精霊に嫌われている転生令嬢の奮闘記

あまみ

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2章

2−21

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「まず、私に話をしに来たということですが、私の護衛を依頼したのは私ではなく私の両親なので私に言うのは違うというのはおわかりですか? 本来ならば依頼中の冒険者を又貸しという形をとること事態、冒険者の信頼にかかわります。二日だけこの町にやむを得なく滞在するため、この状況だからこそ、私の護衛を離れレイ様の善意によって捜索隊に加わっていただいているのです」

 そこまで言うとローランドさんはグッと喉を詰まらせた。
 そう、本来なら私の両親に承諾を得るように領主であるハインツ子爵に手紙を出してもらい、承諾を得ることが出来たならレイ様の所属している冒険者ギルドに依頼を出してレイ様が依頼を受けることが手順である。
 レイ様にお願いした私がいうのもなんだが、伯爵家からレイ様に対して報酬を支払ってはいるが、捜索隊に加わっていてもレイ様にこの町から報酬は無く、完全に無償である。子供だからといって善意に付け込まれるのは避けたかった。先程からローランドさんが報酬の話をしないのも気になる。
 十歳の子供にここまで言われるとは思っていなかっただろうにローランドさんは声を荒げることもなく眉根を寄せたまま大きな体を縮こませた。

 「それは……本当に感謝しているし、申し訳なく思っている。だが、こちらとしても手詰まりの状況でせめて捜査が打ち切られる前に子供達を見つけてやりたいんだ」
 「この町が平和とはいえ自警団を魔物と戦えるまで鍛えてこなかったそちらの不手際では?」

 ハンナが厳しい口調で告げるも、私はそれよりもまたもや気になった言葉があった。

 「ローランドさん! 先程あと二日だけレイ様に捜索隊に加わっていただきたいと言うのはこのままだと捜索は打ち切られるのですか?」

 私が突然大きな声でたずねるのでローランドさんは驚きながらも答えてくれた。

 「あ、ああ。三人目のカイのときから合わせると一週間以上は捜索しているから進展がないならと町長が打ち切りを命じてな」
 「そんな! ヨシュアに至っては行方不明になったのは一昨日のことではないですか!」
 「そうだ、まず二つの行方不明を一緒くたにしてはいけないと先程町長に言って捜索を伸ばしてもらうように頼み込んだところなんだ」

 そう言って何かを思い出したのか、苦悶の表情で固く拳を握りしめているローランドさんに気づく。

 「なんとか了承を得たが、いつ捜査が打ち切られるかわからないんだ」
 「領主様に直談判するというのは?」
 「領主は先代が急になくなって交代したばかりだ。そのせいでまだ、周りの信用が得られていない状況で使い物にならない。直談判したとしても町長直轄である自警団としては動けるかわからない」

 キヨラの住民である自警団の団長に使い物にならないとまで言われてしまっているハインツ子爵はどのような人物なのだろうか。そちらが気になりつつもレイ様に視線を向けた。

 「そちらの話はわかりました。レイ様はどう思われます?」

 レイ様は話を振られると思っていなかったのかきょとんとしたかと思うと口の端をつり上げた。

 「俺は~依頼された冒険者だから雇い主であるお父様の娘であるお嬢様が決めていいよ。どっちみちギルドには捜索隊に加わったこととか報告しなきゃいけないし」
 
 そう言われ、沈黙する。ローランドさんの期待を込めた眼差しとハンナの心配そうな視線が突き刺さる。私としては気持ちは決まっているのだが、どうしても引っかかっていることがあってこのまま返事をしていいものか悩んでいた。

 そのときだった。部屋に控えめなノックの音が響き渡った。ハンナが不思議に思い、ドアを開けるとそこに宿の従業員が立っていた。心なしか顔が青い。

 「あ、あの……町長様がお呼びです……」

 それを聞いたローランドさんがチッと舌打ちして立ち上がり「では、町長と話した後にまた来る」と部屋を出ようとすると従業員は真っ青な表情のまま私の顔を見た。

 「その……町長様がお呼びなのはそちらのお嬢様でして……」

 しどろもどろに告げた従業員は気の毒になるくらい緊張しているようだった。

 「私?」

 と思わず自分を指さして確認すると従業員はコクコクとうなずいた。ハンナは怪訝そうに従業員にたずねた。

 「何かの間違いでは? 町長とは面識はございませんし」

 そういうと従業員は狼狽えた様子で視線を彷徨わせた。

 「いえ……確かに。『こちらに宿泊している冒険者と一緒にいる幼い娘を呼んでこい』と……」

 従業員がそう言った途端ハンナの目つきが鋭いものになった。ローランドさんも表情を険しくしている。レイ様は瞼を閉じていてリクはこちらの様子を伺ってているようだった。ここに宿泊している冒険者は他にもいるが幼い娘と一緒にいるならば私のことだろう。それにレイ様が捜索隊に加わっているのは宿の従業員は知っているようだったし、先程ローランドさんといたことから私と見て間違い無いだろう。
 それをみてため息をつくと私は椅子から立ち上がった。

 「じゃあ、お待たせするといけないし行きましょうか」
 「お嬢様!」

 すかさずハンナが私を呼んだ。

 「ハンナ、町長が私をお呼びなのよ? 

 そういうとハンナはグッと唇を噛み締めているようだった。ハンナの怒りはもっともだ。本来ならば、伯爵令嬢を元貴族とはいえ一町長の平民が呼びつけていいものではない。町長が貴族であったとしても子爵家の者でも伯爵令嬢を呼びつけることはできないし、貴族同士であったとしても本来ならば手紙なども無しに人づてで呼びつけるものでもない。だが、「平民で商人の娘」ならば行かなければならない。

 「ローランドさん、確認したいのですが町長にはなんとお話したのでしょうか」

 ローランドさんはハッとしてから気まずそうな表情になる。

 「レイ殿に残っていただきたいのだが、商人の娘を護衛しているため明日には立つので人手が不足してしまうのでどうにか冒険者ギルドに要請して冒険者を雇ってもらいたいと」
 
 ではローランドさんと同じように話をしにきたのかもしれない。だが、幼い娘を呼びつけるあたりあまり褒められた人物ではないことは確かだ。



 「とりあえず、行ってみるわ」
 


  
 
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