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1章
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すごい速さで屋敷の方へ飛んでいく光の球体に私はなす術もなかった。ただ、わかるのはあの光の球体が屋敷からかけてくる人達に当たったら無事では済まないであろうことは私の頭でもわかった。
お願い、止まって!
その瞬間背後からかまいたちのような刃が通り過ぎていった。リクが風魔法を放ったようだった。光の球体を追いかけて行くも追いつかない。
もうダメだと息を呑んだときだった。
風切り音がしたかと思うととてつもない強風が吹き荒れた。思わず目を瞑る。衝撃音が轟き、立っていられないくらいの熱風と飛んできた小石が身体を打ちつける。衝撃音が止んでしゃがみ込んだ状態で恐る恐る瞼を開けると、ひどい砂埃が辺りを舞っていた。目を凝らして見ると光の球体はそこにはなくなっており、倒れている人間もおらず思わずホッと力が抜けた。砂埃が舞う中、屋敷の前に一人の人間が立っているのがわかった。その人物は手に剣を持っていた。呆然としていると
「お嬢様!!」
背後からリクが駆け寄ってきた。リクの姿を見るととてつもない安堵感から涙が出た。自分の心臓の音が今更うるさく感じた。
「お怪我はありませんか!」
「あ……リク……私、なんて事を……」
自分のしたことの恐ろしさに思わず身体が震えて涙が次から次へと溢れていく。あのままあの球体が屋敷の方へ当たっていたらと思うと背筋が凍った。
怖かった……私はもしかしたら人を殺してしまうかも知れなかった……。
ガクガクと震えている私をリクが心配そうな表情で覗き込む。不意に足音が近づいてきて私の目の前まで来て停止した。
「すごい魔力球がこっちに向かってきたから思わず切っちゃったよ~」
切った……?
見知らぬ声が振ってきて視線をゆっくり足元から上にあげると線の細い男がこちらを見てニコッと笑った。ミルクティー色の髪の色は肩までの長さで鎧の胸当てを身につけて冒険者風の出立ちをしている。腰には剣を携えている。
「貴殿が同行する冒険者か、礼を言う。……魔法剣か」
リクが私の前に立って男に礼を述べた。男はリクを見て珍しそうに「うん、そうそう~って……喋ってる~!」とややおっとりとした口調で驚きの声を上げた。
「私は精霊だ」
「そうなんだ~その割には精霊っぽくないね」
何やら二人で会話を交わしているところへ「アリアお嬢様!!」とハンナが駆け寄ってきた。
「ハンナ……」
「ご無事でよかったです……!」
ハンナに抱きしめられ、ホッと肩の力が抜けた私はそのまま意識を手放した。
目を覚ますとそこは見慣れた自分の部屋の天井だった。ベッドから起き上がると身体中痛くてなんだか動かしづらい。ふと視界に入った腕には包帯が巻かれている。思わず自分の頬を触るとガーゼが貼ってある。
私、あの後どうなったんだっけ……。
「アリアお嬢様!」
ハンナがノックをしてから返事を待たずに入ってきた。いつものハンナならあり得ないのでそれほど心配をかけていたのだろう。視界に飛び込んできたハンナは涙で目を潤ませていた。申し訳ないと思い、ハンナに謝罪の言葉を述べた。
「ごめんなさい……」
「心配でどうにかなりそうでしたよ……!二日も眠っておられてたんですよ」
二日も眠っていたなんて……。
思わず呆然としているとハンナは「旦那様と奥様に知らせてきます」と言って部屋を出て行ってしまった。一人になって再び、二日前の出来事が思い出される。自分の魔力が人を危険な目に遭わすところだったことに恐怖が込み上げてきた。
「アリアお嬢様」
ふとベッドの下からリクが顔を覗かせた。リクは髭をピクピクと動かして、ベッドの上に飛び乗り私のそばに駆け寄った。小さな手でペタペタと私の頬に触れる。
「顔色は良いですね、だるくはないですか」
「少し動かしづらい気はするけど大丈夫」
お互いそこで無言になった。リクに謝ろうと口を開いたときだった。
「申し訳ありませんでした」
リクがしょんぼりした様子で私に頭を下げた。
「どうしてリクが謝るの? あんなことになってしまったのは私のせいよ」
「いいえ、私の責任です。お嬢様の体内を巡っているものを見誤ったのですから」
「あれは私についているもののせいなの?」
赤く光る球体を思い出しながら尋ねるとリクは目を瞑って「わかりません」と答えた。リク曰く、私が魔力訓練をしている最中に魔力がだんだん内から外へ溢れ出して来たのだそう。頭上でみるみる膨れ上がり、リクは私に何回も呼びかけたものの反応がなくてまるで意識がない状態だったらしい。精霊である自分が、契約者でもない私の作り出している魔力に介入すると私の身体に影響を及ぼす恐れがあるため、不用意に近づけず呼びかけることしかできなかったそう。
そして意識を取り戻したと思ったら、パニックになった私が魔力でできた球を放ってしまった……。
「私、危うくみんなを危ない目に遭わせるところだったのね」
思い出すだけで恐怖と苦しさが込み上げてくる。思わず拳を固く握りしめていると「お嬢様」とリクが呼びかけた。
「結果的にはお嬢様が放った魔力球を冒険者が切り裂いて魔力を消滅させたのです、それで屋敷もそこにいた人間も何事もなかったのです。あまり気に病んではいけません。これからどうすべきか一緒に考えていきましょう」
「リク……ありがとう」
涙が溢れそうになりながらもグッと堪えた。ここで泣いてはいけない。そして思い立った事を口に出した。確か私の意識がなくなる前にリクと会話していたのを朧げに思い出す。
「リク、その私の放った魔力球を切って消滅してくれた方は?」
「彼はメリダ殿の末の息子で私達に同行する冒険者です」
ミルクティー色の髪だけが何故だかはっきりと鮮明に思い出された。
お願い、止まって!
その瞬間背後からかまいたちのような刃が通り過ぎていった。リクが風魔法を放ったようだった。光の球体を追いかけて行くも追いつかない。
もうダメだと息を呑んだときだった。
風切り音がしたかと思うととてつもない強風が吹き荒れた。思わず目を瞑る。衝撃音が轟き、立っていられないくらいの熱風と飛んできた小石が身体を打ちつける。衝撃音が止んでしゃがみ込んだ状態で恐る恐る瞼を開けると、ひどい砂埃が辺りを舞っていた。目を凝らして見ると光の球体はそこにはなくなっており、倒れている人間もおらず思わずホッと力が抜けた。砂埃が舞う中、屋敷の前に一人の人間が立っているのがわかった。その人物は手に剣を持っていた。呆然としていると
「お嬢様!!」
背後からリクが駆け寄ってきた。リクの姿を見るととてつもない安堵感から涙が出た。自分の心臓の音が今更うるさく感じた。
「お怪我はありませんか!」
「あ……リク……私、なんて事を……」
自分のしたことの恐ろしさに思わず身体が震えて涙が次から次へと溢れていく。あのままあの球体が屋敷の方へ当たっていたらと思うと背筋が凍った。
怖かった……私はもしかしたら人を殺してしまうかも知れなかった……。
ガクガクと震えている私をリクが心配そうな表情で覗き込む。不意に足音が近づいてきて私の目の前まで来て停止した。
「すごい魔力球がこっちに向かってきたから思わず切っちゃったよ~」
切った……?
見知らぬ声が振ってきて視線をゆっくり足元から上にあげると線の細い男がこちらを見てニコッと笑った。ミルクティー色の髪の色は肩までの長さで鎧の胸当てを身につけて冒険者風の出立ちをしている。腰には剣を携えている。
「貴殿が同行する冒険者か、礼を言う。……魔法剣か」
リクが私の前に立って男に礼を述べた。男はリクを見て珍しそうに「うん、そうそう~って……喋ってる~!」とややおっとりとした口調で驚きの声を上げた。
「私は精霊だ」
「そうなんだ~その割には精霊っぽくないね」
何やら二人で会話を交わしているところへ「アリアお嬢様!!」とハンナが駆け寄ってきた。
「ハンナ……」
「ご無事でよかったです……!」
ハンナに抱きしめられ、ホッと肩の力が抜けた私はそのまま意識を手放した。
目を覚ますとそこは見慣れた自分の部屋の天井だった。ベッドから起き上がると身体中痛くてなんだか動かしづらい。ふと視界に入った腕には包帯が巻かれている。思わず自分の頬を触るとガーゼが貼ってある。
私、あの後どうなったんだっけ……。
「アリアお嬢様!」
ハンナがノックをしてから返事を待たずに入ってきた。いつものハンナならあり得ないのでそれほど心配をかけていたのだろう。視界に飛び込んできたハンナは涙で目を潤ませていた。申し訳ないと思い、ハンナに謝罪の言葉を述べた。
「ごめんなさい……」
「心配でどうにかなりそうでしたよ……!二日も眠っておられてたんですよ」
二日も眠っていたなんて……。
思わず呆然としているとハンナは「旦那様と奥様に知らせてきます」と言って部屋を出て行ってしまった。一人になって再び、二日前の出来事が思い出される。自分の魔力が人を危険な目に遭わすところだったことに恐怖が込み上げてきた。
「アリアお嬢様」
ふとベッドの下からリクが顔を覗かせた。リクは髭をピクピクと動かして、ベッドの上に飛び乗り私のそばに駆け寄った。小さな手でペタペタと私の頬に触れる。
「顔色は良いですね、だるくはないですか」
「少し動かしづらい気はするけど大丈夫」
お互いそこで無言になった。リクに謝ろうと口を開いたときだった。
「申し訳ありませんでした」
リクがしょんぼりした様子で私に頭を下げた。
「どうしてリクが謝るの? あんなことになってしまったのは私のせいよ」
「いいえ、私の責任です。お嬢様の体内を巡っているものを見誤ったのですから」
「あれは私についているもののせいなの?」
赤く光る球体を思い出しながら尋ねるとリクは目を瞑って「わかりません」と答えた。リク曰く、私が魔力訓練をしている最中に魔力がだんだん内から外へ溢れ出して来たのだそう。頭上でみるみる膨れ上がり、リクは私に何回も呼びかけたものの反応がなくてまるで意識がない状態だったらしい。精霊である自分が、契約者でもない私の作り出している魔力に介入すると私の身体に影響を及ぼす恐れがあるため、不用意に近づけず呼びかけることしかできなかったそう。
そして意識を取り戻したと思ったら、パニックになった私が魔力でできた球を放ってしまった……。
「私、危うくみんなを危ない目に遭わせるところだったのね」
思い出すだけで恐怖と苦しさが込み上げてくる。思わず拳を固く握りしめていると「お嬢様」とリクが呼びかけた。
「結果的にはお嬢様が放った魔力球を冒険者が切り裂いて魔力を消滅させたのです、それで屋敷もそこにいた人間も何事もなかったのです。あまり気に病んではいけません。これからどうすべきか一緒に考えていきましょう」
「リク……ありがとう」
涙が溢れそうになりながらもグッと堪えた。ここで泣いてはいけない。そして思い立った事を口に出した。確か私の意識がなくなる前にリクと会話していたのを朧げに思い出す。
「リク、その私の放った魔力球を切って消滅してくれた方は?」
「彼はメリダ殿の末の息子で私達に同行する冒険者です」
ミルクティー色の髪だけが何故だかはっきりと鮮明に思い出された。
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