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551 対抗戦
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2016. 1. 1
明けましておめでとうございます◎
次回、さすがに少しお休みさせていただきます。
サボり癖がつきやすいので休みたくないのですが……。
よろしくお願いします。
**********
騎士対冒険者の対抗戦が行われるのは、王都にある大きな闘技場だ。
今回の出場者は、この日までに行なわれた各騎士団の大会で上位になった副団長以下の者達だ。上位各八人に出場権が与えられている。
騎士団はこの国に五つ。近衛騎士団、白月の騎士団、第一騎士団、第二騎士団、第三騎士団だった紅翼の騎士団だ。
それぞれに団長と副団長、そして、騎士団の中にも十人ほどで隊が組まれている。
ティアが今回の対抗戦で出場を免除したのは、団長の四人と近衛騎士団だ。
近衛騎士団の者達は、まだまだ実力はAランクの冒険者に及ばないものの、実力重視で決められている。貴族の子息は少なかった。その為、素直に自分達の力を認め、訓練をしている。公衆の面前で灸を据える必要はないだろう。今回彼らは、会場と城の警備に当たっている。
そして、紅翼の騎士団の者達は特別枠だ。その中の半数は、近衛騎士団と同じく、警備に当たっていた。
審判は団長三人と、ギルド職員。参加しない騎士達の多くは、観戦する事になっている。
冒険者組の出場者はバトラール姿のティア、ゲイル、ルクス、エルヴァスト、ベリアローズ、ザラン、クロノス、そして、ギリギリ先日Aランクになったゼノスバートの八人だ。
対抗戦と言ってはいるが、一対一ではない。当初はそうする予定ではいたのだが、冒険者の方が強いのは周知の事実。それならばと、各騎士団の上位八人対、冒険者八名で戦う事になった。
つまり、第一試合は第二騎士団。第二試合は第一騎士団。第三試合は白月の騎士団となり、それぞれ冒険者八人全員で相手をする。
数も騎士団の方を多くしようとも考えたのだが、それではあまりにも馬鹿にし過ぎかと思い、止めておいたのだ。
大会の開催が宣言される前、王はこの場で双子であるイルーシュとカイラントをお披露目する。双子の風習を信じている者達に迷信であると伝えるという。
その際、その由来となった出来事を話す王。理不尽に離さねばならなかった事を悔い、訴える。今後、このような事があってはならないのだと。
そして、イルーシュとカイラントが姿を現わす。すると、会場から一気に歓声があがった。
それをゲートの入り口から見上げて見ていたゲイルが笑みを浮かべながらしみじみと言う。
「この国も変わっていくなぁ」
「いい事でしょ?」
バトラール姿のティアがゲイルの隣に立て、ふっと笑いながら尋ねる。それにゲイルが快活に笑って答えた。
「あぁ、いい事だなっ。さすがは女神様だ」
「っ……ゲイルパパ、なんで知って……?」
ゲイルには女神である事をちゃんと話した覚えはない。しかし、ゲイルはかなり前からその可能性に気付いていたらしい。
「マスターに昔聞いた事があってな。確かクレアとの結婚を考えてる時に、相談した時だ。マスターにもそんな人がいるかと聞いたんだ」
「え……シェリーに……?」
ゲイルにとってシェリスは師匠であり、尊敬するマスターだ。シェリスもゲイルを気に入っていた事もあり、そんないつもならば鼻で笑ってあしらうような問いかけも、ちゃんと答えていたようだった。
「いつかこの町に降り立つ女神を待つ為にここに居るって言われて、その頃は女神みたいな美人さんが訪ねてくるのを何百年も待ってるんだと思ってたんだがなぁ。まさか、本当の女神を待ってるとは。さすが、マスター! スケールがデケェよな!」
「……ゲイルパパ……」
興奮気味に言うゲイルに、少し呆れてしまったティアだ。
「そういやぁ、嬢ちゃんどうすんだ? ルクスとくっついて欲しいけどなぁ。俺としては、マスターも幸せになって欲しいからなぁ」
そうゲイルが言うと、ゼノスバートが焦って口を開く。
「ま、まだ早いっ。こう見えてもまだ子どもだからなっ」
「ゼノ……絶対それ、嬢ちゃんが大人になっても言うだろ……」
ゲイルが胡乱げな目でティアの後ろにいるゼノスバートを見る。すると、ゼノスバートは落ち着かない様子で答えた。
「そ、そんなことは……」
「あるでしょうね」
「あるだろう」
しきりに頷いて言うのは、ベリアローズとエルヴァストだ。
「っ、ベル、エルまで……」
「お祖父様、ほどほどになさってくださいね。かなり気の早い話だとは思いますが……」
「まぁ、結婚して所帯に落ち着く所は、想像できないがなっ」
「そうだろうっ! 誰かの妻になどなれるはずがないっ」
なぜそこで納得するのかと、ティアは痙攣する頬を押さえてゼノスバート達を睨みつけた。
「お祖父様、お兄様方、失礼ですよ。まるで人を結婚出来ない女のように……っ」
「「「すいません……」」」
ティアも、まだ早い話であり、相手を決めようと考えた事はない。だから、どう言われても構わないのだが、女としては少しばかり苛つくのだ。
離れて後ろの方にいたルクスも気が気でなく、それをクロノスとザランが宥めていた。
「くくくっ、お、始まるな」
ゲイルが仕掛けた話だというのに、もう本人は対抗戦へと意識を向けていた。
「そうだね……みんな、全然相手になんないとは思うけど、ちょっと実力を見るまでは軽く相手してやって」
「大分、鍛えてやったがな。瞬殺は止めてやってくれ」
そうエルヴァストが言う。それに、皆が頷き、ゲートをくぐるのだった。
**********
舞台裏のお話。
レイナルート「大丈夫だろうか……」
コリアート「信じましょう。瞬殺はしないと……」
チェスカ「自分達が弱いのだと自覚するのも、彼らには良いことだと思います」
レイナルート「そうは言うが、師長殿。彼らも傷付いてしまいます」
チェスカ「こんな事で傷付いているようなら、彼らには何一つ成す力はないでしょう」
コリアート「そうだな……認めなくては強くはなれん……」
レイナルート「そういうものですか」
チェスカ「はい。驕っては身を滅ぼします。騎士達にはそれが顕著です」
レイナルート「そうか……では、負けるのも仕方がないのだな……」
コリアート「負けるとお思いですか」
レイナルート「あぁ。エルにも泣かされていたしな……」
コリアート「そうでしたね……」
レイナルート「そういえば、エルはどこにいるんだ?」
コリアート「そう言われてみますと……どちらに」
チェスカ「あそこでしょう」
レイナルート「ん?」
コリアート「……まさか……」
つづく?
なんて事が起こってましたとさ☆
読んでくださりありがとうございます◎
出るとは知らないようです。
もう一つの舞台裏
ティア「ブタカン、マイクなんて持って、何やってんの?」
あっ、良いところに。
ティアちゃん、今年の抱負をお願いします。
ティア「抱負? う~ん……お兄様の結婚式をしてあげて、騎士達を鍛えて……色々あるんだけど?」
抱負って言うか、それ予定です?
ティア「あ、そうだね。うんうん。抱負って何? まずは学園を乗っ取るとか?」
そ、それは……。
ティア「ん? カル姐!」
カル「何をしているのかな?」
こ、今年の抱負をお聞きしています。
カル「抱負ねぇ……そろそろ結婚したいなぁ」
ティア「えっ、そ、カル姐!?」
カル「おや、抱負なのだからいいだろう? 確実とまではいかないが、夢を持ってな」
ティア「はい……」
わかりました!
結婚ですね!
ティア「お~い。ブタカン……」
クロちゃんを貶めて、追い詰めて……うん。いける!
ティア「ヤメろ!!」
グフッ……
カル「おやおや。年明けに縁起が悪いよ」
ティア「そうそう。気を付けなね」
うっ……もっと心配してください……。
ティア「気を付けなね」
に、二度言った……。
カル「はっはっはっ、無理強いはダメだからね」
……すみませんでした……
ティア「ほら、じゃぁ挨拶」
カル「そうだね。去年一年世話になったからね」
そうでした……。
皆様、今年もよろしくお願いいたします◎
ティア「よろしくね~」
では次回、少しお休みをいただいて6日です。
次回までに第4回人物紹介を上げさせていただきます。
よろしくお願いします◎
明けましておめでとうございます◎
次回、さすがに少しお休みさせていただきます。
サボり癖がつきやすいので休みたくないのですが……。
よろしくお願いします。
**********
騎士対冒険者の対抗戦が行われるのは、王都にある大きな闘技場だ。
今回の出場者は、この日までに行なわれた各騎士団の大会で上位になった副団長以下の者達だ。上位各八人に出場権が与えられている。
騎士団はこの国に五つ。近衛騎士団、白月の騎士団、第一騎士団、第二騎士団、第三騎士団だった紅翼の騎士団だ。
それぞれに団長と副団長、そして、騎士団の中にも十人ほどで隊が組まれている。
ティアが今回の対抗戦で出場を免除したのは、団長の四人と近衛騎士団だ。
近衛騎士団の者達は、まだまだ実力はAランクの冒険者に及ばないものの、実力重視で決められている。貴族の子息は少なかった。その為、素直に自分達の力を認め、訓練をしている。公衆の面前で灸を据える必要はないだろう。今回彼らは、会場と城の警備に当たっている。
そして、紅翼の騎士団の者達は特別枠だ。その中の半数は、近衛騎士団と同じく、警備に当たっていた。
審判は団長三人と、ギルド職員。参加しない騎士達の多くは、観戦する事になっている。
冒険者組の出場者はバトラール姿のティア、ゲイル、ルクス、エルヴァスト、ベリアローズ、ザラン、クロノス、そして、ギリギリ先日Aランクになったゼノスバートの八人だ。
対抗戦と言ってはいるが、一対一ではない。当初はそうする予定ではいたのだが、冒険者の方が強いのは周知の事実。それならばと、各騎士団の上位八人対、冒険者八名で戦う事になった。
つまり、第一試合は第二騎士団。第二試合は第一騎士団。第三試合は白月の騎士団となり、それぞれ冒険者八人全員で相手をする。
数も騎士団の方を多くしようとも考えたのだが、それではあまりにも馬鹿にし過ぎかと思い、止めておいたのだ。
大会の開催が宣言される前、王はこの場で双子であるイルーシュとカイラントをお披露目する。双子の風習を信じている者達に迷信であると伝えるという。
その際、その由来となった出来事を話す王。理不尽に離さねばならなかった事を悔い、訴える。今後、このような事があってはならないのだと。
そして、イルーシュとカイラントが姿を現わす。すると、会場から一気に歓声があがった。
それをゲートの入り口から見上げて見ていたゲイルが笑みを浮かべながらしみじみと言う。
「この国も変わっていくなぁ」
「いい事でしょ?」
バトラール姿のティアがゲイルの隣に立て、ふっと笑いながら尋ねる。それにゲイルが快活に笑って答えた。
「あぁ、いい事だなっ。さすがは女神様だ」
「っ……ゲイルパパ、なんで知って……?」
ゲイルには女神である事をちゃんと話した覚えはない。しかし、ゲイルはかなり前からその可能性に気付いていたらしい。
「マスターに昔聞いた事があってな。確かクレアとの結婚を考えてる時に、相談した時だ。マスターにもそんな人がいるかと聞いたんだ」
「え……シェリーに……?」
ゲイルにとってシェリスは師匠であり、尊敬するマスターだ。シェリスもゲイルを気に入っていた事もあり、そんないつもならば鼻で笑ってあしらうような問いかけも、ちゃんと答えていたようだった。
「いつかこの町に降り立つ女神を待つ為にここに居るって言われて、その頃は女神みたいな美人さんが訪ねてくるのを何百年も待ってるんだと思ってたんだがなぁ。まさか、本当の女神を待ってるとは。さすが、マスター! スケールがデケェよな!」
「……ゲイルパパ……」
興奮気味に言うゲイルに、少し呆れてしまったティアだ。
「そういやぁ、嬢ちゃんどうすんだ? ルクスとくっついて欲しいけどなぁ。俺としては、マスターも幸せになって欲しいからなぁ」
そうゲイルが言うと、ゼノスバートが焦って口を開く。
「ま、まだ早いっ。こう見えてもまだ子どもだからなっ」
「ゼノ……絶対それ、嬢ちゃんが大人になっても言うだろ……」
ゲイルが胡乱げな目でティアの後ろにいるゼノスバートを見る。すると、ゼノスバートは落ち着かない様子で答えた。
「そ、そんなことは……」
「あるでしょうね」
「あるだろう」
しきりに頷いて言うのは、ベリアローズとエルヴァストだ。
「っ、ベル、エルまで……」
「お祖父様、ほどほどになさってくださいね。かなり気の早い話だとは思いますが……」
「まぁ、結婚して所帯に落ち着く所は、想像できないがなっ」
「そうだろうっ! 誰かの妻になどなれるはずがないっ」
なぜそこで納得するのかと、ティアは痙攣する頬を押さえてゼノスバート達を睨みつけた。
「お祖父様、お兄様方、失礼ですよ。まるで人を結婚出来ない女のように……っ」
「「「すいません……」」」
ティアも、まだ早い話であり、相手を決めようと考えた事はない。だから、どう言われても構わないのだが、女としては少しばかり苛つくのだ。
離れて後ろの方にいたルクスも気が気でなく、それをクロノスとザランが宥めていた。
「くくくっ、お、始まるな」
ゲイルが仕掛けた話だというのに、もう本人は対抗戦へと意識を向けていた。
「そうだね……みんな、全然相手になんないとは思うけど、ちょっと実力を見るまでは軽く相手してやって」
「大分、鍛えてやったがな。瞬殺は止めてやってくれ」
そうエルヴァストが言う。それに、皆が頷き、ゲートをくぐるのだった。
**********
舞台裏のお話。
レイナルート「大丈夫だろうか……」
コリアート「信じましょう。瞬殺はしないと……」
チェスカ「自分達が弱いのだと自覚するのも、彼らには良いことだと思います」
レイナルート「そうは言うが、師長殿。彼らも傷付いてしまいます」
チェスカ「こんな事で傷付いているようなら、彼らには何一つ成す力はないでしょう」
コリアート「そうだな……認めなくては強くはなれん……」
レイナルート「そういうものですか」
チェスカ「はい。驕っては身を滅ぼします。騎士達にはそれが顕著です」
レイナルート「そうか……では、負けるのも仕方がないのだな……」
コリアート「負けるとお思いですか」
レイナルート「あぁ。エルにも泣かされていたしな……」
コリアート「そうでしたね……」
レイナルート「そういえば、エルはどこにいるんだ?」
コリアート「そう言われてみますと……どちらに」
チェスカ「あそこでしょう」
レイナルート「ん?」
コリアート「……まさか……」
つづく?
なんて事が起こってましたとさ☆
読んでくださりありがとうございます◎
出るとは知らないようです。
もう一つの舞台裏
ティア「ブタカン、マイクなんて持って、何やってんの?」
あっ、良いところに。
ティアちゃん、今年の抱負をお願いします。
ティア「抱負? う~ん……お兄様の結婚式をしてあげて、騎士達を鍛えて……色々あるんだけど?」
抱負って言うか、それ予定です?
ティア「あ、そうだね。うんうん。抱負って何? まずは学園を乗っ取るとか?」
そ、それは……。
ティア「ん? カル姐!」
カル「何をしているのかな?」
こ、今年の抱負をお聞きしています。
カル「抱負ねぇ……そろそろ結婚したいなぁ」
ティア「えっ、そ、カル姐!?」
カル「おや、抱負なのだからいいだろう? 確実とまではいかないが、夢を持ってな」
ティア「はい……」
わかりました!
結婚ですね!
ティア「お~い。ブタカン……」
クロちゃんを貶めて、追い詰めて……うん。いける!
ティア「ヤメろ!!」
グフッ……
カル「おやおや。年明けに縁起が悪いよ」
ティア「そうそう。気を付けなね」
うっ……もっと心配してください……。
ティア「気を付けなね」
に、二度言った……。
カル「はっはっはっ、無理強いはダメだからね」
……すみませんでした……
ティア「ほら、じゃぁ挨拶」
カル「そうだね。去年一年世話になったからね」
そうでした……。
皆様、今年もよろしくお願いいたします◎
ティア「よろしくね~」
では次回、少しお休みをいただいて6日です。
次回までに第4回人物紹介を上げさせていただきます。
よろしくお願いします◎
応援ありがとうございます!
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