精霊に嫌われている転生令嬢の奮闘記

あまみ

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2章

2−15

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 改めてマリウス神父に挨拶をすると先ほどの子供達に向けた笑顔とは違う朗らかな雰囲気で出迎えてくれた。
 そのままお茶を勧められたのだがフローラに着替えを返却してからいただくことになった。
 マリウス神父は書類仕事を済ませてくるとのことで、後ほど向かう場所だけ聞いてハンナとリクとフローラのいる食堂へ向かう。
 食堂に着くとフローラが一人でせっせとテーブルを拭いているところだった。

 こちらに気づくとフローラは「あ!アリア!」と手を止めて笑顔を見せた。

 「忙しいところにごめんなさい、昨日借りた服を返しにきたの」
 「わざわざありがとう。もう少しで拭き終わるから適当に腰掛けて待っててくれる?」

 そう言われ、目に入った椅子に座る。食堂は木でできた長机があって椅子がずらりと並んでいる。
 使い込まれたテーブルをふとみると、子供が書いた落書きを見つけて微笑ましい気持ちになる。手作りのものと思われる当番表などが壁に貼ってあり、前世であった全体的に温かな雰囲気が漂っていてなんだか居心地がいい。

 昨日マリウス神父から聞いた話によると、ここに住んでいる子供達は全員で十五名ほどでそのうち魔力量が多いとされている子供はカイという少年を除いて三名。
 大抵は十五歳になってからここを出ていく決まりで、ここを出たら子供達は冒険者になったり、職人に弟子入りして住み込みで働いたりしているらしい。
 ただ、魔力量の多い子供は王都の教会に十二歳から行って魔法学園に通う。そして高等部卒業後は教会の仕事に従事する。

 神父の話によるとカイは王都で学園に行けることを喜んでいたという。誘拐の線を疑ってみたがこの教会には夜には防犯魔法が施されており、外部の人間が侵入した際マリウス神父に通達が行く魔道具があるとのこと。ということはカイは自らここを出た可能性が高い。
 カイはなぜ自らここを出たのか……。
 次の日には王都へ向けて出発する予定で荷物などはそのままだったという。ちょっとした外出で戻ってくるつもりでここを出たのか、それとも戻らないつもりでここを出たのかはわからない。そんなことをぼーっと考えていると名前を呼ばれた。

 「アリア! どうしたの? 具合でも悪いの?」

 心配そうにフローラが顔を覗き込んできて思わずびっくりする。

 「ううん、なんでもないわ。ちょっとぼーっとしちゃって」
 「そうなの? ちょっと時間がかかっちゃった、待たせてごめんね」
 「一人で掃除するの?」
 「一応交代制なんだけど人によっては掃除が甘かったりするから私が当番の時はいろいろ気になり出しちゃって……」
 
 そう言って舌を出しておどけて見せた。フローラの表情に笑いながら奥の開けっ放しの扉がふと気になって視線を移す。

 「あの扉の向こうは厨房?」
 「そうよ。気になるならみてみる?」

 お言葉に甘えて厨房にみんなで移動する。食堂の隣の厨房は決して広いとはいえないがきちんと整頓されている印象を受けた。
 ワクワクしながらキョロキョロと見渡しているとフローラが説明してくれる。普段の食事は通いの調理員さんが来てくれて昼頃に来て昼と晩の分を作ってくれるそうだ。
 朝だけ自分たちで簡単に用意して食べるらしい。オーブンと思しき物の横に山積みになったパンが目に入る。フローラは私の視線の先にあるパンを見て「ああ」と言うと笑った。

 「お腹が空いているの? アリア」
 「ちょっと気になるなーと思って見てただけよ」
 「食べてもいいけど、スープがないと硬くて食べられないわよ」
 「そうなの?」
 
 フローラからパンを一つ渡され、手に取ってみると見た目は普通の丸パンだが確かにカチカチに硬い。少し指先に力を込めてみるもびくともしなかった。
 その様子をクスクスと眺めていたフローラは私からパンを受け取る。

 「ね? スープに浸してなんとか食べているんだもの。そのままじゃ顎が疲れて大変なことになるわよ」
  
 話によるといつも町のパン屋にただで売れ残りをおろしてもらっているからどうしても硬いパンになってしまうらしい。
 少しずつ消費してはいるものの、たくさん噛むとお腹に溜まるのと、顎が疲れるため小さい子はどうしても残してしまうらしい。かといって破棄するわけにもいかないためこうやってどんどんパンが山積みに溜まっていくらしい。

 「フレントーストやラスクにするのは?」

 そうたずねるとフローラは目を丸くして「それなあに?」と不思議そうな表情で言った。少し戸惑いながら頭の中にあったレシピを口に出す。

 「えっと……あらかじめパンを卵と牛乳をといた液に漬け込んでパンをしみこませてそれをフライパンで焼いて食べるんだけど」
 「なにそれ! 想像できないわ!」
 
 思わずハンナを見るとハンナは困ったような表情をした。

 「私もお嬢様で慣れてしまいましたけど、本来料理のレシピ自体出回らないものなんでした」
 「そうなの? 料理の本とかあったような気がするけど」
 「そうですがまず、料理のレシピを知りたいと思うのは料理人がほとんどだと思います。本も高額ですし」

 前世でいう料理の本やインターネットのレシピサイトで誰もがすぐにレシピを知ることが当たり前だった私にとって衝撃だった。
 そして同時に自分の無知を少し恥ずかしく思った。
 もっとこの世界を知らなきゃ……。

 「そのアリアの言っているフレンチトースト?の作り方を教えてくれないかしら。牛乳もあるし卵もあるわ」

 フローラは期待のこもった眼差しで私の顔を見た。
 リクとハンナも横でうなずいている。
 卵はこちらも多めに買ってきたし、問題ないだろう。聞くと砂糖もあるようだ。
 それに私もフレンチトーストのことを考えてから食べたくてしょうがない。

 「じゃあ、これからフレンチトーストを作りましょう!」

 こうして思わぬところでフレンチトースト作りをすることになった。
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