VELTA・QUEEN

たける

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次の日、ベルタはいつもより躰が重いと感じた。だが、余り気にはしなかった。
「そう言えば……」天井を見つめたまま呟いた。「今日は、お医者様がきてくれるんだっけ……」
ゆっくりとタンスに手をかけた。

「おいベルタ」

勢いよく部屋の扉が開き、マイケルの、腰までもある長い髪──1つに束ねられている──がチラリと見えた。そんな長い髪を、ベルタはじっと見つめた。

「どうしたんだい、マイケル?」

力のない声が、重々しく聞こえる。

「医者がきたぞ」

それだけを言うと、マイケルはバタバタと1階に降りて行ってしまった。


──今日は機嫌がいいんだな……


マイケルがベルタの部屋にくるのは、機嫌がいい時だけだったが、そんな機嫌もそう滅多にあるものではない。
マイケルが部屋を出てすぐに、白い髭を生やした70才近くの老医師が入ってきた。

「やぁベルタ君。気分はどうだい?」

3日に1回診察にきてくれるアブーラ医師の挨拶は、いつもこうだ。

「今日は、少し躰が重い気がします」

ベッドに横になった。

「そりゃまた……何故かな?」
「実は先生……」ベルタはアブーラの、深い皺が刻まれた顔を見つめた。「昨日、お昼頃に死神が、夜に天使が、私を連れにやってきたんです」
アブーラはベルタを見た。嘘を言っている気配はない。

「来て、君はどうしたんだい?」
「まだ死にたくないって言ったら、渋々帰りました。きっとまた来ますよ」

アブーラは、仄かに笑っているベルタを、真剣に見ていた。


──モーリタニアに相談せねば、このままではベルタは……!






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