arkⅢ

たける

文字の大きさ
6 / 14
1.

しおりを挟む
マーゴに案内され、ジョシュ達は裁判所の2階にある客室へと、それぞれ入った。
ジョシュの部屋は装飾がかなり質素で──飾り気が殆どない──簡素なベッドとクローゼット、あとは化粧台があるだけだった。

「今日はこちらでお休みになって下さい。治療は明日、お願いします」
「何故今日じゃ駄目なんですか?」

そう尋ねると、マーゴはふとジョシュから視線を逸らした。

「夜になると、主もお休みになられます。そうなると、街中の者に施されている、規律を守ると言うデータが暴走し、あなた方に危害を加えるかも知れないからです」
「危険因子を、彼が処分すると言っていたと思うのですが?」

暴走したら、それこそ全てが危険因子ではないのだろうか。

「主がお休みになられるようになったのは、ここ数日の事なのです。お休みになられている時に起こった事は、主は把握されておりませんので」

申し訳なさそうに言うと、マーゴは付け加えた。

「あと、地下へは勝手に入らないで下さい。あそこにはまだ、処分出来ていない危険因子を閉じ込めておりますので……」





マーゴが出て行った後、ジョシュはワイズの部屋を訪れた。彼の部屋もジョシュと変わらない配置になっている。

「ジョシュ!何故もう部屋に案内されたんだ?」
「あぁ、それは……」

マーゴに聞いた話をワイズにも伝えると、彼は難しい顔になった。と言っても、普段から険しい顔をしているのだが。

「処分出来てない危険因子って言ったって、何体あるんだ?そもそも、処分しきれない程毎日出るのか?」

腕組みをし、部屋の中をグルグルと回る。ジョシュはそんな姿を目で追いながら、ノッドは、と思った。

「なぁ、ノッドは部屋か?」
「そうじゃないか?」

ワイズとノッドの部屋へ行ってみる。彼は黙ってベッドに腰掛け、じっと壁を見つめていた。

「さっきマーゴに聞いたんだけど……ノッド?」

目の前に立っても、ノッドはジョシュ達を見ようともしなかった。手を振っても反応がない。

「一体どうしたんだ?」

屈み込むと、漸くノッドと目が合った。

「あぁ、ジョシュ……俺、どうも駄目みたい」
「駄目って、体の調子が悪いのか?」

そこでジョシュはハッとした。ノッドはサイボーグで、その体は機械で出来ている。もしかしたらバラムの電磁波にやられているのでは、と思った。

「まさか、ノッド……」
「あんまり自制を保ってられないんだ……悪い……」

そう言うと、また黙ってしまった。ジョシュは立ち上がると、顎をさすった。


──どうもおかしい……


「ワイズ、マーゴは規律を守っている時は自由だと言っていなかったか?」
「言っていたよ。なのに何故ノッドは、こんななんだ?これじゃあまるで、バラムに制御されてるみたいじゃないか」

2人して腕組みをしながら、じっとノッドを見つめた。だが、彼が再び口を開く事はなかった。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない

文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。 使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。 優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。 婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。 「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。 優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。 父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。 嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの? 優月は父親をも信頼できなくなる。 婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

処理中です...