転生令嬢は平穏な人生を夢みる『理不尽』の破壊者です。

第二章 奴隷とかムカつきます

088 聖結界の弊害ですか？

カトラ達は聖王国の一つ手前の国に入った。

「国境を越えてすぐにこんなに変わるものなのですね……」

ケイト達が国境を越えるこはこれで二度目だ。感動しながら、目の前に広がった国境の町の賑やかさに驚いていた。ここは、聖王国とケイト達の生まれた国との間にある国だ。

薬の材料を集めるのに迂回し、二つの国に国境を接する国を通った。しかし、その国は山岳地帯が多く、大きな町もなかった。なので、国境を越えたという感覚がなかったのだ。

ここへきて、ようやく違う国に来たのだという感覚を知ったケイト達。そこまで感動することだろうかとターザは不思議そうだ。

「この国は昔からこんな感じだよ。君達のいた国も五十年くらい前までは結構活気があったらしいし、政策とかの違いって真っ先に国境に出たりするからね」
「あ、そう言われてみますと、確かに国境沿いの町は中央とは違いましたからね……」

確かに王都は普通に栄えていたなとケイトは頷く。

「ですが旦那様。そうなりますと、この国の王都はここよりもずっと賑やかだということでしょうか？」
「同じくらいかな。君たちのいた国の方の国境の町はもっと静かだよ。ここが特に賑やかなだけ。ここは、いろんな国からの交易品が入ってくる玄関口のはずだからね」

見回せば、様々な店が立ち並び、商人達の声が響いている。

ターザも端を少し通過するくらいでしか来ない国らしく、それほど詳しくはない。そこで、フェジに視線を向けた。

別行動する時は未だに頭巾を愛用しているフェジだが、こうして、カトラ達と行動する時は、顔も見せ爽やかな従者仕様になっている。そんないかにもデキる従者なフェジが視線の意味を理解して口を開く。

「この先には、聖王国へ続く街道が伸びているのです。参拝者達や、聖王国の方面へ向かう行商人達が、先ほどの国の山間部を通って北の方の国からやってくる通り道なのです」

その説明を聞いたキュリとクスカが首を傾げる。

「わざわざあの山間部を通るのですか？ 結構な魔獣がいましたけど」
「山賊も結構いましたよ？」

ここへ来る間に、ランクを上げたケイト達。もちろん、フェジとトゥーリも問題なく上げていた。ケイト達の国を出るまでに、カトラが言った課したランクを二つ上げた彼女達。

そんな彼女達は、薬の材料集めのために通って来た国で、更に一つランクを上げてＣランクになった。それだけの内容の依頼が多かったのだ。

「商人達が通るルートは決まっていまして、その道は聖結界で守られているのです。もちろん、通るにはお布施……お金が必要ですが……」
「なるほど。聖王国のということですね」
「はい。そのせいで強い魔獣や山賊達が他のルートに張り付いているんです」

ばっちり弊害が出ていた。だが、お金を払ってでも、商人達は安全な道を取る。当然だろう。

そこでカトラも納得した。

「もしかして、あの国の町に結界石があったのはそのせい？」
「はい。聖結界の弊害で、野営もできない環境になっているのです」
「町とか質素なのに、結界とかおかしいと思ったんだよ……」

あの国で野営ができるのは、実力ある冒険者くらい。それほど凶暴な魔獣が多いのだ。

「聖結界の弊害ですか？」

ケイトが尋ねる。

「聖結界って、魔獣とは本当に相入れなくてね。弱い魔獣は触れるだけでかなりのダメージを負うし、強い魔獣は近寄らないけど、聖結界から感じる特殊な気配で凶暴化するらしいんだ。それが弊害」
「結界石がなければ、村や町も危険だということ……ですか。結界石って高いですよね？」
「だから、魔核の納品依頼が多かったんだよ」
「っ、なるほどっ」

強い魔獣達の討伐はもちろん。魔核の納品依頼が大半だった。それだけ必要だったのだ。

そこでフェジに目を向ける。もしやと思ったのだ。

「結界石はどこから？」
「聖王国です」
「……金額的なものは？」
「こう言ってはなんですが、かなりふっかけられているようです。性能から見ても明らかに……その辺りは、他の者が調べていますので、数日中にも旦那様と合わせてご報告いたします」
「うん。お願い」

聖王国を潰したとして、そのために今通ってきた国が被害を受けるのでは困る。対策は考えなくてはならないのだから。

そうして、国境の町を通り過ぎて数日。

この国の王都を目前にして、それは起きた。

「やっぱりっ。助けに来てくれた！ 助けて！ 私の王子様！！」

ターザに抱きついてきた女がいたのだ。言動からしてまさかと思った。もちろん、ターザはヒョイっと避けていた。

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