23 / 91
1章
1−23
しおりを挟む
「では今日も魔力訓練からやっていきましょう」
魔力訓練は魔法を使うための初歩の魔法訓練である。この魔力をうまく操作できるようになってから生活魔法などの初歩の魔法を使うことができる。
生活魔法とはそのまま生活に直結する魔法のことである。例えば、火を起こしたり、風を起こして髪を乾かすなどを指すのだが、この初歩の魔法だと精霊と契約する必要もないため、守護精霊を持たない平民も使っていたりする。魔力量が少なくて精霊と契約することができない人も訓練次第で魔法を使うことができるのは日々の生活の中で大きい。
貴族は使用人がいるので生活魔法は必要ないと思うかもしれないがそれは大きな間違いだ。
生活魔法は繊細な魔力操作を求められる。繊細な魔力操作ができるようにならないと、精霊と契約した際に攻撃魔法を使用したときに誤って暴発する恐れがある。それほど、攻撃魔法は危険なものであるから繊細な魔力操作を身につけるのに生活魔法の習得は必須なのだ。精霊召喚の儀を行うタイミングはこの生活魔法を習得して召喚を行っても問題ないと判断されてからとなっている。それでも自分の力を見誤って生活魔法をちゃんと習得していない者が精霊と契約して攻撃魔法を使って大怪我をするなんてこともよくあるらしい。
リクに言われて瞼を閉じて身体の魔力の流れを探る。血液が身体中を駆け巡るのをイメージして同じように魔力も身体を巡っているイメージをする。
これがなかなか難しい……。
少しでも集中が途切れるとわかるのかリクから指摘が入る。
「お嬢様、もっと集中してください、頭のてっぺんから爪先まで魔力が巡っているのを想像してください」
ちょっとずつ指先があったかくなるのを感じる。心臓からゆっくりと何かが広がっていく。
「お嬢様、そのまま魔力に身を任せて」
そのときなぜか脳裏に以前夢で見た白銀の髪の人物の姿が浮かぶ。
なんでこんなときに……集中しないといけないのに!
そう思った瞬間身体が熱くなって何かにグイッと手を引っ張られた。
身体が前のめりになって慌てて瞼を開けるとそこは以前夢にみた石階段の前だった。
ここは……
「また来たのか」
後ろから声を掛けられてハッと振り向くと白銀の髪の人物が立っていた。顔はまるでそこだけもやがかかっていてよく見えない。
恐る恐る口を開こうとすると私の横を何かが通り過ぎてその人物に駆け寄った。
「こんにちは! 今日はお菓子持ってきたんだよ!」
前世の私……?
前世の私であるアズは白銀の髪の人物の足元にしがみついた。
「菓子? いらんから離れろ」
そう言って白銀の髪の人物はアズの頭を鷲掴みにして引っぺがそうとしている。
なんて乱暴な……仮にも幼い女の子に向かって!
そう思って抗議の言葉を口にしようとするも声がでなかった。私が目の前にいるのにも関わらず、いないもののように会話が繰り広げられていた。
前と同じだ……私の姿が見えないんだ。
「あのねーママが作ったクッキーだよ」
そう言って目の前の人物のそっけない態度なんて意に介さずアズはポケットから包みをガサゴソと取り出す。小さな手のひらの上で広げるとそこにはクッキーが数枚あった。
「はい! おいしいーよ」
一枚手にとって差し出すも目の前の人物は「いらん」と一言言ってプイッとそっぽを向いた。アズは少ししょんぼりしながら手にとったクッキーをそのまま自分の口に入れた。
「おいしいのにー」
「いらんから早く帰れ、また迷子になるぞ」
「しょっぱいのがいいの? パパののおつまみ持ってこようか?」
「あーのーなー! 話を聞け」
そう言って白銀の髪の人物はしゃがんでアズの目線に合わせた。
「ここはお前のような者が来るとこじゃないんだ、さっさと……グフッ!」
アズはしゃべっている目の前の人物の口にクッキーを押し込んだ。
ご、強引すぎる……。
「おいしいでしょ?」
「何すんだ!」
目の前の人物は文句を言いながらもクッキーを咀嚼して飲み込んだ。アズはニコニコと「おいしいよねー」と笑いかけた。
「ふん! まあまあだな」
「もういっこ食べる?」
そのときだった。
突然景色に霧が立ち込めて、目の前の二人の姿が遠くなっていく。慌てて辺りを見回すと、リクの声がどこからか聞こえてきた。
「アリアお嬢様!」
「リク!」
返事をした途端夢から覚めたかのように意識がはっきりしていく。ハッと瞬きをした瞬間、屋敷の訓練場に戻ったようだった。
「アリアお嬢様! 魔力を霧散させてください!」
前方にいるリクが慌てた様子で叫んでいた。なんのことかとリクの視線の先の自分の頭上を見ると、大きな赤い光の球体が浮かんでいた。
「ヒッ、これ何……?」
光の球体は私から流れる魔力でどんどん肥大していっているようだった。衝撃的な光景に呆然と立ち尽くしているとリクが「早く!」と何度も叫ぶ。
魔力を霧散ってどうしたらいいの?
パニックになって狼狽えていると騒ぎを聞きつけたのか屋敷から人が走ってくるのが見える。思わず「た、助けて」と声を上げたときだった。
私の両手を広げたくらいの大きさになった頭上の球体が屋敷の方を目掛けて飛んでいった。
魔力訓練は魔法を使うための初歩の魔法訓練である。この魔力をうまく操作できるようになってから生活魔法などの初歩の魔法を使うことができる。
生活魔法とはそのまま生活に直結する魔法のことである。例えば、火を起こしたり、風を起こして髪を乾かすなどを指すのだが、この初歩の魔法だと精霊と契約する必要もないため、守護精霊を持たない平民も使っていたりする。魔力量が少なくて精霊と契約することができない人も訓練次第で魔法を使うことができるのは日々の生活の中で大きい。
貴族は使用人がいるので生活魔法は必要ないと思うかもしれないがそれは大きな間違いだ。
生活魔法は繊細な魔力操作を求められる。繊細な魔力操作ができるようにならないと、精霊と契約した際に攻撃魔法を使用したときに誤って暴発する恐れがある。それほど、攻撃魔法は危険なものであるから繊細な魔力操作を身につけるのに生活魔法の習得は必須なのだ。精霊召喚の儀を行うタイミングはこの生活魔法を習得して召喚を行っても問題ないと判断されてからとなっている。それでも自分の力を見誤って生活魔法をちゃんと習得していない者が精霊と契約して攻撃魔法を使って大怪我をするなんてこともよくあるらしい。
リクに言われて瞼を閉じて身体の魔力の流れを探る。血液が身体中を駆け巡るのをイメージして同じように魔力も身体を巡っているイメージをする。
これがなかなか難しい……。
少しでも集中が途切れるとわかるのかリクから指摘が入る。
「お嬢様、もっと集中してください、頭のてっぺんから爪先まで魔力が巡っているのを想像してください」
ちょっとずつ指先があったかくなるのを感じる。心臓からゆっくりと何かが広がっていく。
「お嬢様、そのまま魔力に身を任せて」
そのときなぜか脳裏に以前夢で見た白銀の髪の人物の姿が浮かぶ。
なんでこんなときに……集中しないといけないのに!
そう思った瞬間身体が熱くなって何かにグイッと手を引っ張られた。
身体が前のめりになって慌てて瞼を開けるとそこは以前夢にみた石階段の前だった。
ここは……
「また来たのか」
後ろから声を掛けられてハッと振り向くと白銀の髪の人物が立っていた。顔はまるでそこだけもやがかかっていてよく見えない。
恐る恐る口を開こうとすると私の横を何かが通り過ぎてその人物に駆け寄った。
「こんにちは! 今日はお菓子持ってきたんだよ!」
前世の私……?
前世の私であるアズは白銀の髪の人物の足元にしがみついた。
「菓子? いらんから離れろ」
そう言って白銀の髪の人物はアズの頭を鷲掴みにして引っぺがそうとしている。
なんて乱暴な……仮にも幼い女の子に向かって!
そう思って抗議の言葉を口にしようとするも声がでなかった。私が目の前にいるのにも関わらず、いないもののように会話が繰り広げられていた。
前と同じだ……私の姿が見えないんだ。
「あのねーママが作ったクッキーだよ」
そう言って目の前の人物のそっけない態度なんて意に介さずアズはポケットから包みをガサゴソと取り出す。小さな手のひらの上で広げるとそこにはクッキーが数枚あった。
「はい! おいしいーよ」
一枚手にとって差し出すも目の前の人物は「いらん」と一言言ってプイッとそっぽを向いた。アズは少ししょんぼりしながら手にとったクッキーをそのまま自分の口に入れた。
「おいしいのにー」
「いらんから早く帰れ、また迷子になるぞ」
「しょっぱいのがいいの? パパののおつまみ持ってこようか?」
「あーのーなー! 話を聞け」
そう言って白銀の髪の人物はしゃがんでアズの目線に合わせた。
「ここはお前のような者が来るとこじゃないんだ、さっさと……グフッ!」
アズはしゃべっている目の前の人物の口にクッキーを押し込んだ。
ご、強引すぎる……。
「おいしいでしょ?」
「何すんだ!」
目の前の人物は文句を言いながらもクッキーを咀嚼して飲み込んだ。アズはニコニコと「おいしいよねー」と笑いかけた。
「ふん! まあまあだな」
「もういっこ食べる?」
そのときだった。
突然景色に霧が立ち込めて、目の前の二人の姿が遠くなっていく。慌てて辺りを見回すと、リクの声がどこからか聞こえてきた。
「アリアお嬢様!」
「リク!」
返事をした途端夢から覚めたかのように意識がはっきりしていく。ハッと瞬きをした瞬間、屋敷の訓練場に戻ったようだった。
「アリアお嬢様! 魔力を霧散させてください!」
前方にいるリクが慌てた様子で叫んでいた。なんのことかとリクの視線の先の自分の頭上を見ると、大きな赤い光の球体が浮かんでいた。
「ヒッ、これ何……?」
光の球体は私から流れる魔力でどんどん肥大していっているようだった。衝撃的な光景に呆然と立ち尽くしているとリクが「早く!」と何度も叫ぶ。
魔力を霧散ってどうしたらいいの?
パニックになって狼狽えていると騒ぎを聞きつけたのか屋敷から人が走ってくるのが見える。思わず「た、助けて」と声を上げたときだった。
私の両手を広げたくらいの大きさになった頭上の球体が屋敷の方を目掛けて飛んでいった。
10
あなたにおすすめの小説
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
十六歳の妹の誕生日、私はこの世を去る。
あいみ
恋愛
碌に手入れもされていない赤毛の伯爵令嬢、スカーレット。
宝石のように澄んだ青い髪をした伯爵令嬢、ルビア。
対極のような二人は姉妹。母親の違う。
お世辞にも美しいと言えない前妻の子供であるスカーレットは誰からも愛されない。
そばかすだらけで、笑顔が苦手な醜い姉。
天使のように愛らしく、誰からも好かれる可愛い妹。
生まれつき体の弱いルビアは長くは生きられないと宣告されていた。
両親の必死に看病や、“婚約者の献身的なサポート”のおかげで、日常生活が送れるようになるまで回復した。
だが……。運命とは残酷である。
ルビアの元に死神から知らせが届く。
十六歳の誕生日、ルビアの魂は天に還る、と。
美しい愛しているルビア。
失いたくない。殺されてなるものか。
それぞれのルビアを大切に思う想いが、一つの選択をさせた。
生まれてくる価値のなかった、醜いスカーレットを代わりに殺そう、と。
これは彼女が死ぬ前と死んだ後の、少しの物語。
過労死して転生したので絶対に働かないと決めたのに、何をしても才能がバレる件
やんやんつけバー
ファンタジー
過労死して異世界転生。今度こそ絶対に働かないと決めたのに、何をやっても才能がバレてしまう——。農村で静かに暮らすはずが、魔力、農業、医療……気づけば誰も放っておかない。チートで穏やか系の異世界スローライフ。
転生後はゆっくりと
衣更月
ファンタジー
貧しい集落で生まれたリリは、生まれた瞬間から前世の記憶があった。
日本人特有の”配慮”に徹した赤ん坊を演じていたことで、両親から距離を置かれた挙句、村人からも「不気味な子」として敬遠されることに…。
そして、5才の誕生日に遠くの町に捨てられた。
でも、リリは悲観しない。
前世の知識チートは出来ないけど、大人メンタルで堅実に。
目指すは憧れのスローライフが出来るほど、ほどほどの守銭奴としてリリは異世界人として順応していく。
全25話(予定)
転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ
如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白?
「え~…大丈夫?」
…大丈夫じゃないです
というかあなた誰?
「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」
…合…コン
私の死因…神様の合コン…
…かない
「てことで…好きな所に転生していいよ!!」
好きな所…転生
じゃ異世界で
「異世界ってそんな子供みたいな…」
子供だし
小2
「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」
よろです
魔法使えるところがいいな
「更に注文!?」
…神様のせいで死んだのに…
「あぁ!!分かりました!!」
やたね
「君…結構策士だな」
そう?
作戦とかは楽しいけど…
「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」
…あそこ?
「…うん。君ならやれるよ。頑張って」
…んな他人事みたいな…
「あ。爵位は結構高めだからね」
しゃくい…?
「じゃ!!」
え?
ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!
規格外で転生した私の誤魔化しライフ 〜旅行マニアの異世界無双旅〜
ケイソウ
ファンタジー
チビで陰キャラでモブ子の桜井紅子は、楽しみにしていたバス旅行へ向かう途中、突然の事故で命を絶たれた。
死後の世界で女神に異世界へ転生されたが、女神の趣向で変装する羽目になり、渡されたアイテムと備わったスキルをもとに、異世界を満喫しようと冒険者の資格を取る。生活にも慣れて各地を巡る旅を計画するも、国の要請で冒険者が遠征に駆り出される事態に……。
【本編完結】転生令嬢は自覚なしに無双する
ベル
ファンタジー
ふと目を開けると、私は7歳くらいの女の子の姿になっていた。
きらびやかな装飾が施された部屋に、ふかふかのベット。忠実な使用人に溺愛する両親と兄。
私は戸惑いながら鏡に映る顔に驚愕することになる。
この顔って、マルスティア伯爵令嬢の幼少期じゃない?
私さっきまで確か映画館にいたはずなんだけど、どうして見ていた映画の中の脇役になってしまっているの?!
映画化された漫画の物語の中に転生してしまった女の子が、実はとてつもない魔力を隠し持った裏ボスキャラであることを自覚しないまま、どんどん怪物を倒して無双していくお話。
設定はゆるいです
異世界に転生したので幸せに暮らします、多分
かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。
前世の分も幸せに暮らします!
平成30年3月26日完結しました。
番外編、書くかもです。
5月9日、番外編追加しました。
小説家になろう様でも公開してます。
エブリスタ様でも公開してます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる