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617 頼もしい限りです
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2017. 9. 15
**********
マティアスの戦い方は、ティアに似ていると誰もが思った。
しかし、ティアよりも圧倒的に強いと多くの実力者達は感じていた。戦いを楽しむ様子も、長い経験を経て持ち得る余裕。
どれだけ巨大で、危険なものであっても、きっと負けることなどあり得ない。そう思えてしまう。
「すごい……」
ティアを見慣れているルクスが呆然と呟くのだから、周りも認めずにはいられない。
けれど、そうして見惚れていられる時間はそう長くはない。今もヒュドラの脇を抜けて黒い影が向かってくる。まだまだ黒い柱はその存在を主張し続けていた。
『おいおい、呆っとするなよっと』
武器はティアがバトラールになった時に持つ赤いハルバードにそっくりだ。
『紅姫』と呼ばれるその武器は、一閃すれば、高い位置にある首も簡単に千切れ飛んだ。実際の重量はかなりのものだと思われるのに、ただの棒切れのように軽く振り回すから恐ろしい。
『おらよっと……ん? お~、ティアの方も大変そうだな……ここは一つ、応援でも送ってやるのが優しい母様ってやつだよなっ』
そんな事をぶつぶつ言いだしたマティアス。それから、ちらりとルクスに視線を投げてよこした。
「なんだ……?」
離れていたルクスには、さきほどの言葉は届いていない。だから不思議そうに、向かってくる魔獣を剣で叩き伏せながらマティアスを見つめていた。
すると、マティアスは身軽にディストレアの背から飛び降りる。二言三言、何やらそのディストレアと言葉を交わすと、今度は単身でヒュドラへ向かっていった。
そして、ディストレアは次の瞬間、ルクスの前にいた。
「え!?」
《乗れ。小姫の所へ連れていく》
「ちぃ……?」
マティよりも一回りほど大きく、右目には深い傷があり、完全に閉じてしまっている。マティが子どもだったのだと実感できる迫力を持っていた。
混乱中のルクスに、マティアスが声をかける。
『ルクスといったか? そいつはトヤだ。あ~、ティアが連れてる子どものディストレアの父親でな。まぁ、気にせず乗っていけ。一瞬でティアの所へ連れていってくれる。あっちも手が必要みたいだからな』
「っ、ティアになにか」
このディストレアがマティの父親だという、驚きの事実よりも、ティアの身に何か起ころうとしているのではないかと思うと居ても立っても居られなかった。
『ちょい、数で押されてるらしい。手伝ってやってくれ。あっちにはサティルもいるが、あいつの力は周りも遠慮なく巻き込むからなぁ』
「……」
はははと笑うマティに、ルクスはこの人こそティアの母親だと思えてしまった。ノリが同じなのだ。
《まぁ、そういうことだから、ティアを頼むぞ婚約者殿》
「っ、わ、わかりました」
《いくぞ》
「はいっ」
ディストレアの背に飛び乗る。その時、シェリスと目が合った。遠いが、その目を見ると、ティアを頼むといっているように見えた。だから、自然と頷いておく。
《捕まっていろ》
「あ、ああ……っ」
一瞬だった。風を感じたというより、光を感じた。目を閉じ、次の瞬間目を開けると、そこはもうサルバではなかった。
「え……」
これはティアがやった転移と同じではないか。そう思えるものだった。その予想は正しかったようだ。
《我は神属性の魔力を持っている。故に空間を飛び越えることも可能だ》
「そ、そうですか」
思わず敬語になってしまったルクスだ。本当にマティとは迫力が違い過ぎる。
まず、威圧がすごい。乗っていても傍にいてもゾクゾクが止まらない。それに、彼も気づいたらしい。
《ん……すまん、どうにも、人里に下りたのは初めてでな……》
そう言うと、一気に気配が希薄になる。
《む……これではやり過ぎか……?》
「……」
なんだかマティの父親というのが実感できた。
《もう、これで良いだろう。これから戦闘だ。行くぞ。あの建物の下だ》
「ああ」
ここまできたら、気合いを入れるしかないだろう。
**********
舞台裏のお話。
ベル「……かっこいいマティだ……」
シアン「ほんとうねっ! それで、それで、あの方は、かっこいいティアちゃんねっ」
ゼノ「確かに……ということは……」
ベル「えっと……ん?」
シアン「なら、家族だわ!」
ベル「は、母上!?」
シアン「ねっ、ねっ、お義父様っ。終わったらお屋敷に呼びましょ!」
ゼノ「そうだな。ティアも喜ぶだろう」
ベル「えぇ~……」
つづく?
なんて事が起こってましたとさ☆
読んでくださりありがとうございます◎
仕方ないです……。
行きましょう。
次回、月曜18日0時です。
よろしくお願いします◎
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マティアスの戦い方は、ティアに似ていると誰もが思った。
しかし、ティアよりも圧倒的に強いと多くの実力者達は感じていた。戦いを楽しむ様子も、長い経験を経て持ち得る余裕。
どれだけ巨大で、危険なものであっても、きっと負けることなどあり得ない。そう思えてしまう。
「すごい……」
ティアを見慣れているルクスが呆然と呟くのだから、周りも認めずにはいられない。
けれど、そうして見惚れていられる時間はそう長くはない。今もヒュドラの脇を抜けて黒い影が向かってくる。まだまだ黒い柱はその存在を主張し続けていた。
『おいおい、呆っとするなよっと』
武器はティアがバトラールになった時に持つ赤いハルバードにそっくりだ。
『紅姫』と呼ばれるその武器は、一閃すれば、高い位置にある首も簡単に千切れ飛んだ。実際の重量はかなりのものだと思われるのに、ただの棒切れのように軽く振り回すから恐ろしい。
『おらよっと……ん? お~、ティアの方も大変そうだな……ここは一つ、応援でも送ってやるのが優しい母様ってやつだよなっ』
そんな事をぶつぶつ言いだしたマティアス。それから、ちらりとルクスに視線を投げてよこした。
「なんだ……?」
離れていたルクスには、さきほどの言葉は届いていない。だから不思議そうに、向かってくる魔獣を剣で叩き伏せながらマティアスを見つめていた。
すると、マティアスは身軽にディストレアの背から飛び降りる。二言三言、何やらそのディストレアと言葉を交わすと、今度は単身でヒュドラへ向かっていった。
そして、ディストレアは次の瞬間、ルクスの前にいた。
「え!?」
《乗れ。小姫の所へ連れていく》
「ちぃ……?」
マティよりも一回りほど大きく、右目には深い傷があり、完全に閉じてしまっている。マティが子どもだったのだと実感できる迫力を持っていた。
混乱中のルクスに、マティアスが声をかける。
『ルクスといったか? そいつはトヤだ。あ~、ティアが連れてる子どものディストレアの父親でな。まぁ、気にせず乗っていけ。一瞬でティアの所へ連れていってくれる。あっちも手が必要みたいだからな』
「っ、ティアになにか」
このディストレアがマティの父親だという、驚きの事実よりも、ティアの身に何か起ころうとしているのではないかと思うと居ても立っても居られなかった。
『ちょい、数で押されてるらしい。手伝ってやってくれ。あっちにはサティルもいるが、あいつの力は周りも遠慮なく巻き込むからなぁ』
「……」
はははと笑うマティに、ルクスはこの人こそティアの母親だと思えてしまった。ノリが同じなのだ。
《まぁ、そういうことだから、ティアを頼むぞ婚約者殿》
「っ、わ、わかりました」
《いくぞ》
「はいっ」
ディストレアの背に飛び乗る。その時、シェリスと目が合った。遠いが、その目を見ると、ティアを頼むといっているように見えた。だから、自然と頷いておく。
《捕まっていろ》
「あ、ああ……っ」
一瞬だった。風を感じたというより、光を感じた。目を閉じ、次の瞬間目を開けると、そこはもうサルバではなかった。
「え……」
これはティアがやった転移と同じではないか。そう思えるものだった。その予想は正しかったようだ。
《我は神属性の魔力を持っている。故に空間を飛び越えることも可能だ》
「そ、そうですか」
思わず敬語になってしまったルクスだ。本当にマティとは迫力が違い過ぎる。
まず、威圧がすごい。乗っていても傍にいてもゾクゾクが止まらない。それに、彼も気づいたらしい。
《ん……すまん、どうにも、人里に下りたのは初めてでな……》
そう言うと、一気に気配が希薄になる。
《む……これではやり過ぎか……?》
「……」
なんだかマティの父親というのが実感できた。
《もう、これで良いだろう。これから戦闘だ。行くぞ。あの建物の下だ》
「ああ」
ここまできたら、気合いを入れるしかないだろう。
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舞台裏のお話。
ベル「……かっこいいマティだ……」
シアン「ほんとうねっ! それで、それで、あの方は、かっこいいティアちゃんねっ」
ゼノ「確かに……ということは……」
ベル「えっと……ん?」
シアン「なら、家族だわ!」
ベル「は、母上!?」
シアン「ねっ、ねっ、お義父様っ。終わったらお屋敷に呼びましょ!」
ゼノ「そうだな。ティアも喜ぶだろう」
ベル「えぇ~……」
つづく?
なんて事が起こってましたとさ☆
読んでくださりありがとうございます◎
仕方ないです……。
行きましょう。
次回、月曜18日0時です。
よろしくお願いします◎
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