猫になった俺、王子様の飼い猫になる

あまみ

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謝罪

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 傷の手当も終わり、新しい着替えを手配してもらうことになり、エリオットも天音の着替えが届くまで一緒に待ってくれることになった。当初、エリオットを気遣った天音は一人で大丈夫だから王城に戻って欲しいと告げるも、エリオットは歯切れ悪そうに「いや、待とう」と言って聞かなかった。

 手持ち無沙汰な天音はベッドの端に座ってゆらゆらと身体を揺らしながら先程の出来事を考えていた。暴漢に襲われたことより天音の頭の中は先程のエリオットに頬に触れられたことで頭がいっぱいだった。

 (俺、どうしちゃったんだろ……これじゃまるでエリオット殿下のこと……)

 天音が悶々と考えているところにエリオットが「おい」と声を掛けた。気がつけばエリオットは天音の目の前にいた。

 「ひゃい!」
 「……?」
 「ななな、なんでしょうか?」
 「その、今朝は悪かったな」

 天音が首を傾げるとエリオットは目を逸らして罰が悪そうな表情でガシガシと頭をかいた。

 「~~~~ッ!……無神経なことを言って悪かった、泣かせるつもりはなかった」

 そこでようやく天音はエリオットが今朝のことについて謝っているのだと気づいた。

 「いや、気にしてませんし!……自分も泣いてしまってすみません」
 「ユエルから無神経だと言われた」
 「ユエルさんが……ふふふ」

 猫(イオ)の姿で王城で過ごしている時もユエルは歯に着せぬ物言いでエリオットに小言を言っていたことを思い出して思わず笑ってしまった。
 少しムッとした表情のエリオットに気づいて天音は慌てて「すみません」と謝ると「いや、気にするな」とごく自然に天音の頭を撫でた。
 天音が撫でられて思わず放心しているのも気づかず、エリオットは先程ルームサービスで届いた食事がのっているテーブルの方へ行き、天音に「おい」と声を掛けた。

 「腹が減ってないか? 何か食べられそうなら食べろ」

 言われてみれば街で食べるつもりだった矢先にあんなことがあったので、天音は空腹だった。テーブルに近づいて見てみるとテーブルの上にはサンドイッチやスープ、リゾット、クッキーやケーキなどがのっていた。

 (あ……)

 天音が選んだのはコンソメ風味のスープだった。とりあえず温かいものを身体に入れようとふーふーと冷ましてから口に入れると、染み渡るような美味しさに感動して夢中になって口に入れた。
 ふと視線を感じて顔をあげると、エリオットが目の前に座ってこちらをじっと観察するかのように見つめていた。

 「あの……何か?」
 「いや、似ているはずがないのに似ていると思ってしまってな。気にするな」

 疑問を持ちながらも一瞬脳裏に猫の自分の姿が浮かんだが、「まさかな」と打ち消して、天音はスープを平らげたのであった。

 *   *   *

 満腹になったせいか眠気がどっと襲ってきた天音は先程からうつらうつらと船を漕いでいる。
 見かねたエリオットが「服が届いたら起こしてやるから」と言ってベッドに寝かせようとすると天音は眠そうに眉間に皺を寄せて「夜までには届きますか」とたずねる。

 「大丈夫だ、夜までには届く」
 「わかりました……じゃあ、お言葉に甘えて少しだけ寝ます」

 限界だった天音はそのままベッドに倒れ込むようにして横になった。
 
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