰ったと言っていたはずだ。教会と繋がりがあるのは確実だ。彼らの言から、そこと国教会は別と考えられる。

思案していたティアへ、風王が新たな教会の情報を教えてくれた。

《あの国では国教会と呼ばれる王家が認める教会と、民や下位貴族の為の地方教会とで分かれているようなのです。完全に関係を絶ったのは半年前。どうやら、国王が国教会が秘匿してきた神子を妃として迎えた事が原因のようです》
「王が妃を……それって、他国に広がってないの?」
《眉唾ものだと、どこの王家も取り合わなかったようです。何より、その神子とやらの姿を確認できた者はおりませんし、既に別に王妃はいます。今回の妃については、王家も正式な発表をしていないのです》
「なにそれ……」

一度として公式の場に現れず、各国の諜報部を駆使してもその姿を確認する事ができなかったようだ。

これでは、確かにただのデマカセと処理してもおかしくはない。王家を陥れる為の話という事もあり得る。

《それともう一つ。ウィストという事でご報告が……》
「まだ何かあるの?」

どうやら風王はティアの役に立つ為、多くの人物や国の情報を保有しているらしい。

《はい。王太子の婚約者を気にされていたようでしたので、調べておりました。その中でリザラント家の娘が、ウィストと関係があります》

一年前、王太子の婚約者候補が正式に決まった。現在、歳も近い事もあり、王家に連なる家としては最も古いリザラント家の娘が有力とされている。

《ローズ・リザラントは、ウィストで生まれ、長く暮らしていました。公爵の愛人の娘だそうです》
「よくそんな所まで調べられたね……」
《共同戦線の成果です》
「……クィーグの部隊と連携してるんだっけ……なるほどね……」

風王は、血縁関係など、個人の情報をこれまで重要視してこなかった。本来、精霊が持つ情報は、人が口にした事だけだ。真偽までは分からないものが大半。

しかし、人であるクィーグ部隊は違う。事実関係まで事細かに調べて情報をストックする。それらを最近、風王や水王は共有しているらしい。

《リザラント家が正式に娘として引き取ったのは、王太子の結婚話が本格化してからです。それまで、ウィストにおりました》
「ウィストの人だから怪しいって事? 何か根拠があるの?」

この国の者ではなく、ウィストの国の者の血を引いているから良くないと決め付けてしまっては、ただの差別だ。しかし、クィーグや精霊王達は、情報に基づいて話ている。他に何か理由があるはずだった。

《ローズ・リザラント。彼女は子どもの頃、聖女として教会に仕え、数年前、女神サティアの生まれ変わりとされた人物です》
「あの偽者⁉︎」

その正体は、思わぬものだったのだ。


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舞台裏のお話。

王妃「なんだか騒がしかったわね」

エイミール「確認して参りましたところ、どうも……フラムちゃんが来たようです」

王妃「まぁ。一人で?」

エイミール「はい。ティアさんの手紙を持って来たらしく、エルがフラムと王の所まで走っていったのです」

王妃「隠さずに? それは……騒がしくもなるわねぇ」

エイミール「申し訳ありません……」

王妃「あら、良いのですよ。兵や騎士達が、反応したという事ですもの」

エイミール「そうですね……初めてドラゴンを見て、そのまま見送るようでは彼らに希望はありませんか……」

王妃「ふふっ、エル君も大胆ね」

エイミール「ようやく最近は落ち着きを覚えたかと思っていたのですが」

王妃「いいではないの。レイなど、最近は笑いもしないのよ? 頭が固くなっているようで、不安だわ……」

エイミール「周りがいけないのですよ。頭の固い大人ばかりですから」

王妃「それはありそうね。今度エル君と一緒にレイもティアさんに遊んで貰えないかしら」

エイミール「レイナルート様を? それは……」

王妃「やっぱり難しい? 真面目一辺倒では王になどなれないと思うの。それに、レイが声を上げて笑う所……見たいわ……」

エイミール「……分かりました。ティアさんに相談致しましょう」

王妃「ええ。エル君のようにもっと明るい子になって欲しいわ」

エイミール「それは……かなりの衝撃が必要ですね……」



つづく?
なんて事が起こってましたとさ☆
読んでくださりありがとうございます◎


化学変化か天変地異か……崩壊するくらいの衝撃は必要でしょう。


ついに偽者の尻尾を掴みました。
きっと風王達は必死に情報を集めて来たのでしょう。
ウィスト……複雑な様相を呈しております。
ウィストの王様は取り込まれ済みでしょうか。


では次回、また明日です。
よろしくお願いします◎
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