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521 新学期も期待されています
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2016. 11. 9
**********
ティアが夢でマティアスと再会してから二日。この日、新学期が始まった。
「今日のヒュースリー様は、また一段と美しかったわね……」
「休みの間に、何かあったのだろうか……」
今回もティアは舞台に登壇し、見事な始業の挨拶を披露した。中学部へ上がり、新たな決意を込めるその挨拶は、誰もが胸を打たれていた。
そして、更になぜかティアの印象が、ひと月ほど前の小学部卒業式の時とは違っているように感じられたのだ。
「ヒュースリーは、一気に大人びたな」
「兄上がそろそろ結婚なさるので、その影響もあるのでは?」
「ほぉ、ベリアローズ・ヒュースリーか。ユフィア・ドーバンと?」
「当然でしょう。在学中から、とても仲睦まじい様子でしたからね」
「既に姉と慕っていたしな」
教師達もティアの話で盛り上がっていた。そんな同僚達を、今はカグヤとして男の姿をしているサクヤは、微妙な表情を浮かべて見ていた。
「……騙されてる……」
この呟きを、近付いてきたウルスヴァンが聞きつける。
「ですが、確かにティアさんは少し雰囲気が変わりました……たった数日でとは驚きですが……」
「そうかも……やっぱり母親って偉大なのかな……」
サクヤやウルスヴァンは、ティアの変化の理由に心当たりがあった。
ティアは夢でマティアスに会い、色々と悟ったのだろう。思えば、マティアスが死んだのは、サティアが十歳の時。別れてからかなりの時間が経っている。
様々な経験を重ね、今生で生きて十余年。精神的にはティアは充分大人といえる。マティアスと今出会えた事は、ティアにとって良い影響があったのだろう。
何より、周りが同じ事を言ったとしても、母親から言われるのとは受け取り方が違ってくるものだ。
「でもね~……騙されてる事に変わりないよ……」
「それは……分かります……」
今回も、ティアの姿を一目見ようと教会の者達が大勢出席していた。
入学してきた小学部の生徒達も、衝撃を受けていたようだ。
「どこまで続けるつもりなんだか」
「だからといって、本性を晒されては、学園が崩壊しかねません……」
「そんな大袈裟な……」
そう言ってはみるが、次に聞こえてきた教師達の会話に、凍りつく。
「知っています? 王太子の婚約者候補に、密かにヒュースリーが上がっているそうです」
「おぉ、それはすごい。だが、王妃となるヒュースリーか……想像に難くないな」
「ええ。王妃として、これ以上相応しいものはいないのではないかとさえ思えます」
「あまり軽口はいけませんよ? 国の大事ですから」
「分かっていますよ。あくまでも噂です」
楽しそうにそんな話をする教師達。どこか誇らしそうでもある。
「……ちょっと前は、エル君とくっ付くとかって噂があったような……」
「次は王太子様ですか……ティアさんが王妃……恐ろしい反面、頼もしくも感じてしまいますね……」
「ウル……あり得ないって分かってるでしょう? それが本当になったら、あの変態エルフが国を滅ぼしかねないんだから」
「止めましょうねっ」
「……どっちを?」
どちらも、今のままでは現実になりかねない。その不安は、募っていくのだった。
◆◆◆◆◆
ざわざわと落ち着かない学内。ティアはそんな学内を早足で歩いていた。
「後五分……ギリギリかな」
時間を気にしながら、ティアは高学部の教室へ向かっている。
つい先ほど、急遽、学園長から頼まれたのだ。
それは、初日のオリエンテーションを終えてすぐだった。
学園長がひょっこりとティアの教室に顔を出したのだ。
「申し訳ないのですが、ティアさん。お願いがありまして」
そう言って手招きされ、手近な空き教室で頼まれたのは、編入してきた王女に学内を案内して欲しいという事だった。
「どうも、やはり国外の王女という事で、生徒達が気後れしているようでね。案内を頼める者がいないんだ」
「はぁ……構いませんけど」
「それは良かった。では、この後頼むよ」
「この後ですか?」
「うん。高学部の最高学年は、すぐに授業も本格的に始まってしまうからね」
そんなこんなで、ティアは今、高学部のオリエンテーションが終わる時間に目掛けて急いでいるのだ。
「今日は、久し振りにアデル達とクエスト受けたかったのになぁ」
最近、色々とごたついていた為、冒険者としての活動が出来ていない。アデルとキルシュは時折、ラキアに付き添いを頼んでクエストを受けているようで、生き生きとしていた。
二人とも驚くほど強くなっている。そんな二人と中々一緒に行動できない事に、ティアは少々不貞腐れていた。
「暴れたい……」
友情よりも、ティアのストレスの方が限界かもしれない。
その時、終業の鐘が鳴った。
「しまった。えっと、王女のクラスは……」
考え事をしていて、足取りが遅くなっていた。約束の時間になり、ティアは教室から出てくる生徒達が動き出す前にと、王女のクラスへと急いだ。
そうして、教師が出てくるのを待ち、目的の人物を確認したのだった。
**********
舞台裏のお話。
シル「ティア様がウィストの王女を案内……」
フィズ「どうしましたか?」
シル「いえ。異常ありません。これより、ティア様の所へ向かいます」
フィズ「わかりました。学内だからといって気を抜かないように」
シル「はい。あの王女には充分に気をつけます」
フィズ「そうですね。ティア様のご迷惑になるようでしたら、それとなく排除する方法も考えましょう」
シル「承知しました」
フィズ「他国の王女だろうと、ティア様の為にならぬ者ならば容赦はしません……」
サクヤ「……なんか、不穏な気配が……」
ウル「どうしたんですか?」
サクヤ「う~ん……いつになく気合いが入ってそうだなって……釘を刺しておかないとダメかしらね……」
つづく?
なんて事が起こってましたとさ☆
読んでくださりありがとうございます◎
ティアちゃん命になっていますから。
ティアちゃんファンは健在です。
教師達も生徒達もティアちゃんに期待しています。
母と娘。
子どもではなく、対等に向き合える歳になったのでしょう。
話の受け止め方も歳によって違ってきますから。
一皮剥けたのかも?
では次回、一日空けて11日です。
よろしくお願いします◎
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ティアが夢でマティアスと再会してから二日。この日、新学期が始まった。
「今日のヒュースリー様は、また一段と美しかったわね……」
「休みの間に、何かあったのだろうか……」
今回もティアは舞台に登壇し、見事な始業の挨拶を披露した。中学部へ上がり、新たな決意を込めるその挨拶は、誰もが胸を打たれていた。
そして、更になぜかティアの印象が、ひと月ほど前の小学部卒業式の時とは違っているように感じられたのだ。
「ヒュースリーは、一気に大人びたな」
「兄上がそろそろ結婚なさるので、その影響もあるのでは?」
「ほぉ、ベリアローズ・ヒュースリーか。ユフィア・ドーバンと?」
「当然でしょう。在学中から、とても仲睦まじい様子でしたからね」
「既に姉と慕っていたしな」
教師達もティアの話で盛り上がっていた。そんな同僚達を、今はカグヤとして男の姿をしているサクヤは、微妙な表情を浮かべて見ていた。
「……騙されてる……」
この呟きを、近付いてきたウルスヴァンが聞きつける。
「ですが、確かにティアさんは少し雰囲気が変わりました……たった数日でとは驚きですが……」
「そうかも……やっぱり母親って偉大なのかな……」
サクヤやウルスヴァンは、ティアの変化の理由に心当たりがあった。
ティアは夢でマティアスに会い、色々と悟ったのだろう。思えば、マティアスが死んだのは、サティアが十歳の時。別れてからかなりの時間が経っている。
様々な経験を重ね、今生で生きて十余年。精神的にはティアは充分大人といえる。マティアスと今出会えた事は、ティアにとって良い影響があったのだろう。
何より、周りが同じ事を言ったとしても、母親から言われるのとは受け取り方が違ってくるものだ。
「でもね~……騙されてる事に変わりないよ……」
「それは……分かります……」
今回も、ティアの姿を一目見ようと教会の者達が大勢出席していた。
入学してきた小学部の生徒達も、衝撃を受けていたようだ。
「どこまで続けるつもりなんだか」
「だからといって、本性を晒されては、学園が崩壊しかねません……」
「そんな大袈裟な……」
そう言ってはみるが、次に聞こえてきた教師達の会話に、凍りつく。
「知っています? 王太子の婚約者候補に、密かにヒュースリーが上がっているそうです」
「おぉ、それはすごい。だが、王妃となるヒュースリーか……想像に難くないな」
「ええ。王妃として、これ以上相応しいものはいないのではないかとさえ思えます」
「あまり軽口はいけませんよ? 国の大事ですから」
「分かっていますよ。あくまでも噂です」
楽しそうにそんな話をする教師達。どこか誇らしそうでもある。
「……ちょっと前は、エル君とくっ付くとかって噂があったような……」
「次は王太子様ですか……ティアさんが王妃……恐ろしい反面、頼もしくも感じてしまいますね……」
「ウル……あり得ないって分かってるでしょう? それが本当になったら、あの変態エルフが国を滅ぼしかねないんだから」
「止めましょうねっ」
「……どっちを?」
どちらも、今のままでは現実になりかねない。その不安は、募っていくのだった。
◆◆◆◆◆
ざわざわと落ち着かない学内。ティアはそんな学内を早足で歩いていた。
「後五分……ギリギリかな」
時間を気にしながら、ティアは高学部の教室へ向かっている。
つい先ほど、急遽、学園長から頼まれたのだ。
それは、初日のオリエンテーションを終えてすぐだった。
学園長がひょっこりとティアの教室に顔を出したのだ。
「申し訳ないのですが、ティアさん。お願いがありまして」
そう言って手招きされ、手近な空き教室で頼まれたのは、編入してきた王女に学内を案内して欲しいという事だった。
「どうも、やはり国外の王女という事で、生徒達が気後れしているようでね。案内を頼める者がいないんだ」
「はぁ……構いませんけど」
「それは良かった。では、この後頼むよ」
「この後ですか?」
「うん。高学部の最高学年は、すぐに授業も本格的に始まってしまうからね」
そんなこんなで、ティアは今、高学部のオリエンテーションが終わる時間に目掛けて急いでいるのだ。
「今日は、久し振りにアデル達とクエスト受けたかったのになぁ」
最近、色々とごたついていた為、冒険者としての活動が出来ていない。アデルとキルシュは時折、ラキアに付き添いを頼んでクエストを受けているようで、生き生きとしていた。
二人とも驚くほど強くなっている。そんな二人と中々一緒に行動できない事に、ティアは少々不貞腐れていた。
「暴れたい……」
友情よりも、ティアのストレスの方が限界かもしれない。
その時、終業の鐘が鳴った。
「しまった。えっと、王女のクラスは……」
考え事をしていて、足取りが遅くなっていた。約束の時間になり、ティアは教室から出てくる生徒達が動き出す前にと、王女のクラスへと急いだ。
そうして、教師が出てくるのを待ち、目的の人物を確認したのだった。
**********
舞台裏のお話。
シル「ティア様がウィストの王女を案内……」
フィズ「どうしましたか?」
シル「いえ。異常ありません。これより、ティア様の所へ向かいます」
フィズ「わかりました。学内だからといって気を抜かないように」
シル「はい。あの王女には充分に気をつけます」
フィズ「そうですね。ティア様のご迷惑になるようでしたら、それとなく排除する方法も考えましょう」
シル「承知しました」
フィズ「他国の王女だろうと、ティア様の為にならぬ者ならば容赦はしません……」
サクヤ「……なんか、不穏な気配が……」
ウル「どうしたんですか?」
サクヤ「う~ん……いつになく気合いが入ってそうだなって……釘を刺しておかないとダメかしらね……」
つづく?
なんて事が起こってましたとさ☆
読んでくださりありがとうございます◎
ティアちゃん命になっていますから。
ティアちゃんファンは健在です。
教師達も生徒達もティアちゃんに期待しています。
母と娘。
子どもではなく、対等に向き合える歳になったのでしょう。
話の受け止め方も歳によって違ってきますから。
一皮剥けたのかも?
では次回、一日空けて11日です。
よろしくお願いします◎
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