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1章
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その後お父様とお母様、そしてエヴァンお兄様が部屋に駆け込んできた。泣きながらお母様に抱きしめられて、腕の中でまたしても少し泣きそうになってしまった。
そしてひとしきり両親に心配された後、両親は仕事で部屋を出て行った。部屋にはエヴァンお兄様とハンナとリクの三人になった。
「エヴァンお兄様、シリルはどうしたの?」
不思議に思ってそう尋ねると、エヴァンお兄様は苦笑した。
「シリルはね、レイ殿のお相手をなさってるんだ」
「レイ殿って……冒険者の方?」
脳裏にメリダと同じミルクティー色の髪が浮かんだ。
「エヴァンお兄様、私その方にお礼を言いたいのだけど」
「うーん……そうだね、僕の方で声を掛けておくよ」
エヴァンお兄様はそう言って言葉を濁した。その言葉を聞いたハンナが複雑そうな表情になっているのを見て不思議に思っていると、エヴァンお兄様が「ところで」と続けた。
「あのときの事をアリアから話を聞きたいと思うんだけど」
心臓が再び跳ねた。ハンナから心配そうな視線を感じる。深呼吸をして心を落ち着かせた。魔力訓練をしていて身体が熱くなったこと、その瞬間意識が遠のいたこと、目を覚ますと頭上に魔力球ができていたことを話した。あのとき見た夢の内容は私の前世の事を話さなければいけなくなるためそのことを省いて説明した。私には前世の事を話す勇気はなかった。エヴァンお兄様とリクは真剣な表情でいくつか質問した後、二人で顔を見合わせて話を始めた。
「どう見える?」
「少し強くなっているかと、しかし確実なのは……」
「やはりグレースか」
そう言ってエヴァンお兄様は私に申し訳なさそうな表情を向けた。
「グレースにアリアの身体の状態を詳しく見てもらいたいのだけどここへ呼んでもいいかな」
「このような見苦しい姿を見せても大丈夫かしら」
「それは大丈夫だよ、アリアの体内をめぐる魔力の色を見てもらうだけだから」
そう言ってにっこり笑うとエヴァンお兄様は少し私の前から一歩下がった。すると光の粒子が舞ったかと思うと、目の前にグレース様が姿を現した。
グレース様は私の姿を見るなり眉を顰めてエヴァンお兄様とリクを睨んだ。
「何があった? お前たちがついていながら」
その剣幕に少し怯んだエヴァンお兄様は二日前の出来事をグレース様に説明した。グレース様は聞いている間ずっとリクを睨みつけていた。
「ほう、つまりお前がアリアについているものを見誤ったせいでアリアはこのような目にあったと言うのか」
腕組みをしてリクに対してそう告げたグレース様に私は慌てて間に入った。
「違います! 私が未熟なせいです!」
「かばいだてするのか……ほんとにお前と言うやつは……かわいそうに、顔にも傷を作っているではないか」
そう言ってグレース様は近づいて私の頬に触れた。すると先程まで動かしづらかった身体がみるみる痛みが引いていく。
「ありがとうございます、グレース様」
「よい、日頃の菓子の礼だ」
お礼を言うとグレース様はフッと微笑んだ。至近距離で微笑まれて、思わずドキドキしてしまった。グレース様は私の頬に触れたままジッと私の瞳を覗き込んだ。心臓が早鐘を立てている。
「……これは」
私の頬から手を離したグレース様はエヴァンお兄様の方へと向き直った。
「魔力を大量に放出したせいなのか、それとも魔力訓練のおかげかはわからんがアリアについているものが少しずつ表へと出てきたようだな」
「表に出て来ているって……それは大丈夫なのか」
「今のところ身体に影響は出ていないが変化は今見ただけではわからん」
エヴァンお兄様と会話しているところに思わず我慢できなくなって私はグレース様に尋ねた。
「あの……その表に出てきているって?」
「私は精霊が出す色が見えると前に話しただろう? 以前お前からは何らかの気配は感じるもののはっきりとわからなかった。それが今アリアからうっすらと赤く光を帯びているのがわかった」
「赤く……」
「そして魔力が増えているように思える」
たくさんもたらされた自分の情報に脳が処理し切れない。思わず固まっているとグレース様は私を見てニヤリと「悪いものではなさそうだぞ」と言った。
「問題なのは魔力訓練をしてこれからもあのようなことが起きないとは限らないということだ」
エヴァンお兄様がぽつりと呟いた。その言葉に動揺する。
確かにあんなことがまた起きたら……。
不安に苛まれているとグレース様は真剣な表情で口を開いた。
「それは逆だ、エヴァン。むしろ魔力訓練をしないと今後同じようなことが起きる」
「それはどういうことですか?」
グレース様に尋ねるとグレース様はゆっくりと私のベッドに腰掛けた。
「アリアの魔力の保有量は実際どのくらいあるのかはわからない。ただ一つ言えるのは魔力を保有している器の大きさは反して小さいということだ」
「器の大きさ……」
「器が小さいことで魔力が溢れてしまい、今回そのようなことが起きた。蓋をしていた器の蓋が外れてしまったといえばわかりやすいか? 溢れそうな魔力を溢れさせないようにするためには魔力の器を大きく……それは魔力訓練をすることによって大きくすればよい。自分の魔力を操れるように訓練し、少しずつ器を大きくする。あとは魔力を大量に放出するとかだが、これはまだ未熟なお前には暴発する恐れがあるのでおすすめはしない」
魔力訓練を続けることに私は少し不安を感じた。恐怖を感じないと言えば嘘になる。でもやらなければ今後また同じようなことが起きてしまう。
脳裏に屋敷にすごい速さで向かっていく魔力球を思い出して身震いした。
もう、あんな思いはしたくない……。
そしてひとしきり両親に心配された後、両親は仕事で部屋を出て行った。部屋にはエヴァンお兄様とハンナとリクの三人になった。
「エヴァンお兄様、シリルはどうしたの?」
不思議に思ってそう尋ねると、エヴァンお兄様は苦笑した。
「シリルはね、レイ殿のお相手をなさってるんだ」
「レイ殿って……冒険者の方?」
脳裏にメリダと同じミルクティー色の髪が浮かんだ。
「エヴァンお兄様、私その方にお礼を言いたいのだけど」
「うーん……そうだね、僕の方で声を掛けておくよ」
エヴァンお兄様はそう言って言葉を濁した。その言葉を聞いたハンナが複雑そうな表情になっているのを見て不思議に思っていると、エヴァンお兄様が「ところで」と続けた。
「あのときの事をアリアから話を聞きたいと思うんだけど」
心臓が再び跳ねた。ハンナから心配そうな視線を感じる。深呼吸をして心を落ち着かせた。魔力訓練をしていて身体が熱くなったこと、その瞬間意識が遠のいたこと、目を覚ますと頭上に魔力球ができていたことを話した。あのとき見た夢の内容は私の前世の事を話さなければいけなくなるためそのことを省いて説明した。私には前世の事を話す勇気はなかった。エヴァンお兄様とリクは真剣な表情でいくつか質問した後、二人で顔を見合わせて話を始めた。
「どう見える?」
「少し強くなっているかと、しかし確実なのは……」
「やはりグレースか」
そう言ってエヴァンお兄様は私に申し訳なさそうな表情を向けた。
「グレースにアリアの身体の状態を詳しく見てもらいたいのだけどここへ呼んでもいいかな」
「このような見苦しい姿を見せても大丈夫かしら」
「それは大丈夫だよ、アリアの体内をめぐる魔力の色を見てもらうだけだから」
そう言ってにっこり笑うとエヴァンお兄様は少し私の前から一歩下がった。すると光の粒子が舞ったかと思うと、目の前にグレース様が姿を現した。
グレース様は私の姿を見るなり眉を顰めてエヴァンお兄様とリクを睨んだ。
「何があった? お前たちがついていながら」
その剣幕に少し怯んだエヴァンお兄様は二日前の出来事をグレース様に説明した。グレース様は聞いている間ずっとリクを睨みつけていた。
「ほう、つまりお前がアリアについているものを見誤ったせいでアリアはこのような目にあったと言うのか」
腕組みをしてリクに対してそう告げたグレース様に私は慌てて間に入った。
「違います! 私が未熟なせいです!」
「かばいだてするのか……ほんとにお前と言うやつは……かわいそうに、顔にも傷を作っているではないか」
そう言ってグレース様は近づいて私の頬に触れた。すると先程まで動かしづらかった身体がみるみる痛みが引いていく。
「ありがとうございます、グレース様」
「よい、日頃の菓子の礼だ」
お礼を言うとグレース様はフッと微笑んだ。至近距離で微笑まれて、思わずドキドキしてしまった。グレース様は私の頬に触れたままジッと私の瞳を覗き込んだ。心臓が早鐘を立てている。
「……これは」
私の頬から手を離したグレース様はエヴァンお兄様の方へと向き直った。
「魔力を大量に放出したせいなのか、それとも魔力訓練のおかげかはわからんがアリアについているものが少しずつ表へと出てきたようだな」
「表に出て来ているって……それは大丈夫なのか」
「今のところ身体に影響は出ていないが変化は今見ただけではわからん」
エヴァンお兄様と会話しているところに思わず我慢できなくなって私はグレース様に尋ねた。
「あの……その表に出てきているって?」
「私は精霊が出す色が見えると前に話しただろう? 以前お前からは何らかの気配は感じるもののはっきりとわからなかった。それが今アリアからうっすらと赤く光を帯びているのがわかった」
「赤く……」
「そして魔力が増えているように思える」
たくさんもたらされた自分の情報に脳が処理し切れない。思わず固まっているとグレース様は私を見てニヤリと「悪いものではなさそうだぞ」と言った。
「問題なのは魔力訓練をしてこれからもあのようなことが起きないとは限らないということだ」
エヴァンお兄様がぽつりと呟いた。その言葉に動揺する。
確かにあんなことがまた起きたら……。
不安に苛まれているとグレース様は真剣な表情で口を開いた。
「それは逆だ、エヴァン。むしろ魔力訓練をしないと今後同じようなことが起きる」
「それはどういうことですか?」
グレース様に尋ねるとグレース様はゆっくりと私のベッドに腰掛けた。
「アリアの魔力の保有量は実際どのくらいあるのかはわからない。ただ一つ言えるのは魔力を保有している器の大きさは反して小さいということだ」
「器の大きさ……」
「器が小さいことで魔力が溢れてしまい、今回そのようなことが起きた。蓋をしていた器の蓋が外れてしまったといえばわかりやすいか? 溢れそうな魔力を溢れさせないようにするためには魔力の器を大きく……それは魔力訓練をすることによって大きくすればよい。自分の魔力を操れるように訓練し、少しずつ器を大きくする。あとは魔力を大量に放出するとかだが、これはまだ未熟なお前には暴発する恐れがあるのでおすすめはしない」
魔力訓練を続けることに私は少し不安を感じた。恐怖を感じないと言えば嘘になる。でもやらなければ今後また同じようなことが起きてしまう。
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