精霊に嫌われている転生令嬢の奮闘記

あまみ

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2章

2−20

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 その人物が宿を訪れたのは私達が昼食を食べてから宿に戻ったときだった。

 「こちらに冒険者のレイ殿が宿泊していると聞いたのだが」
 
 宿の受付の従業員に筋骨隆々の男性が話しかけている。
 レイ様の名前が聞こえてきて不思議に思いその姿をよく見てみると、先程屋台のそばでぶつかりそうになった男性だった。

 「あ、もう来ちゃったか。まだ時間があるから少しゆっくりしようと思ったのになあ~」

 レイ様が頭をかきながらのんびりとした様子で言ったかと思うと、隠れるはずもないのにそーっと私に後ろに隠れた。受け付けにいる男性はどうやらこちらに気づいたようだった。

 「レイ殿! ちょうどよかった!」

 そう言ってこちらに近づくと男性はレイ様が不自然に壁にしている私に気づいたようだった。

 「君は先程の……」
 
 するとすぐさまハンナがスッと私の前に出た。

 「失礼ですが、どちら様でしょうか」

 私の前に立ち塞がって警戒した表情のハンナに面食らった様子を見せるも、男性はすぐさま居住まいを正した。

 「これは失礼した。私はこの町キヨラの自警団の団長をしているローランドだ」

 私とハンナの顔を見ながら礼儀正しく自己紹介をすると、警戒していたハンナの雰囲気が若干柔らかいものになった。

 「私はアリアと申します。こちらはハンナです」

 そう言ってこちらも挨拶を返した。すると、それまで私の後ろに隠れていたつもりのレイ様がそれを見てため息をついたかと思うとローランド様の前に出た。
 
「立ち話もなんだし上で話を聞こうか」

そう言ってキッチンもある広い私とハンナの部屋へ招き入れることになった。

 部屋に入ると緊張しているのか居心地悪そうに椅子へローランド様は椅子に腰掛けた。よく考えれば、いきなり初対面の男性をハンナと相部屋の宿の部屋に入れるのはよくなかったかと思ったがここでは気にしないことにした。ハンナも何も言わないし大丈夫だろう。どっちみち今から店に入るのも億劫だ。
 レイ様は少し眠いのかあくびをしながら気にせずソファでくつろいでいる。
 
 「ローランド様はどのような御用件でいらしたのですか?」
 「その前に、私に様付けは不要だ。気軽に呼んでくれてかまわない」
 「では、ローランドさんとお呼びします。本日はどのような御用件で?」
 「今、レイ殿に行方不明の子供達の捜索隊へ加わってもらい、森への探索を行っている。だが、明日にはレイ殿がここを立つと聞いたのだが……単刀直入に申し上げる。レイ殿にはもうしばらくここへ残ってもらい、捜索へのお力を借りたいのだ」

 真っ直ぐこちらを見て告げるローランドさんに気圧されそうになる。するとハンナがすぐさま口を開いた。

 「それはなりません。すでにこちらは二日もここで足止めを食らっている状態なのです。本来ならば目的地へ急がなければならない状況なのですよ」

 ハンナが厳しい表情で告げるとローランドさんは僅かに苦悶の表情を見せた。レイ様へ視線を向けると

 「今朝からずっとそのことをお願いされてさあ、思わずで雇われているからって言っちゃった~」

 つまりローランドさんには貴族とはばれていないわけか。兄妹である設定だと依頼中でないならと押し切られてしまう可能性があったため私の身分を伏せてあくまでも依頼中だと告げたようだ。だけど実際こうしてローランドさんはここに来ているわけで……。

 「依頼中なのとそちらの都合は重々承知した上できた。どうかせめてあと二日ほどこちらにとどまってはくれないだろうか」

 そう言ってローランドさんは頭を私に下げた。年上の男性に面と向かって頭を下げられて居心地が悪いが気になったことがあった。

 「ローランドさん、頭を下げる前にまずはきちんと説明してください。自警団とは森での探索を行ってるそうですがなぜ自警団だけで捜索を行えないのですか? レイ様が単純に頭数として必要なのですか?」

 するとローランドさんは頭を上げて決まりが悪そうに説明してくれた。

 なんでも自警団でも実際に魔物と戦えるのは団員の中でも半分以下しかいないらしい。森への捜索隊と町の住民への聞き込みで別れているのだが、森への捜索隊への人数が足りていないのと夜間の町の見回りも交代であるため人数の偏りが激しいとのこと。

 つまり圧倒的な魔物と戦える人間の人員不足らしい。

 もともとキヨラの町は平和でここ近年の自警団は仕事のほとんどが町の中の治安維持に努めていたそうだ。人間相手の喧嘩の仲裁や酔っ払いの対処が主で魔物相手に戦えるのが数人しかいない状況なのだとか。
 冒険者でもない限りは確かに森の奥まで近づくことはないし、魔物が近くまで来ても戦うことのできる数人で対処すれば間に合っていたというわけだ。
 ところが子供の行方不明事件が起きた。三人目のカイがいなくなったときから、少数隊で森の奥まで捜索していたらしい。だが、普段魔物と戦うことがない団員達だと捜査が難航している状態だった。そこでレイ様が捜索隊に加わったことにより、森の奥まで捜索でき、魔物の対処もスムーズに行えていたそうだ。
 だが、レイ様はもともと馬車の関係で足止めを食らっていて二日間だけ捜索隊に加わる約束だった。それを知った団員達は団長に不安を訴え始めた。
 団長であるローランドさんは三人目のカイが行方不明になってから人員不足なのを見越して町長に冒険者を雇うように直談判していたらしいが町長は聞き入れず、しびれを切らしたローランドさんはレイ様に直接依頼しようと私のもとへ話をしに来たという話だった……。

 どこから突っ込んでいいのやら……。

 私は町長の姿を思い出して気づかれないようにそっとため息をはいた。
 

 
 
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