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第1章 天使との契り

9話 天使との契約

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――僕は夢を見た。最初にヒョウガ達と出会った時のことを。


 これはまだライディスが小等課の時の話。

 ―――私は、お父さんの仕事の都合で引っ越してばかりだった。その所為せいで、ロクに友達と呼べる存在を作ることが出来なかった。

  ライディスは、父の仕事の都合で引っ越しを繰り返す生活を送っていた。

 その所為で何時も独りで過ごしてた。

 ―――次の引っ越し先は、お父さんの仕事がし易いようだ。私の方は、転校してすぐは、友達ができるか不安が募っていたんだ。

 「今日から新しくこのクラスの一員になる、ジャス・ライディスさんです」

 「ジャス・ライディスです。好きな食べ物は、グラターです。これから宜しくお願いします」

 「では、ジャスさんの席は一番後ろのアリマ君の隣です!」

 と言って先生は、ライディスの席を指す。

—— 私は其の儘席に着こうとした時…

 「俺の名前はアリマ・ヒョウガ。仲良くしようぜ。ライディス」

「えっ!?」

 「ほら、行き成り親し過ぎよ。名前呼びは早すぎ。ヒョウガ。私の名前はフヅキ・カナミ。カナミで良いよ! 仲良くしようね」

 「僕はウズミ・エイト。ジャスさん、此れから仲良くやろう」

  絡んできた三人は各々自己紹介をしてくれた。

  思ったより普通に仲良くなれた。彼女は考え過ぎていたのだ。
  何回も引っ越しを繰り返していたのだから。

 それから沢山話すようになり、一緒にいるのが珍しくなくい程に打ち解けていた。

 ーーーそんな当たり前な日々を楽しく過ごせていた。

 そして二年後のある日、突如事件は起こったのだ。

「きゃああ~」

 学園の庭を、ヒョウガは一人散歩していると。
  聞き慣れた少女の悲鳴が聞こえ、声のした方へ急いで向かう。

  「あんたさ、年下の癖に年上の私達に楯突たてつくつもり? ブスが出しゃばるなよ。折角の綺麗な制服が台無しだな。ハハハハ。あんたはムカつくから二度と立ち直れないようにしてやんよ」

  制服からして高等課の連中の様だ。
押し倒したライディスに罵声を浴びせる。

 「おい、そこのチンピラ。ライディスから離れろ! 手を出したら絶対に許さねえからな」

「ヒョウガ…」

 「何だてめえは、年上に楯突くつもりか」

  「ハネルさんが出なくても勝てますよ」

 チンピラに絡まれてるライディスを発見。
 邪魔されたチンピラは、黙ってなどいられない。

女子四人がヒョウガを襲う。

それを華麗に躱わし、背後を取って倒した。

 その光景を静かに見守っていたハネルと呼ばれた男は、もたれていた壁から離れるとヒョウガの前に立ち塞がる。

「よくも殺ってくれたな。てめぇには躾が必要だな」

 そう言って、競技場へ全員で向かう。

 準備を整えると、向かい合い。

 「どこからでも掛かってこい」

「調子に乗りやがって」

  そう言って一度区切ると、三つの刀剣を構えーー。

 「武装三刀流剣技…てどこ行った」

「後ろですよ」

「何時の間に!?」

 ハネルが振り向くと、そこにはヒョウガが姿が、

「これでも食らえ」

ーーと言うと。

「能力<鎌鼬かまいたち>」

 そして次の瞬間には、ハネルの背中に鎌鼬をお見舞いする。

呆気なく終わった。

 「ハイネさんでも勝てないなんて」

 「次は懲らしめてやる」

 「「覚えておけよ! 次は負けないからな」」

 惨敗を喫したハイネは仲間と共に逃げて行く。

 「ありがとう、ヒョウガ、否、王子様!」

「大丈夫か! ライディス」

 ―― 私は初めて恋に落ちた。

 それから二日後、思い切って彼に告白した。返事はーーー

 「私と、その……付き合ってください」

 「ん…‥? ああ、悪いがご免。そう言うの面倒臭いから」

 キッパリと断られた。その後、何度もめげずに告白し続けたが、答えは全部駄目の一点張りだ。

 ――そして私は、中等課二年になって直ぐにお父さんの仕事の都合で引っ越してしまう。

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

そして現在。

                バトル施設 出口


 「仮契約は終わりです。本契約をしますか?」

 「まだアイツみたいなのがいるんだよな。つまりまた仲間が狙われることもあるって」

 出口の近くにいるカナミ達。そこから少し離れた場所で、こっそりと話してーー。

 仮契約が終わった。
察しの良いヒョウガに、天使は頷く。

「まだあれは雑魚な方です。あれより遥かに強いのがまだまだいます。狙われる可能性高い」
 
  天使の解説に嘘偽り無いことは明白だ。

ーー悩むこと数分。

「天使の力でしか、その…悪魔には勝てないんだよな」

「勝てないです」

「分かった。あれで雑魚とか気が重いやられるが、やるよ。仲間を守れることは証明できたしな」

  天使の最後の一言が効いたのか、本契約を交わすことを了承する。

  もう一度天使と、唇と唇を重ね合わせキスを交わした。

 「それでは、私に名前を付けてください」

 「ああ、そうだな。何にするか。ん~とじゃあ、シナモンにしよう」

そう名付けた。
   名付けるのはセンスがいると、ヒョウガは痛感する。
 
 「ねえ、何独り言行ってるの?」

「カナミ、なんて…そうか」

 「もう~何回も言ってるじゃん天使だって。シナモンは、天使の中じゃ下の方だけど、正真正銘の天使だもん!」

 「否、疑っちゃいねえけど、実感が湧かねえぞ。後何体いるか分かるか?」

 天使――シナモンは、何時の間にか喋り方が馴れ馴れしくなっていて、

 それを気にしていないヒョウガは、彼女が言っていることを全て信じることにすると、先の戦った相手のことを聞く。
 シナモンは、淡白あっさりとOKすると、もう一度口を開いて話し始めーーー

 「それで、先戦った人型の魔物は、漆魔。先十悪率いる悪徳罪業団の十悪の一体、愚痴から生み出されたんだ。私達天使は、唯一十悪に対抗できるんだ」

 「まだ九体いるのか。否、来ないでくれりゃあ良いんだけどな。無理だよな。後、俺だけじゃねえか」

  話が終わってから、ライディスの直ぐ傍に移動した。

カナミと場所を代わりーー。

 暫くしてライディスは目を覚ました。

 「は? 一体僕はここで何を? 確か復讐をしに来たって強い意思はあったと思うんだけど。後彼女のところまで」

 「やっぱり俺の事恨んでたのか。てか、結構覚えてるな。アミリは彼女じゃないぞ」

「もう恨んでないよ。ホント。スッキリした。何だ冗談か。それと」

 悪魔との出会いを、ライディスの口から聞けた。
おまけに、元学園長が悪魔と手を組んだことも明らかに。

 「それより、もう学園の門閉まってるぞ。ライディス。今晩は俺たちの部屋に泊まってけ。安心しろ! 皆。元に戻ったから」

 「良いのかい!? でも、ヒョウガのルームメイトが嫌がるんじゃないか?」


 「ホ、ホントに戻ったわよんですよね。それなら大丈夫です」

 アミリはライディスを泊めることに賛成した様だ。
他の皆も、断る理由がない。

「んじゃあ、部屋戻るぞ!」

 そう言って、ヒョウガ達の部屋に戻って行く。

            450号室 ヒョウガ達の部屋

 「んじゃあ、皆、寝るぞ!」

「そうだね。お休み」

「お、お休みなさい」

「お休みですの」

 部屋に戻ると、直ぐに寝る準備を済ませーー。

 そしてベッドに横になると直ぐに電気を消す。

三十分位が経過した頃。

 「ねえ、アミリちゃん、起きてる?」

 「な、何ですか」

 「シラキちゃんて、ヒョウガのこと好きなんでしょ。もしかして二年前から?」

 「ふぇ!? ええ?? わ、分からないです。ヒョウガ先輩を落とそうとはしてますが。向こうが好きになれば付き合おうとは思います」

と一区切りすると。

「私は好きじゃないはずなのに、ヒョウガ先輩と一緒にいると、あの時から何故か心臓がドキドキして胸がギュっと締め付けられるんです!」
「頭の中から離れないことも時々あります。先寝れなかったのもそれが原因なんです」

 アミリの寝台は、一番奥でカナミの隣り。

 ―――シラキちゃんて、自分の感情に鈍感ね。自分から落とそうとしてるのに。本人が相手の事好きじゃないとそうは思わないのに…

 カナミが不思議に思っていると。

  床で寝ていたライディスが、アミリの横に移動した。

 「それは断言しよう。完全に恋だよ! 百パーセントそう。堕とそうとしてるから尚更」

 「私もそう思うよ。二人合わせて二百パーセント!」

 「え…そ、そんな。わ、私が、ヒョウガ先輩にこ、恋しちゃってるの…」

ーーーだからか。道理でヒョウガ先輩といるとよくその症状が起きるのね。そんな前から好きだったんだ。だから私ヒョウガ先輩を堕とそうとしていたんだ。でもどうしたら


 アミリが考えてると、アーティナとミューフィがやってきて助太刀してくれた。

 「ふ、二人共起きてたのね。それと、何時から聞いてたのよ?」

 「最初っからですの、シラキさん。アタシが手伝ってあげるですの」

 「ワタシもです。出来る事なら協力します」

 「え!? て、手伝ってくれるんですか!? ありがとうございます」

ライディスとカナミも頷く。

そして、もう一人は。

 「はああ~。何か楽しそうな話してる。ウチも手伝ってあげよー」

「あ、ありがとう」

 誰も聞き取れない位の音量で感謝を伝えると。

 い、今更なんだけど、何で気付いたのだろう?

という疑問を残してーー

 「じゃあ、今度こそお休み!」

  そう言って今度こそ眠りに就く。

 打明けた事もあり、アミリの心は少しーーー軽くなった。

 知るものだけの関係が、こうして始まりを告げた。
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