精霊に嫌われている転生令嬢の奮闘記

あまみ

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2章

2−33

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 それから私は先程目にした出来事をずっと考えていた。朝食を摂っている際突然目の前にひらひらと手が出された。
 ハッとして周りを見渡すとレイ様が私の眼前で手を降っていた。声をかけられたことにも気づかなかった私にレイ様は不思議そうな表情をした。

 「大丈夫~? あんまり寝られなかった?」

 周りを見ればハンナとリクも食事の手を止めてこちらを心配そうに見ている。

 「食事中にごめんなさい。今日は少し早起きしてしまって少しぼーっとしているのかもしれません」
 「そういえばだいぶ早いうちから起きておられましたね。今日は孤児院へ行くのはやめておきますか?」

 ハンナに心配そうな表情でたずねられる。正直昨日のことといいなんだか気乗りしない気分だった。だけど昨日の魔力訓練の成功した感覚が残っているうちにまた繰り返し練習したいのもある。少し私が答えに迷っていると、横からレイ様が声をかけた。

 「それならさ~たまにはお嬢様も森へ行ってみる?」

 森?首を傾げているとハンナが厳しい表情でレイ様を睨んだ。

 「レイ殿、話を聞いていましたか? お嬢様は気分が優れないのです、それを森へ誘うだなんて。捜索に加われと仰るのですか?」
 「たまにはいいんじゃない~。それにお嬢様がいれば違った視点での発見とかあるかもしれないし? もちろんほんとに気分が優れないのなら無理強いはしないけど気分転換にどう?」

 気分転換にゴブリンや、オークの出る可能性のある森へ誘うのはどうなんだろうかとは思うが森へ潜伏している可能性のある精霊の存在も気になる。

 「でも、足でまといになるのでは……」
 「うーん……それは行ってみないとわからないけど、リクがいればなんとかなるんじゃない~?」

 そう言ってレイ様はリクをチラリとみた。リクは若干呆れた様子でレイ様の方をみてから私の方へ視線を移した。

 「ご気分が優れないようでしたらおすすめはしません。ですが、お嬢様が行くと仰るなら私はお嬢様をお守りいたします」
 「体調は問題ないわ。森へ興味はあるし行ってみたいわ」

 物言いたそうにしているハンナを見て「大丈夫」と微笑んだ。

 「ハンナ、今日行けないことをマリウス神父へ伝えてくれるかしら? 教会孤児院へ差し入れもお願いしたいわ」

 そういうとハンナは「わかりました」と私に言ったあとリクへ「くれぐれもお嬢様を頼みますよ」と声をかけた。

 「そんなに心配しなくて大丈夫だよ~。だいぶ魔物は間引きしたし、当分は出ないと思うよ」

 ニコニコと朝食のパンを齧りながらレイ様はハンナに言うとハンナはグッと喉を詰まらせてレイ様から視線を外した。

 「それでも、お嬢様は森へ行くのは初めてなのです。心配しないほうが無理です」
 「俺もいるから大丈夫だって~。じゃあ、さっそく団長さんに言ってくるね」

 そう言ってレイ様は席から立ち上がるとさっさと出て行ってしまった。
 部屋に残った私たちは朝食の続きを摂る。
 私は思い切って今朝見た光景を話してみた。町長のお付きの護衛騎士が宿の前で人目を避けるように男性二人と何かを話していたこと、三人とも散り散りにどこかへ去っていったことを話すとハンナとリクは難しい顔をして何か考えている様子だった。

 「早朝に人目を忍んでいるのはなぜでしょうね」

 ハンナが訝しげに眉を寄せた。

 「それに、わざわざこの宿の前というのも気にかかる」

 リクが髭をピクピクと動かした。

 「さっきはそのことを考えていたの、だから決して寝不足や気分が優れないとかじゃないわ」

 そう言ってハンナを見ると、ハンナは眉を下げて微笑んだ。心配性のハンナは私が体調が優れないわけではないことに少し安心したようだった。
 朝食後、ハンナにはマリウス神父への言伝をお願いして、私はリクと森へ行くことになった。


 森へ行くとあって動きやすいパンツスタイルに着替えた私はブーツを履いて踵をトントンと踏み鳴らす。ティアお姉様のお下がりの乗馬服を少しお直ししたもので、華美すぎない作りになっている。髪を高い位置にハンナに結い直してもらって準備は万端だ。宿の入り口でリクとレイ様を待っているとレイ様とローランドさんがやってきた。ローランドさんと挨拶を交わす。

 「今日はアリア嬢も捜索に加わるとレイ殿から聞いたのだが……」

 少し怪訝な表情で話すローランドさんに苦笑しながらも答える。

 「はい。ご迷惑にならないようにしますのでよろしくお願いします」

 そう言って軽く頭を下げるとローランドさんは「レイ殿の精霊が護衛をするとのことで心配はいらないと聞いたが何かあったら遠慮なく言ってくれ」と少し困ったような表情で言うと後ろを振り返った。

 「こいつらは自警団の奴らだ。今日の捜索に加わる」

 ローランドさんの後ろには二人の男性が立っていた。男性二人は背が高くて少し無愛想な方がキリクさん、背の低くて物腰が柔らかそうな方がロックさんという。そのうちの一人の顔に見覚えがあった私は思わず声を上げそうになるのをすんでのところで堪えた。
 一人は私が今朝、宿の前で見かけた男達の中の一人だった……。


 



 
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