精霊に嫌われている転生令嬢の奮闘記

あまみ

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2章

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 マリウス神父は昨日伯爵令嬢の誘拐に関与したとして拘束された。この伯爵令嬢というのは言わずもがな私のことである。
 まず昨日私がロック達に連れ去られたあと、リクはいつまでたっても出てこない私の身を案じていたところに教会の中を魔法で探ろうとした。ところがリクの魔法が結界に弾かれたという。慌てたリクは教会内に突入したところ、そこにはマリウス神父しかおらず私の姿がなかった。ロックが持っていた魔導具の残滓を感じ取り、私に危害を加えたことを知ったリクはカッとなってマリウス神父を魔法で縛り上げて問い詰めたという。
 最初こそしらばっくれていたマリウス神父だが、精霊相手に誤魔化しが効かないとあっさりと諦めて認めたという。
 
 「ハンナに呼ばれて慌てて行ったらびっくりしたよ~リクがマリウス神父をボッコボコにして締め上げてんだもん~。俺たちが着いた途端いきなり出ていくしさあ」
 「なかなか口を割らなかったんだからしょうがないだろう。お嬢様を助けにいこうにもあいつをそのままにしておく訳にはいかない」

 リクが罰が悪そうな表情で答えていた。その場では証拠なると書類を見つけられなかったため、名目上伯爵令嬢である私の行方不明に関与しているとしてその場では拘束されたらしい。そのとき私の身分を明かしたのは平民が行方不明になっただけでは教会孤児院の神父を拘束するには不十分だったためやむを得ず明かしたという。奴隷商人に売られてしまえば足取りが掴みにくいのと私の身の安全のためしょうがない。

 それがここまで昨日聞いていた内容なんだけど。


 「逃げられたというのは?マリウス神父はどこに入れられていたのですか」
 「一応、容疑者扱いだけどまだ確定するまでここの空室に鍵かけて見張ってたよ。さっき見張りの目を掻い潜って逃げ出したっぽい~多分魔導具を隠し持っていたんだろうけど」

 それでどこかものものしい雰囲気だったのかと合点が入った。

 「警備はどうなってるんだ」

 ジロリとリクがレイ様に視線を寄越すとレイ様は「ハハハ~」と笑って誤魔化した。

 「まあ、ここはさっきギルマスの指揮で探したから教会孤児院内に隠れているなんてことはないと思うよ。だから子供達に危険はないし、一応町の出入り口は封鎖しているし、マリウス神父が現れそうなところは今探しているよ」


 そこまで言うとレイ様はマリウス神父の捜索に加わると言ってどこかへ行ってしまった。
 

 「アリア! ここにいたのね」

 教会を出た入り口のところでフローラが抱きついてきた。

 「大変な目に遭ったって聞いたわ、無事で本当によかった」
 
 ぎゅうぎゅうと抱きしめられてくすぐったい気持ちになるも少々力が強い。思わず「うっ……」と変な声が漏れ出たところで静止が入った。

 「おい、お前の馬鹿力でアリアが潰れるぞ」

 そう言ってヨシュアがフローラを軽く小突く。ハッとした表情で私を抱いていた手を緩めるとフローラは慌てて私に謝罪をした。

 「ごめんなさい! 私、人より力が強いみたいでいつも気をつけるように言われてたのに……」
 「ううん、大丈夫よ。気にしないで」

 そう言いながら以前固いパンを包丁で一刀両断した姿を思い出して少し背筋が寒くなる。 
 今度から気をつけようと自分に言い聞かせた。

 「そういえばカイは?」

 先程まで三人一緒だったことからカイの姿が見えずなんの気無しに聞いて見ると、カイはイアンの様子を見に行ったらしい。確かに昨日いろいろなことがあったしイアンの様子は気になる。フローラは昨日の事やマリウス神父のことなどおおまかなことは自警団の聞き取り調査とサーニャさんから聞いているようだった。

 「神父様のことは正直混乱していて……私以外は聞かされていないの。歳が上の方の子たちはうすうす感じているみたいだけど」

 戸惑ったように話すフローラはチラリとヨシュアの方へ視線を向けた。すると視線を向けられたヨシュアは顔を顰めた。

 「アイツはそういうやつだったんだよ」

 フローラはヨシュアの言葉を聞いて俯いた。フローラからすればマリウス神父は育ててくれた恩人とも言える人物だ。胸中は複雑だろう。
 私はフローラの肩をポンポンと叩きながらヨシュアをジロリと睨むとヨシュアはたじろぎながら「なんだよ」と小さな声で呟いた。


 「おーい! ねえ、イアン見てない? 部屋にいないんだけど」

 カイが小走りでこちらに走ってきた。見ていないことを伝えるとカイは怪訝な表情を見せてフローラに尋ねた。

 「フローラ、カイは今朝はいたんだよね?」
 「ええ、今朝は朝食をみんなと一緒にとったあと寝不足だからってもう一度部屋に戻って寝ると言っていたけど」

 思わずリクの顔を見るとリクもこちらを見た。私たちはレイ様にも説明して手分けして教会孤児院内でイアンを探すことにした。
 私の胸の中で嫌な予感が広がっていく。私は昨日のイアンのマリウス神父に対しての話を思い出していた。


 ──「早くここから出て神父様に会わないとね」

 脳裏にイアンが言っていた言葉がよぎる。

 「ねえ、イアンはマリウス神父に会いにいったということはないかしら」

 側にいたリクに問いかける。リクは何かを考え込んだように立ち止まる。

 「可能性はあるでしょう、ですが今は見張りがいますし。いくら子供とはいえ見張りの目を掻い潜るのは難しいのでは?」
 「じゃあ、どこに……」

 何気なく子供たちが過ごしている庭を見渡すとカイたちに懐いている子供たちの姿が見える。



 「ねえ、あの子達前に森へ行っていたと言っていたわよね。マリウス神父の目を盗んで行っていたというのなら大人の知らない出口や森への入り口があるのではない?」

 そう言うとリクは「カイたちに聞きましょう」と言って頷いた。

 言いようのない不安が私の胸に広がっていた。
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