Love Trap

たける

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1ヶ月振りに職場復帰したハンクは、皆の温かい声に迎えられた。その中にフィックスの姿はない。
あれから毎日ベッドの上を、窓の外を、夢の中を、フィックスを捜した。
だがどこにもいなかった。それは自宅に戻ってからも同じで、何度も写真の中を見つめた。

「お帰り、スティア刑事」

警部補が笑みを浮かべながら、皆を代表してそう言ったが、ハンクは笑えなかった。
フィックスがいなくなってから笑うのを止めた。

「どうも」

そう答え、早々にデスクへ向かう。

『おはよう、ハンク』

斜め前のデスクから、今にもそう聞こえてきそうだ。

「早い復帰だったな、スティア」

エンカートがそう声をかけてくるが、ハンクは答えずにパソコンを起動させた。すると、受信箱にいくつかのメールが届いていた。
差し出し人の中にフィックスの名前を見つけたハンクは、そうだった、と思い出した。
事故に遭う少し前、フィックスはハンクにメールを送ったと言っていた。確か自宅の金庫の暗証番号だと言っていた。
慌ててメールを開くと、ハンクは思わず涙ぐんだ。


ハンクへ


俺の自宅にある金庫に、ノッドから預かったメモリーチップを保管してる。
もし俺に何かあって、このメモリーチップを手に出来ない時は、君が3年後に、ストレイン博士が完成させる新たなサイボーグに入れてやって欲しい。
こんな事は君にしか頼めない。
お願いだ。今度こそノッドを自由にしてやってくれ。

あと、これはとても言い難いんだが、ストレイン博士が俺達を消そうとして、それで俺だけが死んでしまった場合。
その時は、このメモリーチップを俺の棺の中へ入れてくれ。
無茶で我が儘なお願いだと分かってる。
だけど、どうか聴き入れて欲しい。


フィックス


「あぁ……チクショウ!」

まるで遺言のようなメールに、ハンクは何度もデスクを殴った。

「おいスティア……!一体どうしたんだ?」

エンカートが慌てて駆け寄ってくる。

「来るな……!」

そう怒鳴ると、彼は立ち上がった姿勢のまま止まった。
まず自分がやらなければならない事がある。
遺言を聴き入れるつもりではないが、メモリーチップを取りに行く必要がある。

「ちょっと出てくる」

松葉杖を握り、唖然とする仲間の間を抜けたハンクは、警察署を出てすぐタクシーに乗り込んだ。




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