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2章
2−22
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部屋を出ると、なぜかみんなぞろぞろと後ろからついてきた。
ハンナは「お嬢様のお付きのメイドですし」
レイ様は「俺、一応護衛だし~」
ローランドさんは「町長と話すならば団長である私もいたほうがいいだろう」とのことだった。
リクはなぜが気づかれないようにこっそりと廊下の近くの置物の影に隠れてついてきている。
正直一人は心細いのでありがたい。
従業員は後ろの私達を気にしながらも、町長がいるという宿の隣接しているレストランへ案内された。私たちがいつも利用している個室を通り抜けて、奥の大きな観音開きの扉の前で立ち止まった。いわゆる要人専用部屋というのだろう。重厚そうな扉は装飾が華やかだ。
従業員が「お連れしました」と扉を開けてから私たちを中に招き入れた。
テーブルには今朝方見かけた町長と思われる男性が退屈そうにこちらを見ようともせずに、ワインを飲んでいた。そして今朝と同じように髪はテカテカと整髪料で脂ぎっている。近くには今朝連れていた鎧を身に纏った護衛騎士が控えていた。
「ふん、たかが商人の小娘風情をこの部屋で出迎えてやったことをありがたく思えよ」
出迎えた? どこらへんが?と思いながらも開口一番に嫌味を飛ばすあたり、やはり褒められた人物ではなさそうなのは確かだ。
若干後ろからハンナであろう圧が漂ってきているのは気のせいじゃないだろう。
「お待たせいたしました。商人の娘のアリアと申します」
そう言って失礼にならないように頭を下げた。その途端後ろからの圧がさらに増したが、ここは怪しまれないようにするためしょうがない。
この旅に出る際、お父様とどうにもならないことが起きない限りは伯爵という身分はできるだけ隠すことを約束している。伯爵家の、しかも精霊召喚の儀の前の娘が供を連れているとはいえ、一人で旅をすること自体本来あり得ないのだ。もし伯爵家の娘とわかってしまったら犯罪に巻き込まれる可能性は高い。身代金目的の誘拐も有り得るし、貴族の娘なら魔力も多いと思われて奴隷商人に売られる可能性だってあるのだ。
そうならないためにハンナやリク、レイ様をつけてもらっているのだけど、用心に越したことはない。
「呼んでない奴がいるな。その者たちはなんだ、しかもローランドもいるではないか」
訝しげに私の背後に視線を向けた。
「この者たちもなかなかお目にかかれない町長様にひと目お会いしたいと言うので連れてきました。団長様には先程お会いしたので一緒にお話を聞くこととなりました」
暗に仕事をしに町まで降りてこないというのを嫌味を込めて伝えるも「ほう、商人の小娘の共にしては殊勝なことだな」と気づかないようで、ニヤリと口の端をあげただけだった。
ここではローランドさんから先程お願いされたことは今は黙っていることにした。
「用件を手短に言ってやろう。お前の連れている冒険者を数日我が自警団の捜索隊に差し出せ」
やはりそれが用件か……。しかも椅子も座らせず立ったままって。平民だとしても幼い子供を立たせてなんとも思っていないのが窺い知れて少し腹が立つ。
「それはできません」
きっぱりと答えると町長は断られると思っていなかったのか「なっ……」と唖然とするも眉間に皺を寄せて「なんだと」とこちらを睨みつけた。
「私達は馬車の関係でこちらに滞在しているだけなのです。明日にはこちらを立たなければなりません」
そう答えると町長はなおも不機嫌そうに鼻を鳴らした。
「フン、だから数日ここに滞在すれば良いではないか。滞在期間中の宿泊代は持ってやろう」
「こちらにも都合がございますのでこれ以上の滞在は難しいのです」
あまりに自分勝手な言い分に少しイラッとしながらも、表に出さないように淡々と続ける。
「それに、町長様。なぜうちが雇っている冒険者を貸し出さなければならないのでしょう? 理由をお聞かせいただいてもよろしいでしょうか」
そうたずねると町長は苛立った様子で私を睨みつけた。
「ここ最近、子供の行方不明事件が起きているのだ。その捜索のためにお前が連れている冒険者が必要なのだ」
「ならば、冒険者ギルドに依頼すればよろしいのでは?」
「冒険者ギルドに依頼しても冒険者が来るのはいつになるかわからんし、子供の命に関わるのだ。一刻も早い方がいいだろう」
そう言って町長はグイッとグラスのワインをあおった。よくもまあ、ぬけぬけと言うものだ。子供の命を出してくるあたり小ずるいところもある。
だがここで食い下がるのはまだだ。
「事件に協力したいのはやまやまなのですが、私の両親が冒険者と契約しているため、おいそれと無償で簡単に差し出すわけにはいかないのです。……それに、万が一にも冒険者が森で命を落としたりしてしまったら依頼を通さずに冒険者をこのような幼い娘から借り受けたとあれば外聞がよくはございませんでしょう?」
申し訳なさそうな表情を作り、そう告げると町長はむっとした表情をしながらも何か考えているようだった。
「商人の娘とあって小賢しい小娘だ。何が望みなんだ」
本当は商人ではなくて貴族の娘なんだけどね。
「冒険者を貸し出すなら契約書を結びましょう。そのほうが何かあったときに町長様もギルドから責められても契約書を交わしたとあれば問題ないでしょう? そしてこちらも冒険者を貸し出すとはいえ、一時的に護衛を外れることによる補償金と冒険者に対しての捜索隊に加わっている際の給金の支払いをお願いします」
そこまで一息で言って私はにっこりと笑った。
ハンナは「お嬢様のお付きのメイドですし」
レイ様は「俺、一応護衛だし~」
ローランドさんは「町長と話すならば団長である私もいたほうがいいだろう」とのことだった。
リクはなぜが気づかれないようにこっそりと廊下の近くの置物の影に隠れてついてきている。
正直一人は心細いのでありがたい。
従業員は後ろの私達を気にしながらも、町長がいるという宿の隣接しているレストランへ案内された。私たちがいつも利用している個室を通り抜けて、奥の大きな観音開きの扉の前で立ち止まった。いわゆる要人専用部屋というのだろう。重厚そうな扉は装飾が華やかだ。
従業員が「お連れしました」と扉を開けてから私たちを中に招き入れた。
テーブルには今朝方見かけた町長と思われる男性が退屈そうにこちらを見ようともせずに、ワインを飲んでいた。そして今朝と同じように髪はテカテカと整髪料で脂ぎっている。近くには今朝連れていた鎧を身に纏った護衛騎士が控えていた。
「ふん、たかが商人の小娘風情をこの部屋で出迎えてやったことをありがたく思えよ」
出迎えた? どこらへんが?と思いながらも開口一番に嫌味を飛ばすあたり、やはり褒められた人物ではなさそうなのは確かだ。
若干後ろからハンナであろう圧が漂ってきているのは気のせいじゃないだろう。
「お待たせいたしました。商人の娘のアリアと申します」
そう言って失礼にならないように頭を下げた。その途端後ろからの圧がさらに増したが、ここは怪しまれないようにするためしょうがない。
この旅に出る際、お父様とどうにもならないことが起きない限りは伯爵という身分はできるだけ隠すことを約束している。伯爵家の、しかも精霊召喚の儀の前の娘が供を連れているとはいえ、一人で旅をすること自体本来あり得ないのだ。もし伯爵家の娘とわかってしまったら犯罪に巻き込まれる可能性は高い。身代金目的の誘拐も有り得るし、貴族の娘なら魔力も多いと思われて奴隷商人に売られる可能性だってあるのだ。
そうならないためにハンナやリク、レイ様をつけてもらっているのだけど、用心に越したことはない。
「呼んでない奴がいるな。その者たちはなんだ、しかもローランドもいるではないか」
訝しげに私の背後に視線を向けた。
「この者たちもなかなかお目にかかれない町長様にひと目お会いしたいと言うので連れてきました。団長様には先程お会いしたので一緒にお話を聞くこととなりました」
暗に仕事をしに町まで降りてこないというのを嫌味を込めて伝えるも「ほう、商人の小娘の共にしては殊勝なことだな」と気づかないようで、ニヤリと口の端をあげただけだった。
ここではローランドさんから先程お願いされたことは今は黙っていることにした。
「用件を手短に言ってやろう。お前の連れている冒険者を数日我が自警団の捜索隊に差し出せ」
やはりそれが用件か……。しかも椅子も座らせず立ったままって。平民だとしても幼い子供を立たせてなんとも思っていないのが窺い知れて少し腹が立つ。
「それはできません」
きっぱりと答えると町長は断られると思っていなかったのか「なっ……」と唖然とするも眉間に皺を寄せて「なんだと」とこちらを睨みつけた。
「私達は馬車の関係でこちらに滞在しているだけなのです。明日にはこちらを立たなければなりません」
そう答えると町長はなおも不機嫌そうに鼻を鳴らした。
「フン、だから数日ここに滞在すれば良いではないか。滞在期間中の宿泊代は持ってやろう」
「こちらにも都合がございますのでこれ以上の滞在は難しいのです」
あまりに自分勝手な言い分に少しイラッとしながらも、表に出さないように淡々と続ける。
「それに、町長様。なぜうちが雇っている冒険者を貸し出さなければならないのでしょう? 理由をお聞かせいただいてもよろしいでしょうか」
そうたずねると町長は苛立った様子で私を睨みつけた。
「ここ最近、子供の行方不明事件が起きているのだ。その捜索のためにお前が連れている冒険者が必要なのだ」
「ならば、冒険者ギルドに依頼すればよろしいのでは?」
「冒険者ギルドに依頼しても冒険者が来るのはいつになるかわからんし、子供の命に関わるのだ。一刻も早い方がいいだろう」
そう言って町長はグイッとグラスのワインをあおった。よくもまあ、ぬけぬけと言うものだ。子供の命を出してくるあたり小ずるいところもある。
だがここで食い下がるのはまだだ。
「事件に協力したいのはやまやまなのですが、私の両親が冒険者と契約しているため、おいそれと無償で簡単に差し出すわけにはいかないのです。……それに、万が一にも冒険者が森で命を落としたりしてしまったら依頼を通さずに冒険者をこのような幼い娘から借り受けたとあれば外聞がよくはございませんでしょう?」
申し訳なさそうな表情を作り、そう告げると町長はむっとした表情をしながらも何か考えているようだった。
「商人の娘とあって小賢しい小娘だ。何が望みなんだ」
本当は商人ではなくて貴族の娘なんだけどね。
「冒険者を貸し出すなら契約書を結びましょう。そのほうが何かあったときに町長様もギルドから責められても契約書を交わしたとあれば問題ないでしょう? そしてこちらも冒険者を貸し出すとはいえ、一時的に護衛を外れることによる補償金と冒険者に対しての捜索隊に加わっている際の給金の支払いをお願いします」
そこまで一息で言って私はにっこりと笑った。
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