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連載
556 王家の人達
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2017. 1. 20
**********
エルヴァストは、まだ舞踏会が始まる前、落ち着かない様子で控えていた。それが心配で、レイナルートはその肩を叩く。
「もう始まるぞ」
「は、はい……」
そんな様子が、いつものエルヴァストと違い過ぎて、レイナルートは思わず笑ってしまう。
「ふっ、昼間の騎士達を蹴散らした元気はどこへ行ったんだ?」
「それとは違いますよ。あれは日頃の苛立ちをぶつけるだけで……あ……」
エルヴァストは思わず本音が出てしまったようだ。そんなエルヴァストも珍しいと、レイナルートは嬉しくなる。弟の、いつもとは違う一面を見られた事が嬉しいのだ。
そこで、指にはまっている指輪に目が行った。それはくすんだ色の古い物。それが身を守る為の魔導具だとは知らされていたが、発動させれば、対の指輪を着けているエルヴァストと入れ替わるものだとは知らなかった。
それを知ったのは数年前。魔術師長がウルスヴァンからチェスカに変わるという時、ウルスヴァンが話したようだ。
その指輪を持つ者として知っておくべき事だと言われたのだ。
「エルは強いな……」
そう苦笑を浮かべながら呟いて、指輪を見た。
「兄上?」
一体どうしたのかとエルヴァストは心配そうに尋ねる。
「いや……この指輪の事を、お前は渡された時から知っていたのだったな……」
「あ、はい……」
気まずげにエルヴァストは目をそらす。レイナルートは申し訳なさそうに言う。
「私は王太子だ。それは、理解している。だが、王太子であっても、弟であるお前を身代わりとさせるような……情けない兄にはなりたくない……」
「兄上……」
エルヴァストはベリアローズやティアと会うまで、こんな風に兄が言ってくれる日を望んでいた。
レイナルートが指輪の効果を知らない事は分かっていたが、それでもいつか、使う前に知って、躊躇ってくれたらと願っていたのだ。
「この指輪は、外そうと思っている。本当はすぐに外したかったんだが、外せないようにされているらしくてな……」
「あ、それは私もです……ですが、着けていてください」
「なぜだ? お前を傷付ける物だ。お前の存在を……無下に扱う物だろう」
外す努力をしてくれていた事が、エルヴァストは嬉しかった。もうこの言葉だけでエルヴァストは十分だったのだ。
「構いません。それに……」
そこで区切って笑みを浮かべて言った。
「私は兄上よりも強いです」
「え……」
実力は確実にエルヴァストが上だとレイナルートはもう知っている。しかし、こんなにもはっきりと言われるとは予想していなかったようだ。
目を丸くしたレイナルートの視線を受けて、更にエルヴァストは笑みを深める。
「私はその辺の騎士より強いです。それに、冒険者ランクはAと実力を認められています。だから、遠慮なく使ってください。誰が相手でも、必ず倒して凱旋してみせましょう」
「……エル……」
エルヴァストの宣言を聞いて、レイナルートは、確かにそんな結末になるだろうと思えたらしい。呆然とした後、レイナルートは声を上げて笑った。
「ふっ、はははっ。成る程。それは間違いないな。はははははっ」
「あ、兄上が笑っ…….」
エルヴァストの方が驚いていた。そこに、いよいよ舞踏会の準備を終えた王と王妃、双子の弟のイルーシュとカイラントがやって来た。
「珍しいなぁ。レイが笑うとは」
「はっ、父上。申し訳ありません」
「いやいや、良い傾向だ。お前は真面目過ぎていかん。早く、そんなお前を支えてくれる姫が欲しいものだなぁ」
「ち、父上……」
相変わらず、王は飄々と爆弾を落とす。
「レイあにうえ。おねぇさまほしいです」
「レイあにうえ。おねぇさまをみつけてください」
「……お前達まで……」
小さな弟達にまで急かされるとはどうなっているんだと呆れるレイナルート。これに、参戦するのが王と性格の似たエルヴァストだ。
「兄上が結婚してくださらないと、私も困りますねぇ」
「エルまでっ」
「あ、ですが、ティアだけはだめですよ。間違いなく頼りになりますが、国が乗っ取られます」
「……」
「はっはっはっ。女王が生まれそうだな」
「父上っ」
王とエルヴァストの二人で、レイナルートをからかう。そこで、双子が揃って言う。
「「ティアねぇさまは、もうねぇさまだから、ケッコンしなくていいです」」
「……え……」
「そうだな。私も『エル兄様』と呼ばれているので」
「そうか。なら、私もお父様と呼んでもらおうか」
「あら。ではわたくしもお母様と呼んでもらいますわ」
王妃までも参戦し、最後までレイナルートをからかいながら出番を待つエルヴァスト達だった。
**********
舞台裏のお話。
ビアン「エル様っ……良かったですねぇ……」
チェスカ「王太子様はとてもお優しい方です。それを知っている大臣達にウルスヴァン様は口止めされていました」
ビアン「そうでしたか」
チェスカ「ウルスヴァン様もかなり悩まれたようです。お辞める時に、吹っ切れたそうですが」
ビアン「あぁ。もう大臣達に気を遣う事ないですもんね。そういえば、あの指輪を外す事って出来ないんですか?」
チェスカ「ええ。歴代の指輪の持ち主達は、死した後に回収していたようですので。誰も知りません」
ビアン「……お嬢さんなら知っているかもしれませんね……」
チェスカ「どなたですか?」
ビアン「……バトラールさんです」
チェスカ「そうですね。聞いてみましょう」
ビアン「はい」
つづく?
なんて事が起こってましたとさ☆
読んでくださりありがとうございます◎
ティアちゃんなら知っているでしょうね。
ここでようやく、エル兄ちゃんを本当の意味で救えましたね。
では次回、月曜23日の0時です。
よろしくお願いします◎
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エルヴァストは、まだ舞踏会が始まる前、落ち着かない様子で控えていた。それが心配で、レイナルートはその肩を叩く。
「もう始まるぞ」
「は、はい……」
そんな様子が、いつものエルヴァストと違い過ぎて、レイナルートは思わず笑ってしまう。
「ふっ、昼間の騎士達を蹴散らした元気はどこへ行ったんだ?」
「それとは違いますよ。あれは日頃の苛立ちをぶつけるだけで……あ……」
エルヴァストは思わず本音が出てしまったようだ。そんなエルヴァストも珍しいと、レイナルートは嬉しくなる。弟の、いつもとは違う一面を見られた事が嬉しいのだ。
そこで、指にはまっている指輪に目が行った。それはくすんだ色の古い物。それが身を守る為の魔導具だとは知らされていたが、発動させれば、対の指輪を着けているエルヴァストと入れ替わるものだとは知らなかった。
それを知ったのは数年前。魔術師長がウルスヴァンからチェスカに変わるという時、ウルスヴァンが話したようだ。
その指輪を持つ者として知っておくべき事だと言われたのだ。
「エルは強いな……」
そう苦笑を浮かべながら呟いて、指輪を見た。
「兄上?」
一体どうしたのかとエルヴァストは心配そうに尋ねる。
「いや……この指輪の事を、お前は渡された時から知っていたのだったな……」
「あ、はい……」
気まずげにエルヴァストは目をそらす。レイナルートは申し訳なさそうに言う。
「私は王太子だ。それは、理解している。だが、王太子であっても、弟であるお前を身代わりとさせるような……情けない兄にはなりたくない……」
「兄上……」
エルヴァストはベリアローズやティアと会うまで、こんな風に兄が言ってくれる日を望んでいた。
レイナルートが指輪の効果を知らない事は分かっていたが、それでもいつか、使う前に知って、躊躇ってくれたらと願っていたのだ。
「この指輪は、外そうと思っている。本当はすぐに外したかったんだが、外せないようにされているらしくてな……」
「あ、それは私もです……ですが、着けていてください」
「なぜだ? お前を傷付ける物だ。お前の存在を……無下に扱う物だろう」
外す努力をしてくれていた事が、エルヴァストは嬉しかった。もうこの言葉だけでエルヴァストは十分だったのだ。
「構いません。それに……」
そこで区切って笑みを浮かべて言った。
「私は兄上よりも強いです」
「え……」
実力は確実にエルヴァストが上だとレイナルートはもう知っている。しかし、こんなにもはっきりと言われるとは予想していなかったようだ。
目を丸くしたレイナルートの視線を受けて、更にエルヴァストは笑みを深める。
「私はその辺の騎士より強いです。それに、冒険者ランクはAと実力を認められています。だから、遠慮なく使ってください。誰が相手でも、必ず倒して凱旋してみせましょう」
「……エル……」
エルヴァストの宣言を聞いて、レイナルートは、確かにそんな結末になるだろうと思えたらしい。呆然とした後、レイナルートは声を上げて笑った。
「ふっ、はははっ。成る程。それは間違いないな。はははははっ」
「あ、兄上が笑っ…….」
エルヴァストの方が驚いていた。そこに、いよいよ舞踏会の準備を終えた王と王妃、双子の弟のイルーシュとカイラントがやって来た。
「珍しいなぁ。レイが笑うとは」
「はっ、父上。申し訳ありません」
「いやいや、良い傾向だ。お前は真面目過ぎていかん。早く、そんなお前を支えてくれる姫が欲しいものだなぁ」
「ち、父上……」
相変わらず、王は飄々と爆弾を落とす。
「レイあにうえ。おねぇさまほしいです」
「レイあにうえ。おねぇさまをみつけてください」
「……お前達まで……」
小さな弟達にまで急かされるとはどうなっているんだと呆れるレイナルート。これに、参戦するのが王と性格の似たエルヴァストだ。
「兄上が結婚してくださらないと、私も困りますねぇ」
「エルまでっ」
「あ、ですが、ティアだけはだめですよ。間違いなく頼りになりますが、国が乗っ取られます」
「……」
「はっはっはっ。女王が生まれそうだな」
「父上っ」
王とエルヴァストの二人で、レイナルートをからかう。そこで、双子が揃って言う。
「「ティアねぇさまは、もうねぇさまだから、ケッコンしなくていいです」」
「……え……」
「そうだな。私も『エル兄様』と呼ばれているので」
「そうか。なら、私もお父様と呼んでもらおうか」
「あら。ではわたくしもお母様と呼んでもらいますわ」
王妃までも参戦し、最後までレイナルートをからかいながら出番を待つエルヴァスト達だった。
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舞台裏のお話。
ビアン「エル様っ……良かったですねぇ……」
チェスカ「王太子様はとてもお優しい方です。それを知っている大臣達にウルスヴァン様は口止めされていました」
ビアン「そうでしたか」
チェスカ「ウルスヴァン様もかなり悩まれたようです。お辞める時に、吹っ切れたそうですが」
ビアン「あぁ。もう大臣達に気を遣う事ないですもんね。そういえば、あの指輪を外す事って出来ないんですか?」
チェスカ「ええ。歴代の指輪の持ち主達は、死した後に回収していたようですので。誰も知りません」
ビアン「……お嬢さんなら知っているかもしれませんね……」
チェスカ「どなたですか?」
ビアン「……バトラールさんです」
チェスカ「そうですね。聞いてみましょう」
ビアン「はい」
つづく?
なんて事が起こってましたとさ☆
読んでくださりありがとうございます◎
ティアちゃんなら知っているでしょうね。
ここでようやく、エル兄ちゃんを本当の意味で救えましたね。
では次回、月曜23日の0時です。
よろしくお願いします◎
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