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2章 怨みの象

35話 激戦の行方は

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リーフ達の試合はというと。

 ーーー人形の中に閉じ込められたコロネは、少しずつ理解していった。
そして彼女は、襲いかかってくる人形をまた斬り倒す。

 疲れが溜まってきたコロネが、壁の至近距離へ移動し、強烈な斬りを食らわす。
 
 すると見る見るうちに人形は縮んで行く。私はその隙に脱出した。

 そこで彼女が目にしたのはーーー

 リーフとエボットの二人が、ガヴェールとライディス、ザクと戦っていた。

 ーーーどう言うことでしょうか?

 とコロネが疑問を抱くのも当然だろう。

 本能的に危険を感知した彼女は、振り向かない。
 振り向かずに、着けようとしていた糸を切り裂く。

 「あなたの仕業ですね? その糸で」

「ふーん、気付いたんだ~。それにしても中々やるね~。こんな早く人形から出てくるなんて」

 そっと振り返るとそこにいたのは小柄な少女、ノエルだ。

 ノエルの指先には、切断された糸切れが残っていた。

 コロネに問い質されて、淡白と認めて驚く。

 ーーーそして試合は佳境へと入っていく。

  ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇  ◇

遺跡の奥にそれはあり。

 何者かの侵入に気付くと、それは。

 「手応えのある奴らなら良いが…あまりにここを訪れる者が弱すぎて無聊ぶりょうしてたから。責めて渡り合えずとも良いから、楽しめる輩が良い」


 等と人の気配を察知して耽っていると、遺跡の奥へ彼らは入ってきた。

ーーーーーーーーーーーーー

 彼らを待ち受けていたのは、この場に尤も似つかぬ水溜。
 それとーーー水溜に突き刺さる一本の槍。

 その異様さから、彼らはそれがただの槍ではないのだと、瞬間的に気付く。

 「も、もしかして、これが秘宝かしら?」

 とアミリが呟いたのも束の間ーーー何処からか声が聞こえてくる。

 『秘宝か。謂われ慣れてる。ただでくれてやるつもりはない。力ずくで奪って見せよ』

 何処からともなく聞こえてくる声に対し。
    
「ん…!? 今の声って、まさかなんだがその槍からか?」

 『その通りだ。戦って力ずくで奪いに来な』

 秘宝はそう簡単には渡してくれないらしい。

 「それじゃあ、力ずくで手に入れるですの!」

「そうだね! やろっか」

 「ーーーちょっと待ってもらおうか」
 
 闘志を燃やすアーティナ達の前に、第三者が広間の入口から現れた。

 「その秘宝おたからを手にするのは私らだ」

 「ポッポッポッ。戦って奪い取る」

 「ん…!? お前達は一体何者だ?」

 謎の女ーーー否、少女が槍を指して宣戦布告をすると。

 闘志を燃やす鳩族の男が、ジェスチャーを交えて伝える。

 ーーー見てくれから推測すると、鳩族の男が二人と狼族が二人、人が三人だろうか。

 「名乗るほどのものじゃない」

 「まあ、今日んとこは、別に良いぞ!」

 『詰まらぬことで時間を使いおって! いい加減待ち草臥れてた。やる気が失せたんだが。もうどっちか勝った方にくれてやろう』

 痺れを切らせた槍は、ゆっくりと水面から文字通り、抜け出てきた。

 咄嗟に見構えた二人へそう言い放つ。

 少しの沈黙を破るようにして、槍は口を開いてから。

 『無論この中には、目には見えぬバリアが張り巡らしておる。だから存分に戦いたまえ』

槍の発言を聞いた二人は。
 
「んじゃあ、始めるか!」

「さあ、行こうか!」

ーーーーーーーーーーーーー

 戦闘態勢は三、四に別れる形だ。

 ーーー俺、アミリ、サラは狼族の二人を担当だ。後の三人で四人を相手するぞ。

 それぞれが武装展開を済ますとバトル開始。

 先ず仕掛けてきたのは、狼族の青年ーーーフェリルと狼族の少女ーーーアセナだ。

 「アオーーーン」と遠吠えすると。

「行くぜぃ! 
       狼拳術<狂犬病ラビエス>」

 ターゲットをサラへめたフェリルは、薄暗い広間で高速襲撃してきたから。

「エアノーク!」

 ───お呼びですね、マスター。

 サラが呪文を唱えると、真っ白な妖精が目の前に出現。

「あいつを何とかしてー」

 「はい、マスター。分かりました。試したいものがあるのでそれを使います」

と、一度区切った妖精が。

 「〈ヴムール・アーラ・カラレート〉」

 妖精が呪文を唱えると、彼女の周りを結界が張り巡らされていく。

 襲いかかって来た彼は、その結界に弾き飛ばされてしまい。

続いてもう片方は。

 アーティナが少女の至近距離へ移動すると。

 「武装魔術〈究極の光魔一剣〉」

 燐光する光が、突如照らしつけられた。

 ーーーその光には、彼女の全てがこもっている。

 その燐光を発する光が、光魔剣に降り注ぐ。

 渾身の一撃で、少女へと斬りかかったが。

 「来たな。
     人形術〈偽り人形〉」

 その少女ーーーマリーが技を発動。

 薄暗い物影を、自身の影に変えた。

 その影が斬撃を素手で受け止めてから。

投げ飛ばす。

「ぐはっ」

 固い地面に身体を打ち付けられて、軽い痛みが少女を襲う。

 そして立ち上がったアーティナが、口を開く。

 「どうしてこところに人形遣いが居るんですの?」

 「そんなことを考える余裕があるんだ!? 知らない方が…否、知られると困る」

 「詰まりは違反行為に繋がりかねないことをしてるんですのね」

 アーティナの問いかけに、炯眼けいがんな目で、少女が否定しないどころか。

 「どうだろう? でも、今試合してる私は、自分の瓜二つ影。と言っても、人工知能を搭載してるから普通に話も出来る」

 自ら話し始めたことに軽く驚く。

カナミの戦いは。

 「ポッポッポッ。さあ、何時でも来い」

「それじゃあ行くね!
           武装想像〈黒銀ノアジェント獅子リオン〉」

 突如カナミの前に全身を黒銀で包まれた獅子が出現。

 その獅子が、鳩族の男を食らい尽くす。

 「ぐああぁッ…中々やるな。流石だ」

 口端から血を流し、腹部からも血が流れ出す。

 「ポッポッポッ!? まさか鳩族に攻撃をあたえるとは」

 あり得ないと言わんばかりな態度の鳩族のリーダーーーーミカド。

 「次はワタシが行きます。
            催鳥魔術〈鷲の羽落とし〉」

 魔笛を吹くと、ミューフィの前に大鷲が飛んできた。

 そして上空へと飛んで行き、巨大な翼をミカドへ落とす。

 しかし彼は手に持つ帽子を駆使して、斬撃を吸い込む。

 吸い込み終わると、斬撃が鳩になって少女を襲う。

「ぬぁッ……凄い技です」

 攻撃を食らった彼女は、身体の彼方此方を深々い傷が出来そこから血が流れ出す。

 それをして見せた彼は、コンマ数秒で術式を展開し、魔法を使っていたらしい。












 一方その頃。 リーフ達の試合はと言うと。

 コロネは今、岩場を駆け抜けながらも、ノエル攻略のチャンスを窺っていた。

 「逃げてるだけじゃ駄目ね~。ほら、ほら。攻めてきな~」

 溜め息一つ着いてから、少女が追い詰めていく。
 それでも必死に逃げ続けてると。 

「あ」

 と思わず間抜けな声を上げてしまう。

それも無理はない。
 何せ何時の間にか、彼女は崖の方へと追いやられていたのだから。
 これを機としたノエルが、瓦礫を人形に変えて迫りつつある

 ──これはマズイですね。一か八かあれを試しますか。

 絶体絶命のピンチに追いやられ、賭けに出ることに。

 片膝を立てたコロネは、瓦礫人形ではなく少女の至近距離へ移動し、素早く刀を抜き放つと。

「行きますね!
       武装霊刀奥義〈居合電花スパーク〉」

 電気の火花で、ノエルを斬り倒す。

 「ぐあああッ…痛い、痛いな~」

 腹部から出血した少女へと、もう一度刀を抜き放つと。

 「武装霊刀奥義〈居合零度〉」

 凍てつく氷を纏わせて、ノエルを斬り倒す。

 「ぐはっ…ゲホゲホ。ノエルが負けるなんて…そんなこと…あって良いわけ無いのに~。憎い、憎いのに~。でももう……」

 凍てつく氷が、躯全体を凍り付かす。
 どんどんと躯は凍っていき、憎みをくちにし、その場に倒れ混む。

 「はあはあ。これで残り五人ですね!」

 「もうそろそろ限界しょ。潔く倒されてもらうなり」

 二度のノエルとの戦いを制したコロネ。
 そんな彼女とて、戦いでの消耗が少ないわけではない。

 それを突いたのは、四体の人形を操る少女ーーーアレッタ。

 それぞれ別の動きの人形が、疲れたコロネへ迫りつつある。

 ーーーはあはあ。今度こそヤバいですね。このままじゃやられちゃいますね

 疲れ果てた少女は、そう覚悟を決めたのも束の間だったーーー

 「遅くなっちまったぜ! 悪かった。何があったか分からないが、こっちは一体ぶっ倒しといたぜ!」

 「はあはあ。ガヴェール先輩! 私の方も厄介な相手を倒しときました。ですが…」

 「ふーん。そうか。分かったぜ! 後はオレに任せといて良いぜ!」

 コロネの前に現れたのは、ガヴェール。

 ノエルが倒されたことで、彼は糸から解放された。
 そのお陰でガヴェールは、眠そうな男へ一撃を食らわせ、仕留めてみせ…

 お互いに報告し終えると、コロネを下がらす。

 代わりに彼がアレッタと戦うことに。
そして戦いの幕が上がった。

リーフ達の戦いは。

 ライディスとザクも正気に戻ったことにより、彼女らの前に残りの人形遣いが出揃う


 それぞれが人形を出現させて。
 それに合わせ、リーフ達も戦闘態勢を整えーーー試合は終盤へと入っていく。

       ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

丁度その頃。遺跡の方は。

 狼族の少女―――アセナが、「アオ―――ン」と遠吠えすると。

アミリ目掛けて駆け出す。

 透かさずアミリは、銃口を動くアセナへ向け、引き金を引く。

 「こ、これでも食らいなさい! 
    武装魔銃術〈光彩の弾〉!」

―――バンバン。

 放たれた弾は、強烈で鮮やかに輝く光の弾だ。

 その目映い光に、思わず彼女は視力を奪われてしまい。
それが機となり、一ミリたりともずれること無く、アセナの元へと飛んでいく。

 「ぐあっ……痛い、痛い。でも、まだまだじょ」

 銃弾が貫通し、血が勢いよく吹き出す。

 しかし彼女は、平気らしく。

 「フェンネル。一緒に行くじょ」

「おお、分かったぜい」

 何時の間にか、アセナの隣に現れたフェンネルと合図を送り合うと。

「「狼二重戦術〈二重爪ルナゲーラ斬雨プリュー〉」」

 丸で見えない階段があるかの如く、二人は息ピッタリに上っていく。
 そして天辺に着くや否や、二人は同時に呪文を唱える。

 すると鋭い二つの爪が、細かな雨のように、三人を襲う。

 「ぐああぁ……痛い、痛い。何て技だ!?」

 「ぐあっ……痛い、痛い。つ、強い技ね!」

 「あがっ……痛い、痛い。いたいよー。強いよー」

 三人は攻撃を防げず、ズタズタと身体中を切り裂かれてしまう。

 「セナとフェンネルの組み合わせは最強だじょ」

 「勝てると思うんじゃないぜい」

 と二人は自信満々に言い切った。

 そしてもう一度アミリは、銃口をアセナへ向け、引き金を引く。

「も、もう一回行くわよ!
        武装魔銃術〈水神の弾〉」

―――バンバン。

 放たれた弾は水の神の弾だ。

 一ミリたりともずれること無く、少女の元へと飛んでいく。

「狼術〈共鳴〉!」

 ―――しかし寸前で、アセナが技を発動する。

 音の振動により、弾を真っ二つに切り裂かれてしまい。

 ―――こ、こんな技持ち合わせてるなんて…本当に強いわね! 

 軽く受け止められた少女は、強く唇を噛む。

アーティナの方は。

 次々と人形を増やしていくマリーは、瞬間移動してきたアーティナを襲わす。

 目と鼻の先と言うことあって、避けることが出来ない。

 諸に食らった少女は、身体中を激痛が襲い。

 「ぐあ"あ"……痛い、痛いですの」

 激痛に襲われたアーティナが、仕掛ける。

「武装魔術〈黄金一剣〉」

 神々しい輝きが突如照らしつけた。

 その神々しい剣で、人形を次々と斬っていく。

 タイミングを見計らった少女は、新しい人形を作り出す。

そして少女はもう一―――否、違う。
 マリーのゼロ距離へ移動すると、技を発動。

 「武装魔術〈究極の光魔一剣〉」

 燐光する光が、突如照らしつけられた。
 その光には、彼女の全てが籠っている。
 その燐光を発する光が、光魔剣に降り注ぐ。
 渾身の一撃で、少女へと斬りかかった。

 内臓を抉り、更に腹部や肺尖をも抉られてしまい。
 口端から血が流れだし、更に喀血してしまう。

 「ゴホッ……ゲホゲホ。ゲフッ…何て技なの……もうダメ」

 バタン、その場に倒れ混む。

カナミの戦いは。

「武装想像〈業火イグニス騎士エクエス〉」

 突如カナミの目の前に業火を纏った騎士が出現。
 その騎士は右手に持つ業火の剣で、鳩族と、少女を斬りつけた。
 
「〈火の壁〉」

 少女は地面から火の壁を作り出す。
 しかしその壁など無いかの如く、破られてしまう。

 破られてしまい、二人は躯ごと吹き飛ばされ、今度こそ業火の剣で斬られた。

 斬られた二人の躯を、熱さと痛みが襲う。
 
 「ぐああぁっ~。熱い、熱い。それに痛い」
 
 「ゴアっ……熱い、熱い。躯が焼けそうな食らい。それに痛い 」

 鳩族の男は、自身と少女を治癒する。

ミューフィの戦いは。

 「もう一度行きます。
       催鳥魔術〈鶴の羽毛狩り〉」

 魔笛を吹いたミューフィの前に、一羽の鶴が弧を描くように飛んでくると。
 
 ミカドへと突っ込んで行く。
 突っ込んだ鶴が、自身の羽を鋭い凶器へ変えた。

 羽を凶器に変えると、鶴は彼を狩立てーーー

それを見たミカドが。

ーーー何て言うことだ!?

 みるみる内に亀裂が入ったかと思えば、甲が剥がれ落ち。

そして、

 「ぐあっ……ポッポっポッ。中々やるポン。お見事だポン」

 「そう言われても嬉しくありません。敵ですので」

 攻撃を食らった彼は、素直に褒めてやるが、敵の言葉には耳を傾けない。

――――――――――――――――

 話はまたリーフ達の試合へと戻る。

 四体の人形を操るアレッタへ、ガヴェールが技を発動。

「行くぜ!
    妖魔想像〈蛇女〉」

 彼の目の前に出現させたのは、髪が蛇の女だ。

 その女によって、四体の人形が次々と石化していく。 

「中々やるナリ!?」

「妖魔想像〈吸血鬼〉!!」

 少女の言葉に耳を傾けず、ガヴェールが技を発動。

 鋭い牙にマントを纏った、言葉通りの吸血鬼を出現させ、アレッタの首を噛む。

「ぐぅぅ…」

 と襲われた少女が、どんどん吸血鬼化していく。

 完全に吸血鬼なったところで、太陽の光を浴び、塵と化して消えていく。

残り三人。

 リーフは人形達切り裂き、ザクが呪銃で人形を撃ち抜いていく。ライディスも植物で敵を潰す。

「妾の食らうのじゃ。
         能力〈破壊状態〉」

 幼女の能力で、ハリスの脳や身体を破壊しようとしているのを。

「人形術〈人気空間・零〉」

岩がどんどんと重なっていき ―――巨大な人形へと変化するや否や、その中へと放り込む。

 コロネが入った空間とは違い、人形一つ無い空間だ。

「それじゃあ、僕も行くよ
     植物操杖術〈雷光エクレール植物園ルジャルダン〉」

杖を地面に突くライディス。
 すると少女ーーーリタの周りを植物園へと変えた。

 そして少女の周りの植物が、一斉に雷光を発し始めて。

 出現させていた人形三体が感電してしまう。
 ーーービリビリと言う生温い音ではない。

 「ぐああぁ…痛い、痛い。何て威力エル」

「これで決めるぜ! 
  妖魔想像〈閻魔大王〉ッ」

 ガヴェールは地獄の王を出現させると、リタへ襲い掛かっていく。
 
 防ぐことも出来ず攻撃を食らい、リタは口端から血が垂れ、更に大量の血を彼方此方から流す。

 「ぐあ"あ"~。ゲホゲホゲ……フッ…何て強い技エル!? ここで…終わるなんて…後は任せた…」

力尽きた少女は。

バタン、その場に倒れ込む。

―――そろそろ終わらせよう。

 そう意味深げに心中で言うと。

―――三.二.一.零.

カウントが零になると。

「サン・ヴィアンツ」

そう唱えて―――

 「何だったのじゃ? 今のは??」

「何でしょうね?」

 「ガヴェール、僕なんだか…」

 「ライディスもか。オレもだぜ…」

 「二人して…マジか。どうなっとるんや」

「血がない」

 四人揃って血がないと言った直後。彼らから文字通り血が抜け落ちていった。
 遅れて四人は崩れ落ちていく。
 残りの二人も後を追うようにして、血が抜け落ちて、崩れ落ちて行く。

 人形遣い二人残して、後は誰もいなくなった。

試合終了だ。

「それでは出よう」

「そうさね」

 そう言って安全防御壁の外へ出た。

 外へ出ると既に他の人たちは並んでおり、急いで二人も並ぶ。

 「では、見事激戦を制したのは、チーム〈人形繰操〉でした。おめでとうございます」

 「ありがとう。中々言い試合だったと思うの。相手のチームも思いの外強かったし」

 海底王の従者の男が、勝者を称えると少女は嬉しそうに言う。

 「そして残念ながら、最後にうっちゃりを食ってしまった、チーム〈魅破〉の皆さんは敗退となります」

 「ぐずぐず。あんなのなしなのじゃ。ズルなのじゃ。もう少しで勝てると思ったのに…けど、ありがとうなのじゃ」

 続いて敗者へ平然と言い放つ。

 涙ぐむリーフは、負け惜しみを口にする。
 そして彼の言葉に、お礼を言う。

 然り気無く手を差し出す幼女に、少女はその手を握り握手を交わす。
 遅れるように他のメンバーも握手を交わす。

 すると試合の模様を映していたカメラが、ピタリと止まり、Bブロックの一回戦は終わりを迎えた。










 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 

ヒョウガ達の戦いは。

「んじゃあ、俺も行くぞ!」

 「良いぜい! 楽しませてくれ」

 ヒョウガのの言葉を汲んだフェンネルは、「アオーーーン」と遠吠えをしたのも束の間ーーー

 鳩族のミカドの元へ、一本の連絡が入る。
 その相手はチームメイトから。

 『ポッポっポッ。そうかそうか。分かったポン。ふむふむ、分かったポン』

 『それで今何処に居るポポ?』

 『遺跡だポン。探し物して』

 『へーそうなんだ。じゃあね』

 プツリッ、と音を立てて通信機を切ってから。

 「一戦目が終わったようだポン。それで用事が出来たポッポ」

「それでどうする?」

 「秘宝は欲しいさね。けど仕方ない」

 聞いた内容を話すミカドへ、女は尋ねてきて。

 その様子に、他の仲間も動きが止む。

 「運が良かったと思うだポン。今回は諦めるが次は秘宝そいつを頂くポン。力ずくでも」

 そう男が宣戦布告すると、仲間と共にこの場から立ち去る。

 そして残された彼らの間に、長い黙りの中最初に破ったのは。

 「な、何だか分からないんだけど、そんだどうなるわけ?」
 
 過ぎ去った大嵐に対し、アミリはそう聞く。

すると。

 「結果はともあれ、俺達のものになるんだよな?」

 「━━━ああ、約束は約束だ。確り守ろう」

 ーーー決着が着かぬまま戦いにも拘わらず、約束は守るって貰えるらしい。

ーーーそして、

「んじゃあ、ーーー汝、現在いまこの瞬間から、我と永劫の契約を結び、我の片腕となれ」

 「良かろう。死迄の長旅を共にしよう。我が主よ」

 誓いを交わすヒョウガと槍。
 お互いが誓いを述べたところで、槍は武装解除して空いた右手に移動し。

こうして武器を入手。

 「それで、リーフちゃん達の試合はどうなったの?」

 「一寸待ってですの! アタシの小型映転写器で見てみるですの」

 
 と言うことでヒョウガ達は、映し出された映像を覗き込む。

 数分間の間、誰として口を開くものはおらず。
 ただ聞こえてくるのは、六人の息遣いのみ。

 そこから一分も経たぬ内に、一人が唇を震わせ…

 「嘘!?何今の技? これだけで全滅させるなんて…」

 「サン・ヴィアンツ。古代ベルソーユ語です。意味は」

 「血が貴方を拒むだったよな! 血に拒まれてリーフ達は負けたんだ」

 「そ、そうね! あの二人以外は弱いけどね」

 「あんな反則級の技を使うなんてズルいよー」

 アーティナを除く五人は、画面内で起きている異様に、圧倒されてしまい。

 何故アーティナだけ言葉を発さないかと言うと、言葉を失っていたから。 

 そうーーーそれだけの衝撃を、彼はは与えたのだ。

 「そろそろホテルに戻るぞ!」

 声を掛けたヒョウガに、それぞれが頷き返すし、一行は遺跡にそとへ。

 遺跡を出ると彼らは、来た道を辿ってホテルへと戻っていく。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

話は数分前に遡る。

 場所ーーー海底楽園都市内にある、丘の上に佇む小屋。
 扉の前には、二体の悪魔が見張りをしていて。

 「ほほほ、先日の件は上手くやったのう。それにしてもよく知ってたのう!? この都市にあると言う秘宝のことを」  

 「当然ですよ。何せ秘かに聞き出していた。まあ、そのお陰で面白いもの迄釣れてしまいましたけど」

 真っ白な老夫ーーーリュードが、目の前で紅茶を啜るヒョウガの従兄妹ーーーレクトの功績を称える。

 そこで疑問を抱いたリュードへ、レクトはそう答えて。

 ーーー上手く仕込めた。計画通りに進みそう。

と彼は内心でそう思う。

 「それにしても、あの人も人が悪いよね♪ あんな粗大塵何て消せなんてさ♪」

 「儂の可愛い孫同然の子に強請ねだられたら、断りきれないからのう」

 老夫の隣に座る孫の一人ーーーネチスィアがゆらゆら左右に揺れ、薄笑いを浮かべ、死んだ男を粗大塵扱い。

 「それよりも兄が、あの秘宝を手に入れたようです」

「それは面白そうさね」

 「そうだっけな。何時かお手合わせ願いたい」

 「無理なことは言わないでね♪ そんなこと出来ないから」

 レクトの報告を聞き、リュードの孫の双子が、顔を見合わせて歓喜する。

 「こっからもっと面白くなるのう」

 「それはさぞかし面白いんだろうね♪」

 「この紅茶の様に甘くて、香り豊かな結果になると良いね」

 姉がクッキーを摘まみ、口に運ぶ。

 その隣に座る弟ーーーマルが、カップを揺らして香りを楽しむ。
 そして彼は独特な言い回しでをすると。

 「今は彼らに平和な時間を過ごさせよう。今だは。近々決行するその時迄」

 ーーー近々決行するその時迄が近付きつつあることを、ヒョウガ達は知るよしもない。

━━━━━━━━━━━━━

 ヒョウガ達が選手ホテルへ着くと、時刻は午後四時を回っていた。

 部屋の扉を開けたヒョウガは、部屋の隅で縮こまるリーフに気付くと。

そっと幼女に近付く。
 
「試合映像みたぞ!  何て言うか…最後のあれはセコいな!」

「・・・・」

 そして優しい声音で話し始め…

「リーフは凄く頑張ったぞ! うん、頑張った。残り二人に迄減らせたんだから、それだけで凄いと思うぞ! 俺は」
 
「・・・」

 「成長したな、前よりは泣かなくなったし! 偉いぞ!」

「・・・」

 二度の慰めの声をかけるも、一向に返事が返ってこない。

 気付くと二人の距離はほぼ無い。
 ──そう、目と鼻先が触れ合う程に。

 「一回戦で負けちゃった、から。こんな弱い妾なんてヒョウガやアミリ達に嫌われるのじゃ。本当は皆のことも大好きなのじゃ。だから顔向け出来ない」

「なんだ、そう言うことだったのか。別にそんなんで嫌いになんてならないぞ! 俺もカナミ達もな」
「それに本気で顔向け出来ないなら、部屋には来ないと思うぞ! 何故来たか? どうせ慰めて貰いたかったんだろ」

 泣きべそを掻くリーフへ、正鵠を射る。
 
ーーーそして幼女は。

 「それはホントなのじゃ? 確かに···そうなのじゃ?」
 
 「ああ、本当だ」

 行動の矛盾に気付き、自分の本意に気付く。

 ーーーそれから俺はリーフの頭を撫で始め。

 優しい手付きで撫でている内に、気持ちよさそうに目を細めてからか。
 先迄の落ち込んだ表情が霽れ、今では満面の笑顔を浮かべていた。


 「ほら、リーフには笑顔が一番似合う! 凄く可愛いぞ!」

 「エヘヘ。そう言われると照れるのじゃ」

 「そうだよな(笑) それにしても、明後日の試合楽しみだぞ!」

 「何か秘策があるのじゃか?」

 ストレートなヒョウガの誉め言葉に、頬を赤らめて照れてしまう。

 そして話題を変え、明後日の試合の話に。

 食い付いてきたリーフへ不適な笑みを浮かべ、

 「事前情報にはない、取って置きがあるんだぞ!」

 「何時のまにてに入れたのじゃ、詳しく知りたい」

 「んや、当日のお楽しみだ! 今日手に入れた。それ以上は言わない」

 隠し玉があると言うヒョウガに、詳しく聞こうとしたリーフへ言うつもりはないらしい。

 それから食事の時間になり、カナミ達と共に祝宴場へ向かい。

そこで食事を済ませ…

 部屋に戻ると少ししてからお風呂へ向かう。

 二、三十分程して部屋へ戻ってくるとすぐに、歯磨きを済ます。

 それからカナミ達の部屋へ挨拶に向かい。

 コンコンと、ドアをノックしてから、ドアノブに手を掛けてドアを開く。

「んじゃあ、俺は寝るわ!」

 「うん、それじゃあお休み! 今日は疲れたし、ゆっくり休んでね」 

「お、お休みなさい!」

「お休まないですの!」

「お休みなさい」

「お休みだよー」

 彼がお休みの挨拶をすると、彼女達がお休みを返す。

 そして彼は寝る準備をして、横になり、間も無くして眠りに就く。

 カナミ達も歩き回って、戦って疲れたこともあり直ぐに寝る準備をして眠りに就く。

 こうして一日は終わりを向かえた。

 ーーー本日の他の試合結果は、前半のAブロックはチーム〈氷炎の虎〉VSチーム〈明石〉は、氷炎の虎が二ー零で破り勝利。

午後の試合は、Aブロックがチーム〈葬能者〉VSチーム〈錬金〉は、葬能者が一ー零で勝利。Bブロックはチーム〈睡眠亭〉VSチーム〈煌星〉は、睡眠亭が四―零で勝利した。
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