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第4章.食事
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そもそも俺は、オスだった。
言い方悪いけど。
メスになったのは、あの日失恋した夜の事。
2年前、眠れなくて結局夜中、駅前のバーに入った。
抑え気味の照明に、微かに聞こえるジャズ。カウンターで1人、ボトルを幾つも空けていた。
もうすぐ閉店だと言われた記憶。でも曖昧で、その後誰かに声をかけられた気もする。
こんなに酔ったのは、後にも先にもこの時だけ。
『本当に大丈夫?』
今も記憶にあるのは、そう聞いてきた少し低い声と、鼻腔を擽る甘い香り。そして、薄暗いホテルでの気遣う言葉と、ぼんやりとした輪郭。抱き締められた時のガッチリした感触に、痛みと快感。
──名前も連絡先も分からない……
今となっては、その人を探すように街へ繰り出していたのかも知れない。
また会いたいようで、会うのが怖いような。
俺の運命を変えた人だから、と言うより、初めての人だったから、と言うのが本心だけど。
言い方悪いけど。
メスになったのは、あの日失恋した夜の事。
2年前、眠れなくて結局夜中、駅前のバーに入った。
抑え気味の照明に、微かに聞こえるジャズ。カウンターで1人、ボトルを幾つも空けていた。
もうすぐ閉店だと言われた記憶。でも曖昧で、その後誰かに声をかけられた気もする。
こんなに酔ったのは、後にも先にもこの時だけ。
『本当に大丈夫?』
今も記憶にあるのは、そう聞いてきた少し低い声と、鼻腔を擽る甘い香り。そして、薄暗いホテルでの気遣う言葉と、ぼんやりとした輪郭。抱き締められた時のガッチリした感触に、痛みと快感。
──名前も連絡先も分からない……
今となっては、その人を探すように街へ繰り出していたのかも知れない。
また会いたいようで、会うのが怖いような。
俺の運命を変えた人だから、と言うより、初めての人だったから、と言うのが本心だけど。
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