395 / 457
連載
557 王太子とのダンス
しおりを挟む
2017. 1. 23
**********
ティアが、既に舞踏会の始まっている会場に入る頃。レイナルートは、今の王太子としての義務を果たしている最中だった。
「何人目かな~」
始まってそう時間は経っていないと思っているのだが、実際は三曲目に入っていたようだ。
そして、レイナルートは二曲目から一曲ずつ、婚約者候補達と踊っているのだ。
レイナルートの婚約者候補は仮候補のティアを含めて三人と聞いている。
国としての現状は維持する為、他国の姫は混じっていない。ティア以外の二人は、古い公爵家の令嬢だ。
一人目の令嬢は、レイナルートの一つ下。エルヴァストと同じ学年にいた令嬢だ。
大人しい令嬢で、本来ならば候補とはならなかったのだが、前々から密かに候補に上がっていたドーバン侯爵の令嬢のユフィアが卒業前からベリアローズの婚約者となった為、急遽繰り上げられた令嬢だった。
そして、今レイナルートの手を取っているのは、リザラント公爵家の令嬢。ローズだ。
完全に恋する乙女の顔をしている。あれでは、レイナルートは踊りにくかろう。まぁ、そこは王太子。慣れてはいないだろうが、表面上はしっかり取り繕っているようだ。
「さすがは王太子……ね」
そんな所は、かつての一番上の兄に似ていると、少し感傷に浸る。そして、曲の終わりに近付くにつれ、ティアはゆっくりと前へ進んでいく。
ティアが一歩進むにつれ、人々が道を開けていく。ティアの煌びやかな気配に、誰もが振り返るのだ。
そうして、王太子がローズと礼をする頃。ティアは一番前に歩み出ていた。
それに、ローズを見送る事なく、レイナルートの視線が釘付けになる。そのまま、レイナルートは引き寄せられて来た。
そんなレイナルートに、ティアは女王でもあるかのように、片手を取らせた。レイナルートの視線は外れない。仕方なく、ティアはゆっくりとレイナルートをホールの中心へと導いていく。
向き直ったティアは、クスリと笑ってレイナルートへ小さく言った。
「見つめすぎよ。私にリードさせるつもり?」
「はっ、い、いえ……申し訳ない……」
「そう思うなら、ちゃんとリードなさい」
「はい」
正気に戻ったレイナルートを見て、満足気に笑った。その笑みにまた魅入られそうになるのを堪え、レイナルートとティアは踊り始める。
誰もが二人を見つめていた。
「緊張してるんじゃない?」
「君が上手いから……」
「当然、年期が違うもの」
「そうでしたね……とても不思議です。皆も、まさか女神と踊っているとは知りませんからね」
レイナルートは、笑みを深めた。それがまた、仲睦まじい様子に見えて、会場の者達は眩しいものでも見るように見つめていた。
そんな中、ティアは感じていた。ローズの鋭い視線と、何者かの気配。
「どうされました?」
様子は変わらないが、ティアの目が鋭い光を宿した事に気付いたようだ。
「嫉妬した女って怖いわね。それと……ちょっと招かれざる客が紛れ込んでるみたい」
「なんですって……」
「こら。笑顔を忘れないで」
「あ、はい……それで、皆に危険は……」
周りにはバレないよう、そう話す。
「大丈夫よ。何とかなるわ。ただ……もしあなたが狙われたら、その指輪を遠慮なく使って」
「指輪……っ、なぜそれをっ」
レイナルートは、身代わりの指輪の事をティアが知っているとは知らなかったのだ。
「そんなのとっくに知ってるわよ。エル兄様の対策もバッチリだわ。だから、もし危険だと感じたら、すぐに発動させて。エル兄様が持ち堪えてる間に、私も駆け付ける事ができる」
「……エルに、危険はないのだな?」
エルヴァストに大丈夫だと言われても、心の底では納得できていなかった。危険だと分かっている場所へエルヴァストを向かわせるのだ。大切な弟を危険な目に合わせたくはない。
「心配しないで……私を誰だと思ってるの?」
「っ……あぁ。その時は頼みます」
「ふふっ、任せて。相手がどこぞの国でも、遠慮なんてしないわ。お仕置きは、相手に反撃の余地を残さないものよ」
「そ、そうですか……」
大変な強敵を相手にする事になると分かって、レイナルートは、敵に同情してしまいそうだと力無い笑みを浮かべたのだった。
**********
舞台裏のお話。
王「ものすごくいい雰囲気だな」
王妃「本当に……素敵ですわ」
王「あれが王妃になったら……間違いなく国は乗っ取られるな」
王妃「レイナルートには身が重いでしょうね。完璧に文句なくやらなくては……」
王「う~む……やはり女王もいいかもな」
王妃「ふふっ、あの子なら構いませんわね」
エル「……父上……それより先に国が滅びますよ」
王「そうだったなぁ。賢者殿を敵に回すのはいただけない」
エル「分かっていらっしゃるなら、口にするのもお控えください」
王「やはり強いのか?」
エル「ご存知ではないのですか……? 冒険者であった当初は、貴族を貶めるのが得意だったそうです」
王「……分かった。もう言うまい……」
エル「そうしてください」
王「そうだ。それより、お前の姫はどうした」
エル「……どうも、心の準備中だそうです……」
王妃「まぁ。それは可愛らしい方なのですね」
エル「いえ……ここでもう、脈がないかどうかの答えが出ます……」
王妃「え?」
王「それは……うむ。なるほど……健闘を祈る」
エル「……はい……」
つづく?
なんて事が起こってましたとさ☆
読んでくださりありがとうございます◎
ラキアちゃんは手厳しい所がありますから。
舞踏会が始まりました。
まぁ、当然ローズは面白くないでしょうね。
そして、騒動の予感です。
では次回、金曜27日の0時です。
よろしくお願いします◎
**********
ティアが、既に舞踏会の始まっている会場に入る頃。レイナルートは、今の王太子としての義務を果たしている最中だった。
「何人目かな~」
始まってそう時間は経っていないと思っているのだが、実際は三曲目に入っていたようだ。
そして、レイナルートは二曲目から一曲ずつ、婚約者候補達と踊っているのだ。
レイナルートの婚約者候補は仮候補のティアを含めて三人と聞いている。
国としての現状は維持する為、他国の姫は混じっていない。ティア以外の二人は、古い公爵家の令嬢だ。
一人目の令嬢は、レイナルートの一つ下。エルヴァストと同じ学年にいた令嬢だ。
大人しい令嬢で、本来ならば候補とはならなかったのだが、前々から密かに候補に上がっていたドーバン侯爵の令嬢のユフィアが卒業前からベリアローズの婚約者となった為、急遽繰り上げられた令嬢だった。
そして、今レイナルートの手を取っているのは、リザラント公爵家の令嬢。ローズだ。
完全に恋する乙女の顔をしている。あれでは、レイナルートは踊りにくかろう。まぁ、そこは王太子。慣れてはいないだろうが、表面上はしっかり取り繕っているようだ。
「さすがは王太子……ね」
そんな所は、かつての一番上の兄に似ていると、少し感傷に浸る。そして、曲の終わりに近付くにつれ、ティアはゆっくりと前へ進んでいく。
ティアが一歩進むにつれ、人々が道を開けていく。ティアの煌びやかな気配に、誰もが振り返るのだ。
そうして、王太子がローズと礼をする頃。ティアは一番前に歩み出ていた。
それに、ローズを見送る事なく、レイナルートの視線が釘付けになる。そのまま、レイナルートは引き寄せられて来た。
そんなレイナルートに、ティアは女王でもあるかのように、片手を取らせた。レイナルートの視線は外れない。仕方なく、ティアはゆっくりとレイナルートをホールの中心へと導いていく。
向き直ったティアは、クスリと笑ってレイナルートへ小さく言った。
「見つめすぎよ。私にリードさせるつもり?」
「はっ、い、いえ……申し訳ない……」
「そう思うなら、ちゃんとリードなさい」
「はい」
正気に戻ったレイナルートを見て、満足気に笑った。その笑みにまた魅入られそうになるのを堪え、レイナルートとティアは踊り始める。
誰もが二人を見つめていた。
「緊張してるんじゃない?」
「君が上手いから……」
「当然、年期が違うもの」
「そうでしたね……とても不思議です。皆も、まさか女神と踊っているとは知りませんからね」
レイナルートは、笑みを深めた。それがまた、仲睦まじい様子に見えて、会場の者達は眩しいものでも見るように見つめていた。
そんな中、ティアは感じていた。ローズの鋭い視線と、何者かの気配。
「どうされました?」
様子は変わらないが、ティアの目が鋭い光を宿した事に気付いたようだ。
「嫉妬した女って怖いわね。それと……ちょっと招かれざる客が紛れ込んでるみたい」
「なんですって……」
「こら。笑顔を忘れないで」
「あ、はい……それで、皆に危険は……」
周りにはバレないよう、そう話す。
「大丈夫よ。何とかなるわ。ただ……もしあなたが狙われたら、その指輪を遠慮なく使って」
「指輪……っ、なぜそれをっ」
レイナルートは、身代わりの指輪の事をティアが知っているとは知らなかったのだ。
「そんなのとっくに知ってるわよ。エル兄様の対策もバッチリだわ。だから、もし危険だと感じたら、すぐに発動させて。エル兄様が持ち堪えてる間に、私も駆け付ける事ができる」
「……エルに、危険はないのだな?」
エルヴァストに大丈夫だと言われても、心の底では納得できていなかった。危険だと分かっている場所へエルヴァストを向かわせるのだ。大切な弟を危険な目に合わせたくはない。
「心配しないで……私を誰だと思ってるの?」
「っ……あぁ。その時は頼みます」
「ふふっ、任せて。相手がどこぞの国でも、遠慮なんてしないわ。お仕置きは、相手に反撃の余地を残さないものよ」
「そ、そうですか……」
大変な強敵を相手にする事になると分かって、レイナルートは、敵に同情してしまいそうだと力無い笑みを浮かべたのだった。
**********
舞台裏のお話。
王「ものすごくいい雰囲気だな」
王妃「本当に……素敵ですわ」
王「あれが王妃になったら……間違いなく国は乗っ取られるな」
王妃「レイナルートには身が重いでしょうね。完璧に文句なくやらなくては……」
王「う~む……やはり女王もいいかもな」
王妃「ふふっ、あの子なら構いませんわね」
エル「……父上……それより先に国が滅びますよ」
王「そうだったなぁ。賢者殿を敵に回すのはいただけない」
エル「分かっていらっしゃるなら、口にするのもお控えください」
王「やはり強いのか?」
エル「ご存知ではないのですか……? 冒険者であった当初は、貴族を貶めるのが得意だったそうです」
王「……分かった。もう言うまい……」
エル「そうしてください」
王「そうだ。それより、お前の姫はどうした」
エル「……どうも、心の準備中だそうです……」
王妃「まぁ。それは可愛らしい方なのですね」
エル「いえ……ここでもう、脈がないかどうかの答えが出ます……」
王妃「え?」
王「それは……うむ。なるほど……健闘を祈る」
エル「……はい……」
つづく?
なんて事が起こってましたとさ☆
読んでくださりありがとうございます◎
ラキアちゃんは手厳しい所がありますから。
舞踏会が始まりました。
まぁ、当然ローズは面白くないでしょうね。
そして、騒動の予感です。
では次回、金曜27日の0時です。
よろしくお願いします◎
20
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。
古森真朝
ファンタジー
「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。
俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」
新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは――
※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。