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第4章.食事
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シャワーを浴びている沢村先輩。俺は聞きたい事があったから──と言うか、それ以前に今日は付き添いなんだけど──バスタオルを手に待っていた。
やがて出てきた先輩は、いつも通りの美しい体と涼しい目で、俺からバスタオルを受け取る。
「何か聞きたそうだね」
声だけ聞いたら、とても柔道なんかしてそうにない──むしろ草食系みたいな感じの──声音で聞いてきた。
「どうして澪君……剣崎さんを?」
「……答える必要ある?」
射るような視線──それに圧力もある──に、いえ、と、答える臆病な俺。柔道を辞めて1年だけど、締まりない体に変わり果てて──根性も無くして──しまっていて情けない。
──澪君は、可愛いよって言ってくれたけど……
「この後の予定は」
「剣崎さんと食事してから直帰するって、コーチに言っといて」
俺の言葉を遮るようにそう言うと、沢村先輩は素早くジャージを纏った。頷くしかない。
「それじゃ、お疲れ様」
柔道着の入った大きな鞄を俺に押し付け、先輩は更衣室を出て行った。
──てか、付き添いっつーか、見せつけたかっただけなんじゃないの?
そう思うとムカってしたけど、俺と澪君は恋人でもない──しかもフラれた──し、怒る道理もない。
スマホに登録してるコーチの番号をタップし、すぐに連絡を入れる。可愛い子と食事して、きっとヤりますよってチクってやるんだ。
「お疲れ様です、沢村コーチ……」
やがて出てきた先輩は、いつも通りの美しい体と涼しい目で、俺からバスタオルを受け取る。
「何か聞きたそうだね」
声だけ聞いたら、とても柔道なんかしてそうにない──むしろ草食系みたいな感じの──声音で聞いてきた。
「どうして澪君……剣崎さんを?」
「……答える必要ある?」
射るような視線──それに圧力もある──に、いえ、と、答える臆病な俺。柔道を辞めて1年だけど、締まりない体に変わり果てて──根性も無くして──しまっていて情けない。
──澪君は、可愛いよって言ってくれたけど……
「この後の予定は」
「剣崎さんと食事してから直帰するって、コーチに言っといて」
俺の言葉を遮るようにそう言うと、沢村先輩は素早くジャージを纏った。頷くしかない。
「それじゃ、お疲れ様」
柔道着の入った大きな鞄を俺に押し付け、先輩は更衣室を出て行った。
──てか、付き添いっつーか、見せつけたかっただけなんじゃないの?
そう思うとムカってしたけど、俺と澪君は恋人でもない──しかもフラれた──し、怒る道理もない。
スマホに登録してるコーチの番号をタップし、すぐに連絡を入れる。可愛い子と食事して、きっとヤりますよってチクってやるんだ。
「お疲れ様です、沢村コーチ……」
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