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第2章
2.
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計画はいつも通りに進む筈だった。
まず銃で脅し、行員や客達を脅しつける。そして警察へ通報が行き、駆け付けて来るまでの僅かな時間内に出来るだけの金を奪う。
それだけだった。なのに今回声をかけた若者が裏切ったのだ。
銀行の外からは、いつも以上に早いサイレンの音が聞こえている。
クレイズと3人の男達は、銀行内で顔を突き合わせていた。
「警察がこんなに早いはずがない。誰か、裏切ったらしいな」
クレイズが静かに言うと、男達は一様に、おれじゃないぜ、と言い出した。
「なぁ、おれじゃない!本当だとも!」
「おれは、こいつが怪しいと思うぜ?」
「どうするんだよ?」
クレイズは男達を一瞥した。そして内心では、どうでもいいと思っていた。
男達を信用していた訳じゃなかったが、自分の考えが足りなかったからだ。そう思った。
「どうもしないさ。裏切った奴には死んでもらう」
そう言うなりクレイズは銃を引き抜き、次々に男達の頭を撃ち抜いた。
銀行内は悲鳴に包まれ、騒がしくなる。
床に倒れた3人の男達の体を跨ぎながら、クレイズは銃を懐に戻した。悲鳴はまだ続いていて耳障りだ。
「今すぐ黙らないと、お前達もこいつらみたいに床を舐める事になるぞ?」
大声でそう言うと、すぐ静かになった。
悲鳴を心地よいと言う奴らの心理が分からないな。などと思いながら、クレイズは中央に設けられているソファに腰掛けた。
銃声がしたのだから、警察達は直に突入して来るだろう。
クレイズは人質達を見渡した。全員、恐怖の張り付いたような引き攣った顔をしている。誰もがクレイズを見つめ、早く逮捕されろ、と言っているようだった。
突然扉が蹴破られ、何人もの武装した警官達が一斉に流れ込んで来た。
「手を頭の後ろで組んで、膝を床につくんだ!」
怒鳴り声にも似た警官の命令に、クレイズは黙って従った。両手をゆっくりと頭の後ろで組み、膝を折って床につく。すると、警官達は銃を突き付けながらクレイズを取り囲んだ。
「うわっ……!死んでるじゃないか!」
警官の1人が転がっている男達の死体に驚き、声を上げた。後から突入して来た警官達は、人質達を解放している。
「クレイズ、お前を銀行強盗の現行犯で逮捕する!」
そう言われクレイズは腕を引っぱられながら立たされ、手錠をかけられた。そして扉の方へ背中を押されるように向かわされる。
逮捕されて悔しいだとか、捕まりたくない、と言う感情はなく、ただしくじったな、そう思っただけだった。
外は明るい陽射しが照り付け、昼間の屋外には数台のパトカーと野次馬が群れていた。どのパトカーも、音を立てずにサイレン灯だけを回転させている。
ふとクレイズには、群がる人々やそれを囲む警官達が汚れているように見えた。実際警察は汚職に塗れている。クレイズがマフィアで仕事をしていた時も、何人もの警官達に麻薬を売っていた。
どの人間も、悪に染まったような濁った視線を向けてきていて、クレイズは不愉快になった。
自分の目も濁っているからそう見えるのだろうか、と思った。
クレイズが扉の前に停車しているパトカーまで連れて来られると、後部座席から中年の男が1人、険しい顔をして降りて来た。
細身の体で男にしては少し背が低かったが、小さなクレイズよりは頭1個分程大きい。
その男をクレイズは新聞やテレビで何度か見た事があった。
確かブレイブシティ警察の本部長で、名前をジャック・ゲイナーと言った。
ゲイナーは、眼鏡の奥から覗く鋭い目でクレイズを見ている。
間近で見るその目は、濁っているようには見えなかった。汚職警官達の中で唯一、汚れていないように見える。
「さぁ、乗るんだ」
ゲイナーはそう言うとクレイズを後部座席に押し込み、続いて隣に乗り込んで来た。
「出してくれ」
その言葉にパトカーはゆっくりと発進した。街の景色が窓の向こうに流れて行く。それを見つめていると、ゲイナーがこっちを見ている姿が窓に映っていた。
「仮面が気になるか?ゲイナー本部長」
そう言って振り返ると、ゲイナーは頷いた。
「そうだな。その下の素顔が気になる。それも、署についたら外してもらう」
静かにそう言うと、ゲイナーは視線を前に戻した。
まず銃で脅し、行員や客達を脅しつける。そして警察へ通報が行き、駆け付けて来るまでの僅かな時間内に出来るだけの金を奪う。
それだけだった。なのに今回声をかけた若者が裏切ったのだ。
銀行の外からは、いつも以上に早いサイレンの音が聞こえている。
クレイズと3人の男達は、銀行内で顔を突き合わせていた。
「警察がこんなに早いはずがない。誰か、裏切ったらしいな」
クレイズが静かに言うと、男達は一様に、おれじゃないぜ、と言い出した。
「なぁ、おれじゃない!本当だとも!」
「おれは、こいつが怪しいと思うぜ?」
「どうするんだよ?」
クレイズは男達を一瞥した。そして内心では、どうでもいいと思っていた。
男達を信用していた訳じゃなかったが、自分の考えが足りなかったからだ。そう思った。
「どうもしないさ。裏切った奴には死んでもらう」
そう言うなりクレイズは銃を引き抜き、次々に男達の頭を撃ち抜いた。
銀行内は悲鳴に包まれ、騒がしくなる。
床に倒れた3人の男達の体を跨ぎながら、クレイズは銃を懐に戻した。悲鳴はまだ続いていて耳障りだ。
「今すぐ黙らないと、お前達もこいつらみたいに床を舐める事になるぞ?」
大声でそう言うと、すぐ静かになった。
悲鳴を心地よいと言う奴らの心理が分からないな。などと思いながら、クレイズは中央に設けられているソファに腰掛けた。
銃声がしたのだから、警察達は直に突入して来るだろう。
クレイズは人質達を見渡した。全員、恐怖の張り付いたような引き攣った顔をしている。誰もがクレイズを見つめ、早く逮捕されろ、と言っているようだった。
突然扉が蹴破られ、何人もの武装した警官達が一斉に流れ込んで来た。
「手を頭の後ろで組んで、膝を床につくんだ!」
怒鳴り声にも似た警官の命令に、クレイズは黙って従った。両手をゆっくりと頭の後ろで組み、膝を折って床につく。すると、警官達は銃を突き付けながらクレイズを取り囲んだ。
「うわっ……!死んでるじゃないか!」
警官の1人が転がっている男達の死体に驚き、声を上げた。後から突入して来た警官達は、人質達を解放している。
「クレイズ、お前を銀行強盗の現行犯で逮捕する!」
そう言われクレイズは腕を引っぱられながら立たされ、手錠をかけられた。そして扉の方へ背中を押されるように向かわされる。
逮捕されて悔しいだとか、捕まりたくない、と言う感情はなく、ただしくじったな、そう思っただけだった。
外は明るい陽射しが照り付け、昼間の屋外には数台のパトカーと野次馬が群れていた。どのパトカーも、音を立てずにサイレン灯だけを回転させている。
ふとクレイズには、群がる人々やそれを囲む警官達が汚れているように見えた。実際警察は汚職に塗れている。クレイズがマフィアで仕事をしていた時も、何人もの警官達に麻薬を売っていた。
どの人間も、悪に染まったような濁った視線を向けてきていて、クレイズは不愉快になった。
自分の目も濁っているからそう見えるのだろうか、と思った。
クレイズが扉の前に停車しているパトカーまで連れて来られると、後部座席から中年の男が1人、険しい顔をして降りて来た。
細身の体で男にしては少し背が低かったが、小さなクレイズよりは頭1個分程大きい。
その男をクレイズは新聞やテレビで何度か見た事があった。
確かブレイブシティ警察の本部長で、名前をジャック・ゲイナーと言った。
ゲイナーは、眼鏡の奥から覗く鋭い目でクレイズを見ている。
間近で見るその目は、濁っているようには見えなかった。汚職警官達の中で唯一、汚れていないように見える。
「さぁ、乗るんだ」
ゲイナーはそう言うとクレイズを後部座席に押し込み、続いて隣に乗り込んで来た。
「出してくれ」
その言葉にパトカーはゆっくりと発進した。街の景色が窓の向こうに流れて行く。それを見つめていると、ゲイナーがこっちを見ている姿が窓に映っていた。
「仮面が気になるか?ゲイナー本部長」
そう言って振り返ると、ゲイナーは頷いた。
「そうだな。その下の素顔が気になる。それも、署についたら外してもらう」
静かにそう言うと、ゲイナーは視線を前に戻した。
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