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2章
2−18
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食堂へ着くと再びエプロンを着けてさっそくフレンチトースト作りの続きに取り掛かった。
マリウス神父とリクは見学のため少し離れたところでこちらの様子を見学している。
卵液に漬け込んだパンをそっと指で押してみるとすっかりやわらかくなっていた。
それを見たハンナが小さな声で「漬け込んでから切ればよかったのでは……」と呟いて、フローラと二人無言になる場面があった。
気を取り直して魔道具のコンロに火をつけてフライパンを温める。バターを入れて、溶け出したのを確認してから卵液に漬けたパンをフライパンに並べる。バターと卵の焼けるいい香りが厨房内に広がった。中火で焼き目がついたらパンをひっくり返し、同じように火を通す。
「なんていい匂いなの! 美味しそう!」
そばで見守っていたフローラがたまらず声をあげる。それを見て顔が思わず顔が緩むのが自分でわかる。焼き上がったフレンチトーストを皿に乗せていく。
一枚ずつ小皿に乗せてからまず、マリウス神父の元へ運ぶ。マリウス神父は皿を受け取ると、フォークを手に取ってフレンチトーストに突き刺してそのまま一口かじった。すぐに目を見開き、ゆっくりと咀嚼して飲み込んでから私の顔を見て感激したように言った。
「これはとても美味しいですね。牛乳臭さもなく、卵と砂糖のほんのりとした甘みが口の中に広がっていき、やわらかくてとてもあの硬いパンだとは思えません」
マリウス神父が食べたのを確認してから私達もそれぞれフレンチトーストを口に運ぶ。外側はサクッとして中はふんわりしている。
砂糖は控えめだけど牛乳の甘さも感じられて十分美味しい。
前世ぶりに食べるフレンチトーストに懐かしい気持ちになると同時に少し切ない気持ちになる。
アズのときは妹にせがまれてよく作ってあげたっけ……。感傷的な気持ちになりそうなのを頭の隅に追いやって周りを見渡す。
ハンナもリクもいつものように無心で食べている。
フローラをみると、食べ終えたのかニコニコと笑顔でナプキンで口を拭いていた。
「アリア! このフレンチトーストとっても美味しいわ! これなら簡単に出来そうだしみんなもきっと喜ぶわ!」
フローラは私の手を握ってブンブンと振った。若干力が強い気がしないでもないけど……。このままだと腕が大変なことになりそうなので慌てて話をそらす。
「じゃあ、残りをどんどん焼きましょうか!」
そう言うとフローラは不思議そうに首を傾げる。私は先程から視線を感じていた厨房の入り口へ視線を移した。
そこには子供達が興味津々にこちらを覗き込んでいた。こちらを見たのを合図に子供達が「食べたい!」「何作ってるの?」と言いながらなだれこんでくる。
それを見て苦笑しながらマリウス神父をみるとマリウス神父はすまなそうな表情をした。
「アリアさん、とりあえず一枚ずつ子供達に焼いていただけますか? 残りは今日の魔法の訓練が終わったときに子供達に出しますので」
もちろん了承して、ハンナとフローラで空になったフライパンに同じようにどんどんフレンチトーストを焼いて子供達に出していく。
大喜びで皿を受け取った子供達は隣の食堂へ移動して席につき、急いで口に運んでいる。あちこちで「美味しい!」「おかわりある?」と聞こえてきて嬉しくなった。もっと食べたいと駄々をこねる子もいたがマリウス神父が上手に宥めていた。
もともとおやつを出すのも、寄付でお菓子をもらったときか、フローラと通いの調理員さんとクッキーをつくったときだけだそうだ。
あとは子供達が町の人達のお手伝いをしたときに、わずかにお駄賃をもらい、それで屋台でカラーチなどのおやつを買って食べるとか。
魔力訓練を頑張ったり、読み書きの勉強を頑張れるいいご褒美になりそうだとマリウス神父は嬉しそうだった。
「みんな、こちらのアリアさんという方がこの料理を作ってくださったんですよ。さあ、お礼を言いましょう」
そう子供達に促すと子供達はキラキラとした視線を投げかけてくる。口々に「すげー!」「あんな美味いもん作れるの!?」と聞こえてくる。
一気に視線を受けて思わずモジモジしていると誰かが大きな声で「せーの!」と言ったかと思うと
「ありがとう!」
食堂中に響き渡る声で子供達にお礼を言われた。一人一人の表情は笑顔で、見ていると心の中がじんわりと暖かくなった。
食べ終えた食器を厨房まで何人かが運んできたとき、一人の男の子が私に近づいてきた。みると先程、リクを精霊と言い当てた赤毛の男の子だった。
「イアン、どうしたの?」
それに気づいたフローラが男の子に近づいて男の子の頭を撫でた。イアンと呼ばれた男の子はフローラと私の顔を交互に見る。
「お姉ちゃん、あのね……さっきのやつカイお兄ちゃんのぶんもある?」
それを聞いたフローラはサッと表情を変える。感情を抑えた声で「どうして?」とたずねた。
「だって、カイお兄ちゃんが帰ってきたとき、こんなに美味しいおやつがあったら喜ぶでしょう?」
「……!」
孤児院の子供達にはマリウス神父からカイは事情があって王都へいく前に急遽、勉強のため他の教会へ行っていると説明を受けているらしい。
出立する予定だった荷物はそのままだったのを知っている子はいるだろうし、町へ出ればヨシュアまでもが行方不明なのを子供達の耳に入っている可能性だってある。
フローラはヨシュアまでいなくなってしまったのを知ったのはここへきている通いの調理員から聞いたとのことだった。噂で混乱することを避けるため、すぐにマリウス神父がその調理員に口止めしたのだがすべての子供達の耳に入るのは時間の問題だ。
フローラはイアンの頭を撫でながら「そうね……」と言ったままどこか上の空のようだった。
マリウス神父とリクは見学のため少し離れたところでこちらの様子を見学している。
卵液に漬け込んだパンをそっと指で押してみるとすっかりやわらかくなっていた。
それを見たハンナが小さな声で「漬け込んでから切ればよかったのでは……」と呟いて、フローラと二人無言になる場面があった。
気を取り直して魔道具のコンロに火をつけてフライパンを温める。バターを入れて、溶け出したのを確認してから卵液に漬けたパンをフライパンに並べる。バターと卵の焼けるいい香りが厨房内に広がった。中火で焼き目がついたらパンをひっくり返し、同じように火を通す。
「なんていい匂いなの! 美味しそう!」
そばで見守っていたフローラがたまらず声をあげる。それを見て顔が思わず顔が緩むのが自分でわかる。焼き上がったフレンチトーストを皿に乗せていく。
一枚ずつ小皿に乗せてからまず、マリウス神父の元へ運ぶ。マリウス神父は皿を受け取ると、フォークを手に取ってフレンチトーストに突き刺してそのまま一口かじった。すぐに目を見開き、ゆっくりと咀嚼して飲み込んでから私の顔を見て感激したように言った。
「これはとても美味しいですね。牛乳臭さもなく、卵と砂糖のほんのりとした甘みが口の中に広がっていき、やわらかくてとてもあの硬いパンだとは思えません」
マリウス神父が食べたのを確認してから私達もそれぞれフレンチトーストを口に運ぶ。外側はサクッとして中はふんわりしている。
砂糖は控えめだけど牛乳の甘さも感じられて十分美味しい。
前世ぶりに食べるフレンチトーストに懐かしい気持ちになると同時に少し切ない気持ちになる。
アズのときは妹にせがまれてよく作ってあげたっけ……。感傷的な気持ちになりそうなのを頭の隅に追いやって周りを見渡す。
ハンナもリクもいつものように無心で食べている。
フローラをみると、食べ終えたのかニコニコと笑顔でナプキンで口を拭いていた。
「アリア! このフレンチトーストとっても美味しいわ! これなら簡単に出来そうだしみんなもきっと喜ぶわ!」
フローラは私の手を握ってブンブンと振った。若干力が強い気がしないでもないけど……。このままだと腕が大変なことになりそうなので慌てて話をそらす。
「じゃあ、残りをどんどん焼きましょうか!」
そう言うとフローラは不思議そうに首を傾げる。私は先程から視線を感じていた厨房の入り口へ視線を移した。
そこには子供達が興味津々にこちらを覗き込んでいた。こちらを見たのを合図に子供達が「食べたい!」「何作ってるの?」と言いながらなだれこんでくる。
それを見て苦笑しながらマリウス神父をみるとマリウス神父はすまなそうな表情をした。
「アリアさん、とりあえず一枚ずつ子供達に焼いていただけますか? 残りは今日の魔法の訓練が終わったときに子供達に出しますので」
もちろん了承して、ハンナとフローラで空になったフライパンに同じようにどんどんフレンチトーストを焼いて子供達に出していく。
大喜びで皿を受け取った子供達は隣の食堂へ移動して席につき、急いで口に運んでいる。あちこちで「美味しい!」「おかわりある?」と聞こえてきて嬉しくなった。もっと食べたいと駄々をこねる子もいたがマリウス神父が上手に宥めていた。
もともとおやつを出すのも、寄付でお菓子をもらったときか、フローラと通いの調理員さんとクッキーをつくったときだけだそうだ。
あとは子供達が町の人達のお手伝いをしたときに、わずかにお駄賃をもらい、それで屋台でカラーチなどのおやつを買って食べるとか。
魔力訓練を頑張ったり、読み書きの勉強を頑張れるいいご褒美になりそうだとマリウス神父は嬉しそうだった。
「みんな、こちらのアリアさんという方がこの料理を作ってくださったんですよ。さあ、お礼を言いましょう」
そう子供達に促すと子供達はキラキラとした視線を投げかけてくる。口々に「すげー!」「あんな美味いもん作れるの!?」と聞こえてくる。
一気に視線を受けて思わずモジモジしていると誰かが大きな声で「せーの!」と言ったかと思うと
「ありがとう!」
食堂中に響き渡る声で子供達にお礼を言われた。一人一人の表情は笑顔で、見ていると心の中がじんわりと暖かくなった。
食べ終えた食器を厨房まで何人かが運んできたとき、一人の男の子が私に近づいてきた。みると先程、リクを精霊と言い当てた赤毛の男の子だった。
「イアン、どうしたの?」
それに気づいたフローラが男の子に近づいて男の子の頭を撫でた。イアンと呼ばれた男の子はフローラと私の顔を交互に見る。
「お姉ちゃん、あのね……さっきのやつカイお兄ちゃんのぶんもある?」
それを聞いたフローラはサッと表情を変える。感情を抑えた声で「どうして?」とたずねた。
「だって、カイお兄ちゃんが帰ってきたとき、こんなに美味しいおやつがあったら喜ぶでしょう?」
「……!」
孤児院の子供達にはマリウス神父からカイは事情があって王都へいく前に急遽、勉強のため他の教会へ行っていると説明を受けているらしい。
出立する予定だった荷物はそのままだったのを知っている子はいるだろうし、町へ出ればヨシュアまでもが行方不明なのを子供達の耳に入っている可能性だってある。
フローラはヨシュアまでいなくなってしまったのを知ったのはここへきている通いの調理員から聞いたとのことだった。噂で混乱することを避けるため、すぐにマリウス神父がその調理員に口止めしたのだがすべての子供達の耳に入るのは時間の問題だ。
フローラはイアンの頭を撫でながら「そうね……」と言ったままどこか上の空のようだった。
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