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連載
550 子どもの成長を
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2016. 12. 30
**********
数日が過ぎ、いよいよ今日が対抗戦当日。
この日の朝、ティアは預かっていたイルーシュとカイラントを王宮へ送り届けに来ていた。
バトラールの姿で王宮を歩く。それでも誰にも見つからないようにとしっかり計算して約束の部屋に向かっていた。
「もうちょっとはやく」
「三びょうごにきちゃう」
「よくわかったね。正解。ここは走る」
やはりというか、隠密行動が出来るようになってしまった双子だった。それもかなりレベルが高い。
「「ここ?」」
「そうだよ」
そして辿り着いたのは、王宮の奥。さすがに近衛の者達には隠れる事なく進む。約束があるのは伝わっているので問題ない。
扉が開くと、エルヴァストが笑顔で迎え入れた。
「ありがとう、ティア。お帰り、イル、カイ」
「「エルにぃさまぁ」」
エルヴァストととは、ディムースで遊んでいたので、すかさず抱き着いて行くほどの懐きようだ。
「エルばかりズルいぞ」
「父上……ほら、イル、カイ。父上と母上だ」
「ちちうえ?」
「ははうえ?」
首を傾げながらも、しっかりと王と王妃を見る。王妃は口を抑え、泣いていた。
「イル君、カイ君。ただいまって言うんだよ」
ティアが屈み込み、二人の背を押した。すると二人は駆け出し、王と王妃に抱き着いた。
「「ただいまぁ」」
「お帰り。おぉ。重くなったなぁ」
「当たり前です。抱いたのは生まれた時ですもの……」
「そうだったなぁ。はははっ、元気でなによりだ」
王の目にも少し涙が滲んでいた。そして、目の端に映ったもう一人の家族を手で示す。
「お、ほら。あれがお前達のもう一人の兄だ。レイ兄様だな」
そう、この場にはレイナルートもいた。そして、親愛を示すように二人はレイナルートにも抱き着きに行った。
「「レイにぃさま」」
「あぁ……よろしくな。イルーシュ、カイラント」
「「はいっ」」
返事も立派に出来るようになった。これも外に出した結果だ。
「みつからないようにきたんだよっ」
「つかまらないんだよ」
「ん? どういう事だ?」
レイナルートは何を言っているのかわからない様子だった。しかし、エルヴァストは気付いた。
「ティア……隠密行動……教えたのか?」
王と王妃、その後ろに控えていたエイミールがティアを見る。
「いつの間にか習得してたんだよ。王宮から二人だけで出て来ないようにとは言い聞かせたよ」
どうだ偉いだろうと頷くティア。バトラールの姿であっても、ティアの姿でそれが見えていた。
「ティア……ん? それだと、私も見つからないように抜け出せるんじゃ……」
「エル」
王が聞こえたぞと、呆れながら注意する。しかし、エルヴァストは、父親似の癖のある笑顔で正直に答えた。
「冗談とは言えませんが、ちょっとした可能性の話ですよ」
「さすがはエル兄様っ。使い方を知ってるねぇ」
「こらこら、使い方じゃないだろ? 可能性の話だと言っているじゃないか」
笑いながらそう言い合うティアとエルヴァストに、王は苦笑しながら頭を抱えた。
「イル、カイ、他に何が出来るのです?」
そう尋ねたのはクスクスと笑う王妃だ。王妃は単純に子どもの成長を喜んでいる。
「あとはねぇ」
「えいって、たおせるよ~」
「ティア……」
「う~ん……お母様に任せたのがマズかったかなぁ……」
「シアンさんか……」
エルヴァストは、シアンが遊びの一貫として教えたであろう護身術を思った。
「よしっ、子どもの成長は確認しておかないとねっ。ビアンさ~ん」
そうティアが呼ぶと、扉の外にいたビアンが恐る恐る顔を覗かせた。
「な、なんでしょう……」
「ちょっと投げ飛ばされて」
「へ?」
手招きするティアに警戒しながら近付き、イルーシュとカイラントの前に置かれた。
「さぁ、イル君、カイ君。ポイっとだよ」
「「はぁ~いっ」」
元気に返事をした二人は、いきなり加速してみせる。それに驚いていたビアンは、腹に衝撃を受けたかと思うと、天井高く放物線を描いて落ちてきた。
「「ぽ~いっ」」
「うん。上手だね」
「「ほめられたぁ」」
「……」
エルヴァストでさえ、声が出なかった。
**********
舞台裏のお話。
コリアート「……」
チェスカ「どうされました」
コリアート「あ、いや……先ほどこれが届いてな……」
チェスカ「……警備見直し案……どちらから……」
コリアート「……バトラールだ」
チェスカ「今、いらしているので?」
コリアート「あぁ……それも、子ども連れでも楽だったと……」
チェスカ「よく見せていただいてよろしいでしょうか」
コリアート「あぁ……師長は騎士もまとめていたな。確認してくれ」
チェスカ「失礼いたします……なるほど……確かにここは手薄です」
コリアート「そうか……隊長を呼ぼう……」
チェスカ「私が呼んで来ましょう」
コリアート「いや、だが……」
チェスカ「どうも、動いていないと落ち着かないのです」
コリアート「そういえば、こちらへ来る前は全て一人でやっていたのだったか……」
チェスカ「はい。では、お待ちください」
コリアート「……働き者だな……」
チェスカ(現魔術師長)
コリアート(ドーバン侯爵)
つづく?
なんて事が起こってましたとさ☆
読んでくださりありがとうございます◎
こっち方面もとっても頼りになります。
ティアちゃんの子育ては失敗?
成功?
立派に強い子に育ちました。
では次回、一日空けて1日です。
来年もよろしくお願いします◎
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数日が過ぎ、いよいよ今日が対抗戦当日。
この日の朝、ティアは預かっていたイルーシュとカイラントを王宮へ送り届けに来ていた。
バトラールの姿で王宮を歩く。それでも誰にも見つからないようにとしっかり計算して約束の部屋に向かっていた。
「もうちょっとはやく」
「三びょうごにきちゃう」
「よくわかったね。正解。ここは走る」
やはりというか、隠密行動が出来るようになってしまった双子だった。それもかなりレベルが高い。
「「ここ?」」
「そうだよ」
そして辿り着いたのは、王宮の奥。さすがに近衛の者達には隠れる事なく進む。約束があるのは伝わっているので問題ない。
扉が開くと、エルヴァストが笑顔で迎え入れた。
「ありがとう、ティア。お帰り、イル、カイ」
「「エルにぃさまぁ」」
エルヴァストととは、ディムースで遊んでいたので、すかさず抱き着いて行くほどの懐きようだ。
「エルばかりズルいぞ」
「父上……ほら、イル、カイ。父上と母上だ」
「ちちうえ?」
「ははうえ?」
首を傾げながらも、しっかりと王と王妃を見る。王妃は口を抑え、泣いていた。
「イル君、カイ君。ただいまって言うんだよ」
ティアが屈み込み、二人の背を押した。すると二人は駆け出し、王と王妃に抱き着いた。
「「ただいまぁ」」
「お帰り。おぉ。重くなったなぁ」
「当たり前です。抱いたのは生まれた時ですもの……」
「そうだったなぁ。はははっ、元気でなによりだ」
王の目にも少し涙が滲んでいた。そして、目の端に映ったもう一人の家族を手で示す。
「お、ほら。あれがお前達のもう一人の兄だ。レイ兄様だな」
そう、この場にはレイナルートもいた。そして、親愛を示すように二人はレイナルートにも抱き着きに行った。
「「レイにぃさま」」
「あぁ……よろしくな。イルーシュ、カイラント」
「「はいっ」」
返事も立派に出来るようになった。これも外に出した結果だ。
「みつからないようにきたんだよっ」
「つかまらないんだよ」
「ん? どういう事だ?」
レイナルートは何を言っているのかわからない様子だった。しかし、エルヴァストは気付いた。
「ティア……隠密行動……教えたのか?」
王と王妃、その後ろに控えていたエイミールがティアを見る。
「いつの間にか習得してたんだよ。王宮から二人だけで出て来ないようにとは言い聞かせたよ」
どうだ偉いだろうと頷くティア。バトラールの姿であっても、ティアの姿でそれが見えていた。
「ティア……ん? それだと、私も見つからないように抜け出せるんじゃ……」
「エル」
王が聞こえたぞと、呆れながら注意する。しかし、エルヴァストは、父親似の癖のある笑顔で正直に答えた。
「冗談とは言えませんが、ちょっとした可能性の話ですよ」
「さすがはエル兄様っ。使い方を知ってるねぇ」
「こらこら、使い方じゃないだろ? 可能性の話だと言っているじゃないか」
笑いながらそう言い合うティアとエルヴァストに、王は苦笑しながら頭を抱えた。
「イル、カイ、他に何が出来るのです?」
そう尋ねたのはクスクスと笑う王妃だ。王妃は単純に子どもの成長を喜んでいる。
「あとはねぇ」
「えいって、たおせるよ~」
「ティア……」
「う~ん……お母様に任せたのがマズかったかなぁ……」
「シアンさんか……」
エルヴァストは、シアンが遊びの一貫として教えたであろう護身術を思った。
「よしっ、子どもの成長は確認しておかないとねっ。ビアンさ~ん」
そうティアが呼ぶと、扉の外にいたビアンが恐る恐る顔を覗かせた。
「な、なんでしょう……」
「ちょっと投げ飛ばされて」
「へ?」
手招きするティアに警戒しながら近付き、イルーシュとカイラントの前に置かれた。
「さぁ、イル君、カイ君。ポイっとだよ」
「「はぁ~いっ」」
元気に返事をした二人は、いきなり加速してみせる。それに驚いていたビアンは、腹に衝撃を受けたかと思うと、天井高く放物線を描いて落ちてきた。
「「ぽ~いっ」」
「うん。上手だね」
「「ほめられたぁ」」
「……」
エルヴァストでさえ、声が出なかった。
**********
舞台裏のお話。
コリアート「……」
チェスカ「どうされました」
コリアート「あ、いや……先ほどこれが届いてな……」
チェスカ「……警備見直し案……どちらから……」
コリアート「……バトラールだ」
チェスカ「今、いらしているので?」
コリアート「あぁ……それも、子ども連れでも楽だったと……」
チェスカ「よく見せていただいてよろしいでしょうか」
コリアート「あぁ……師長は騎士もまとめていたな。確認してくれ」
チェスカ「失礼いたします……なるほど……確かにここは手薄です」
コリアート「そうか……隊長を呼ぼう……」
チェスカ「私が呼んで来ましょう」
コリアート「いや、だが……」
チェスカ「どうも、動いていないと落ち着かないのです」
コリアート「そういえば、こちらへ来る前は全て一人でやっていたのだったか……」
チェスカ「はい。では、お待ちください」
コリアート「……働き者だな……」
チェスカ(現魔術師長)
コリアート(ドーバン侯爵)
つづく?
なんて事が起こってましたとさ☆
読んでくださりありがとうございます◎
こっち方面もとっても頼りになります。
ティアちゃんの子育ては失敗?
成功?
立派に強い子に育ちました。
では次回、一日空けて1日です。
来年もよろしくお願いします◎
応援ありがとうございます!
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