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2章 怨みの象

36話 試合前夜

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 眩しい光が差し込む朝、ヒョウガは目を覚ます。

 彼の隣では、リーフがお馴染みの光景で寝ていた。

 気持ち良さそうに寝る幼女を突っつく。
しかし起きない。

「ほら、起きろ!」

「すぴ~すぴ~」

未だ起きない。

 仕方なく起きるのを待つこと十数分。

漸く目を覚ます。

 「はあ~ おはようなのじゃ。良く眠れたのじゃ」

 「おはよう。それは良かったな」

そう、二人は挨拶を交わす。

 するとそこへ、従業員がノックをしては行ってきた。
 
 「お朝食をお持ちしました。お召し上がり下さい」

  運び込まれてきたパンを二人が食べ始め…
あっという間に間食した。

 食事も終わり戻ろうとするリーフへ。

「なあ」

と呼び止める。

 「明日試合だから、模擬戦しないか? 特訓するからその後で」

 「別に良いのじゃよ。 ヒョウガの頼みだから断らないのじゃ」

「よし、決まりだ」

こうして予定が埋まり。
 ーーー今度この幼女は背を向け、部屋を出ていく。

 それを見届けると、ヒョウガは歯磨きと洗顔を済ませ、カナミ達の部屋へ向かう。

 そこで決まったことを伝えた。
 丁度そこへリーフ達がやって来たから。

 「んじゃあ、特訓場へ行くぞ!」

 その一声で、一行は特訓場へと向かう。

━━━━━━━━━━━━━

特訓場。

 「んじゃあ、先ずは特訓するぞ!」

 そう彼が合図をと来ると、最初のペアーーーアーティナとガヴェールからで。

 ガヴェールの準備が整うのを待つと。

 彼のゼロ距離に移動したアーティナが技を発動。

 「武装魔術〈究極の光魔一剣・零〉」

 燐光する光が、突如照らしつけられた。

 ーーーその最大の光には、彼女の全てが込められている。
 その燐光を発する光が、光魔剣に降り注ぐ。
 渾身の一撃で、彼へと斬りかかった。

「妖魔想像〈狐の巫女〉!」

 ガヴェールが狐の巫女を出現させた。
 手に持つ刀で巫女が、斬撃を斬り裂く。

 「前見たときより強くなってるですの」

 「負けて負けて努力して強くなったからだぜ」

 この前と先日の試合の敗北が、彼らを強くする切っ掛けとなったらしい。

 続いてサラとコロネのペア。

「それでは行きますね」

「何時でも良いよー」

 そう返すと、真っ白な妖精を出現させる。

 その直後ーーー片膝を立てたコロネが、サラの至近距離へ瞬間移動し、速く刀を抜き放つと。
 
 「武装霊刀奥義〈居合閃光〉」

 「食らってたまらないよー。妖精、宜しくー」

「はい、マスター。
       〈イリート·ニクーズ·シリカルム〉」

ーーー妖精が呪文を唱えた。

 すると、地や辺り一面が雪景色のように真っ白に染まっていく。

 雪景色によりコロネは、相手の姿を見失い。

ーーー何処でしょうか?

その思ったのも束の間ーーー

 この技が恐ろしいものだと、思い知らされることに。

 侵食し尽くした雪景色が、一斉に少女を襲う。

 そしてコロネは白く染まって消えた。
 少ししてから、安全防御壁の中へと戻ってきて。

 次にアミリとライディスのペアで。

「少し待っとくね」

「あ、ありがと」

 そう言うと、アミリは準備に取り掛かり、整うと。

「い、行くわよ! 
      武装魔銃術〈灼熱の炎舞弾〉」

 「武装操植物杖術〈植物地獄〉」

 ライディスへ銃口を向け、引き金を引く。

ーーーバンバン。

 灼熱の炎が、舞い上がるようにライディスの元へと飛んで行く。

 杖を地面に突いたライディス。
 すると地面から、ニョキニョキと植物が生えてきた。
 その弾へと、植物が地獄の如く襲いかかるが。

 「ゴアっ…ジンジン。熱い熱い熱い」

 焼けるほどの痛みに襲われ、身体が麻痺する。

 サラの妖精が、直ぐに癒しに身体を向かう。

 続いて、カナミとエボットペアで。

「それじゃあ、行くね!」

「何時でも良えで!」

彼の台詞を聞いた直後ーーー

 「武装想像〈雪姫ニックフィリア〉」

 彼女が、水色のロングヘアに、雪色のドレスを着た姫を出現させて。
 その姫の周囲を氷柱が飛び交って、文字通りーーー雪姫であることは疑う余地もない。

 氷柱は更に大きく、鋭くなって、エボットへと打ち込む。

「守護空間壁囲技〈絶壁〉」

 打ち込まれた氷柱を、作り出された絶壁で防ごうとするが。

 「ぐぁぁぁッ…まさかこの壁が破られるとは思わんかったわ」

「負けないからね!」

 身体を氷刺しにされ、彼の身体を凍り付いていく。

 改めてカナミの強さを知らしめられた。

 次は、ミューフィとザクノ
のペアだ。

「宜しくお願いします」

「・・・宜しく」

 ペコリとお辞儀をし、挨拶を交わす。

 「催鳥魔術〈鷲の翼落とし〉」

魔笛を吹いたミューフィ。
 すると巨大な鷲が、出現した。
 ーーー空へ飛んでいくと、ザクの頭上に大きな翼を落とす。

「武装呪銃術〈怨念丸〉」

 落下する翼に銃口を向け、引き金を引く。

 放たれた怨念の丸は、一ミリたりともズレることなく飛んでいく。

ーーーぶつかり合う技と技。

 押し押されを繰り返すうちに。

 巨大な翼が丸を押し返し、今度こそ技を食らう。

 「ぐあっ……ゲホゲホ。押し返されるなんて」

「やりました」

 血を吐き捨てたザクは、苦しみそう発する。嬉しさの余りミューフィはガッツポーズをしてしまう。

最後はヒョウガとリーフで。

「んじゃあ、行くぞ」

「何時でも良いのじゃ」

と言葉を交わすと。
彼は風神を纏う。

「風神覇奥義〈神風乱舞〉」

 ーーー神風と共に、幼女へと剣で躍り狂うよう。

 技を発動とするが、間に合わない。

 抵抗空しく攻撃を諸に食らってしまう。

 口端や身体の彼方此方から、途轍もない程の血の量が噴き出す。

 「ぐっ……ゲホゲホ。ゴホッ。流石はヒョウガなのじゃ。妾は惚れただけある」

「そうか? ありがとう」

 ヒョウガは照れ臭そうに言うと。

 妖精がリーフを回復させ、その後も特訓は続き…

 「ん…。じゃあ、大分疲れてきたことだし、特訓終わるぞ」

 憔悴した顔をしているのに気付いた彼が、そう指示を出す。

「ふうふう。疲れました」

「ホントそうだね!」

 「ハアハア。お疲れなのじゃ。ハアハア」

 「ここ迄ハードだとは思わなかったぜ」

 息を切らせながら、四人が言う。

 残りの面子も、それぞれ肩で息をしながら言うと。

「んじゃあ、部屋に戻るぞ」

「妾らも、帰るのじゃ」

 一行はホテルへと戻っていく。

 部屋へ戻るや否や、ヒョウガはベッドへ滑り込む。

 他の仲間もゆっくりた身体を休めている。

 ーーー時間がどんどんと過ぎていく。

 ーーー目覚めた頃には、夕刻の七時を廻っていた。

 ベッドの上で伸びをし、起き上がってカーテンを閉めに向かう。

 その後部屋を出て他の子達と祝宴場は向かい、食事を済ませ…

 部屋へ戻ると、歯磨きを済ませて、入浴をしに行く。

 お風呂を出ると、カナミ達の部屋へ向かう。

「んじゃあ、寝るわ」

「お休み、ヒョウガ」

「お、お休みなさい」

 「アタシ達も寝るところだったですの。 お休みですの」

「お休みなさい」

「お休みだよー」

 彼がお休みの挨拶をすると、彼女達がお休みを返す。

 そして彼は寝る準備をして横になり、数分で眠りに就く。
 カナミ達も直ぐに寝る準備を済ませ、横になって眠りに就く。

 本日の試合結果は、午前はAブロックのチーム〈神聖守〉VSチーム〈天魔外道〉は神聖守が五対零で圧勝し。

 Bブロックのチーム〈蝶舞バタフライ〉VSチーム〈竜土〉が、四対零で蝶舞が勝利。
 舞い踊る蝶の如く、相手を舞い散らしていった形だ。

 午後の試合は、Aブロックのチーム〈炎使い〉VSチーム〈毒草〉は、炎使いが五対一で勝利を納めた。

 Bブロックのチーム〈可憐猫獣娘〉VSチーム〈鋼鉄の騎士〉は、六対零で平伏した。

━━━━━━━━━━━━━

 ーーー試合前日は、何時も通りの特訓をして、模擬戦に入っていた。

 組み合わせは、ヒョウガ、アミリ、サラ対カナミ、アーティナ、ミューフィで。

「んじゃあ、行くぞ!」

「確りと守りなさいよ!」

「了解だよー」

 合図を送るとーーー早速動き出す。

「負けられないね!」

「勝つですの」

「そうしましょう」

 迎え撃つカナミたちも、襲撃に備えて。

「んじゃあ、行くぞ!
        力ーーー風神」

 ヒョウガは風神を、目の前に出現させた直後。彼の中へと消えて行き…。

 ヒョウガの体中を、風の覇気が包み込む。

「風神奥義〈烈風舞踏〉」

すると。

ピゅ~ピゅ~

 非常に強いが、二つの刀剣と舞い踊るように近付く。

 「行くですの!
        武装魔術〈究極の光魔剣·零〉」

 透かさずアーティナが、彼の前に瞬間移動して技を発動。

 燐光する光が、突如照らしつけられた。

 ーーーその光には、彼女の全てが込められている。

 その燐光を発する光が、光魔剣に降り注ぐ。

 渾身の一撃を、彼の斬撃に叩き込む。

ぶつかり合う斬撃と風。

 激しい押し合いの最中ーーー風の威力が強まった。

 ーーーこのままだと力負けしちゃうですの…

 と脂汗を掻いたアーティナの予想は、的中することに。

 斬撃が消え失せて、彼女の腹へ二つの刀剣を突き刺す。

 「ぐぁぁぁ……痛い、痛い痛いですの…もう少しだったですの」

 「中々腕を上げたな! この力なら、一戦目は余裕だぞ」

 悔しがるアーティナへそう声をかけると。

カナミが目を醒ます。

「準備出来たから行くね!
          武装想像〈業火の騎士〉」

 突如カナミの前に業火を纏った騎士が出現。

 その騎士は、右手に持つ業火の剣でアミリへ斬りつけた。

「武装魔銃術〈水氷の弾〉」

 銃口を業火の騎士へ向け、引き金を引く。

ーーーバンバン。

 放たれた水と氷の弾が騎士を居射く。

 がしかしーーー効いておらず、その騎士の業火の斬撃が少女を襲う。

  「ごあぁぁっ、ゴホッゴホッ。熱い、熱い。それに痛い…」

 斬られたアミリの身体を、灼熱と痛みが同時に襲う。

 続いてミューフィが、サラへ攻撃を仕掛ける。

「行きます。
      催鳥魔術〈鷲の羽落とし〉」

ミューフィが魔笛を吹くと。
巨大な鷲を呼び出す。

 ーーーそして空へ飛んでいく。

 サラの頭上迄行くや否や、大きな羽を落とす。

 「そうはさせないよー。妖精やってー」

「はい、マスター。
         〈ソルーム·ミータ·シテート〉」

 妖精が呪文を唱えると、未知数の鍵が突如出現。
 技に鍵をかけて、落ちてきた羽を封じ込む。

「とても強くなりましたね」

「そうでしょー」

 過評価を受付け、嬉しそうにしてると。

 「んじゃあ、そろそろ終わらすぞ!」

「そ、そうね!」

 ヒョウガが、斜め後ろのアミリへ合図を送る。

「風神覇奥義〈烈風舞踏〉」

「武装魔銃術〈炎神の弾〉」

 彼の周りを、非常に強い風が覆い尽くす。そして舞踊る様にし、手に持つ二つの刀剣で斬った。
 アミリも銃口をカナミへ向け、引き金を引く。

ーーーバンバン。

 放たれた炎神の弾は、一ミリ足りともズレること無く飛んでいって、そして命中。

 「ぐはっ……痛い、痛い。痛いです」

 「ごあぁぁっ……ゴホゴホ。強く、なったね…」

 食らった二人は、身体を痛みや灼熱が襲う。

「参ったですの」

 敗けを認めたアーティナの一言で、特訓基模擬戦は終わりを迎えた。

 ホテルに戻ると直ぐに、彼らはお風呂に入りに行く。

 それから晩ご飯の時間になり、食事をすませ…

 部屋へ戻ると歯磨きを済ませて、寝る準備を済ます。

 それからカナミたちの部屋へ向かい。

 ガチャッとドアノブを捻ると。

 「お、来たね! それじゃあ、始めよっか」

 部屋へ入ると、早速カナミが切り出す。

 「こ、今回はどういう戦略で行くつもりよ?」

 「メインはあれで行くんですのね」

「ああ、そのつもりだぞ」

 任せ気味な言い様のアミリに、秘策である槍に触れる。それを肯定した。

「後は、三、三で行くぞ」

「了解ですの」

「わ、私もそれで良いわよ」

 二人はその作戦に賛成らしく、他の子達も賛成のようだ。

ーーー用事を済ませると。

 「んじゃあ、俺は寝るわ! お前らも早く寝るんだぞ」

とだけ伝え終わると、

「「お休み」」

「お、お休みなさい」

「お休みですの」

「お休みだよー」

 お休みの挨拶を其々が交わし、彼は部屋に戻る。
 部屋に入ると、間もなくしてベッドに入り、少しして眠りに就く。

 カナミたちも少ししてベッドに入り、間もなくして眠りに就く。

 本日の試合結果は、午前のAブロックは、チーム〈サークス〉VSチーム〈アグネル〉で、サーカスが三ー零で勝利。Bブロックのチーム〈オーガ〉VSチーム〈白狐〉は、一ー零で白狐が勝利を納めた。

 午後の試合は、Aブロックが、チーム〈竜召喚〉VSチーム〈狩人〉は六ー零で竜召喚が勝利。Bブロックのチーム〈月光〉VSチーム〈雷神〉は、雷神が五ー零で勝利した。





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