41 / 51
28
しおりを挟む
廊下に貼り出されていたクラス分けを見て、教室へと入る。
1番後ろの窓側の席だけ椅子が隣に添えられていて、あそこかなと思いながら近づくと僕の名札がその机の上に置いてあった。
席に座って教室の入り口付近で声をかけられている蓮くんを見る。
ここまで移動する間、面識のある人が多かったのか色んな人に声をかけられ続けていた。
ぼーっと見つめているとふと目の前に人が来てびっくりしてその人を見ると、さっき挨拶した翠くんだった。
「先輩やっぱり捕まっちゃった?」
「うん………やっぱり?」
やっぱりって単語が気になって聞き返す。
「部活もやってたけど、生徒会も入ってたから顔が広いし、人気の先輩だったんだよー。」
「そうなんだ。蓮くん僕の学校でもすごく人気者だった。王子様みたいって。」
「あんな勉強も運動もできて将来有望で、優しい男なんて女子もほっとかないよねー!先輩が転校して行っちゃった時のΩの子達の落胆ぶりといったら、今日で学校が潰れるのかと思うくらいだったよ。」
明るい声で楽しそうに話す翠くんを見ていると、僕まで気分が明るくなってくる。
自然とニコニコしながら翠くんとお話ししていると、話のキリがついたのか蓮くんが僕の所まで近づいてくる。
「春川と仲良くなれそうで良かったよ。」
蓮くんがそう言いながら僕の頭を撫でるので、蓮くんの顔を見ようと頭を上げると、教室にいる人がたくさんこちらをみているのが視界に入る。
ハッとして視線を机の方に戻して体を縮めると、蓮くんが横からぎゅっと抱きしめてくれた。
「澪、大丈夫。誰も澪のこと傷つけたりしないから。ね?」
そう言うと、顔を少し動かす気配があって、周りの人へ向けて話し出した。
「この子、秋雨澪音です。囲まれたり注目浴びたりするのがあまり得意じゃないから、そっと見守ってくれると助かる。」
蓮くんがそう声をかけると少し視線の数が減った気がして体から力が抜ける。
「澪、もう大丈夫だから顔上げられる?」
蓮くんが少し僕から体を離した。
顔を上げると、心配そうな蓮くんと翠くんの顔が視界に入る。
大丈夫だよと言う気持ちを込めて少し微笑むと、2人の顔が少し和らいだ。
そのまま蓮くんは僕の隣の椅子に腰を下ろし、翠くんと3人で話をしながら先生を待った。
「へー、じゃあもしかしてこれが結婚指輪なの!?いいなぁ憧れる!」
「時間がなかったから俺が急いで買ってきただけだけど。」
「結婚指輪をつけるっていうのが羨ましいんですよ。僕も早くしたいっておねだりしてみようかなぁ。」
「普通はあんまり学生のうちにしないから。あんまり佐倉困らせないであげて。」
「えぇー!先輩までそんなこと言うんですか!?ねぇ、澪音くん聞いた!?周くんが僕に指輪おねだりされて喜ばないわけがないと思うんだけど!」
「う、うん。周くん?」
「そのうち僕の旦那さんになる人だよー。澪音くんも今度みんなで一緒にご飯行こうねー。」
「うん。ありがとう翠くん。」
そう言うと、入り口の方からガラガラっと音がした。
前をみると、先生が教室に入ってきているところで、みんなが慌てて席に着いた。
担任は玉川先生という50代くらいの先生だった。
αらしく体格もいいが、穏やかな空気感があって、怖いとは感じない。
今年のスケジュールや今後の授業の話などを聞いた後は自己紹介の時間があった。
たくさん人数がいて覚えられなかったけど、Ωの子も何人かいて、みんなしゃんとしていたのが印象に残った。
最後に僕の番だったけれど、先生が、
「最後の人はみんな分かっていると思うけど、去年の途中まで居た相宮の結婚相手だから。怖がらせたりしないように、優しくしてあげて。」
と、僕のことを話してくれたので、立ち上がってお辞儀だけして終わった。
1番後ろの窓側の席だけ椅子が隣に添えられていて、あそこかなと思いながら近づくと僕の名札がその机の上に置いてあった。
席に座って教室の入り口付近で声をかけられている蓮くんを見る。
ここまで移動する間、面識のある人が多かったのか色んな人に声をかけられ続けていた。
ぼーっと見つめているとふと目の前に人が来てびっくりしてその人を見ると、さっき挨拶した翠くんだった。
「先輩やっぱり捕まっちゃった?」
「うん………やっぱり?」
やっぱりって単語が気になって聞き返す。
「部活もやってたけど、生徒会も入ってたから顔が広いし、人気の先輩だったんだよー。」
「そうなんだ。蓮くん僕の学校でもすごく人気者だった。王子様みたいって。」
「あんな勉強も運動もできて将来有望で、優しい男なんて女子もほっとかないよねー!先輩が転校して行っちゃった時のΩの子達の落胆ぶりといったら、今日で学校が潰れるのかと思うくらいだったよ。」
明るい声で楽しそうに話す翠くんを見ていると、僕まで気分が明るくなってくる。
自然とニコニコしながら翠くんとお話ししていると、話のキリがついたのか蓮くんが僕の所まで近づいてくる。
「春川と仲良くなれそうで良かったよ。」
蓮くんがそう言いながら僕の頭を撫でるので、蓮くんの顔を見ようと頭を上げると、教室にいる人がたくさんこちらをみているのが視界に入る。
ハッとして視線を机の方に戻して体を縮めると、蓮くんが横からぎゅっと抱きしめてくれた。
「澪、大丈夫。誰も澪のこと傷つけたりしないから。ね?」
そう言うと、顔を少し動かす気配があって、周りの人へ向けて話し出した。
「この子、秋雨澪音です。囲まれたり注目浴びたりするのがあまり得意じゃないから、そっと見守ってくれると助かる。」
蓮くんがそう声をかけると少し視線の数が減った気がして体から力が抜ける。
「澪、もう大丈夫だから顔上げられる?」
蓮くんが少し僕から体を離した。
顔を上げると、心配そうな蓮くんと翠くんの顔が視界に入る。
大丈夫だよと言う気持ちを込めて少し微笑むと、2人の顔が少し和らいだ。
そのまま蓮くんは僕の隣の椅子に腰を下ろし、翠くんと3人で話をしながら先生を待った。
「へー、じゃあもしかしてこれが結婚指輪なの!?いいなぁ憧れる!」
「時間がなかったから俺が急いで買ってきただけだけど。」
「結婚指輪をつけるっていうのが羨ましいんですよ。僕も早くしたいっておねだりしてみようかなぁ。」
「普通はあんまり学生のうちにしないから。あんまり佐倉困らせないであげて。」
「えぇー!先輩までそんなこと言うんですか!?ねぇ、澪音くん聞いた!?周くんが僕に指輪おねだりされて喜ばないわけがないと思うんだけど!」
「う、うん。周くん?」
「そのうち僕の旦那さんになる人だよー。澪音くんも今度みんなで一緒にご飯行こうねー。」
「うん。ありがとう翠くん。」
そう言うと、入り口の方からガラガラっと音がした。
前をみると、先生が教室に入ってきているところで、みんなが慌てて席に着いた。
担任は玉川先生という50代くらいの先生だった。
αらしく体格もいいが、穏やかな空気感があって、怖いとは感じない。
今年のスケジュールや今後の授業の話などを聞いた後は自己紹介の時間があった。
たくさん人数がいて覚えられなかったけど、Ωの子も何人かいて、みんなしゃんとしていたのが印象に残った。
最後に僕の番だったけれど、先生が、
「最後の人はみんな分かっていると思うけど、去年の途中まで居た相宮の結婚相手だから。怖がらせたりしないように、優しくしてあげて。」
と、僕のことを話してくれたので、立ち上がってお辞儀だけして終わった。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
奇跡に祝福を
善奈美
BL
家族に爪弾きにされていた僕。高等部三学年に進級してすぐ、四神の一つ、西條家の後継者である彼が記憶喪失になった。運命であると僕は知っていたけど、ずっと避けていた。でも、記憶がなくなったことで僕は彼と過ごすことになった。でも、記憶が戻ったら終わり、そんな関係だった。
※不定期更新になります。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
起きたらオメガバースの世界になっていました
さくら優
BL
眞野新はテレビのニュースを見て驚愕する。当たり前のように報道される同性同士の芸能人の結婚。飛び交うα、Ωといった言葉。どうして、なんで急にオメガバースの世界になってしまったのか。
しかもその夜、誘われていた合コンに行くと、そこにいたのは女の子ではなくイケメンαのグループで――。
魔王の息子を育てることになった俺の話
お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。
「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」
現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません?
魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL
BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。
BL大賞エントリー中です。
完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!
流れる星、どうかお願い
ハル
BL
羽水 結弦(うすい ゆずる)
オメガで高校中退の彼は国内の財閥の一つ、羽水本家の次男、羽水要と番になって約8年
高層マンションに住み、気兼ねなくスーパーで買い物をして好きな料理を食べられる。同じ性の人からすれば恵まれた生活をしている彼
そんな彼が夜、空を眺めて流れ星に祈る願いはただ一つ
”要が幸せになりますように”
オメガバースの世界を舞台にしたアルファ×オメガ
王道な関係の二人が織りなすラブストーリーをお楽しみに!
一応、更新していきますが、修正が入ることは多いので
ちょっと読みづらくなったら申し訳ないですが
お付き合いください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる