VELTA・QUEEN

たける

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3.

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夜になっても、マイケルの帰る気配は全く無かった。
テーブルを囲むようにして4脚、椅子が置かれてある。そのうちの1つに、ベルタは座っていた。
テーブルには、美味しそうな料理が並べられている。勿論べルタが作ったものだ。
それなのに、ベルタは食べようとはしなかった。
食べたくなかった。


──マイケルが、あんなことを思っていたなんて……


今度ばかりは、驚きを隠せなかった。
ベルタは頭をもたげ、テーブルを、ただ茫然と見ていた。
その時、玄関のチャイムが──静かな家の中に──騒がしく鳴り響いた。


──誰だろう?


もたげた頭をゆっくりと上げ、そっと扉を開ける。すると扉の向こうには、お昼にきた黒で覆われた男とは全く対象的に、白で覆われた男が立っていた。

「費方がベルタ・クィーンさんですね?」
「そうですが、貴方は……?」
「私は、貴方を天国に連れて行きたい・・・・・・・・・・天使です」

「天使……?」昼間にきた死神と同じ様な会話に、ベルタは少しの驚きを見せた。
「昼頃に、貴方と同じ様な事を言って、死神が来ました」
ベルタがそう言うと、その天使は酷く驚いたリアクションを見せた。
「死神が?先を越されたか……」ぶつぶつと言った。「貴方が生きていて、本当によかったです」天使は微笑んだ。「死神に連れて行かれたなんて知ったら、ゼウス様に大目玉を食らわされるところでしたよ」
ベルタは何も言えなかった。


──どうして使いの者は、死にこだわるのだろうか?


「さぁベルタさん、天国に参りましょう!」

スッと右手を差し伸べてきた。しかし、ベルタはその手を取らず家の中に入り、鍵をかけてしまった。

「ちょ……ちょっとベルタさん、どうしたんですか?」

天使の声が、扉の向こうに聞こえてくる。だが、ベルタは扉を開けなかった。

「まだ死ねません。死にたくありません」

ベルタの声に、天使は耳を傾けた。

「何故ですか?」
「死神にも言いましたが、私が何をしたと言うんです?今まで何の病気もした事がなかったのに……それに、私には義理ですが、息子がいます。その息は、ハッキリ言ってしまいますが悪い子です。そんな子を1人残して死ねません。それに、病気を治して元気に走りたいんです」

ベルタは口を閉じた。
外にいる天使は、ポツリと言った。

「今日は帰ります」
「そうですか……」
「早く死ぬ覚悟を決めて下さいね、ベルタ・クィーンさん」

「同度来ても同じことです」ピシャリと言った。「さようなら」

「またきます」

やがて静かになったので、ベルタはそっと罪を開けてみた。すると、外には誰もおらず、夜の帳がこの港町に降りていた。




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