積もるのは嘘と気持ちと

どんころ

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廊下に貼り出されていたクラス分けを見て、教室へと入る。
1番後ろの窓側の席だけ椅子が隣に添えられていて、あそこかなと思いながら近づくと僕の名札がその机の上に置いてあった。
席に座って教室の入り口付近で声をかけられている蓮くんを見る。
ここまで移動する間、面識のある人が多かったのか色んな人に声をかけられ続けていた。
ぼーっと見つめているとふと目の前に人が来てびっくりしてその人を見ると、さっき挨拶した翠くんだった。
「先輩やっぱり捕まっちゃった?」
「うん………やっぱり?」
やっぱりって単語が気になって聞き返す。
「部活もやってたけど、生徒会も入ってたから顔が広いし、人気の先輩だったんだよー。」
「そうなんだ。蓮くん僕の学校でもすごく人気者だった。王子様みたいって。」
「あんな勉強も運動もできて将来有望で、優しい男なんて女子もほっとかないよねー!先輩が転校して行っちゃった時のΩの子達の落胆ぶりといったら、今日で学校が潰れるのかと思うくらいだったよ。」
明るい声で楽しそうに話す翠くんを見ていると、僕まで気分が明るくなってくる。
自然とニコニコしながら翠くんとお話ししていると、話のキリがついたのか蓮くんが僕の所まで近づいてくる。
「春川と仲良くなれそうで良かったよ。」
蓮くんがそう言いながら僕の頭を撫でるので、蓮くんの顔を見ようと頭を上げると、教室にいる人がたくさんこちらをみているのが視界に入る。
ハッとして視線を机の方に戻して体を縮めると、蓮くんが横からぎゅっと抱きしめてくれた。
「澪、大丈夫。誰も澪のこと傷つけたりしないから。ね?」
そう言うと、顔を少し動かす気配があって、周りの人へ向けて話し出した。
「この子、秋雨澪音です。囲まれたり注目浴びたりするのがあまり得意じゃないから、そっと見守ってくれると助かる。」
蓮くんがそう声をかけると少し視線の数が減った気がして体から力が抜ける。
「澪、もう大丈夫だから顔上げられる?」
蓮くんが少し僕から体を離した。
顔を上げると、心配そうな蓮くんと翠くんの顔が視界に入る。
大丈夫だよと言う気持ちを込めて少し微笑むと、2人の顔が少し和らいだ。
そのまま蓮くんは僕の隣の椅子に腰を下ろし、翠くんと3人で話をしながら先生を待った。

「へー、じゃあもしかしてこれが結婚指輪なの!?いいなぁ憧れる!」
「時間がなかったから俺が急いで買ってきただけだけど。」
「結婚指輪をつけるっていうのが羨ましいんですよ。僕も早くしたいっておねだりしてみようかなぁ。」
「普通はあんまり学生のうちにしないから。あんまり佐倉困らせないであげて。」
「えぇー!先輩までそんなこと言うんですか!?ねぇ、澪音くん聞いた!?周くんが僕に指輪おねだりされて喜ばないわけがないと思うんだけど!」
「う、うん。周くん?」
「そのうち僕の旦那さんになる人だよー。澪音くんも今度みんなで一緒にご飯行こうねー。」
「うん。ありがとう翠くん。」
そう言うと、入り口の方からガラガラっと音がした。
前をみると、先生が教室に入ってきているところで、みんなが慌てて席に着いた。

担任は玉川先生という50代くらいの先生だった。
αらしく体格もいいが、穏やかな空気感があって、怖いとは感じない。
今年のスケジュールや今後の授業の話などを聞いた後は自己紹介の時間があった。
たくさん人数がいて覚えられなかったけど、Ωの子も何人かいて、みんなしゃんとしていたのが印象に残った。
最後に僕の番だったけれど、先生が、
「最後の人はみんな分かっていると思うけど、去年の途中まで居た相宮の結婚相手だから。怖がらせたりしないように、優しくしてあげて。」
と、僕のことを話してくれたので、立ち上がってお辞儀だけして終わった。
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