精霊に嫌われている転生令嬢の奮闘記

あまみ

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1章

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 「では今日も魔力訓練からやっていきましょう」

 魔力訓練は魔法を使うための初歩の魔法訓練である。この魔力をうまく操作できるようになってから生活魔法などの初歩の魔法を使うことができる。
生活魔法とはそのまま生活に直結する魔法のことである。例えば、火を起こしたり、風を起こして髪を乾かすなどを指すのだが、この初歩の魔法だと精霊と契約する必要もないため、守護精霊を持たない平民も使っていたりする。魔力量が少なくて精霊と契約することができない人も訓練次第で魔法を使うことができるのは日々の生活の中で大きい。
 貴族は使用人がいるので生活魔法は必要ないと思うかもしれないがそれは大きな間違いだ。
 生活魔法は繊細な魔力操作を求められる。繊細な魔力操作ができるようにならないと、精霊と契約した際に攻撃魔法を使用したときに誤って暴発する恐れがある。それほど、攻撃魔法は危険なものであるから繊細な魔力操作を身につけるのに生活魔法の習得は必須なのだ。精霊召喚の儀を行うタイミングはこの生活魔法を習得して召喚を行っても問題ないと判断されてからとなっている。それでも自分の力を見誤って生活魔法をちゃんと習得していない者が精霊と契約して攻撃魔法を使って大怪我をするなんてこともよくあるらしい。

  
 リクに言われて瞼を閉じて身体の魔力の流れを探る。血液が身体中を駆け巡るのをイメージして同じように魔力も身体を巡っているイメージをする。
 これがなかなか難しい……。
 少しでも集中が途切れるとわかるのかリクから指摘が入る。

 「お嬢様、もっと集中してください、頭のてっぺんから爪先まで魔力が巡っているのを想像してください」

 ちょっとずつ指先があったかくなるのを感じる。心臓からゆっくりと何かが広がっていく。

 「お嬢様、そのまま魔力に身を任せて」

 そのときなぜか脳裏に以前夢で見た白銀の髪の人物の姿が浮かぶ。

 なんでこんなときに……集中しないといけないのに!

 そう思った瞬間身体が熱くなって何かにグイッと手を引っ張られた。

 身体が前のめりになって慌てて瞼を開けるとそこは以前夢にみた石階段の前だった。

 ここは……

 「また来たのか」

 後ろから声を掛けられてハッと振り向くと白銀の髪の人物が立っていた。顔はまるでそこだけもやがかかっていてよく見えない。
 恐る恐る口を開こうとすると私の横を何かが通り過ぎてその人物に駆け寄った。

 「こんにちは! 今日はお菓子持ってきたんだよ!」

 前世の私……?

 前世の私であるアズは白銀の髪の人物の足元にしがみついた。

 「菓子? いらんから離れろ」

 そう言って白銀の髪の人物はアズの頭を鷲掴みにして引っぺがそうとしている。

 なんて乱暴な……仮にも幼い女の子に向かって!

 そう思って抗議の言葉を口にしようとするも声がでなかった。私が目の前にいるのにも関わらず、いないもののように会話が繰り広げられていた。
 
 前と同じだ……私の姿が見えないんだ。


 「あのねーママが作ったクッキーだよ」

 そう言って目の前の人物のそっけない態度なんて意に介さずアズはポケットから包みをガサゴソと取り出す。小さな手のひらの上で広げるとそこにはクッキーが数枚あった。

 「はい! おいしいーよ」

 一枚手にとって差し出すも目の前の人物は「いらん」と一言言ってプイッとそっぽを向いた。アズは少ししょんぼりしながら手にとったクッキーをそのまま自分の口に入れた。

 「おいしいのにー」
 「いらんから早く帰れ、また迷子になるぞ」
 「しょっぱいのがいいの? パパののおつまみ持ってこようか?」
 「あーのーなー! 話を聞け」

 そう言って白銀の髪の人物はしゃがんでアズの目線に合わせた。

 「ここはお前のような者が来るとこじゃないんだ、さっさと……グフッ!」

 アズはしゃべっている目の前の人物の口にクッキーを押し込んだ。
 ご、強引すぎる……。
 
 「おいしいでしょ?」
 「何すんだ!」

 目の前の人物は文句を言いながらもクッキーを咀嚼して飲み込んだ。アズはニコニコと「おいしいよねー」と笑いかけた。

 「ふん! まあまあだな」
 「もういっこ食べる?」

 

 そのときだった。
 突然景色に霧が立ち込めて、目の前の二人の姿が遠くなっていく。慌てて辺りを見回すと、リクの声がどこからか聞こえてきた。

 「アリアお嬢様!」
 「リク!」

 返事をした途端夢から覚めたかのように意識がはっきりしていく。ハッと瞬きをした瞬間、屋敷の訓練場に戻ったようだった。

 「アリアお嬢様! 魔力を霧散させてください!」

 前方にいるリクが慌てた様子で叫んでいた。なんのことかとリクの視線の先の自分の頭上を見ると、大きな赤い光の球体が浮かんでいた。
 
 「ヒッ、これ何……?」

 光の球体は私から流れる魔力でどんどん肥大していっているようだった。衝撃的な光景に呆然と立ち尽くしているとリクが「早く!」と何度も叫ぶ。
 魔力を霧散ってどうしたらいいの?
 パニックになって狼狽えていると騒ぎを聞きつけたのか屋敷から人が走ってくるのが見える。思わず「た、助けて」と声を上げたときだった。



 私の両手を広げたくらいの大きさになった頭上の球体が屋敷の方を目掛けて飛んでいった。

 
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