精霊に嫌われている転生令嬢の奮闘記

あまみ

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2章

2−19

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 その後、フローラとおしゃべりをしているとあっというまに昼時になった。同年代の女の子と交流する機会はないので楽しくてすっかり時間を忘れていた。マリウス神父に昼食を一緒にどうかと誘われるも、流石にそこまで長居はできないと丁重にお断りした。
 それにレイ様が昼食をとりに帰ってくるだろうし、今後のことについて話すこともある。
 フローラとマリウス神父に別れを告げてから、教会からの帰り道私はずっと考えていた。

 カイとヨシュアはなぜ姿を消したのか……。友達同士の二人が時期をずらしていなくなるものなのだろうか。
 しかも二人とも魔力量は多いときている。偶然にしては出来すぎている気がしてなんだかずっと引っかかりを覚える。
 しかもフローラは、二人が自らいなくなったと思っている。その場合、もしかしたらこのまま帰ってこない可能性もあるが、十二歳の子供が二人だけで町を出るのは、少々無鉄砲に思えた。
 話を聞いてみると二人ともそんな家出のような手段をとる性格とは思わなかった。少なくともカイは思慮深い印象を受けるし、ヨシュアはガキ大将とは言われてはいたものの、家業の手伝いをしていた御者の子供なら魔物に遭遇する恐ろしさを知らないわけがなかった。

 まだ、何かある気がする……。あと、カイがフローラに言っていた「」という言葉──。

 考えながら屋台が並んでいる広場にたどり着いた。ふと、一軒の屋台が目に入ると、そこにはレイ様が屋台で何か購入しているようだった。

 「レイ様!」

 声を掛けるとレイ様はこちらに気づいてニコニコしながら手を振った。屋台で買ったものを受け取ってこちらに近づいてきた。

 「おかえり~。さっき宿に戻ったんだけどまだ帰ってないみたいだったからさ~」

 レイ様の手にはホカホカの牛串が握られている。フレンチトーストを口にしたものの、昼食の時間になったときには私のお腹はすっかり空腹を訴えていた。
 思わず牛串に目に釘付けになっていると牛串が顔の前に近づけられた。香ばしいタレの香りをさせた湯気が顔の前にきてなんとも食欲を誘う。

 「はい、どうぞ。お腹空いてるんでしょ~」

 思わず受け取ってしまうとレイ様は「まだあるからいいよ~」とよくみたら片方の腕に紙袋を抱えていた。レイ様はハンナとリクにも紙袋から串を取り出して手渡した。

 「ありがとうございます……」

 手に持った牛串をまじまじと眺めているとレイ様は「せっかくだから座って食べようか」と言い、スタスタと歩いて近くのテーブルが並んでいるところにサッと座った。そこはどうやら座って飲食ができる場所のようで、昼時とあっていくつかのグループがテーブルを囲んで屋台で買ったものなどを食べている姿がチラホラ見られる。
 まだまだこの町の屋台を堪能していないので、先ほどから屋台の方に視線が向かってしまう。

 「今日のお昼は屋台でいろいろ買って食べましょ」

 みんなにそれを伝えると、快く了承してくれたので各々屋台で食べたいものを買うことになった。
 とりあえず、みんなで手分けして食べたいものを買うことになり、私とリクは二人で屋台に向かった。
 私はずっと気になっていた野菜とお肉をクレープのような生地で巻いたラップサンド、リクは同じラップサンドでもチーズとお肉を巻いた物にした。
 レイ様やハンナも食べるかもしれないからそれを二つずつ買った。フライドポテトも買っていそいそと二人で戻ると、途中で人にぶつかりそうになった。    
 今度はぶつかる瞬間に気づいてサッと身を引くことができた。
 
 「これは失礼。お嬢さん、大丈夫だったかな」

 ぶつかりそうになった相手は大柄の男性だった。背の高いお父様と比べると同じくらいか、もっと高い。筋骨隆々といった体つきで、半袖のシャツの腕からはたくましい腕がのぞいている。歳は中年くらいだろうか。顔をみると精一杯見上げる形になるのでちょっと首が痛い。すると男性はしゃがんで私の目線まで合わせてくれた。

 「買ったものも無事なようだね」
 「こちらこそすみません」

 そういって男性の顔をみると下睫毛が濃くてチャーミングな顔立ちをしていた。男性は微笑んで私の頭を撫でると私の後ろにいるリクが目に入ったのか「可愛いな」と言った。そういってハッと何かを思い出したのか、サッと立ち上がると「じゃあね」と足早に立ち去っていった。後ろ姿をよく見てみると、腰には剣をぶら下げていた。

 「冒険者の人かしら」
 「どうでしょうね」

 リクと言葉を交わしたあと、私達は何事もなかったようにレイ様達がいるテーブルに戻ると、レイ様は牛串を食べ終えたのか今度はチキンのようなものにかぶりついていた。私達が席に着くとちょうどハンナが戻ってきた。ハンナは昨日食べたカラーチとスープを買ってきたようだった。
 昨日買い食いはリクとしたけど、こうやって外で昼食を食べるのは初めてだ。食べながらレイ様に森での様子を聞く。

 「今日は奥までは行かなかったんだよね~。この町の町長がきてるとかで捜査の進捗を報告しなきゃいけないからって自警団の団長さんが早めに切り上げたんだ」
 「他に指揮をとる方はいないんですの?」
 「補佐のような人はいるみたいだけどあんまり頼りない感じ? 俺だけでも探そうかって言ったんだけどなんか団長さんが『それは困る。レイ殿も貴重な戦力であるのだ、一人で何かあったらどうするのだ』って。俺一応A級って言ったんだけどね~」

 そういってレイ様は困ったように笑った。自警団の団長さんはどうやら慎重な人のようだ。そして脳裏に今朝見かけた退屈そうな表情の町長の姿が浮かぶ。

 「そっちはどうだったの~? 教会孤児院に行ったんだよね?」

 先程フローラから聞いた話をレイ様に話した。カイとヨシュアが友達同士で時々子供達を引き連れて森へ行っていたこと、ヨシュアは王都の教会へ行くことが決まっていてそこから魔法学園に通う予定だったこと。二人とも精霊の姿が見えたり声が聞こえること。そしてカイがフローラに言った言葉。

 「『本当に王都へ行くかはわからない』か……」

 レイ様は真剣な表情で手に持ったチキンを見つめながら呟いた。レイ様の見慣れない真剣な表情にドキッとして、思わず見入ってしまっていると私に気づいたのかパッと表情を変えた。

 「わっかんないよね~」

 そう言って、いつものニコニコ顔に戻ってチキンにかぶりつく様子に、私はガクッと椅子から落ちそうになってしまった。
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