VELTA・QUEEN

たける

文字の大きさ
4 / 8

3.

しおりを挟む
夜になっても、マイケルの帰る気配は全く無かった。
テーブルを囲むようにして4脚、椅子が置かれてある。そのうちの1つに、ベルタは座っていた。
テーブルには、美味しそうな料理が並べられている。勿論べルタが作ったものだ。
それなのに、ベルタは食べようとはしなかった。
食べたくなかった。


──マイケルが、あんなことを思っていたなんて……


今度ばかりは、驚きを隠せなかった。
ベルタは頭をもたげ、テーブルを、ただ茫然と見ていた。
その時、玄関のチャイムが──静かな家の中に──騒がしく鳴り響いた。


──誰だろう?


もたげた頭をゆっくりと上げ、そっと扉を開ける。すると扉の向こうには、お昼にきた黒で覆われた男とは全く対象的に、白で覆われた男が立っていた。

「費方がベルタ・クィーンさんですね?」
「そうですが、貴方は……?」
「私は、貴方を天国に連れて行きたい・・・・・・・・・・天使です」

「天使……?」昼間にきた死神と同じ様な会話に、ベルタは少しの驚きを見せた。
「昼頃に、貴方と同じ様な事を言って、死神が来ました」
ベルタがそう言うと、その天使は酷く驚いたリアクションを見せた。
「死神が?先を越されたか……」ぶつぶつと言った。「貴方が生きていて、本当によかったです」天使は微笑んだ。「死神に連れて行かれたなんて知ったら、ゼウス様に大目玉を食らわされるところでしたよ」
ベルタは何も言えなかった。


──どうして使いの者は、死にこだわるのだろうか?


「さぁベルタさん、天国に参りましょう!」

スッと右手を差し伸べてきた。しかし、ベルタはその手を取らず家の中に入り、鍵をかけてしまった。

「ちょ……ちょっとベルタさん、どうしたんですか?」

天使の声が、扉の向こうに聞こえてくる。だが、ベルタは扉を開けなかった。

「まだ死ねません。死にたくありません」

ベルタの声に、天使は耳を傾けた。

「何故ですか?」
「死神にも言いましたが、私が何をしたと言うんです?今まで何の病気もした事がなかったのに……それに、私には義理ですが、息子がいます。その息は、ハッキリ言ってしまいますが悪い子です。そんな子を1人残して死ねません。それに、病気を治して元気に走りたいんです」

ベルタは口を閉じた。
外にいる天使は、ポツリと言った。

「今日は帰ります」
「そうですか……」
「早く死ぬ覚悟を決めて下さいね、ベルタ・クィーンさん」

「同度来ても同じことです」ピシャリと言った。「さようなら」

「またきます」

やがて静かになったので、ベルタはそっと罪を開けてみた。すると、外には誰もおらず、夜の帳がこの港町に降りていた。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

なほ
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...