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1章
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「お嬢様、本気ですか?」
ぎょっとした様子でハンナが私の顔を覗き込んだ。ハンナは私より背がだいぶ高い上に顔を近づけてきたのでだいぶ威圧感がある。
たじろぎながらも「まあまあ」と宥める。チラリとはぐれ精霊の方を見ると首を傾げていた。髭をピクピクと動かしている。
可愛い……
「あのね、実は私精霊に嫌われる体質なの」
そう言うとはぐれ精霊は私をじっと注視した後「ああ」と納得いった様子で頷いた。
「貴方様の体内をめぐっているものですね」
なんてことのないように言う様子を不思議に思ったので、怖くないのか尋ねるとはぐれ精霊は逡巡した後「そうですね……」と続けた。
「私がはぐれだからかもしれませんが、注意してみてみると危害を加えるものでもないってわかりますから」
これは、思った以上にいい出会いかもしれない……。
「他の精霊たちにもそう思ってもらえるといいんだけど……ね」
「精霊は基本臆病ですからね」
「あなたさえよければ精霊のことを教えて欲しいの、無理強いはしないわ」
本心では契約をしたいけれどはぐれ精霊であるにはなんらかの事情があるに違いないし、断りづらい空気にはしたくなかった。
何より、グレース様以外でまともに精霊と会話ができていることが自分には嬉しかった。
嫌になったならいつでも出て行ってもいいし、衣食住は保証することを伝えるとはぐれ精霊は小さな手でポリポリと顔をかくと、まん丸な黒目で私を見上げた。
「私は契約するには向かない精霊ですよ? それに今は誰とも契約することはできません」
「それでもいいわ、私貴方とお友達になりたいの」
そう言うとはぐれ精霊は髭をまたピクピクと動かす。その仕草に思わず顔が緩みそうになるのを必死に堪える。
「私みたいな小汚い見た目のやつと友達になりたいだなんて物好きな人ですね」
「そう? それにここにいれば魔物はよりつかないし身の安全は保障するわよ? あ!でも精霊だから魔力かマナ……」
契約できないとあれば、魔力を契約者でもない限りは与えることもできないし、精霊界に帰れないはぐれ精霊ならば常時ここにいるとなると自然よりマナが少ないここで生活が難しいことに気づいた。どうしようかと頭を悩ませているとはぐれ精霊はおずおずと切り出した。
「あのう……私は人間の食事と一緒でも大丈夫です。魔力のある人間が作ったものならそこから摂取できるので」
「そうなの!?」
初めて知る事実に驚いてハンナの方を見るとハンナは「私も初めて知りました」と驚いた表情で言った。
「個体差はあると思いますが、日常生活を送る上では問題ありません。ただ、ひとつお願いがありまして……」
「なあに? 私でできることであれば言ってちょうだい」
「先程の菓子は貴方様がお作りになったものですよね?」
「そうよ、私が作ったクッキーよ。お口にあったかしら?」
「ええ、とてもおいしかったです。それでなんですが……貴方様の作った物を時折いただきたいのです」
小さな手を前で組んでモジモジしている。可愛らしすぎて「ぐっ……」と変な声が漏れてしまう。
近くでハンナが心配そうにしているのを気づかないふりをして少し深呼吸をして心を落ち着かせた後
「わかったわ、私は作るものがお菓子がほとんどなの。それでもいいかしら?」
そう尋ねるとはぐれ精霊はぱあっと目を輝かせた。
「それではお世話になります」
やった! 精霊とお近づきになれた!
嬉しくて締まりのない顔になりそうなのを堪えながらも、ふと思いついたことを尋ねた。
「それで、貴方のことをなんと呼べはいいかしら?」
基本精霊は契約した人間が名前をつける。はぐれである彼らは名を持たない。一緒に生活していく上で名前がないのは不便だしなんとなく聞いてみると、はぐれ精霊は少し「うーん……」と考えたところで答えた。
「よろしければ貴方様が付けていただけないでしょうか」
「大丈夫なの? 精霊に名付けは特別なものと聞いたことがあるけれど」
「問題ありません、精霊にとって名付けとは単に契約者の魔力が流れやすいようにするためですから」
初めて知ることばかりで興味深い。色々聞きたいことがたくさんありそうだ。ワクワクしながら名前を考える。
「うーんと……あ! リク! リクでどうかしら?」
「リク? 不思議な名前ですね。わかりました、よろしくお願いします」
そう言ってペコリと頭を下げた。可愛らしい……
「それにしても……まずはこれをどうにかしないとね」
ひと段落したところで辺りを見渡す。眼前にはリクが食べ散らかした花壇がある。花壇はアリアが植えた花だけ綺麗に食べてあった。
ハンナが植えた花は茎や葉っぱだけ残して花弁だけ食べられている。ジトっとハンナがリクを見て「貴方は当然手伝いなさい」と冷たく言うとリクはハンナに怯えて震え出す。
「しょうがないわよ、とりあえず片付けちゃいましょう」
ハンナを宥め、そばにあった箒を持つ。するとリクが「すみません……」としょんぼりしながら謝るので「大丈夫よ!そういえば!」と慌てて半ば強引に話を変える。
「リクは何の魔法が使えるの?」
何の気無しに尋ねると、リクは思いついたように右手を宙に向かって開いた。
すると、ふわっと風が吹き、散らかった花壇の花が舞い上がって一箇所に集められる。
「私は風魔法が使えます」
「すごいわ! しかもとっても便利じゃない!」
思わずきゃいきゃいとはしゃいでいると「アリア……?」と呼ぶ声がしたので振り向くと、エヴァンお兄様が不思議そうな表情で立っていた。
視線を私から私の足元にいるリクに移した。
「どういうことか説明してもらえる?」
そういったお兄様の顔は口元はにっこりと笑っていたけど目は笑っていなかった……。
ぎょっとした様子でハンナが私の顔を覗き込んだ。ハンナは私より背がだいぶ高い上に顔を近づけてきたのでだいぶ威圧感がある。
たじろぎながらも「まあまあ」と宥める。チラリとはぐれ精霊の方を見ると首を傾げていた。髭をピクピクと動かしている。
可愛い……
「あのね、実は私精霊に嫌われる体質なの」
そう言うとはぐれ精霊は私をじっと注視した後「ああ」と納得いった様子で頷いた。
「貴方様の体内をめぐっているものですね」
なんてことのないように言う様子を不思議に思ったので、怖くないのか尋ねるとはぐれ精霊は逡巡した後「そうですね……」と続けた。
「私がはぐれだからかもしれませんが、注意してみてみると危害を加えるものでもないってわかりますから」
これは、思った以上にいい出会いかもしれない……。
「他の精霊たちにもそう思ってもらえるといいんだけど……ね」
「精霊は基本臆病ですからね」
「あなたさえよければ精霊のことを教えて欲しいの、無理強いはしないわ」
本心では契約をしたいけれどはぐれ精霊であるにはなんらかの事情があるに違いないし、断りづらい空気にはしたくなかった。
何より、グレース様以外でまともに精霊と会話ができていることが自分には嬉しかった。
嫌になったならいつでも出て行ってもいいし、衣食住は保証することを伝えるとはぐれ精霊は小さな手でポリポリと顔をかくと、まん丸な黒目で私を見上げた。
「私は契約するには向かない精霊ですよ? それに今は誰とも契約することはできません」
「それでもいいわ、私貴方とお友達になりたいの」
そう言うとはぐれ精霊は髭をまたピクピクと動かす。その仕草に思わず顔が緩みそうになるのを必死に堪える。
「私みたいな小汚い見た目のやつと友達になりたいだなんて物好きな人ですね」
「そう? それにここにいれば魔物はよりつかないし身の安全は保障するわよ? あ!でも精霊だから魔力かマナ……」
契約できないとあれば、魔力を契約者でもない限りは与えることもできないし、精霊界に帰れないはぐれ精霊ならば常時ここにいるとなると自然よりマナが少ないここで生活が難しいことに気づいた。どうしようかと頭を悩ませているとはぐれ精霊はおずおずと切り出した。
「あのう……私は人間の食事と一緒でも大丈夫です。魔力のある人間が作ったものならそこから摂取できるので」
「そうなの!?」
初めて知る事実に驚いてハンナの方を見るとハンナは「私も初めて知りました」と驚いた表情で言った。
「個体差はあると思いますが、日常生活を送る上では問題ありません。ただ、ひとつお願いがありまして……」
「なあに? 私でできることであれば言ってちょうだい」
「先程の菓子は貴方様がお作りになったものですよね?」
「そうよ、私が作ったクッキーよ。お口にあったかしら?」
「ええ、とてもおいしかったです。それでなんですが……貴方様の作った物を時折いただきたいのです」
小さな手を前で組んでモジモジしている。可愛らしすぎて「ぐっ……」と変な声が漏れてしまう。
近くでハンナが心配そうにしているのを気づかないふりをして少し深呼吸をして心を落ち着かせた後
「わかったわ、私は作るものがお菓子がほとんどなの。それでもいいかしら?」
そう尋ねるとはぐれ精霊はぱあっと目を輝かせた。
「それではお世話になります」
やった! 精霊とお近づきになれた!
嬉しくて締まりのない顔になりそうなのを堪えながらも、ふと思いついたことを尋ねた。
「それで、貴方のことをなんと呼べはいいかしら?」
基本精霊は契約した人間が名前をつける。はぐれである彼らは名を持たない。一緒に生活していく上で名前がないのは不便だしなんとなく聞いてみると、はぐれ精霊は少し「うーん……」と考えたところで答えた。
「よろしければ貴方様が付けていただけないでしょうか」
「大丈夫なの? 精霊に名付けは特別なものと聞いたことがあるけれど」
「問題ありません、精霊にとって名付けとは単に契約者の魔力が流れやすいようにするためですから」
初めて知ることばかりで興味深い。色々聞きたいことがたくさんありそうだ。ワクワクしながら名前を考える。
「うーんと……あ! リク! リクでどうかしら?」
「リク? 不思議な名前ですね。わかりました、よろしくお願いします」
そう言ってペコリと頭を下げた。可愛らしい……
「それにしても……まずはこれをどうにかしないとね」
ひと段落したところで辺りを見渡す。眼前にはリクが食べ散らかした花壇がある。花壇はアリアが植えた花だけ綺麗に食べてあった。
ハンナが植えた花は茎や葉っぱだけ残して花弁だけ食べられている。ジトっとハンナがリクを見て「貴方は当然手伝いなさい」と冷たく言うとリクはハンナに怯えて震え出す。
「しょうがないわよ、とりあえず片付けちゃいましょう」
ハンナを宥め、そばにあった箒を持つ。するとリクが「すみません……」としょんぼりしながら謝るので「大丈夫よ!そういえば!」と慌てて半ば強引に話を変える。
「リクは何の魔法が使えるの?」
何の気無しに尋ねると、リクは思いついたように右手を宙に向かって開いた。
すると、ふわっと風が吹き、散らかった花壇の花が舞い上がって一箇所に集められる。
「私は風魔法が使えます」
「すごいわ! しかもとっても便利じゃない!」
思わずきゃいきゃいとはしゃいでいると「アリア……?」と呼ぶ声がしたので振り向くと、エヴァンお兄様が不思議そうな表情で立っていた。
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