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ネコまっしぐら。

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閑話〜日の本での出来事②〜

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「いい加減にしてっ!!私達の事は放っておいてよぉぉっ!」
 シュウト達の前に飛び出して、泣きそうになりながらも声を張り上げたのは、体格の良い親父でも肝っ玉母さんでも無く…

 杖をついた義足の少女であった。

 よく見れば、集まっている村人達は四肢を欠損している者達が多い。
 腕や脚、酷い物だと顔を齧られ歯や皮膚が剥き出しになっているものまで居る。

「…もぅ、これ以上…わたし達を、虐めないでっ!」
「…もうやめなさい。旅のお方、見ての通りこの村は魔獣に襲われた者達が多く居ります。ここを支配した所で大した税は取れません。それに、弱まったと言われていますが、ここは恐帝カイザーの治める土地です…何卒、何卒見逃しては下さいませんか?!」
 泣き崩れる少女に手を貸しながら、シュウト達を諌めるように、しかし祈りを込めた顔で願う村長


「…あ、あのぉ」
「これは決定事項だ!この村は放棄して俺の国に来てもらう。必要な物だけまとめてここに集まれ!」
 アスナが話に割り込もうとするのを遮り命令を下すシュウト

「ぐぅっ…」
 あまりに話が通じない相手に、村人達も先程までのテンションは落ち着いてしまったようだ。
 皆、一様に絶望の表情をしている。

 自分達はこれからどうなるのだろうか、奴隷として売られ家族は離れ離れになってしまうのか…
 死ぬまで労働力として働かされるのだろうか…

 悲惨な妄想に駆られながら各自、自分の家へと身支度に戻り始めた。


 …バキッ!バキバキッ、ドガァン!
「ウグゥオォォッッ!!」
 村人達を現実に引き戻す程の雄叫びが、村の反対側にある柵を破壊した音と共に村に響き渡る

「なぁっ!?こ、こんな時に魔獣がっ、し…しかもこの辺りのヌシじゃないかっ!!」

 誰かの悲壮な叫びと共に姿を現したのは、遭遇したら満足するまで喰われるしか無い絶望の権化…
 魔獣ダークボルクだった。
 適正レベル60~70のパーティーモンスターで2m近い体躯に黒く硬い毛を纏った凶悪なモンスターだ。

 これ程のモンスターだと、帝国の冒険者組合に討伐を依頼しても簡単に受けられるチームは少ないだろう。
 それに、この村の全財産を叩いても足りないくらいの報酬は要求される。
 村人達からすれば、まさしく出会った事を不幸と思うしかない、自然災害のような相手だろう。
 前門の虎後門の狼とは、まさにこの事だ。


 自分達の余りに悲惨な状況に壊れて笑い出す村人まで出始めるカオスな中、呆然と座り尽くす先程の少女に狙いを定めるダークボルク
 村長や村の男が立たせようとするが、足腰が言うことを聞かないのか一向に立つ気配が無い。
 焦りで冷や汗を吹き出す大人を他所に少女はジッと魔獣を見つめる。
 これが自分の最期か、と…

「ウゥ…ウグルゥアウッッ!」
 獲物に向けて突進するダークボルクに村長と男も、たまらず少女の手を離してしまう

「「キャアァーッ!!」」
 誰かの悲痛な叫びをBGMに鋭い牙が少女に迫るっ
 …ガキンッ!!
「ヒャンッ!?」
 血の雨を予想していた村人達が見たのは、牛顔の獣人族の青年と、容姿端麗で尖った耳を持つエルフの少女が、剣技でダークボルクを弾き返す光景だった

「…ググゥ、グルゥルル…ガァッ!!」
 人相手に情け無い声を出してしまった自身への怒りも込めてダークボルクは黒毛を逆立てて吼える

「…犬コロ風情が俺の領民に手を出すとは良い度胸だ。その皮剥いで絨毯にでもしてやるかっ」
 少女の前に立つ二人の横からシュウトが魔剣を抜いて現れる

 黒の刀身にはルーン文字が刻まれ、魔力が通うと淡く光りそれをさらに赤炎が包んでゆく

「お前達は他に入り込んだのを殺れ、アスナは全体のフォローと負傷者の回復だ!」

「「はっ!」」
 シュウトの指示に頷くと各々が散らばり与えられた役目に臨んで行く。

「フシュウゥ…ゴハァァッ!」
 邪魔なシュウトを消し炭にすべく黒い炎の塊を吐き出すダークボルク
 しかし、その程度の攻撃ではシュウトに傷をつける事は出来ず、黒炎は簡単に切り払われてしまった。

 通常であれば、ガードしても相手を焼き尽くす呪いのかかった炎が掻き消されてしまうなど、ダークボルクの経験には無く魔獣ながら驚きの表情を浮かべる。

「相手に臆せず意見を述べれる優秀な人材は、国に連れて帰っても貴重なんでな。貴様にはくれてやらんぞ!」
 そう言い放つとシュウトも走り出す。

 全身が武器みたいなダークボルクは普段であれば攻撃させて相手の絶望感を味わうのだが、今回の相手にそれは下策と尻尾を使った攻撃で応戦する。

 …シュパンッ!
 鉄塊の硬度と暴力的な速度シュウトに迫った尻尾は、根元から綺麗に斬り飛ばされ緑の血が吹き出す
 ダークボルクは激痛に飛び退くと黒炎を吐き、鋭い鉤爪で斬り裂こうと連携攻撃を仕掛ける。

「はぁぁ、フレアバーストッ!!」
 黒炎と前足の鉤爪を弾き飛ばし、そのままの流れで上段から縦一閃にスキルを放つシュウト
 体勢を崩していたダークボルクは避ける事もできず攻撃を受けてしまう。

 しかし、風と衝撃は自身の体を駆け抜けていったが、肝心の痛みは感じないし傷も見当たらない。
「グゥゥ…クッククッ」
 どうやら見掛け倒しの技だったのだと、シュウトを馬鹿にするように低く笑う

 …キンッ
「おい、お前…立てるか?怪我は無い…のか?」
 スキルが不発に終わったシュウトは、あろう事か剣を鞘に戻し振り返ると少女に声をかけ始めたでは無いか。

 ダークボルクはほくそ笑む。
 馬鹿で愚かな人間が、高位魔獣である自分に背を向けた。
 しかもだ…攻撃が決まったと勘違いして、その背中は隙だらけだ。

「ぁ…あの、あぅっ……あっ、危なぁいっっ!!」
 少女は叫んだ。
 シュウトの後ろに音も無く飛び掛かるダークボルクを見たからだ。
 頭は真っ白だったが、相手が侵略者であろうが目の前で人が襲われるのを黙っていられるほど腐った心にはなっていなかった。

 なのに…
 なのに、目の前の男は後ろを振り向こうともしない。
 自分の事を優しげな目で見ながら、こちらを心配しているようだ。

 少女の頭はさらに混乱するが、ダークボルクの牙はシュウトのすぐ後ろまで迫っている。
 いかな強者でも、この一撃を無事に耐えられるとは思えない。

 このまま自分もこの男と喰われる。
 そう少女が覚悟して目を瞑りかけた時…

 バシュッ、ボォウッッ!

 信じられないことが起こった。
 噛み付く寸前だった魔獣の体は、縦に裂け血と炎を噴き出し真っ二つになってしまったのだ。

 自分とシュウトを避けるように二つに分かれた魔獣の死骸。
 自分の横で燃える様を見て少女はようやく気付いた。

 シュウトのスキルは不発では無く、剣を直したのも後ろを振り向かなかったのも、全て討伐を終えていたからのだと。

「…どうした?立てないなら担いで連れて行くが、いいのか?」

「だ…だいじょ…ぶ、です。」

 魔獣の脅威が去り、頭が理解に追いついた事でようやく少女は動く事が出来た。

「た、たすっ…助けて、いただき…ありがとうござ…いますっ」

「気にするな。村も良い感じに壊れたから一石二鳥だ…帝国への報告も簡単に済むな」
 少女の礼を雑に返し村の中を見回すシュウト

「なっ!?」
 建物が壊れ生活が出来なくなって何が良いものかと怒鳴りそうになるが、呆けていた間の言葉を思い出し留まる。
「あっ、あのぉ…私達はどうなるんですか?」
 不安だが、一縷の望みを感じて尋ねてみる。

「俺の国…日の本に来てもらう。そこなら、この程度の魔獣に恐れたり、帝国の重税に苦しむ必要は無くて済むぞ。」

「なっ!?でも、なぜ…」

「それはですねぇ…シュウト様は実は優しくて強いお方なのですっっ!だから、皆さんの大変な状況を見過ごせなかったんですよねぇぇ??」

「うるせぇ、黙っとけよ!」

「いてっ!」

 二人の話に割り込んで来て、シュウトの顔を見上げてニヤつくアスナにチョップを入れると、村人達の状況を報告させるシュウト

 どうやら怪我人は出たが既にアスナが治療し、ほかの魔獣達も追い払ったり倒したようだ。

「さぁ、あなたも皆と一緒に私達の国に行きましょう!良い所なので、きっと気に入りますよっ?」

 少女はニコニコと愛想良く元気に喋るアスナを見て、ようやく心から安堵する事ができた。

「ほ、ほんとに…本当に、あ…ありがとう、ございまじだっっ」
 溢れる涙を止める事ができず心から感謝の言葉を吐きだす少女

「あわわわっ、ど、どどど…どうしましょうシュウト様!?」
「しっ、知るかよ!ア、アスナが責任取って見てやれよっ、俺はしらねぇぞ」

「ああっ…シュウト様、ずるい…」

 そそくさとその場を立ち去るシュウトに置いていかれたアスナは、オロオロとしていたが少女が泣き止むまで抱き締めてあげていた。


 その後…
 不安を胸に抱えながら手荷物を持って集まった村人達に、泣き止んだ少女…エルフィが事の顛末を説明するのであった。





………
「ったく、ウチの大将は言葉が足りなさ過ぎるんだよなっ!」

「…そんなの今更でしょ?それに、そんな所も好きなくせにっ」

「うっ…うるせぇっ!!」

 帝国への報告係に選ばれた獣族の青年とエルフの少女、二人の笑い声は馬の足音と青空に溶けていくのであった。
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