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549 騎士を求めて
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2016. 12. 28
ダイジェスト化作業完了しました。
第4回人物紹介リポートは、年明けに公開予定。
後誰がいたのか……。
お待ちください。
**********
ローズは苛立っていた。
「あの騎士、使えないわね」
組織の計画に、ヒュリアは邪魔なのだ。もう殆どウィストは制圧出来た。残るは王妃とヒュリアを中心とする者達だけ。
活力となっているのはヒュリアなのだ。それを崩せば邪魔者は消える。
「ジェルバ様の素晴らしい魔導具を使っているというのにっ……」
ローズは知らないが、リールは今日まで幾度となくヒュリアへと魔術のかかったナイフを飛ばしていた。しかし、全てクィーグの者達が叩き落としていたのだ。
勿論、回収はサクヤがやっている。サクヤの部屋には呪いのナイフが保管されており、ちょっと近付き難い場所となってしまっていた。
「サティアである私の騎士だというのにっ……そうよ。あれは私の騎士ではないんだわっ」
ローズは公爵家の娘だが、この学園街に屋敷はない。長く王都から離れている家だったのだ。その為、学寮で暮らしていた。
世話をしてくれるのは、公爵家のメイド。ローズの学園での生活の為に雇った二人のメイドだ。
そうして学寮を出て、騎士を探し始めた。神子に言われたのは、自分の前で騎士であると名乗り跪く事。
人気の少ない中庭の方へと歩いていく。すると、進もうとする方向に、一人の青年が跪いていた。
はっとしたローズは、近付き顔を上げさせる。
「あなた、お名前は?」
ゆっくりと、少しだけ顔を上げた青年は、無表情のまま言う。
「名乗る名を持っておりません」
この人だと思った。理想的な体躯。学園の職員の服を着ている。しかし、自分を守る為にわざわざ侵入しているのだと思ったのだ。
「わたくしの騎士になってくれますわね」
まったく神子の言った事とは違うのだが、もうローズの中では決定していた。
しかし、青年は無表情な顔を今度はしっかりと上げて言った。
「私には、すでに主とする方がおります」
「なっ、なんですって……?」
呆然とするローズに、青年はあっさり背を向けたのだ。
「失礼いたします」
「えっ、お、お待ちになってっ。どなたなのです? あなたの主人はっ!」
そう進みだした背中に問いかける。すると、振り返る事なく青年は答えた。
「バトラール様です」
「バトラール……」
その名は、組織に気をつけるよう言われた者の名前。それを思い出している間に、青年は消えていた。
なぜだという思いを抱えながら、再び歩きだす。絶対に自分の騎士だったという思いが支配していく。
しばらく悶々としていると、また一人の青年が跪いていた。真剣にその姿を観察すれば、地面に落ちているらしい何かを探していると分かる。
しかし、騎士を探しているローズには、そんな事が分からない。
「あ、あなたっ」
「なにか?」
そう頭を上げた青年は、立ち上がる。その時点で違うと気付くはずだ。
「あなたっ、私の騎士ですわよねっ」
「……違います」
小さく否定するその青年の声など、ローズには聞こえない。
「そうよねっ。そうだわっ。その剣は、私を守る為の物でしょう?」
「……違います」
完全に頭のおかしいお嬢様だ。
青年は呆れながら、数歩後ずさり、今度はきっぱりと言った。
「仕事があるので、失礼します」
「いやだわ。いいのよ。わたくしの側にいれば」
「遠慮します。主がもう直ぐ来ますので失礼します」
「あ、主……」
そうして背を向けた青年の後を見送ると、そこに、ティアがやって来た。
「あれは……ヒュースリー……」
青年が何事か言い、ティアが振り向く。そして、丁寧な礼をしてから、青年を伴っていく。その先には、最初に会った青年が待っているように見えた。
その二人を後ろに、ティアが学園の建物の方へと歩いていった。
「わ……わたくしの騎士をっ……」
ローズはわけのわからない嫉妬をする。そこへ、リールがやって来た。
「姫様」
「……お前は未だに王女に何もできないでいるのね……」
「はっ、はい……申し訳ありません……」
跪き、頭を下げるリール。その姿が滑稽で笑ってしまう。そして、新たな命令を下した。
「ふふっ、はははっ、王女はとりあえずいいわ。だから……ヒュースリーを狙いなさい。それと、バトラールよ。あれをどうにかすれば、神子様も喜んでくださるわ。やりなさい。わたくしの騎士ならばできるはずよ」
「は、はっ」
それがとても危険な事だとは知らずに……。
**********
舞台裏のお話。
ヒュリア「ロイズ、リールはどうなの?」
ロイズ「それが兄は、まだ冒険者登録をしていないらしいのです……」
ヒュリア「あら。どうしたのかしらね」
ロイズ「もう本当に、いっその事、サルバに行ってもらいましょうか」
ヒュリア「でも、それだと……ロイズは買い物を頼んでいるのでしょう?」
ロイズ「それは、少しでもあの兄が体力を付けられるようにとの配慮からでして……ご心配には及びません」
ヒュリア「そう。でも、いきなりサルバへはダメね。迷惑になってしまうかもしれないもの」
ロイズ「そうでしたっ。あの方に迷惑などかけられませんっ」
ヒュリア「ちゃんと冒険者になってもらわなくてはね」
ロイズ「はい。そろそろ本腰入れて追い立ててみせますっ」
ヒュリア「ほどほどにね?」
つづく?
なんて事が起こってましたとさ☆
読んでくださりありがとうございます◎
妹の方が怖いんです。
大変な勘違いをしています。
ティアちゃんをロックオンです。
では次回、一日空けて30日です。
よろしくお願いします◎
ダイジェスト化作業完了しました。
第4回人物紹介リポートは、年明けに公開予定。
後誰がいたのか……。
お待ちください。
**********
ローズは苛立っていた。
「あの騎士、使えないわね」
組織の計画に、ヒュリアは邪魔なのだ。もう殆どウィストは制圧出来た。残るは王妃とヒュリアを中心とする者達だけ。
活力となっているのはヒュリアなのだ。それを崩せば邪魔者は消える。
「ジェルバ様の素晴らしい魔導具を使っているというのにっ……」
ローズは知らないが、リールは今日まで幾度となくヒュリアへと魔術のかかったナイフを飛ばしていた。しかし、全てクィーグの者達が叩き落としていたのだ。
勿論、回収はサクヤがやっている。サクヤの部屋には呪いのナイフが保管されており、ちょっと近付き難い場所となってしまっていた。
「サティアである私の騎士だというのにっ……そうよ。あれは私の騎士ではないんだわっ」
ローズは公爵家の娘だが、この学園街に屋敷はない。長く王都から離れている家だったのだ。その為、学寮で暮らしていた。
世話をしてくれるのは、公爵家のメイド。ローズの学園での生活の為に雇った二人のメイドだ。
そうして学寮を出て、騎士を探し始めた。神子に言われたのは、自分の前で騎士であると名乗り跪く事。
人気の少ない中庭の方へと歩いていく。すると、進もうとする方向に、一人の青年が跪いていた。
はっとしたローズは、近付き顔を上げさせる。
「あなた、お名前は?」
ゆっくりと、少しだけ顔を上げた青年は、無表情のまま言う。
「名乗る名を持っておりません」
この人だと思った。理想的な体躯。学園の職員の服を着ている。しかし、自分を守る為にわざわざ侵入しているのだと思ったのだ。
「わたくしの騎士になってくれますわね」
まったく神子の言った事とは違うのだが、もうローズの中では決定していた。
しかし、青年は無表情な顔を今度はしっかりと上げて言った。
「私には、すでに主とする方がおります」
「なっ、なんですって……?」
呆然とするローズに、青年はあっさり背を向けたのだ。
「失礼いたします」
「えっ、お、お待ちになってっ。どなたなのです? あなたの主人はっ!」
そう進みだした背中に問いかける。すると、振り返る事なく青年は答えた。
「バトラール様です」
「バトラール……」
その名は、組織に気をつけるよう言われた者の名前。それを思い出している間に、青年は消えていた。
なぜだという思いを抱えながら、再び歩きだす。絶対に自分の騎士だったという思いが支配していく。
しばらく悶々としていると、また一人の青年が跪いていた。真剣にその姿を観察すれば、地面に落ちているらしい何かを探していると分かる。
しかし、騎士を探しているローズには、そんな事が分からない。
「あ、あなたっ」
「なにか?」
そう頭を上げた青年は、立ち上がる。その時点で違うと気付くはずだ。
「あなたっ、私の騎士ですわよねっ」
「……違います」
小さく否定するその青年の声など、ローズには聞こえない。
「そうよねっ。そうだわっ。その剣は、私を守る為の物でしょう?」
「……違います」
完全に頭のおかしいお嬢様だ。
青年は呆れながら、数歩後ずさり、今度はきっぱりと言った。
「仕事があるので、失礼します」
「いやだわ。いいのよ。わたくしの側にいれば」
「遠慮します。主がもう直ぐ来ますので失礼します」
「あ、主……」
そうして背を向けた青年の後を見送ると、そこに、ティアがやって来た。
「あれは……ヒュースリー……」
青年が何事か言い、ティアが振り向く。そして、丁寧な礼をしてから、青年を伴っていく。その先には、最初に会った青年が待っているように見えた。
その二人を後ろに、ティアが学園の建物の方へと歩いていった。
「わ……わたくしの騎士をっ……」
ローズはわけのわからない嫉妬をする。そこへ、リールがやって来た。
「姫様」
「……お前は未だに王女に何もできないでいるのね……」
「はっ、はい……申し訳ありません……」
跪き、頭を下げるリール。その姿が滑稽で笑ってしまう。そして、新たな命令を下した。
「ふふっ、はははっ、王女はとりあえずいいわ。だから……ヒュースリーを狙いなさい。それと、バトラールよ。あれをどうにかすれば、神子様も喜んでくださるわ。やりなさい。わたくしの騎士ならばできるはずよ」
「は、はっ」
それがとても危険な事だとは知らずに……。
**********
舞台裏のお話。
ヒュリア「ロイズ、リールはどうなの?」
ロイズ「それが兄は、まだ冒険者登録をしていないらしいのです……」
ヒュリア「あら。どうしたのかしらね」
ロイズ「もう本当に、いっその事、サルバに行ってもらいましょうか」
ヒュリア「でも、それだと……ロイズは買い物を頼んでいるのでしょう?」
ロイズ「それは、少しでもあの兄が体力を付けられるようにとの配慮からでして……ご心配には及びません」
ヒュリア「そう。でも、いきなりサルバへはダメね。迷惑になってしまうかもしれないもの」
ロイズ「そうでしたっ。あの方に迷惑などかけられませんっ」
ヒュリア「ちゃんと冒険者になってもらわなくてはね」
ロイズ「はい。そろそろ本腰入れて追い立ててみせますっ」
ヒュリア「ほどほどにね?」
つづく?
なんて事が起こってましたとさ☆
読んでくださりありがとうございます◎
妹の方が怖いんです。
大変な勘違いをしています。
ティアちゃんをロックオンです。
では次回、一日空けて30日です。
よろしくお願いします◎
応援ありがとうございます!
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