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天狗
天狗①
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その子供は森に現われた。
辺境に点在する幾つかの村や集落の中でも、そこは比較的豊かであった。開拓が始まってから、数十年と経過して、農耕も安定している。
近くには小さな森があって、荒野からは少し離れていた。
こんなよくある田舎の村には、昔、王国のお抱え魔導士をしていた賢者が住んでいた。
白いローブに白髭の老人。如何にも、な彼が、その子供を見付けたのは、深夜の眩い光が森から発生した次の朝だ。
調査に出かけたところ、森を抜ける道から僅かに外れたそこから、赤子の泣き声が聞こえたのである。
「この子はいったい……」
近くに親がいる様子もなく、また丁度光のあった方角と一致する。
黒い髪が生えたばかりの可愛い女の子だ。
「おお、そんなに泣くでない」
そっと抱けば、背中に小さな翼があるのが分かった。
「亜人の子か? それにしても……」
あやすと泣き止んでくれて、笑みを見せてくれる。伸ばされた小さな手が長い髭を掴んできて、きゃっきゃ、とまた笑った。
「はは、ジジイの髭が面白いか。そうか、そうか……」
子供はいなくて、妻は十年以上も前に死に別れている。
不思議な赤子を賢者は連れて帰った。
神が使わせてくれた宝のように思えてしまった。
その子に名前を与える。キュピエルと。
子育ての経験などなかったが、周囲の人々の助けを借りて、すくすくとキュピエルは成長していく。
少々、お転婆で、よく村の子を泣かしてしまったが、聞けば、別の子に意地悪をしていた子をポカンと一発したようだ。
泣かされた子供の親も文句は言わない。むしろ、悪い事をした息子をよく叱ってくれたと、キュピエルに感謝したほどだ。
そういう時こそ、賢者はキュピエルを諫める。
「暴力はいかん。正しい行いも、暴力によって正しさが歪められるのだよ」
よく分からない、といった顔をされたが、注意された事は理解したようで、言いつけを守れば、過剰な程に褒めてやった。
可愛くて仕方がない。溺愛した。
キュピエルは他の子供よりもずっと身体能力が高かった。賢くもあった。
それ故に、賢者は正しく導こうと考える。
「力は、己と大切な人を守る為に使いなさい。知恵は、自分だけの物でなく、他者にも分け与える物じゃ」
こうして、背中に黒い翼を持った不思議な子供は、優しい人々に囲まれて育ち、五歳になった。
賢者はキュピエルを連れて、森の中へと向かっていく。
池の見える少し開けた場所に辿り着くと、
「ここでいいじゃろ。さあ、存分に、力を使って、遊んでおいで」
キュピエルには不思議な力があった。
魔力にも似ていたが、魔導士である賢者にも分からない力を彼女は使うのだ。発生の手順などはそんなに変わらないのだが、必ず無詠唱で行使する。
はしゃぐキュピエルが、風を操って、木の葉を舞い上げていく。
うん、ちゃんと制御できている。
この特別な力は、感情によって爆発する危険もあった。
それをいち早く見つけ、対処できたのは、賢者にも覚えがあったからだ。
自分の幼少の頃、は昔過ぎてよく覚えていないが、時折、人間でも高い魔力を持つ子供が生まれ、しょっちゅう相談されていたのだ。
そういった子供らに、無理に力を押さえ付けさせると、必ずその内に暴発する。
「ジイジ、見て見て」
風を集め、自分の体を浮かせて遊んでいる。
それをニコニコと瞳を細めながら見守っていく。
魔導士の賢者には、危なくなったら直ぐに対応できる力もあって、こうして自由に使わせる時間を設けていた。
彼女の力がどんなものか、魔法に似ているが、何処か違うそれではあったが、いずれは大成する才能には違いない。
あの子が大人になるまで、長生きしなくては――それが賢者の目標だ。
もう少し大きくなったら、ちゃんと魔法も覚えさせよう。きっと才能はある。自分よりも優れた魔導士になるに違いない。
国に顔も利くから、そういう役職を目指してもいい。
夢が膨らむ。キュピエルは賢者の生き甲斐で、なくてはならない存在だった。
高く飛び上がったキュピエルが村の方角を指差した。
「ねえ、ジイジ、何か、燃えてるよ。変な鳥さんもいる」
「なに!?」
遊びを中断させたが、キュピエルは異常な事が起きていると理解して、素直に頷いてくれる。
急いで村の方へと走りだし、驚愕に瞳を見開いた。
村の上空を旋回しているのは魔物である。
「あれは……、ハーピーか!」
半人半鳥の魔物は、腕の部分が翼であり、足に先は猛禽類のようになっている。顔は女のそれであるが、獰猛な魔物であった。
村に入る手前で、賢者はキュピエルに言った。
「よくお聞き。お前は、ここで待っていなさい。何処かに身を隠すのだ」
「ジイジは?」
「儂は村の皆を助けなくてはならない」
「キュピも行く」
「駄目だ。いいかい、ジイジの言う事を聞けないのは悪い子じゃ」
「…………分かった」
頭を撫でる。
「よし、いい子じゃ」
一人にしてしまうのは心配であったが、この先は戦場になっている。そんな場所に幼子を連れていくわけにはいかない。
ある程度は予想していたが、村の中は酷い有様だった。
死体がそこら中に転がっている。民家から火の手が上がり、悲鳴が連続して聞こえてくる。
ケラケラと笑うハーピーどもが、村の上空を埋め尽くしてきた。
「おのれ――」
杖をきつく握りながら、呪文の詠唱を行い、雷撃を浴びせていく。
二体を撃墜し、一体の羽を焦がした。
その間に、誰かがハーピーに体を掴まれ、空へと上げられる。
「た、助け――」
落とされた。
グシャっと嫌な音が響き、血肉が飛び散る。
「ぐ……、ぐぐ……、ゆ、許さんぞ!」
彼は、よくキュピエルの為に、木製の玩具を作ってくれた。子育ての相談に乗ってくれたのは、彼の妻だ。
その奥さんの死体が目の前に転がっている。
「痛いっ、ぎゃああ――」
仰向けになった子供の腹をハーピーが生きたまま食い破っていた。
「ええい、離れんか!」
杖で払うと、笑いながらハーピーは逃げていく。
直ぐに、回復の呪文を――子供はもう絶命していた。
今朝までは、普通だった。とても平和で、優しい人たちばかりの村だった。
それが今、地獄と化している。
慟哭しながら、賢者は魔法を放ち続けた。
その背中が鉤爪で抉られるまで。
――――
草むらに身を潜めていた。
ジイジがそうしろ、と言ったから。
一人で膝を抱えていたキュピエルは、もう耐えられなくなって、立ちあがった。
さっきまで悲鳴がいっぱい聞こえていたけど、今は静かになっている。
「もう、終わったのかな?」
元ののんびりした村に戻っているはず。
そう思って、村に掛かる小さな橋を超えると、理解できない光景がそこにあった。
間違えて、別の村に戻ってきたような錯覚。
血塗れの道。倒れたまま動かない人たち。
「皆、寝てるの?」
起こすのは可哀想。
違う。起こすのが怖い。
起きなかった時にどうしてたらいいのか分からないから。
「ジイジ……、何処?」
小さな足は、自分の家の方に向かっていく。
ゆっくりと周りをキョロキョロ見回しながら、歩いていく。
「ジイジ……、ジイジ!」
寂しくて、悲しくて、涙が出てきた。
それを慰めるように、声が聞こえる。
「キュピ……エル……」
白いローブが見えた。それは大きな赤で塗られていたが、見慣れたジイジのローブに間違いない。
「ジイジ!」
駆け寄った。でもジイジは起きてはくれない。
「無事か……、キュピエル……、儂は、もう……」
「起きて、ジイジ……、ジイジ……」
ジイジは首を横に振った。
「儂はもう……、立てん。回復の魔力も尽きた。一人で……、一人にしてしまって……、じゃが、逃げて、生きて……、お前だけでも」
もうジイジは口を動かさない。細めて自分を見てくれた瞳もただそのままに。
幼いながらも悟り、だが、認められなくて、キュピエルはジイジの体を揺り動かす。
「ジイジ、ジイジ、ジイジ、ジイジ――」
ポロポロと涙が零れて、ポタポタと落ちていった。
笑い声が聞こえた。
「あははは、どんなに呼んでも無駄だよ」
「そうそう、だって、そいつ――」
「死んでるんだから!」
空を飛んでいる奴らが、まだ笑い続けている。
ジイジが死んだ。
とてつもなく悲しい。
小さな胸に、膨れ上がってもまだ膨張し続ける何かが、破裂した。
「うわぁあああああ――――」
キュピエルを中心に暴風が巻き起こり、怪鳥どもを吹き飛ばしていく。
ある者は家の壁にぶつかり、ある者は遠くの彼方へ飛ばされる。
どうにか、風に乗って、留まったハーピーらが、微かな恐れと共に、キュピエルを睨んだ。
「こいつ、いったい、何だい?」
「人間じゃないね。亜人でもない」
「魔物?」
「見て、黒い翼」
拳を強く握り締めながら、黒髪の幼子は涙目でハーピーらを睨み返した。
「お、お前らが……、ジイジを……」
「はん、そうさね」
「殺す」
小さな翼を広げると、突進するように飛んだ。
次の瞬間、ハーピーの喉を握っている。
「こ、こいつ――」
そのまま首の骨を折っていた。
一体が力無く落下し、地面に叩き付けられた。
「やりやがったね!」
「リンチだ、リンチ。人間に味方する奴は、魔物でもリンチ」
「チビでも容赦しない!」
もう一度、突進する。
だが、今度はひょいと避けられてしまった。
すると、今度は背中を蹴られる。
痛い、とても痛い。
「あははは、まぐれであたしらの仲間を殺せたからって、調子に乗ってんじゃないっての」
頭上から降下され、そのまま地に叩き付けられると、頭をそのまま押さえ付けられる。
痛い、とんでもなく痛い。
「死ね、チビ」
痛みよりも、悔しくて、悲しくて、涙で滲む瞳にジイジが入り込んだ。
ジイジは言った。逃げて、生きろ、と。
こうも言った。言う事を聞けないのは悪い子だと。
「ジイジ……、うぐぅ!」
渾身の力で、ハーピーを振りほどくと、キュピエルは飛んだ。
逃げる為に、生きる為に、大好きなジイジとの約束を守る為に。
辺境に点在する幾つかの村や集落の中でも、そこは比較的豊かであった。開拓が始まってから、数十年と経過して、農耕も安定している。
近くには小さな森があって、荒野からは少し離れていた。
こんなよくある田舎の村には、昔、王国のお抱え魔導士をしていた賢者が住んでいた。
白いローブに白髭の老人。如何にも、な彼が、その子供を見付けたのは、深夜の眩い光が森から発生した次の朝だ。
調査に出かけたところ、森を抜ける道から僅かに外れたそこから、赤子の泣き声が聞こえたのである。
「この子はいったい……」
近くに親がいる様子もなく、また丁度光のあった方角と一致する。
黒い髪が生えたばかりの可愛い女の子だ。
「おお、そんなに泣くでない」
そっと抱けば、背中に小さな翼があるのが分かった。
「亜人の子か? それにしても……」
あやすと泣き止んでくれて、笑みを見せてくれる。伸ばされた小さな手が長い髭を掴んできて、きゃっきゃ、とまた笑った。
「はは、ジジイの髭が面白いか。そうか、そうか……」
子供はいなくて、妻は十年以上も前に死に別れている。
不思議な赤子を賢者は連れて帰った。
神が使わせてくれた宝のように思えてしまった。
その子に名前を与える。キュピエルと。
子育ての経験などなかったが、周囲の人々の助けを借りて、すくすくとキュピエルは成長していく。
少々、お転婆で、よく村の子を泣かしてしまったが、聞けば、別の子に意地悪をしていた子をポカンと一発したようだ。
泣かされた子供の親も文句は言わない。むしろ、悪い事をした息子をよく叱ってくれたと、キュピエルに感謝したほどだ。
そういう時こそ、賢者はキュピエルを諫める。
「暴力はいかん。正しい行いも、暴力によって正しさが歪められるのだよ」
よく分からない、といった顔をされたが、注意された事は理解したようで、言いつけを守れば、過剰な程に褒めてやった。
可愛くて仕方がない。溺愛した。
キュピエルは他の子供よりもずっと身体能力が高かった。賢くもあった。
それ故に、賢者は正しく導こうと考える。
「力は、己と大切な人を守る為に使いなさい。知恵は、自分だけの物でなく、他者にも分け与える物じゃ」
こうして、背中に黒い翼を持った不思議な子供は、優しい人々に囲まれて育ち、五歳になった。
賢者はキュピエルを連れて、森の中へと向かっていく。
池の見える少し開けた場所に辿り着くと、
「ここでいいじゃろ。さあ、存分に、力を使って、遊んでおいで」
キュピエルには不思議な力があった。
魔力にも似ていたが、魔導士である賢者にも分からない力を彼女は使うのだ。発生の手順などはそんなに変わらないのだが、必ず無詠唱で行使する。
はしゃぐキュピエルが、風を操って、木の葉を舞い上げていく。
うん、ちゃんと制御できている。
この特別な力は、感情によって爆発する危険もあった。
それをいち早く見つけ、対処できたのは、賢者にも覚えがあったからだ。
自分の幼少の頃、は昔過ぎてよく覚えていないが、時折、人間でも高い魔力を持つ子供が生まれ、しょっちゅう相談されていたのだ。
そういった子供らに、無理に力を押さえ付けさせると、必ずその内に暴発する。
「ジイジ、見て見て」
風を集め、自分の体を浮かせて遊んでいる。
それをニコニコと瞳を細めながら見守っていく。
魔導士の賢者には、危なくなったら直ぐに対応できる力もあって、こうして自由に使わせる時間を設けていた。
彼女の力がどんなものか、魔法に似ているが、何処か違うそれではあったが、いずれは大成する才能には違いない。
あの子が大人になるまで、長生きしなくては――それが賢者の目標だ。
もう少し大きくなったら、ちゃんと魔法も覚えさせよう。きっと才能はある。自分よりも優れた魔導士になるに違いない。
国に顔も利くから、そういう役職を目指してもいい。
夢が膨らむ。キュピエルは賢者の生き甲斐で、なくてはならない存在だった。
高く飛び上がったキュピエルが村の方角を指差した。
「ねえ、ジイジ、何か、燃えてるよ。変な鳥さんもいる」
「なに!?」
遊びを中断させたが、キュピエルは異常な事が起きていると理解して、素直に頷いてくれる。
急いで村の方へと走りだし、驚愕に瞳を見開いた。
村の上空を旋回しているのは魔物である。
「あれは……、ハーピーか!」
半人半鳥の魔物は、腕の部分が翼であり、足に先は猛禽類のようになっている。顔は女のそれであるが、獰猛な魔物であった。
村に入る手前で、賢者はキュピエルに言った。
「よくお聞き。お前は、ここで待っていなさい。何処かに身を隠すのだ」
「ジイジは?」
「儂は村の皆を助けなくてはならない」
「キュピも行く」
「駄目だ。いいかい、ジイジの言う事を聞けないのは悪い子じゃ」
「…………分かった」
頭を撫でる。
「よし、いい子じゃ」
一人にしてしまうのは心配であったが、この先は戦場になっている。そんな場所に幼子を連れていくわけにはいかない。
ある程度は予想していたが、村の中は酷い有様だった。
死体がそこら中に転がっている。民家から火の手が上がり、悲鳴が連続して聞こえてくる。
ケラケラと笑うハーピーどもが、村の上空を埋め尽くしてきた。
「おのれ――」
杖をきつく握りながら、呪文の詠唱を行い、雷撃を浴びせていく。
二体を撃墜し、一体の羽を焦がした。
その間に、誰かがハーピーに体を掴まれ、空へと上げられる。
「た、助け――」
落とされた。
グシャっと嫌な音が響き、血肉が飛び散る。
「ぐ……、ぐぐ……、ゆ、許さんぞ!」
彼は、よくキュピエルの為に、木製の玩具を作ってくれた。子育ての相談に乗ってくれたのは、彼の妻だ。
その奥さんの死体が目の前に転がっている。
「痛いっ、ぎゃああ――」
仰向けになった子供の腹をハーピーが生きたまま食い破っていた。
「ええい、離れんか!」
杖で払うと、笑いながらハーピーは逃げていく。
直ぐに、回復の呪文を――子供はもう絶命していた。
今朝までは、普通だった。とても平和で、優しい人たちばかりの村だった。
それが今、地獄と化している。
慟哭しながら、賢者は魔法を放ち続けた。
その背中が鉤爪で抉られるまで。
――――
草むらに身を潜めていた。
ジイジがそうしろ、と言ったから。
一人で膝を抱えていたキュピエルは、もう耐えられなくなって、立ちあがった。
さっきまで悲鳴がいっぱい聞こえていたけど、今は静かになっている。
「もう、終わったのかな?」
元ののんびりした村に戻っているはず。
そう思って、村に掛かる小さな橋を超えると、理解できない光景がそこにあった。
間違えて、別の村に戻ってきたような錯覚。
血塗れの道。倒れたまま動かない人たち。
「皆、寝てるの?」
起こすのは可哀想。
違う。起こすのが怖い。
起きなかった時にどうしてたらいいのか分からないから。
「ジイジ……、何処?」
小さな足は、自分の家の方に向かっていく。
ゆっくりと周りをキョロキョロ見回しながら、歩いていく。
「ジイジ……、ジイジ!」
寂しくて、悲しくて、涙が出てきた。
それを慰めるように、声が聞こえる。
「キュピ……エル……」
白いローブが見えた。それは大きな赤で塗られていたが、見慣れたジイジのローブに間違いない。
「ジイジ!」
駆け寄った。でもジイジは起きてはくれない。
「無事か……、キュピエル……、儂は、もう……」
「起きて、ジイジ……、ジイジ……」
ジイジは首を横に振った。
「儂はもう……、立てん。回復の魔力も尽きた。一人で……、一人にしてしまって……、じゃが、逃げて、生きて……、お前だけでも」
もうジイジは口を動かさない。細めて自分を見てくれた瞳もただそのままに。
幼いながらも悟り、だが、認められなくて、キュピエルはジイジの体を揺り動かす。
「ジイジ、ジイジ、ジイジ、ジイジ――」
ポロポロと涙が零れて、ポタポタと落ちていった。
笑い声が聞こえた。
「あははは、どんなに呼んでも無駄だよ」
「そうそう、だって、そいつ――」
「死んでるんだから!」
空を飛んでいる奴らが、まだ笑い続けている。
ジイジが死んだ。
とてつもなく悲しい。
小さな胸に、膨れ上がってもまだ膨張し続ける何かが、破裂した。
「うわぁあああああ――――」
キュピエルを中心に暴風が巻き起こり、怪鳥どもを吹き飛ばしていく。
ある者は家の壁にぶつかり、ある者は遠くの彼方へ飛ばされる。
どうにか、風に乗って、留まったハーピーらが、微かな恐れと共に、キュピエルを睨んだ。
「こいつ、いったい、何だい?」
「人間じゃないね。亜人でもない」
「魔物?」
「見て、黒い翼」
拳を強く握り締めながら、黒髪の幼子は涙目でハーピーらを睨み返した。
「お、お前らが……、ジイジを……」
「はん、そうさね」
「殺す」
小さな翼を広げると、突進するように飛んだ。
次の瞬間、ハーピーの喉を握っている。
「こ、こいつ――」
そのまま首の骨を折っていた。
一体が力無く落下し、地面に叩き付けられた。
「やりやがったね!」
「リンチだ、リンチ。人間に味方する奴は、魔物でもリンチ」
「チビでも容赦しない!」
もう一度、突進する。
だが、今度はひょいと避けられてしまった。
すると、今度は背中を蹴られる。
痛い、とても痛い。
「あははは、まぐれであたしらの仲間を殺せたからって、調子に乗ってんじゃないっての」
頭上から降下され、そのまま地に叩き付けられると、頭をそのまま押さえ付けられる。
痛い、とんでもなく痛い。
「死ね、チビ」
痛みよりも、悔しくて、悲しくて、涙で滲む瞳にジイジが入り込んだ。
ジイジは言った。逃げて、生きろ、と。
こうも言った。言う事を聞けないのは悪い子だと。
「ジイジ……、うぐぅ!」
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